著者
北條 祥子 吉野 博 角田 和彦 佐藤 洋
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.451-463, 2001-09-26 (Released:2011-10-21)
参考文献数
54

児童の呼吸器・アレルギー疾患と生活環境との関係を検討するため,宮城県内20の小学校に在籍する1,401名を対象にアンケート調査を行い,その結果を地域で比較した。地域分類は自動車排ガスの影響,耕作地における農薬散布の影響,およびそれらの複合影響をみるために,1)都市市街地,2)都市郊外地域,3)耕作地に囲まれた市街地,3)耕作地域の4つに分類した。その結果,呼吸器・アレルギー疾患の有症率には宮城県内でも地域差が認められた。全体的には,都市市街地>都市郊外地>耕作地に囲まれた市街地>耕作地の順に有症率が高い傾向があった。ことに,何らかのアレルギー疾患(現在)と花粉症様症状ではカイ二乗検定(比率の差の検定)で有意差が認められた。自動車排ガス汚染と農薬の複合影響があると思われる「耕作地に囲まれた市街地」の児童が喘息様症状,花粉症,百日咳およびアトピーの既往率が他地域より高く,複合影響の可能性が示唆された。一方,児童の生活環境にも次のような地域差が認められた。a)個人特性:耕作地域は他地域と比べて,一人っ子や長子の割合が有意に低く,アレルギー歴の保有率が低い。b)大気環境:二酸化窒素(NO2),二酸化硫黄(SO2),浮遊粒子状物質(SPM)濃度は都市市街地が最も高く,耕作地が最も低い。光化学オキシダント(OX)濃度は逆に耕作地が最も高い。c)室内環境関連要因:最も大きな地域差を示した。すなわち,都市市街地は耕作地域と比べ,鉄筋集合住宅の割合,3年以内に新築またはリフォームした家庭の割合,母親の喫煙率,小鳥や室内犬等の室内ペットの割合,カーペット使用の割合,壁材がビニールクロスの割合が有意に高く,部屋が狭い。上記のような児童の生活環境の差,ことに室内環境の差が,呼吸器・アレルギー疾患の有症率の差に反映していると思われる。

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