著者
角田 太作
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-75, 2011-05

日本語には,(1)の構造を持った文がある。その例文は(2)から(4)である。(1) 体言締め文または人魚構文 [節]名詞 だ。(2) [太郎は名古屋に行く]予定だ。(3) [太郎は今本を読んでいる]ところだ。(4) [外では雨が降っている]模様だ。この種の文は奇妙である。意味の面では,例えば,(2)について言うと,太郎は人間である。予定ではない。統語の面でも奇妙である。[節]の部分は,(2)から(4)では,動詞述語文と同じ構造を持っている。しかし,文は「名詞 だ」で終わる。(よって,「体言締め文」と名付けた。)すなわち,前半は動詞述語文と同じ構造を持ち,後半は名詞述語文と同じ構造を持っている。(人魚に似ている。よって,人魚構文とも名付けた。)先行研究の中には,[節]の部分を連体修飾節とみるものがある。しかし,統語的な振る舞いを見ると,[節]の部分は連体修飾節とは違い,動詞述語文と同じである。(1)の構造の「名詞」の位置に現れる名詞は,意味・形態・統語の面で,文法化の過程を進んでいる。意味の面では,人魚構文の外で使う場合と意味が違うことが多い。形態の面でも,統語の面でも,名詞らしさを失っている場合がある。「自立語 → 後接語 → 接尾辞」の変化を遂げたと思われるものもある。
著者
原田 知佳 吉澤 寛之 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.122-136, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
42
被引用文献数
3 3

本研究は,社会的迷惑行為および逸脱行為といった反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程について,脳科学的基盤が仮定されている気質レベルの自己制御と,成長の過程で獲得された能力レベルの自己制御の2側面に着目し,気質と能力の因果関係を含めた包括的モデルの検討を行った。対象者は高校生・大学生の計641名であり,自己制御の気質レベルはBIS/BAS・EC尺度を,能力レベルは社会的自己制御(SSR)尺度を用いた。分析の結果,次の知見が得られた。(1)SSRの自己主張的側面はBIS/BAS,ECからの直接効果が示されたのに対し,自己抑制的側面はECからの直接効果のみが示された。(2)気質レベルよりも能力レベルの自己制御の方が,反社会的行動により強く影響を及ぼすことが示された。(3)社会的迷惑行為と逸脱行為とでは気質レベルの自己制御からの直接効果に差異が示され,前者はEC,BASからの直接効果,後者はBIS/BASからの直接効果が示された。(4)能力レベルの自己制御と逸脱行為との関連については,自己抑制と自己主張の交互作用的影響が認められ,自己抑制能力を身につけずに自己主張能力のみを身につけると,他者を配慮せずに自己中心的な行動を行う自己主張能力として歪んだ形で現われるために,逸脱行為に結びつきやすい傾向が示された。以上の結果に基づき,反社会的行動に及ぼす自己制御の影響過程,社会的迷惑行為と逸脱行為との相違点および共通点について議論した。
著者
木下 健
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.79-92, 2012-09

研究ノート・資料(Note)本稿は、過去20年間の衆参予算委員会において議事運営に関する与野党の対立構造を明らかにしたものである。分析対象期間は1992年から2011年の20年間とし、与野党対立を三つの尺度を用いて分析を行った。一つ目の尺度は審議空転であり、日程協議を主な分析の対象にしている。残る二つの尺度は、委員会審査内における与野党対立を対象としたものであり、一つは委員長の理事会協議をする旨の発言回数であり、もう一つは速記が止められた回数を分析対象としている。予算委員会における議事運営の与野党対立を分析することを通じて、参議院予算委員会の審議機能の検証を試みた。一つ目の尺度からは国会審議における空転割合が大きくなる一因が政治倫理問題の多寡によることが改めて確認された。その他、2000年及び2008年に関しては与党が強行採決したことに対し、審議拒否がなされ空転が生じていることから、与党の強硬姿勢が空転割合を増やす要因となっている。審議空転に関しては衆議院での審議段階において、審議拒否がなされ空転することが主となっているが、参議院での審議段階において93年、08年及び09年に審議空転が生じている。参議院においては30日ルールの制約があるため、93年以降政治倫理問題に関して空転は生じていない。参議院段階における93年の空転は佐川急便事件であり、証人喚問を強く求めるものであったが、効果は限定的であった。他方08年の参議院段階での空転はガソリン税の暫定税率延長のつなぎ法案に関して、期限切れを目指すものであり、09年は定額給付金などに反対し、集中審議を求めたものであり、倒閣や政権交代を狙っての野党戦術となっている。残る二つの尺度に関して、理事会協議回数については20年間を通してみると衆議院予算委員会の方が参議院予算委員会よりも多く理事会協議回数が現れており、委員会審査から理事会協議へ影響を及ぼしていたことがうかがえる。他方で速記中止回数については参議院予算委員会の方が多くなっており、徹底した追及がなされているといえる観測結果が得られた。その他、重回帰分析により空転割合が増えるほど、速記中止回数が増えることが判明した。また野党が参議院で過半数を占めている場合、速記中止回数は減ることがわかった。衆参の審議機能を考えるにあたっては、衆議院で追及しきれなかった場合、参議院で追及がなされるため、衆参を一体のものとして評価する必要がある。衆参一体のものと評価したうえで、参議院予算委員会は片道方式を採用したことに起因して、二院制が行政府監視機能を強めていると考えられる。
著者
満江 亮
出版者
山口大学大学院東アジア研究科
雑誌
東アジア研究 (ISSN:13479415)
巻号頁・発行日
no.10, pp.67-88, 2012-03

