著者
西川 潮
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.269-277, 2015-11-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
22
被引用文献数
3

水田は農作物の栽培の場を提供するだけでなく、かつて氾濫原湿地を利用していたさまざまな生物に棲み場や餌場を提供する。近年、水田は、その代替湿地としての重要性が見直され、農業生産と生物多様性再生の両立を念頭に置いた生物共生農法への取り組みが全国各地で進められている。佐渡市では、2008年度より開始されたトキ(Nipponia nippon)の再導入事業に合わせて、水稲農業に水田の生物多様性再生を軸とした「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度が導入された。2013年現在、全島の約24%の水田で認証米栽培への取り組みが進められている。この消費者と一体となった農地の環境保全体制、トキが棲む里地・里山景観、そして金山の影響を受けた固有の文化が認められ、佐渡市は2011年に、国際連合食糧農業機関(FAO)により世界農業遺産(GIAHS)に認定された。本報告では、佐渡市における生物共生農法への取り組みが、トキ、両生類、魚類、および大型底生無脊椎動物(底生動物)といった水田の生物多様性に与える影響について紹介する。生物共生農法の取り組み効果は、分類群によっても、水田内外の環境要因や土地利用によっても、空間スケールによっても異なり、とくに、耕作期および非耕作期の安定した湛水環境創出の取り組みや、減農薬・減化学肥料の取り組み、水田と水路の連結性確保の取り組みが水田の生物多様性向上に効果的であると考えられる。佐渡市では多様な農法への取り組みが水田の生物多様性を向上させていることが示され、今後も農法の多様性を維持向上させ、その成果を認証米の販売に活かしていくことが、里地・里山の自然再生を持続的に推進していくうえで重要と考えられる。

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論文はこちら。 西川(2015)佐渡世界農業遺産における生物共生農法への取り組み効果。 https://t.co/Xih05CMIY3

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