著者
宮川 幸子
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.149-165, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
35

本論文の目的は、中国テンセント社の事例を通じて、中国SNS市場で成長する企業の経営戦略における間接的アプローチに関する新たな仮説を提示することにある。本論文では「中国SNS市場において経営資源劣位にある企業は、どのようにユーザーネットワーク内の顧客と関係性を構築すればよいのか」という問いを設定し、中国SNS市場におけるスタートアップ企業であったテンセントの短期的な企業成長に着目して事例研究を行う。本論文では、「間接的アプローチ」とは、「企業が顧客個人ではなく、顧客集団に対して、新たな顧客間関係の創出を目指して顧客間相互作用を促進する働きかけを行うこと」と定義し、間接的アプローチの方法論を明らかにする。テンセントは、間接的アプローチを通じて、顧客間相互作用を意図的に生み出すことより、自社ユーザーネットワークの量的拡大・質的充実とユーザーネットワークの収益化の両方を実現した。その背後では、顧客のあらゆる行動特性分析、心理的特性分析、顧客評価を通じて顧客知識と開発ノウハウを組織内に継続的に蓄積し、企業が直接コントロールし難い消費者主導のコミュニティを活性化させるための製品開発に活用していた。テンセントの事例研究を通じて、経営資源劣位企業の戦略として、企業が意図的に顧客間の相互作用を生み出す間接的アプローチの有効性に関する仮説を提示する。

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