著者
村上 潔
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.160-172, 2010 (Released:2020-03-09)
被引用文献数
1

本稿は、戦後日本社会において、女性の「労働」のありかたについてなされた最初の論争である「主婦論争」の意味を捉え返し、その課題と、論争が保持していた潜在要素一一現在的な問題の源泉ーーを抽出する作業を行なうものである。「主婦論争」とは、1955年に始まり1970年代前半まで段階的に生起した、「主婦」のありかたーーその立場・役割や労働の評価一ーをめぐる論争である。本稿では、「主婦論争」を内在的に読み解き、主にその対象となる層を念頭におきながら論調を図式的に分類していくことで、①論じられていたことが実際にはどのような現象としてあったのか、②それらはどのような関係を取り結んでおり、いかように力関係を保ってきたのか、③現状の課題と照らし合わせた際、改めて力点を置かれるべき立場はどこにあるのか、を検討した。その結果、従来論争における主要な論点とされてきた「働くべき」vs. 「働くべきでない」という論調の対立構図が、実は同じ(中間層以上の)階層の主婦層を対象とした「選択Jの問題にすぎず、そこからは「働かざるをえない」層の主婦たちの存在が不可視化されていることが明らかになった。そのうえで本稿では、「「地域/生活のための運動や協働を担う」立場の主婦たちと「働かざるをえない」主婦(ならびにその周縁の女性)たちによるこれまでの自律的な実践の成果を確認し、両者の協調的進展の模索にこそが今後の展開の試金石であることを指摘した。

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@niinow_g 昔のフェミニストは例えば自発的に主婦の座に収まる女を名指しで批判していたのだよ そうした女性内部での自己批判的なものが回避されるようになっておかしくなった https://t.co/eVJQr8v3Id

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