著者
澤田 晶子 栗原 洋介 早川 卓志
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第32回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.57, 2016-06-20 (Released:2016-09-21)

食物の消化吸収に密接に関連する腸内細菌叢は、長期の食事パターンの影響を強く受けることでも知られている。本研究では、季節に応じて様々な食物を食べる屋久島の野生ニホンザル(Macaca fuscata yakui)の腸内細菌叢が、葉食、果実・種子食、昆虫食といった採食パターンに応じてどのように変化するのか検証した。調査期間は2012年10月から2013年9月、調査対象であるオトナメス3個体から糞を採取し、次世代シークエンサーで網羅的に細菌種を同定した。エンテロタイプ(3種の細菌の比率に基づき区分される腸内細菌叢の型)に着目したところ、どの採食パターンにおいてもプレボテラタイプ(高炭水化物食と関連するエンテロタイプ)になり、採食時間の70%近くが昆虫食であった昆虫食期においても変化はみられなかった。一方、プレボテラタイプでは同じであっても、採食パターンによって細菌叢の構成が異なることがわかった。たとえば、葉食期にはセルロース分解菌を含むことで知られるトレポネーマ属の細菌種の増加がみられるが、これによりニホンザルは繊維含有量の高い葉を効率よく消化・吸収しているのではないかと推測する。

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