著者
Takaaki Ishikawa Takahiro Shinozaki Kazutaka Shimoda
出版者
日本臨床精神神経薬理学会
雑誌
Clinical Neuropsychopharmacology and Therapeutics (ISSN:18848826)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.18-22, 2014-07-15 (Released:2014-07-15)
参考文献数
11

The patient was a 67-year-old man. After the patient received a diagnosis of schizophrenia, various antipsychotics were prescribed but did not improve symptoms. However, 18 mg/day aripiprazole (APZ) was found to be highly effective and enabled the patient to continue treatment on an outpatient basis. Two weeks after prescribing clarithromycin for fever and cough, he was readmitted to our psychiatric ward because of anuresis and deterioration of bradykinesia and salivation. Biochemical analysis revealed elevated serum creatine phosphokinase (26060 U/I) and creatinine (2.2 mg/dL). On admission, the patient had a high blood concentration of APZ and its metabolite(s). APZ was therefore discontinued, but the concentration remained elevated until day 8. Hemodialysis was started on day 4 to treat persistent renal dysfunction. The patient's CYP2D6 genotype was CYP2D6*10/CYP2D6*10. The elevated APZ levels may have resulted from the inhibitory action of clarithromycin on CYP3A4 combined with the lower inherent CYP2D6 enzymatic activity of the CYP2D6*10/CYP2D6*10 genotype.
著者
山川 優樹 柴田 俊文 中井 健太郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.819-825, 2013-02-01 (Released:2013-02-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

土木学会応用力学委員会では,学術団体による社会貢献の取り組みとして,ウィキペディアを通じて土木工学や応用力学に関する専門知識・情報を体系的に社会に発信・還元することを目的に「応用力学ウィキペディアプロジェクト」を進めている。本稿ではこの「応用力学ウィキペディアプロジェクト」の活動を紹介する。また,学術団体による活動である当プロジェクトが情報発信のプラットフォームとしてウィキペディアを用いることの意義,利点,課題についても議論する。
著者
田中 文憲
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
vol.38号, pp.1-22, 2010-03

リーマン・ショック後のアメリカの金融界は混乱が続いている。繁栄を極めた投資銀行の権威は地に落ち、人々は今「銀行業とは何か」という根源的な問を発するに至っている。本稿は20世紀の初めに「ピープルズ・バンク」を掲げて銀行を起こし、わずか40年で世界一の銀行を作り上げたA.P.ジアニーニの発想と行動を分析することでこの問に答えようとするものである。A.P.ジアニーニはイタリア系移民の子として生まれ、早くから農産物の仲買いで成功し、やがて銀行業に転じた。彼は庶民を相手に小口の預金と貸出しを皮切りに業容を拡大していった。やがて彼は全米への業務展開という野望を抱き、その目標に向かって邁進するが、その時拡大の手段になったのが「ブランチ・バンキング」である。しかし、「ブランチ・バンキング」に対しては、ライバルの銀行はもちろん、バンク・オブ・アメリカの巨大化・独占化を恐れた銀行監督当局も強く反発した。A.P.ジアニーニは、こうした抵抗を「政治」の力を使いながら切り抜け、第二次世界大戦が終わった時点でバンク・オブ・アメリカを世界一の銀行にした。A.P.ジアニーニの成功は彼自身の才能のなせる業であることは間違いないが、同時に彼を取り巻く環境、つまりカリフォルニアの大発展も見逃せない要因である。彼は状況の変化を先見性をもって適確に判断し、革新的な手法(たとえば割賦方式による消費者ローン)の開発や新分野(たとえば映画産業)への参入を積極果敢に行った。1990年代以降の規則緩和の流れの中でネイションズバンクとの合併によって巨大化し、さらに総合化したバンク・オブ・アメリカは、しかし、さまざまな問題を抱えるに至った。今、バンク・オブ・アメリカおよびその他の銀行に必要なことは「預金と貸出しこそ銀行業の基本である」との理念、つまりピープルズ・バンクの精神を取り戻すことである。
著者
石田 仁
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.275-279, 2013-10-01 (Released:2013-11-13)
参考文献数
18

