著者
橋本 誠一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.66, 2006 (Released:2006-06-23)

哺乳類における概日リズムは、睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌リズム、血圧や体温のリズム、代謝のリズムなど広範な生命現象において見られる。体内の殆どの組織・細胞には体内時計が存在し、多数の遺伝子の発現が約24時間周期の振動を示す。これらの概日リズムを作り出しているのが体内時計であり、その中枢は、脳の視床下部にある視交叉上核と呼ばれる一対の神経核である。この視交叉上核の破壊によって概日リズムが消失し、視交叉上核の移植によって概日リズムが回復することから、哺乳類における中枢時計が視交叉上核に存在することが証明されている。一方、中枢時計である視交叉上核の制御下にあって、体内の殆どの組織・細胞には体内時計が存在し、多数の遺伝子の発現が約24時間周期の振動を示す。体内時計は、中枢時計も末梢時計もともに時計遺伝子及び時計関連遺伝子と呼ばれる主に転写制御因子によって構成され、これら転写制御因子がサーキット構造を形成し、時間依存的に働くことで約24時間周期のリズムを作り出す。体内時計の周期は、生物種によって多少異なり、ヒトの場合約25時間であるが、マウスなどでは24時間よりも短い。しかし、生物種固有の体内時計の周期時間に係らず、概日リズムは昼夜変化に同調して24時間周期となる。昼夜変化の強力な同調因子として働いているのが光である。しかし現代社会は昼夜変化の光環境を大きく損ない、社会生活の24時間化が進むにつれて巷間には光があふれ、夜間勤務者に見られる睡眠障害、睡眠相後退症に起因する不登校・不出社、うつ、認知症患者に見られる夜間徘徊・せん妄などリズム障害に起因すると考えられる様々な疾患が社会問題ともなっている。本発表では、体内時計システムとリズム障害、さらには、独自に樹立した視交叉上核由来神経細胞株について概説する。

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