著者
小川 昌宣
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.177-182, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
9

無侵襲的胎児遺伝学的検査(NIPT)の登場により,出生前診断の件数が増加している。その背景には,女性の妊娠年齢の高年齢化という社会的要因があり,高年妊娠では染色体異常が生じやすいという生物学的事象があり,次世代シークエンサーの技術的進歩がある。胎児の染色体数的異常を母体の血液で行うNIPTが始まると,羊水検査の件数は減少したが,出生前診断を希望する妊婦の数は激増した。NIPT実施に関する施設認定の制度が作られたが,数少ない認定施設ではNIPT希望者の大波に対応しきれなかった。カップルの希望に応えるとして,産科医ですらないのにNIPTを手がける認可外施設も現れた。遺伝学的検査の進歩は生命の選択という意識を希薄にし,その誘惑をローリスクの妊婦へと広げつつある。現代社会における生きにくさ,育てにくさといった問題の解決策として出生前診断が用いられているとすれば,私達の社会の裏側には,新たな優生思想が横たわっているのではないだろうか。

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聴覚は出生後であるが、妊娠中の出生前診断と人工中絶の関連性とも切り離せない話だよね https://t.co/j5snrFl4hP
https://t.co/J1zxQT9iqC 〈安心して育てられる環境の代わりに、安心して育てられる児を求めようとする企て〉診断前後のフォローアップもない、産科ですらない認可外施設も。

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