岐阜県大垣市において林業体験に参加していた小学1年生の女児が, 頭部にスギの落枝 (長さ3.5 m , 重さ5.4 kg) の直撃を受け死亡した。事故原因となった落枝は, こぶ病に罹患した生枝で, 最大瞬間風速約10 m/sの強風下, スギ大径木の地上高23 mの位置で折損したものであった。事故が発生した林分はスギとヒノキの混交する島状の人工林で, スギの大径木 (胸高直径 40 cm以上) の68%がこぶ病に罹患していた。同林分の林床では長さ1.5 mを超える大型の落枝が207本/ha記録された。すべての大型落枝はスギ大径木の5 m以内に落ちており, こぶ病に罹患した大径木の付近に集中分布していた。強風下, スギ大径木の直下では高い地点から大型の枝が折れ, 折損部を下方に向けて落下する可能性があるため非常に危険である。林冠木がこぶ病に罹患している場合, 林床に大型の落枝が多く認められる場合は, さらに警戒が必要といえた。
著者
兼城 糸絵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.88, 2013 (Released:2013-05-27)

本発表では、東日本大震災における津波によって被災した地域社会が復興へと歩みをすすめる過程においてアニメ聖地巡礼者たちが果たしてきた役割について具体的事例とともに考察していく。地縁血縁的枠組みに基づくローカルな組織でも災害復興を目指すアドホックな組織でもない、趣味に基づいて形成された組織が災害復興において重要な役割のひとつを担っていることを震災前後のコンテクストに基づいて明らかにする。
著者
山田 奨治
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.19, pp.15-34, 1999-06-30

オイゲン・ヘリゲル著『弓と禅』は、日本文化論として広く読まれている。この論文では、ヘリゲルのテクストやその周辺資料を読み直し、再構成することによって、『弓と禅』の神話が創出されていった過程を整理した。はじめに弓術略史を示し、ヘリゲルが弓術を習った時点の弓術史上の位置づけを行った。ついでヘリゲルの師であった阿波研造の生涯を要約した。ヘリゲルが入門したのは、阿波が自身の神秘体験をもとに特異な思想を形成し始めた時期であった。阿波自身は禅の経験がなく、無条件に禅を肯定していたわけでもなかった。一方ヘリゲルは禅的なものを求めて来日し、禅の予備門として弓術を選んだ。続いて『弓と禅』の中で中心的かつ神秘的な二つのエピソードを選んで批判的検討を加えた。そこで明らかになったことは、阿波―ヘリゲル間の言語障壁の問題であった。『弓と禅』で語られている神秘的で難解なエピソードは、通訳が不在の時に起きているか、通訳の意図的な意訳を通してヘリゲルに理解されたものであったことが、通訳の証言などから裏付けられた。単なる偶然によって生じた事象や、通訳の過程で生じた意味のずれに、禅的なものを求めたいというヘリゲル個人の意志が働いたことにより、『弓と禅』の神話が生まれた。ヘリゲルとナチズムの関係、阿波―ヘリゲルの弓術思想が伝統的なものと錯覚されて、日本に逆輸入、伝播されていった過程を明らかにすることが今後の研究課題である。
著者
Eiichi Tohyama
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.184-191, 1996 (Released:2007-11-30)
参考文献数
46
被引用文献数
13 16

The Okinawa Islands located in the southern-most part of Japan were under U.S.administration from 1945 to 1972. During that time, fluoride was added to the drinking water supplies in most regions. The relationship between fluoride concentration in drinking water and uterine cancer mortality rate was studied in 20 municipalities of Okinawa and the data were analyzed using correlation and multivariate statistics. The main findings were as follows.(1) A significant positive correlation was found between fluoride concentration in drinking water and uterine cancer mortality in 20 municipalities (r=0.626, p<0.005).(2) Even after adjusting for the potential confounding variables, such as tap water diffusion rate, primary industry population ratio, income gap, stillbirth rate, divorce rate, this association was considerably significant.(3) Furthermore, the time trends in the uterine cancer mortality rate appear to be related to changes in water fluoridation practices. J Epidemiol, 1996 ; 6 : 184-191.

