著者
邱 學瑾
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.49-60, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
24

本稿では,日本語学習者が日本語の漢字語彙をどのように処理するのかを,認知心理学及び第二言語習得の分野における単語認知研究の成果に基づいて考察する。近年,モノリンガルやバイリンガルを対象とした研究では,単語の処理過程において,ターゲット語の意味表象が活性化するだけでなく,ターゲット語と関連する複数の語義も活性化し,ターゲット語の処理に促進効果や干渉効果をもたらすことが明らかになっている。これらの効果は,日本語学習者でも見られることが予想される。日本語学習者の語彙処理過程で異言語間の相互作用が生じる場合は,どのような特徴をもった単語で観察されるのであろうか。また,相互作用はどのような条件で生じるのであろうか。本稿では,この問題に焦点を当て,先行研究を概観しながら議論を展開する。そして,日本語をはじめとした言語の学習における情報処理のメカニズムに迫る。
著者
千葉 とき子 斎藤 靖二 木村 典昭
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-36, 1982

蛇石火山は伊豆半島南西部に位置する第四紀火山で, その噴出物は東西3km, 南北6km にわたって分布する。この火山体は第三紀中新世後期の白浜層群を不整合に覆って形成された。火山体を構成する岩石は, 岩相・層位学的にみて, 大きく2つのユニット(下部ユニットと上部ユニット)に区分される。下部ユニットは火山体の主要部分を構成するもので, 熔岩流と火砕岩からなり, 約150m の厚さをもつ, 上部ユニットは数10m の厚さで, 陶汰の悪い熔岩の角礫を含む堆積物からなる。下部ユニットは北部の高地と南部の海岸付近に, 上部ユニットは間の比較的平坦な地形の部分に分布する。 下部ユニットの熔岩のうち, 南部の落居付近にみられる7枚と北部の大峠付近の3枚について岩石記載を行った。岩石はすべて(かんらん石)-紫蘇輝石-普通輝石安山岩である。岩石9試料のモード, 主成分を分析した。熔岩が噴出したときのメルトと結晶の量化は3 : 2∿3 : 1で, 後に噴出した熔岩ほどΣFeO, MgO, CaO に乏しく, SiO_2に富む。しかし, 全体としては化学組成の変化の範囲は比較的狭く, 結晶分化作用があまり進行しないまま, 短期間に熔岩の流出が行われたとす推定される。鉱物組定・化学組成からみて, 蛇石火山の岩石はカルク・アルカリ岩系に属し, ノルム石英を10vol.%以上含むことから, 伊豆半島南西部の第四紀火山の溶岩のなかで SiO_2に最も過飽和であるといえる。
著者
Toshiya Morikawa Yoshiaki Yamamoto Yoshimune Nonomura
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.859-862, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
25

Fatty acid calcium salt is a high melting point powder excellent in lubricity and water repellency and is often used as a cosmetic raw material. We have shown that several calcium salts of fatty acids have high selective bactericidal activity against Staphylococcus aureus and Propionibacterium acnes and low bactericidal activity against Staphylococcus epidermidis. In this study, we evaluated the influence of pH on the bactericidal behavior of calcium laurate, and showed that under acidic conditions it shows higher bactericidal activity against both bacteria but selectivity becomes lower. This finding is useful for designing skin cleansers and makeup cosmetics containing lauric acid.
著者
住田 孝之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.3055-3063, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

Sjögren症候群(シェーグレン症候群:SS)はドライアイ,ドライマウスを主症状とする全身疾患である.抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,リウマトイド因子,抗核抗体などの自己抗体が血清中に検出されること,唾液腺・涙腺などの諸臓器に自己反応性T細胞浸潤が認められることから,病因として自己免疫応答が考えられている.最近,唾液分泌に重要な受容体であるムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体やT細胞の存在がSSにおいて明らかにされてきた.さらに,M3Rに対する免疫応答によりSS類似の自己免疫性唾液腺炎が発症することがマウスモデルで証明され,SS発症の分子機構の一部が解明されてきた.治療では,QOLを高めるM3Rアゴニスト薬などの進歩,生命予後を改善する生物学的製剤の登場,治験報告などがなされてきた.
著者
宮寺 良光
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.49, pp.175-202, 2017-10-10

