著者
東 賢一
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-208, 2019 (Released:2019-08-01)
参考文献数
22

化学物質過敏症において, どのような宿主要因, 外部環境要因, 行動に関わる要因が発症や症状の増悪に関与しているかを把握することは, 化学物質過敏症の予防において重要であり, 筆者は脳機能イメージングを用いた臨床研究やアンケートによる疫学研究を行ってこれらの要因を調査してきた。脳機能イメージング研究からは, 臭い負荷時の前頭前皮質領域における活性化状況から, 外的ストレスに対する刺激の認識や記憶と大脳辺縁系を介した作用機序が関与している可能性が考えられた。 また, 5年にわたる追跡研究からは, イライラ感, 疲労感, 不安感, 抑うつ感などの悪化した心身の状態が, 化学物質に対する感受性を増悪させる強い要因になること, 適度な運動や規則正しい生活が化学物質高感受性の改善に寄与することなどを示唆してきた。外的環境要因については, 化学物質過敏症の発症のきっかけとなった曝露イベントが化学物質過敏症患者によって異なり, 特に曝露イベント時の曝露濃度に関する知見が乏しいことなどから, 対応策の検討が困難となっている。 しかしながら, 化学物質の有害性に関する既存の科学的知見をもとに, 大多数の人たちが健康への有害な影響を受けないであろうと判断される健康リスクレベルを評価し, 私たちを取り巻く外的環境に対する指針値や基準値を策定していくことは, 化学物質過敏症の発症に対する1つの重要な予防策になると考えられる。

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脳機能イメージング研究からは, 臭い負荷時の前頭前皮質領域における活性化状況から, 外的ストレスに対する刺激の認識や記憶と大脳辺縁系を介した作用機序が関与している可能性が考えられた。 また, 5年にわたる追跡研究からは, イライラ感, 疲労感, 不安感, 抑うつ感などの https://t.co/8GwtcUaPLI

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