著者
萩原 正敏
出版者
日本毒性学会
巻号頁・発行日
pp.S16-3, 2015 (Released:2015-08-03)

患者の染色体や遺伝子の異常に起因する先天性疾患に対して、mRNAレベルで病態に影響を与える化合物を見つけ、症状の発現を抑えることは論理的に可能である。TG003のような特異的な蛋白リン酸化酵素阻害剤は特定のmRNAのスプライシングパターンだけを変化させる。最近我々は、TG003を使ってジストロフィンの変異部位を含むエクソンのスキッピングを促進することで、ジストロフィン蛋白の発現を亢進させ、デュシェンネ型筋ジストロフィーの薬剤治療が可能であることを示した。一連のリン酸化酵素阻害剤の開発途上で、抗ウイルス薬、疼痛抑制薬、加齢横班症治療薬などを見出した。一方で我々は、エクソンの選択的使用に応じてGFP/RFP等異なる蛍光タンパク質が発現するスプライシングレポーター技術を開発し、スプライシング制御因子の同定を進めてきた。その独自技術を発展させて、家族性自律神経失調症(Familial Dysautonomia)の原因遺伝子であるIKBKAPのスプライシング異常を可視化するスプライシングレポーターを作製し、家族性自律神経失調症の病態解明を行うとともに、異常スプライシングを是正できる低分子化合物RECTASを見出した。RECTASを患者細胞に投与すると病態が改善し、この遺伝病も薬物治療が可能であることが判明した。このように染色体や遺伝子に異常があっても、そこから発現するmRNAに影響を与える化合物によって症状の発現を抑え得る。我々は、独自のトランスクリプトーム創薬技術をさらに発展させ、難治のウイルス性疣贅治療薬の臨床試験に向けて準備を進めている。当然ながら標的遺伝子以外のmRNAも創薬候補化合物投与の影響を受ける。トランスクリプトーム創薬における毒性を如何にして評価すれば妥当であるのか、この場を借りて議論したい。

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