著者
三輪 洋人 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.293-303, 2001-01-20 (Released:2014-11-12)
参考文献数
49

最近ヘリコバクター-ピロリ (以下H. pylori) の臨床的意義が明らかにされ, 最近胃疾患の治療が根底から変わりつつある. 除菌の対象に関しては, 今後のさらなる議論が必要であるが, 実際のH. pylori感染症に対する臨床的対応はそれほど困難なものではなく, H. pylori感染症をいかに診断し, そしてどのように治療するかに集約される. H. pylloriの診断法には大きく分けて, 内視鏡を用いる侵襲的診断法と内視鏡を用いない非侵襲的診断法がある. 非侵襲的診断法のうち, 13C尿素呼気テストは最も診断精度に優れた方法のひとつであるとされる. また, その優れた診断精度から除菌治療後の治癒判定にも積極的に用いられている. 血清診断キットは欧米からの輸入キットがほとんどであるが, 近年このキットを日本人にも用いると, その診断率が欧米での成績よりかなり劣ることが明らかとなり, 本邦独自での血清抗体の開発が待たれる. 最近尿を用いたIgG抗体検出キットが開発されたが, 従来の血清抗体測定法以上に良好な診断率が報告された. また, 便中H. pylori抗原測定法も実用化され, その信頼性に対しても検討もすすんできた. 除菌療法の世界の主流はプロトンポンプ阻害剤 (PPI) と抗菌剤2剤を用いた新3剤療法である. 欧米では除菌治療レジメに関して多くの論文が出されているが, これら欧米人で用いられる治療法が日本人でも有効かどうかについては新たな検証が必要である. われわれの多数例の検討では, 現在の日本における最適な治療法はPPIの2倍量 (1日2錠) にアモキシシリン1500mg, クラリスロマイシン400mgを組み合わせて7日間服用するPPI/AC療法であると考えている. 副作用は下痢や口腔内症状が主であるが, ほとんどは軽微で服薬率に影響を与えることは少なく, 安全な治療法でもある. H. pylori感染症の診断と治療は常に進歩しているが, 新しい方法や知識をいち早く取り入れ, そしてそれらの限界を見極めながら安全に効率よくH. pylori感染症の診断と除菌治療を行っていくことが肝要である.

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