著者
犬塚 美輪 大道 一弘 川島 一通
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.67-77, 2013

本研究では,論理的コミュニケーションの指導において,評価の指導的機能を重視し,体系的評価枠組みを提案した.さらに,評価と明示的フィードバック作成の支援システムを開発した.5人の大学教員に対する聞き取り調査と文献をもとに,6要素(分かりやすい表現,論理的な主張,批判的な検討,協調的な議論,ツールの使用,基本姿勢)から構成される評価枠組みを構築した.この評価枠組みに沿った評価の入力をもとにフィードバックを出力するシステムを開発し,その信頼性と妥当性の検討を試みた.2名の大学教員に評価システムを用いて大学生の作文(8編)を評価した.評定者間の級内相関および相関係数を算出したところ,中程度以上の相関が得られ,級内相関も「論理的な主張」以外では中程度以上の値であった.また,印象評定と評価システムを用いた評価の相関も中程度以上の値が得られた.
著者
奥田 知志
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.35, pp.21-37, 2010-10-01

2006年1月7日JR下関駅は炎に包まれた.放火による焼失だった.犯人として逮捕されたのは8日前に福岡刑務所を一人満期出所した74歳男性.彼は,これまで50年近く刑務所で過ごしてきた.裁判の度に「知的障害」を指摘されてきたにもかかわらず,最後の犯行時に至るまで療育手帳は持っていなかった.放火は,重罪である.当然ゆるされるものではない.ただ彼を断罪することだけがこの社会のなすべきことだろうか.犯行動機とされる「刑務所に帰りたかった」は,今日の社会の現実を端的に指摘している.放火を断罪することは当然である.だがそれだけでは何も解決しない.この事件は,今日の社会のあり方をそのものを問うた事件であった.「障害」を持ち,家族もなく,働くこともできず,帰る場所もない者が,「刑務所に帰りたい」と願う.社会が彼に対して「罪を犯すな」言うことは簡単である.そうならば,ではこの社会はあの日犯罪以外のどのような選択肢を彼に提示できたであろうか.事件に関わった者として,また,ホームレス支援に関わった者としてこの事件の記録とこの事件が社会に与えた意味,そして何よりも今後の社会のあり方について考察する.
著者
北﨑 勇帆
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.1-17, 2016-10-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
27

本稿では, 動詞「あり」「す(る)」の命令形を用いて逆接仮定的な構文を作る複合助詞「であれ」「にせよ」「にしろ」について, その形態の歴史的変遷を調査した。「であれ」相当形式は中古に「用言連用形+もあれ」「体言+にもあれ」として発生し, 中世以降, 体言が前接する場合に限って「にてもあれ」「でもあれ」へと姿を変える。「にせよ」「にしろ」相当形式は中世頃に「動詞連用形+もせよ」として発生し, 近世に「にもせよ」「にもしろ」が現れると, 次第に「であれ」相当形式の使用数を上回る。この移行の要因として, 動作についての逆接仮定を示すために補助動詞「す」が採用されたこと, 体言・用言のいずれに対しても同形態で接続できる「にもせよ」「にもしろ」に利便性があったことを論じた。
著者
杉山文野 [著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2009
著者
アンダソヴァ マラル
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.71-81, 2014-03-25

本稿は、古事記および日本書紀における崇神天皇の段を取り上げ、オホモノヌシの登場をふくめ、両書におけるシャーマニズムの考察を試みるものである。古事記ではヤマトは異界として位置付けることができ、その中で崇神天皇によるオホモノヌシの祭祀が描かれる。それに対して、日本書紀では中国を意識した天皇像が描かれつつも、天皇が神々の祭祀を自ら行っていくというシャーマニズムの在り方がうかがえるのである。
著者
三橋 順子
出版者
講談社
雑誌
(ISSN:03850366)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.41-43, 2008-10
著者
市村 太郎
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-16, 2014-04-01

「ほんに」は、中世〜近世初頭では、名詞・形容動詞の延長上で述語動詞に前接して連用修飾していたが、近世前期には文意や事柄に対する実感的・発見的強調を表す副詞に転じた用例がみられ、談話標識のような機能を持つに至り、名詞・形容動詞的用法と共に多様な形式で用いられた。その後も副詞として近世を通じて幅広く用いられたが、近世後期には次第に抽象化・固定化が進み、近代初期に衰退傾向に転じた。その一方で、特に江戸語・東京語においては近世末から近代初期にかけて「ほんに」に代わり「ほんとうに」の使用・用法が拡大し、「ほんに」は衰退した。その背景には、〔述語用法の喪失→連用修飾と連体修飾との併存→それぞれの固定化・抽象化→一部を残して衰退傾向〕という「ほん」全体での変遷過程があり、単に副詞としてのみの衰退ではなかった。「ほんとう」類はそれに連動し、名詞・形容動詞用法から徐々に、「ほんに」が辿ったのと同じような過程で拡大したと考えられる。
著者
平井 新
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.159(1)-177(19), 1961-03

論説
著者
小林 盾 能智 千恵子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.70-83, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
19

この論文は,人びとが婚活(結婚のための活動)をするとき,どのような要因が結婚を促進したり阻害したりするのかを検討する.これまで,婚活について事例分析は豊富にあるが,計量分析がなかった.そこで,愛媛県の事業であるえひめ結婚支援センターを対象として,約4年間における登録者全員4,779人の推移をデータとした.結婚による退会のハザード率を従属変数としたイベント・ヒストリー分析をおこなった.その結果,(1)男性では,教育・正規雇用・収入という社会経済的地位が高いほど,結婚のチャンスが上昇した.女性では,これら社会経済的地位の効果がなかった.(2)年齢が若いほど,また結婚経験があるほど,男女ともに結婚チャンスが上昇した.(3)他に男性では,身長が高いほど結婚チャンスが上昇した.したがって,男性では働き方を中心とした地位(いわばスペック)が,女性では年齢が,結婚のおもな規定要因となっていた.実践的には,男女とも婚活をすこしでもはやくスタートさせることが重要であろう.
著者
堀江 薫
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.93-107, 2005-07

