著者
栗原 大輔
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.81-89, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
46

細胞周期の中でも細胞分裂期はダイナミックな染色体動態を伴う過程であり,その動態の美しさは古くから研究者たちを魅了している.安定した遺伝情報の継承のために必須な染色体動態は,様々な分子が関わる精巧なメカニズムによって制御されている.染色体分配に失敗すると直接異数染色体につながり,遺伝情報のバランスに狂いが生じ,細胞死やガン化を引き起こすため,動物の研究では医薬の分野も含めて精力的に研究が行われているが,植物ではほとんど明らかになっていない.著者らはこれまで,シロイヌナズナ,タバコを用いて染色体動態を制御する分裂期キナーゼ,オーロラキナーゼの同定および機能解析を進めることによって,植物における染色体動態制御機構を明らかにすることを進めてきた.本稿では,近年次第に明らかになりつつある染色体動態の制御機構とともに,植物における染色体動態研究の現状と展望を解説する.

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