著者
伊藤 恭彦
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.20-31, 2013-12-20 (Released:2019-06-08)
参考文献数
22

公共政策は規範や価値に関する思考と深い関係にある。その点で価値や規範を正面から扱う政治哲学は公共政策学において重要な役割を果たせそうである。しかし,現実の公共政策学では規範や価値の問題はどちらかというと「周辺的」な扱いを受けている。本稿では規範や価値を扱う政治哲学が,公共政策学と現実の政策過程に関与するアクターにいかなる貢献ができるのかを検討し,政治哲学と公共政策学を架橋する試みを行った。政治哲学的思考と政策学的思考は多くの点で質を異にするが,両者の違いを自覚するならば,政治哲学は「民主主義の下働き」としての役割を政策過程で演じることができる。その役割は政策アクターや政策を考えている有権者に「道徳の羅針盤」を提供することである。「道徳の羅針盤」のうち,本稿ではアジェンダ選定における「規範的な認識のフレームワーク」と政策形成における「価値コミットメント」の明示化を例示的に検討した。政治哲学は現実政治や政策過程から距離をおいて,政策理念や政策規範を構想することができる。他方で,政治哲学は政策過程に寄り添ったり,政策過程を振り返ったりする中で,政策に関する価値と規範を明らかにし,政策的思考を豊かにしていくことに貢献できる。

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