本稿は、言語類型論の観点から、日本語と韓国語の文法化の対照を行う。具体的には「名詞の文法化」「アスペクトの文法化」「活用形の文法化」という三つのケーススタディを通じて、両言語の文法化に見られる共通性と相違点を明らかにすることを目的とする。両言語の文法構造の類似性を反映して、文法化に関しても表面的には多くの共通性が認められる反面、詳細に観察すると、両言語の間には、文法化パターンの生産性(拡張の度合い)や具体的な文法化の経路の詳細に関して興味深い相違点が観察された。今後は、適時的観点はもとより、談話に繰り返し現れる言語形式、構文が次第に固定化し、一定の文法的意味を表すようになる動的・共時的現象としての文法化の側面にも着目し、両言語の文法化の対照研究が生産的に行われることが期待される。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.291, pp.35-37, 2008-12

山形県を中心に事業展開する食品スーパーのヤマザワは、競合する大規模ショッピングセンターの増加などにより経営環境の厳しさが増すなか、社員の働き方を見直して利益を維持し、2005年には東証一部上場を果たした。 同社の山澤進会長は、社員のコスト意識を高めようと「改善、改革としつこいほど繰り返し、コストダウンを実現することこそ大きな進歩と、社員に訴えている」 …
著者
鈴木 晃志郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

1990年代に飛躍的な進歩を遂げたICT(情報通信技術)は、誰もがウェブ上で情報交換できる時代をもたらした。いまや紙地図は急速にウェブや携帯端末上で閲覧できる電子地図へと主役の座を明け渡しつつある。二者の決定的な違いは、地理情報を介した情報伝達が双方向性をもつことである。Google Mapなどの電子地図とLINEやFacebookなどのコミュニケーションツールの連携で、利用者はタグや文章、写真を貼り付けてオリジナルの主題図を作成でき、不特定多数に公開できるようになった。また、OpenStreetmapなどに代表される参加型GISの領域では、官公庁や製図家に限られていた地理情報基盤整備の局面における、一般人の参画を可能にしつつある。<br> しかし、こうしためざましい技術革新に比して、利用者側に要求されるモラルや責任、リテラシーについての議論は大きく立ち後れている。阪神大震災の教訓を踏まえ、電子地理情報の基盤整備に尽力してきた地理学者たちは、2007年に制定された「地理空間情報活用推進基本法」に貢献を果たすなど、電子国土の実現に深くコミットしてきた。電子地理情報の利活用におけるユビキタス化は、その直接・間接的な帰結でもある。ゆえに、ユビキタス・マッピング社会の実現は、地理学者により厳しくその利活用をめぐるリスクや課題も含めて省察することを求めているといっても過言ではない。本発表はこうした現状認識の下、地理学者がこの問題に関わっていく必要性を大きく以下の3点から検討したい。<br><br>(1)地図の電子化とICTの革新がもたらした地理情報利用上の課題を、地理学者たちはどう議論し、そこからどのような論点が示されてきたのかを概観する。この問題を論じてきた地理学者は、そのほとんどが地図の電子化がもたらす問題を「プライバシーの漏洩」と「サーベイランス社会の強化」に見ており、監視・漏洩する主体を、地理情報へのアクセス権をコントロールすることのできる政府や企業などの一握りの権力者に想定している。本発表ではまず、その概念整理を行う。<br><br>(2)地理学における既往の研究では、地理情報へのアクセスや掲載/不掲載の選択権を、一握りの権力(企業や行政、専門家)が独占的にコントロールできることを主に問題としてきた。しかし、逆にいえば、権力構造が集約的であるがゆえに、それら主体の発信した情報に対する社会的・道義的責任の所在も比較的はっきりしており、そのことが管理主体のリテラシーを高める動機ともなり得た。これに対し、ユビキタス・マッピング社会の到来は (A)個人情報保護に関する利用者の知識や関心が一様ではない、(B)匿名かつ不特定多数の、(C)ごく普通の一般人が情報を公開する権力を持つことを意味する。それでいて、情報開示に至るプロセスには、情報提供を求めてプラットフォームを提供する人間と、求めに応じて情報提供する人間が介在し、一個人による誹謗中傷とも趣を異にした水平的な組織性も併せ持っている。ユビキタス・マッピング社会は、そんな彼らによって生み出される時にデマや風聞、悪意を含んだ情報を、インターネットを介してカジュアルに、広く拡散する権力をも「いつでも・どこでも・だれでも」持てるものへと変えてはいないだろうか。本発表では、ある不動産業者が同業他社あるいは個人の事故物件情報を開示しているサイトと、八王子に住む中学生によってアップロードされた動画に反感を抱いた視聴者たちが、アップロード主の個人情報を暴くべく開設した情報共有サイトの例を紹介して、さらに踏み込んだ検討の必要性を示す。<br><br>(3)地理情報をめぐるモラルや責任の問題は、端的には情報倫理の問題である。本発表で示した問題意識のうち、特にプライバシーをめぐる問題は、コンピュータの性能が飛躍的に向上した1980年代以降に出現した情報倫理(Information ethics)の領域で多く議論されてきた。本発表では、これら情報倫理の知見からいくつかを参照しながら(2)で示された論点を整理し、特に地理教育的な側面から、学際的な連携と地理学からの貢献可能性を探ることを試みる。<br>