- 著者
-
三上 純
- 出版者
- 日本女性学会
- 雑誌
- 女性学 (ISSN:1343697X)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, pp.76-104, 2022-03-31 (Released:2023-04-01)
- 参考文献数
- 19
本稿の目的は、グループ・インタビューとアンケート調査の分析を通じて、運動部活動におけるミソジニスティック/ホモフォビックな会話の実態と、それが性差別意識といかに関連しているのかを明らかにすることである。 グループ・インタビューでは、男性のみの運動部集団において女性を性的客体とみなすミソジスティックな会話と、同性愛をタブー視するホモフォビックな会話があったことが語られた。アンケート調査の分析では、女性を性的客体、男性を性的主体とする意識と、ゲイに対する態度を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、性的マジョリティ男性は非対称な性的関係を肯定する傾向がみられたが、それは運動部活動におけるミソジニスティック/ホモフォビックな会話に媒介されたものであることが明らかになった。しかし、ゲイに対する態度についてはそうした会話に十分な媒介効果がみられなかった。なお、いずれの従属変数についても男女が生まれつき異なる存在であるとする考え方が強く関連していることが明らかとなった。 本稿の分析から、性差別を助長すると考えられる運動部活動におけるミソジニーやホモフォビアに対処するためには、生物学的な男女の差異を自然とみなす状況を問い直すことが必要であると考えられる。