著者
横田 俊平 黒岩 義之
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-73, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
48

全身的な身体症状と登校障害を主訴に受診した学童・生徒28名の臨床症状の特徴を調査した。全身の持続的な骨格筋痛, 関節痛, 種々の頭痛が全例に認められた。睡眠障害と朝の起床困難, 倦怠感・少しの動作で感じる疲労感, 食後の胃部痛・胃もたれ, 反復性の下痢と便秘, 通常の室内環境レベルでの光・音・匂いに対する感覚過敏とそれに伴う嘔気・頭痛を認めた。登校時に体調が悪化する例では眩暈, 動悸・息苦しさ, 頭痛, 腹痛等の訴えが多かった。理学的診察では全例に身体諸筋のこわばりと圧痛を認め, 線維筋痛症18圧痛点が陽性であった。血液検査では病巣を特定できる異常所見は得られなかった。これらの所見は若年性線維筋痛症に類似し, 登校障害児には若年性線維筋痛症の未診断例が含まれる可能性がある。自律神経症状, 疼痛・感覚過敏症状, 情動症状をコアとする視床下部性ストレス不耐・疲労症候群の病像が浮き彫りになり, 概日リズムの制御破綻, エネルギー代謝系の機能不全, 内的・外的環境ストレスに対する環境過敏とストレス不耐がある。線維筋痛症成人例でPositron-Emission Tomography(PET)で, 視床とその周囲にミクログリア由来の炎症が確認されており, 登校障害児においても視床-視床下部-辺縁系に病的プロセスが推察された。健常児では全く問題とならないレベルの室内環境等の身体的ストレスや心理的ストレスが登校障害児では顕著な環境過敏・ストレス不耐と易疲労性を起こし, 不登校の原因と推察された。

言及状況

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J-STAGE Articles - ストレス不耐症状を訴える登校障害児の臨床医学的検討:若年性線維筋痛症との類似性に注目して https://t.co/6tZXl7Mq8z

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