近年の生活保護受給者増加の背景には,高齢者の生活困窮化が影響している。世帯類型別にみると「高齢者世帯」が生活保護受給世帯全体の半数程度にまで増加しており,このことが生活保護費の増加を懸念する材料になっている。しかし,このような問題の背景には,産業構造と社会保険制度の階層的構造に象徴される社会保障制度の構造的な問題に加え,社会保障・社会福祉の「構造改革」による費用負担構造の変化が新たな高齢者の生活困窮化要因につながっていることが疑われる。 本稿では,高齢者(65歳以上)に関連する統計データのうち,都道府県別に判別できるものを収集し,このデータを元に高齢者の生活保護受給要因について時系列に分析を試みたところ,かつては収入面の問題が主要な生活困窮化の要因であったが,近年では,支出面の問題が高齢者の生活困窮化を促している可能性がうかがえた。また,これらの要因を地域別に分析を試みたところ,都市部と地方部とでは異なる特徴がみられ,目前の課題として地域単位で取り組むにあたっては,地域の特徴を踏まえた課題克服のためのアプローチが必要であることがみいだされた。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1617, pp.54-59, 2011-11-21

クライマックスシリーズ(CS)で、シーズン優勝の中日ドラゴンズをあと一歩のところまで追い詰めた東京ヤクルトスワローズ。けがによる戦線離脱が相次ぎ、最後は力尽きたが、レギュラーシーズンの132試合目まで首位を快走した今季の戦いぶりは、戦前の予想を覆した驚異的な内容だった。 中日とのCSの死闘も、野球ファンを唸らせた。
著者
舞の海 秀平 高島 三幸
出版者
日経BP社 ; 2002-
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.116-118, 2015-11

第17回巨大な力士に果敢に立ち向かっていった、元幕内最小力士の舞の海。恐怖心とプレッシャーに打ち勝つことができたのは、「柔軟な想像力」だった。──前回は、他のスポーツの動きを参考にするなど、従来の相撲にとらわれない柔軟な発想で、「八(はっ)艘…
著者
中畑 邦夫
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.49-60, 2010

坂口安吾の短編「桜の森の満開の下」を、我々はいわゆる「社会契約説」における「自然状態」から「社会状態」への移行を物語として表現したものとして解釈することができる。従来、社会契約説に特有のアポリアの一つとして、「自然状態に生きる無知なる自然人が、なぜ未知の社会状態へと進むことを選ぶのか」という「動機」の問題が指摘されてきた。それは無知な自然人を突き動かすほどの魅力をそなえたものでなければならないはずであり、安吾によればそれは「美」なのである。しかし美は、社会状態全体の一つの側面に過ぎないのであって、自然人は社会状態において文化や秩序の醜悪さに直面することになる。この物語は自然人である主人公が都という社会状態からやってきた一人の女の美しさによって自然状態を離脱し、社会状態の中で文化や秩序の醜悪さと退屈さに苦悩しつつ、結末においてそういったものの根源にある「虚空」に気付いてしまうというプロセスを悲劇的に描いたものである。物語の中で描かれる文化や秩序とは読者である我々が現にその中で生きているものであり、その根源にも虚空が横たわっている。したがってこの作品はたんに一つの物語であることを超えて、安吾独自の自然-社会状態論として解釈することも出来るのである。
著者
平松 隆円
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学教育学部学会紀要 (ISSN:13474782)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.107-112, 2009-03-14
被引用文献数
1

