著者
中野 毅
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.111-142, 2010-06-05 (Released:2017-07-18)

民衆宗教とは社会的文化的政治的マイノリティーとしての「特徴」と「自己認識」を有している宗教運動であり、その研究方法には指導層と一般信者との階層差や格差、内部の非対称な支配関係などを捉えうる独自の方法が必要である。一試論として創価学会の運動を民衆宗教という視点から、社会層と国家との関連に限定して考察した。農村部から流入した都市下層民に、現世での新たな存在意義を確信させるアイデンティティー再確立過程に創価学会運動の民衆性を読み取ったが、社会層が上昇あるいは拡散していく中で、人生の勝利者・成功者という意識が強調されてマイノリティー意識が希薄化し、民衆宗教としての特徴を失っていった。この変化が決定的になったのは公明党が自民党との連立政権に参加した時期である。主たる支持者である創価学会員と党の理念的距離が大きく乖離し、支援運動の空転を招いた。両者の関係の再検証、再検討が必要な段階に至ったと言えよう。
著者
堤 智昭 鍋師 裕美 五十嵐 敦子 蜂須賀 暁子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-13, 2013-02-25 (Released:2013-03-08)
参考文献数
5
被引用文献数
5 9

東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により,食品が放射性セシウムをはじめとする人工放射性物質に汚染される事態が生じている.そこで,食品中の放射性物質による健康影響を評価するために,東京都,宮城県,および福島県でマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料を作製し,セシウム-134およびセシウム-137(放射性セシウム)および,天然放射性核種であるカリウム-40(放射性カリウム)濃度を測定し,1年当たりの預託実効線量を推定した.放射性セシウムの預託実効線量は,検出限界以下の濃度をゼロ(検出下限の1/2)とした場合,東京都が0.0021(0.0024)mSv/year,宮城県が0.017(0.018)mSv/year,および福島県が0.019(0.019)mSv/yearであった.宮城県および福島県の値は東京都の8倍以上であったが,いずれも厚生労働省より示された許容線量1 mSv/yearを大きく下回っていた.一方,放射性カリウムの預託実効線量は,0.17~0.20(0.18~0.20)mSv/yearであり,地域間で大きな差は見られなかった.
著者
田中 喜代次 中田 由夫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.209-212, 2017-06-01 (Released:2017-05-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Most people who go to fitness clubs or sports gyms for weight control, and many co-medicals and physicians believe that an increase in muscle mass and/or basal metabolic rate (BMR) is possible through a combination of regular exercise and optimal protein intake during weight loss. This seems a myth, and the reasons are discussed in this article. First, muscle mass is quite difficult to quantify. The limitations of body composition measurement should be well understood. Second, increasing muscle mass during weight loss is difficult. This might be attained through strict implementation of a protein-rich, low-carbohydrate diet; high-intensity resistance training; and aerobic exercise for a long duration. However, such a strict regimen is not feasible for most people. Finally, a 1-kg increase in muscle mass corresponds to an increase of only 13 kcal of BMR per day. Thus, an increase in muscle mass of 1 kg is difficult to achieve, while the gained BMR is approximately equivalent to a decrease of 13.5 kcal of BMR according to a 3-kg decrease of adipose tissue. Weight loss, unless through an extremely sophisticated weight control program, contributes to a decrease in BMR. However, it is an accomplished fact that women with significantly less muscle mass and lower BMR live longer than men with more muscle mass and higher BMR, regardless of ethnicity. Maintaining activities of daily living and daily activity function might be more essential.
著者
吉岡 郁夫 Yoshioka Ikuo
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 : for Asian folklore studies
巻号頁・発行日
no.19, pp.135-140, 2003-11-30

中国には古来、女性の足を人工的に小さくする纏足の習俗があったことは、日本でもよく知られている。この習俗は漢民族の間に広く根強く定着し、近年になってようやく頽れた。一般には、この習俗が中国以外で行なわれたことがないという理由で、世界的に特異なものとみる傾向がある。・・・
著者
戸澤 あきつ 恒光 裕 岡本 清虎 谷口 隆秀 八代 純子 本多 英一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-4, 2004 (Released:2007-11-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

抗菌および抗ウイルス活性を持つことが知られているポビドンヨードを主成分とする各市販製剤(イソジン液、イソジンガーグル)を動物コロナウイルス(豚伝染性胃腸炎ウイルス:TGEV、猫伝染性腹膜炎ウイルス:FIPV、牛コロナウイルス:BCoV)にin vitroで作用させたところ、常用濃度で強い抗ウイルス活性を示した。このことは本製剤による手洗い、うがいがウイルス感染防御に役立つことを示唆している。
著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.