11 0 0 0 OA 聾唖年鑑

著者
聾唖月報社 編
出版者
聾唖月報社
巻号頁・発行日
vol.第1回(昭和10年版), 1935
著者
盛山 和夫
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-108, 2006-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1

一昨年のアメリカ社会学会会長ビュラウォイの講演以来, 「公共社会学」に対して熱心な議論が交わされている.これは現在の社会学が直面している困難な状況を「公衆に向かって発信する」という戦略で克服しようとするものだが, この戦略は間違っている.なぜなら, 今日の社会学の問題は公衆への発信がないことではなくて, 発信すべき理論的知識を生産していないことにあるからである.ビュラウォイ流の「公共社会学」の概念には, なぜ理論創造が停滞しているのかの分析が欠けており, その理由, すなわち社会的世界は意味秩序からなっており, そこでは古典的で経験的な意味での「真理」は学問にとっての共通の価値として不十分だということが理解されていない.意味世界の探究は「解釈」であるが, これには従来から, その客観的妥当性の問題がつきまとってきた.本稿は, 「よりよい」解釈とは「よりよい」意味秩序の提示であり, それは対象世界との公共的な価値を持ったコミュニケーションであって, そうした営為こそが「公共社会学」の名にふさわしいと考える.この公共社会学は, 単に経験的にとどまらず規範的に志向しており, 新しい意味秩序の理論的な構築をめざす専門的な社会学である.
著者
嶋田 晋
出版者
東海地区大学図書館協議会
雑誌
東海地区大学図書館協議会誌 (ISSN:02872102)
巻号頁・発行日
no.55, pp.25-32, 2010-12

筑波大学附属図書館では、平成18(2006)年4月より「キャラクター」を導入している。ガマ(カエル)をモチーフにした「がまじゃんぱー」とチューリップ(花)をモチーフにした「ちゅーりっぷさん」である。筑波大学附属図書館ではこれらのキャラクターを活用することで、利用者からの注目を集めやすくなり、同時に職員の広報意識を高めることができた1)2)。また、図書館界隈で著名なブロガーがこのキャラクターに注目しブログで取り上げた3)ことにより、筑波大学附属図書館外での知名度も高まり、がまじゃんぱーとちゅーりっぷさんは名実ともに筑波大学附属図書館の「顔」となることができた。本稿では、キャラクター誕生の経緯や作成にあたって苦心した点、キャラクターの評判や今後の展開、また実際の活用例について解説する。
著者
藤本真樹
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.291-299, 2014-10-15

IaaSという単語の普及が示す通り,インターネットサービスを支えるインフラストラクチャは,従来のラック,物理サーバを提供する形から,仮想化されたインスタンスをサービスとして提供されることが一般的になりつつある.一方で,2014年現在,IaaSにも課題はある状況であり,かつ,既存のオンプレミスなインスタンスを多数運用している環境では,単純にIaaSを利用すればよいわけではなく,それぞれの利点,課題を把握した上で,既存のインフラストラクチャを変化させていく必要がある.本論文では,GREEという実際に稼働しているサービスにおける,オンプレミスな環境をどのようにサービスとしてのインフラストラクチャへと変化させていくか,という事例を紹介する.
著者
立花 章 小林 純也 田内 広
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.228-235, 2012-04-25
参考文献数
30
被引用文献数
1

トリチウムの生物影響を検討するために,細胞を用いて種々の指標について生物学的効果比(RBE)の研究が行われており,RBE値はおよそ2であると推定される.だが,これまでの研究は,高線量・高線量率の照射によるものであった.しかし,一般公衆の被ばくは低線量・低線量率である上,低線量放射線には特有の生物影響があることが明らかになってきた.したがって,今後低線量・低線量率でのトリチウム生物影響の研究が重要であり,そのための課題も併せて議論する.
著者
馬田 敏幸 笹谷 めぐみ 立花 章
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.190-197, 2012-03-25
参考文献数
34
被引用文献数
1

放射線の個体への影響について,人の疫学調査で得られた知見を一般的な観点から述べ,マウス個体を使ったトリチウム水による高線量・高線量率の研究により,何がわかっているのか明確にする.そして低線量・低線量率の放射線披ばくによる生物影響を感知する実験系をトリチウム生体影響研究に応用した研究や,必要とされている新しい高感度検出系の開発について概説する.