This study was focused on the every day feeling adjustment with makeup. The purpose of this study was clarified whether manicure had as influenced to be desirable for feeling adjustment. The analytical subject was 40 female university students (M=19.68years old, SD=2.03). The index used Profile of Mood States(POMS). After using manicure, "Tension-Anxiety score","Depression -Dejection score","Anger-Hostility score", "Fatigue score","Confusion score" decreased significantly of Profile of Mood States(POMS) and "Vigor score" increased significantly of Profile of Mood Sates(POMS). The result of this study indicated a fact it is possible to give positive feeling adjustment affects on female university students through the using manicure. 本研究の目的は,化粧の日常的な感情調整作用に注目し,女子学生40名(平均年齢=19.68歳,SD=2.03)を対象に,マニキュアのもたらす感情調整作用について検討することである. マニキュア使用前後の感情の変化をProfile of Mood states(POMS)によって測定したところ,マニキュアの使用にともない,「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」が有意に低下し,「活気」が有意に上昇することが明らかとなった. 本研究の結果から,マニキュアの使用はリラクセーションに有用であると考えられた.
著者
八ッ塚 一郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.146-159, 2008 (Released:2008-03-19)
参考文献数
25

阪神・淡路大震災(1995)を契機として発生し分離・変容を遂げた,被災地におけるひとつのボランティア活動の系譜を報告した。さらに,社会的表象論を援用してこの事例を検討し,震災を契機とする社会変動の構図と,それに対してボランティア実践が持つ意義とを考察した。①阪神大震災地元NGO救援連絡会議,②震災・活動記録室,③震災しみん情報室,④震災・まちのアーカイブ,⑤市民活動センター神戸,という一連の団体は,被災地における情報の交換や伝達,記録資料の保存など,記録に関わるボランティアとしてその活動を展開してきた。被災者の支援と被災体験の継承を企図して開始された記録活動は,復興に伴う被災地域の変化のなかで一時その目的を喪失し停滞に陥った。その後,団体の分裂と目的の特化により,活力を回復し現在に至っている。震災復興という状況における,記録活動,および,その変遷の意味を検討した。あわせて,社会変動へとつながる実践活動のあり方についても考察を行った。
著者
水野豊 編
出版者
水野豊
巻号頁・発行日
1889
著者
村上 謙
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.17-32, 2006-10-01

本稿では近世前期上方で生じた状態性を有する尊敬語表現「テ+指定辞」(ex.聞いてじゃ)の成立過程について論じる。これについてはこれまで、省略説、体言化説、状態化説、「ての事だ」の関与説、の四説が論じられているがいずれも採るべきではなく、本稿ではこれらに代わるものとして、「テゴザルからの変化」説を提出する。この説は、状態性を有する尊敬語表現形式テゴザルのゴザル部分をジャなどで代用することで新形態「テ+指定辞」が出現したと考えるものである。このように考えれば、「テ+指定辞」が敬意を有する語を含まない尊敬語表現であった事、近世前期に生じた事、状態性表現であった事を有機的に関連づけて説明できる。
著者
原田 春美 小西 美智子 寺岡 佐和 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.168-181, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

本研究の目的は,支援という枠組みにおける支援者と被支援者との相互作用において専門職支援者が用いた人間関係形成の方法と,その関係形成のプロセスを明らかにすること,さらに,それらを踏まえて,地域の支援の仕組みの望ましい形を提示することである。対象とした支援場面は地域の仕組みづくりであり,そこでの専門職支援者は保健師,被支援者は地域住民とした。データ収集は,市町村に所属する保健師20名を対象として,半構成的面接法を用いて行った。分析は,面接内容の逐語録をデータとし,Modified Grounded Theory Approachを用いて質的・帰納的に行った。分析の結果抽出された37の概念から,【関係づくり前】【内向きの関係づくり】【外向きの関係づくり】【関係の維持と新たな関係開発】【形成された関係の評価】という5つのカテゴリが生成された。ここでの相互作用は,保健師と住民,住民と住民,住民と行政組織や専門職・専門機関等の他者,保健師と他者との関係形成が図られる中で,住民や地域社会の課題を解決するための地域の仕組みを構築しようとする過程であった。また,当初は支援者である保健師が中心となって行っていたことも,関係が形成される中で住民中心へと変化する等,住民をエンパワメントする過程でもあったといえる。人間関係形成と,その形成過程の中で行われる課題解決,住民のエンパワメント,それらの経験の蓄積は,いずれも円環的に結ばれていたと考えられる。