若者たちの悩みの多くは、自らの杜会的役割に関するものである。しかし、「私とは誰か」という形而上学的・存在論的問いに悩まされる若者も少なくない。この悩みは人学が学び成長することとも関わっているが、はたしてこのような形而上学的・存在論的な悩みすらも社会的役割の問題として理解されてよいのだろうか。それは、まるで全ての人間の生活が社会という舞台の上で与えられた役柄を演じることのみになりはしまいか。だが、人問は学び続けるとか選択しなおすという活動を通して、獲得した役柄を捨て去り、はっきりとは意識しないまでも、存在の根源的レベルで「私とは誰か」と問い続けながら生活しているはずである。こうした問題を巡って、本稿初盤では、まず人間の存在の根源性に関する廣松渉とジャン-ポール・サルトルそれぞれの哲学的主張をとりあげ、その異同を考察する。これは〈私〉の意識の存在の根源性を巡るものである。筆者は、人格概念に近い社会性を持った人間のあり方が根源的であるとする廣松の主張と、意識の深層に自分をも否定しうる働きをもつ人間の在り方が根源的であるとするサルトルの主張の対立の整理を試み、意識の根源に触れようとする存在論的議論を教育学で行うことの意義を確認する。また、中盤では、サルトルによりながら、現代のある大学生が旅の途中で経験した、人間の意識の深層に関わる自己欺騰の事例を扱う。さらに終盤では、サルトルによる世界の根源的選択に依りながら自分探しの旅の記録を読み取ることによって、ある大学生の世界選択の変遷を辿る。これらの考察によって、人間の意識の根源に半透明的に確認できる根源的否定を見出し、その重要性を明らかにする。こうした議論を踏まえたうえで、最終的に筆者は、人間の存在論的次元、すなわち意識の深層における根源的否定に着目することで、現代の自己形成の問題について新生面が見出せるとする。
著者
岸本 三香子 海野 知紀 田中 敬子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
武庫川女子大学紀要. 自然科学編 (ISSN:09163123)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.45-50, 2006

健常な女子学生38名(年齢19.8±0.9歳)を対象に, 難消化性デキストリンを含有したデザート飲料による排便状況に及ぼす影響を検討した.飲料摂取試験:は全6週間で, 非摂取(I期:1週間), 飲料摂取(II期:2週間), 非摂取(III期:1週間), 飲料摂取(IV期:2週間)とし, 難消化性デキストリンを5g配合した飲料を摂取させるシングルブラインド・クロスオーバー試験を実施した.対照飲料は試験飲料に配合した難消化性デキストリンを含まない飲料を用いた.試験期間中, 排便状況に関するアンケートを毎日, また排便意識に関するアンケートを1週間ごとに記入させた.その結果, 便秘傾向者(非摂取期間の1週間の排便日数が1週間に3日以下)において試験飲料の摂取により非摂取期間と比較して排便日数, 排便回数, 排便量いずれにおいても有意に増加し, 排便日数は対照飲料摂取期間と比較して有意な増加が認められた.排便意識調査からも飲料摂取により便秘の改善は明らかであった.
著者
野口 孝俊 渡部 要一 鈴木 弘之 堺谷 常廣 梯 浩一郎 小倉 勝利 水野 健太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.150-162, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
16

東京国際空港(羽田空港)は,日本の国内航空ネットワークのハブ空港となっている.増加する旅客数に対して発着能力が限界に達していることに加え,国際線発着枠の拡大に対する要請も強い.そこで,新たな離発着能力を創出するために,沖合に4本目の滑走路を新設する羽田空港再拡張事業が2007年3月末に着工され,2010年10月末に供用開始した.羽田空港D滑走路の建設事業は,軟弱地盤が厚く堆積する地盤上の建設であること,河口部に位置するため,洪水時の河川流量を確保する観点から,一部に桟橋構造が採用されていること,短い工事期間が設定されたことなどから,最新の土木技術を集結し,さまざまな設計・施工上の工夫をした.本稿は,当該事業について,主に地盤工学の立場から,事業内容,地盤調査,人工島設計の概要をとりまとめたものである.
著者
沖 嘉訓 前川 眞一
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.57-72, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
23

Equating or linking, which calibrate the parameters of two or more tests, are critical to the application of IRT, because they allow for comparisons between test scores. Common item design or common person design is often used for equating. In Multidimensional item response theory model (MIRT), there is a case that both common item design and common person design are available. However, few studies about the equating process corresponding to such a case has not been conducted. The present study proposes the integration of common item and common person criteria and analyzes the characteristics of the method through computer simulations. The results of the simulations reveal the proposed method is effective when one must take both criterion into consideration.
著者
小川 剛生 川﨑 美穏 出村 奈那恵
出版者
慶應義塾大学国文学研究室
雑誌
三田國文 (ISSN:02879204)
巻号頁・発行日
no.60, pp.120-160, 2015-12

図削除挿表はじめに一, 底本書誌二, 翻刻本文三, 興行時期・連衆四, 注釈五, まとめ