- 著者
-
奥谷 喬司
土田 真二
- 出版者
- The Malacological Society of Japan
- 雑誌
- Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.3-4, pp.125-133, 2005-01-31 (Released:2018-09-01)
- 参考文献数
- 6
海洋科学研究開発機構(JAMSTEC)の無人深海探査機ハイパードルフィンによって,小笠原諸島西方の海形海山の中腹,水深912mにおいてハワイヒカリダンゴイカの小群が発見された。いずれの個体も海底面すれすれのところでホーバリングを行っており,海底に付いているものや高い位置で遊泳しているものは見られなかった。各個体ともまちまちな方向を向いており,海流に支配されているようには見えない。本種はこれまでもハワイ他西太平洋各地に分布していることは知られていたが,これまでの採集はおおむね開放ネットによるものであり,中層浮遊性とされていたが,今回の観察により漸深海底帯で,近底層性の生活を送っていることが判った。この観察の時,9標本が採集されたが,いずれも雌で,ハワイから採集されたタイプ標本も,またサモア北方のコンベ礁から採集されたものも雌で,雄の報告はない。また,Nesisは琉球や小笠原など日本近海を分布範囲にあげているが,それらの詳細についての報告は見あたらない。これらの標本と過去の形態記載と比較も行い,腕長式などにかなりの種内変異があることも確かめられた。