- 著者
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出口 剛司
- 出版者
- 日本社会学理論学会
- 雑誌
- 現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.16-28, 2010 (Released:2020-03-09)
『権力の批判』、『承認をめぐる闘争』、『正義の他者』といった主要な著作の翻訳が刊行される中、アクセル・ホネットの承認論が社会学理論の分野でも注目を集めている。しかし、ホネット自身の社会批判の内実については、かならずしも明確にされていない。それに対して本稿では、ホネットの著作の再構成を通して、その批判理論としての特徴と可能性の中心を明らかにすることをめざす。ホネットは「学以前のレヴェルにある解放の審級」という視座に立つことによって、フランクフルト学派の批判理論の伝統の中に自身を位置づけると同時に、語用論的形式主義に流れるハーバーマスとの距離化をはかっている。本稿ではまず、ホルクハイマーの問題関心に遡って批判理論の特徴を確認しつつ、そのコンテクストに第一世代、第二世代のハーバーマス、第三世代のホネットそれぞれの社会理論を位置付ける。つづいて、ホネットが「自己実現」の可能性の条件としての承認の「形式」に注目することによって、一方で内容ある善き生というコンセプトを堅持した批判理論を構築し、他方で特定の伝統的内容に依拠した価値の実体化を回避しようとした点を確認する。さらに「資本主義的近代化のパラドックス」というコンセプトのもとで進められているホネットとハルトマンのネオリベラリズム批判を取り上げる。そこで、ヘーゲルに由来する三つの承認形式を四つの承認領域として立体的に再構築することによって、ネオリベラリズムにおける承認構造の変化とその問題性を批判する視座を手にすることができた点を明らかにする。