- 著者
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荒又 美陽
- 出版者
- 観光学術学会
- 雑誌
- 観光学評論 (ISSN:21876649)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.139-159, 2020 (Released:2022-10-29)
- 被引用文献数
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2
本論は、東京とパリで予定されているオリンピックを事例に、メガイベントが時間を区切り、そこに向かう多様な人々の活
動を引き出すことによって、脱工業化時代の都市計画事業の大きな推進力となり、弱者の排除を生み出していることを明らか
にする。東京では、国立競技場の建て替えが大きな議論を呼び起こした。論争はそこが天皇の空間であることを再認識させ、
それをもとに新たな計画はイチョウ並木と明治天皇絵画館で構成される景観を最大限邪魔しないものであることが求められた。
他方で、隣接する公営住宅で立ち退きが求められ、野宿者の排除が強行されるなど、周囲のジェントリフィケーションが急速
に進んでいる。パリにおいては、メインスタジアム周辺の都市開発事業として、選手村の予定地にある移民労働者の寮が解体
されることになり、住民には狭く、騒音のひどい建物への移転が求められる事態となった。付近の高速道路では、ランプウェ
イの新設によって小学校付近の大気汚染が引き起こされようとしている。いずれの事例でも見られるのは、来訪者を中心とし
た都市計画が住民生活を圧迫している状況であり、観光を主要産業と位置付ける政治のひずみが表れている。