著者
青柳 みどり
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.197-208, 1990-07-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16

従来の自然保護行政は,自然公園行政が中心で,貴重種や絶滅の危機にある生態系の保全が中心であったために,自然公園以外の地域にある森林などは余り積極的な保全施策がなされてこなかった。これに対して,最近,これら身近な森林を積極的に保全していこうという動きが高まってきた。それは自然公園などに比べて自然度の低い森林地域も自然保護の観点から大きな役割を果たしており,それぞれの特性に応じて保全していくことが必要であると認識されてきたためである。しかし,一方ではこれらの地域を適切に評価する方法がないために,説得力のある施策の展開には至っていないのが現状である。 本研究では,自然保護のための実用的な森林評価指標を作成した。具体的には,(1)生態系の構成要素として,植生自然度,まとまりの大きさ(面積),特定生物相の有無,土壌の回復困難度の4つを体系的に捉え,(2)デルファイ法とAHP法のアルゴリズムを組み合わせて用いて評価関数を決定し,専門家の判断を反映した定量的な指標を作成した。さらに,(3)乗法型の総合評価式を設定し,神奈川県林政情報システムを用いて,実際に評価値を算出した。 評価関数を採用したことにより,専門家の知見を的確に評価指標に反映させることができた。この際,デルファイ法をAHP法のアルゴリズムを用いたが,専門家の評価をうまく集約し,評価関数に反映することができた。ここで,作成された指標の構造並びに指標作成手法は一般性をもつと考えられるので,広く各地域での自然保護や環境管理計画などの施策に役立つと考えられる。

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デルファイ法を利用した国内研究。→自然保護の重要度からみた森林評価指標の作成に関する研究-都市近郊の森林を中心に https://t.co/2SRFI1BCKs

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