著者
松井 太衛 中村 優太
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.189, pp.J127-J131, 2020-09-25 (Released:2020-09-25)
参考文献数
51

ABO血液型は赤血球をはじめ上皮細胞表面や分泌体液中に広く存在するが、その生理的な機能は明らかではない。出血時に血小板を傷口につなぎ止め、血栓形成を担うフォンウィルブランド因子(VWF)は、血液型糖鎖の機能解明に1つの鍵を与えている。VWFは血液型を持つ少数の血漿タンパク質の1つである。血液型はVWFの血中濃度に影響を及ぼし、O型では非O型に比べて25%ほど低い。また、O型は非O型に比べて虚血性心疾患や血栓性疾患になるリスクが低いが、その反面、救急搬送された患者では、O型で出血死のリスクが高いことが明らかになり、これらにVWFが関わる可能性が示唆されている。O型患者のVWFは生理的な切断酵素であるADAMTS13への感受性が高いことから、A型およびB型糖鎖がVWFを切断酵素から防御している可能性が考えられる。血漿タンパク質における糖鎖の役割としては、シアル酸残基がプロテアーゼなどの種々の加水分解酵素に対する保護作用を持つことや、続いて露出するガラクトース残基がアシアロ糖タンパク質受容体によるクリアランスマーカーとしての役割が考えられてきたが、血液型糖鎖が中性の保護基として機能する可能性が示され、VWFを通して血液型糖鎖の新たな役割の解明が期待される。

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論文調べたらガチだった O型は血栓性疾患になりにくい一方出血死のリスクは高いそうな https://t.co/AyfgwvvWJy

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