著者
内田 安紀
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.15-29, 2017-06-03 (Released:2019-05-31)
参考文献数
29

本稿は、1990年代以降に顕著な現象として見られる葬送と自然の接近について、その背景と意味を考察するものである。1991年の「自然葬」の登場、そして1999年の樹木葬の登場と普及から推測できるように、現代の日本社会では葬送の領域において自然的要素が求められるようになっている。本稿ではなぜ現代社会において葬送と自然が接近しているのか、またそのような文脈における「自然」は新しい葬送の受容者にとってどのような意味を持つのかを問う。前者に関して言えるのは、現代社会においては葬送の領域に「個人化」現象が見られ、そこでは共有されうる死生観や価値観が失われており、その空白地帯に「自然」の要素がはまり込んだということである。後者に関して実際の樹木葬墓地での調査結果から見えてくるのは、そのような「自然」は受容者にとっては表層的なものであり、彼らの個人性と他者との共同性を媒介する一つの資源となっていたということである。

言及状況

外部データベース (DOI)

レファレンス協同データベース (1 libraries, 1 posts)

樹木葬・散骨利用者の利用理由に「土に還りたい」「自然の循環の一部になれる」等が挙げられているが、 人々が何故そのように考えるのか、という根本的な理由にふれた論文や文献を探している。 (インターネットで調べると、特定の宗派の教えを根拠にしたものは見つかったが、 上記の理由をあげた利用者は、宗派にこだわりが少なく、特定の宗派の持ち主ではなかった)

Twitter (1 users, 1 posts, 3 favorites)

収集済み URL リスト