著者
牛田 一成 土田 さやか
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S8-1, 2018 (Released:2018-08-10)

植物は、草食動物の捕食から逃れるために様々な化合物を含む。化合物によっては、ミモシンのように直接に毒性を持つが、タンニンなどポリフェノールでは、動物に苦みを感じさせることで摂食を抑制するほか、タンパク質と結合して消化を阻害する。動物側の適応として、毒物の場合、肝臓でこれらを解毒する能力の他に、タンニンのような物に対しては、受容体を欠損させる、唾液タンパク質によってタンニンを吸着してしまうなどの適応が起こっている。青酸配糖体のような物では、腸内細菌の作用によって有毒な青酸が発生してしまうが、一方でミモシンやタンニンなどでは、これを直接分解する腸内細菌がいると、これらを含む食物を摂食することができるようになる。ミモシンの例では、Synergistes jonesiiが分解能を持つ細菌としてヤギの反芻胃液から分離されている。タンニンは、高いタンナーゼ活性を示すStreptococcus gallolyticusや Lactobacillus apodemiがユーカリを食べるコアラ、ハイマツやガンコウランなどの高山植物を食べるニホンライチョウ、シイやナラの堅果を食べる野生齧歯目などから高頻度で分離されている。腸内細菌の側も、宿主の食事に応じて優占種の交代がおこるほか、同じ種が常に存在する場合でも、その細菌ゲノムの遺伝子構成に変化が生じており、例えばヒト科霊長類における植物食から雑食への移行やイノシシの野生から家畜化への過程で、ある細菌種の特定の遺伝子群の獲得(ないしは欠損)が認められる。このように宿主の生存戦略と腸内細菌の機能は密接に関わっており、こうした観点から見て、動物の個体は宿主の細胞だけでできあがっているわけではなく、腸内菌などの微生物叢も含めた「超個体」という概念で理解されるべきだという考えが広く受け入れられるようになってきた。

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タンニンはレンサ球菌(牛レンサ球菌?)とかラクトバチルス属のなんかとかLonepinella koalarumとやらと共存することで吸収してるらしい。 出典:タンニン分解性細菌に関する研究 https://t.co/NnGktLihra 野生動物の適応戦略としての腸内細菌 https://t.co/jpfD4JdfeS
硬く、タンニンを多く含んだ植物(ハイマツ、ユーカリ)を食べること。それを微生物の力を借りて長い盲腸の中で消化すること、その微生物を糞を通じて子に継承することなど、コアラとライチョウには共通点が多い。 https://t.co/bkqRnWZpDS https://t.co/LOtWuK6qSA https://t.co/xuMwNSCeEA https://t.co/Ehgxa2XSBJ

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