著者
塚本 浩司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.291-296, 2007
参考文献数
8

マグカップでインスタントコーヒーを溶かしてかき混ぜるときに,ティースプーンとマグカップがぶつかり,音が生じる。この音は,インスタントコーヒーが完全に溶解するまでの間,音程が「くぐもった低い音」から徐々に甲高い音に変化する。周波数特性を行ってこの現象の原因を解明し,その過程を教材化した。この教材は,音波・音響や振動に入門する教材にもなりうるが,それ以上に,科学研究の手法を学び,物理学を身近に感じるために最適の教材となりうる。
著者
Hiroaki Kawano Tetsufumi Motokawa Hirokazu Kurohama Shinji Okano Ryohei Akashi Tsuyoshi Yonekura Satoshi Ikeda Koichi Izumikawa Koji Maemura
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.9800-22, (Released:2022-05-31)
参考文献数
26
被引用文献数
5

A 60-year-old Japanese woman was hospitalized for cardiogenic shock 24 days after receiving the second dose of the COVID-19 BNT162b2 vaccine. Impella-CP left ventricular assist device implantation and venoarterial peripheral extracorporeal membranous oxygenation were immediately initiated along with inotropic support and steroid pulse therapy, as an endomyocardial biopsy specimen showed myocarditis. Three weeks later, her cardiac function had recovered, and she was discharged. An immune response associated with the presence of spike protein in cardiac myocytes may be related to myocarditis in the present case because of positive immunostaining for severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 spike protein and C4d in the myocardium.
著者
向田 昌志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人工ピン材料を超電導膜に入れ、磁場中超電導特性を向上させた膜のTcを人工ピンのない膜と同等のTcまで戻すため、さらに物質本来の「強い超電導特性」が発現し、対破壊電流密度の25%以上という高いJcを実現するため、人工ピンの成長機構解明として、微傾斜基板を用い、1次元人工ピンの曲がりを調べた。その結果、ある角度以上で、人工ピンは超電導膜のステップフロー方向に成長し、超電導膜の一番弱いc-軸方向の磁場中臨界電流密度を高める効果が無くなることが分かった。また、テープ線材に不可欠なプロセスの低温化、高速化も行った。さらに、鉄系超電導膜の上部臨界磁場を詳しく調べる研究も行った。
著者
Ryugo S. HAYANO Masaharu TSUBOKURA Makoto MIYAZAKI Akihiko OZAKI Yuki SHIMADA Toshiyuki KAMBE Tsuyoshi NEMOTO Tomoyoshi OIKAWA Yukio KANAZAWA Masahiko NIHEI Yu SAKUMA Hiroaki SHIMMURA Junichi AKIYAMA Michio TOKIWA
出版者
The Japan Academy
雑誌
Proceedings of the Japan Academy, Series B (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.440-446, 2015-10-09 (Released:2015-10-09)
参考文献数
14
被引用文献数
18 28

BABYSCAN, a whole-body counter (WBC) for small children was developed in 2013, and units have been installed at three hospitals in Fukushima Prefecture. Between December, 2013 and March, 2015, 2707 children between the ages of 0 and 11 have been scanned, and none had detectable levels of radioactive cesium. The minimum detectable activities (MDAs) for 137Cs were ≤3.5 Bq kg−1 for ages 0–1, decreasing to ≤2 Bq kg−1 for ages 10–11. Including the 134Cs contribution, these translate to a maximum committed effective dose of ∼16 µSv y−1 even for newborn babies, and therefore the internal exposure risks can be considered negligibly small.Analysis of the questionnaire filled out by the parents of the scanned children regarding their families’ food and water consumption revealed that the majority of children residing in the town of Miharu regularly consume local or home-grown rice and vegetables, while in Minamisoma, a majority avoid tap water and produce from Fukushima. The data show, however, no correlation between consumption of locally produced food and water and the children’s body burdens.
著者
山崎 秀人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.391-395, 2012-11-05 (Released:2017-06-23)
参考文献数
6

はやぶさプロジェクトは宇宙航空研究開発機構(以下:JAXA)の探査プロジェクトであり,2010年6月13日,はやぶさのカプセルは,豪州南オーストラリア州ウーメラ管理区域(Woomera Prohibited Area:WPA)へ成功裏に帰還した.その後,6月17日,豪州空軍のウーメラ空港から母国である日本へ7年ぶりに帰国を果たした.日本から打上げ,外国へカプセルを着陸させ,回収し,母国へ持ち帰ったプロジェクトは世界初であり,一連の作業には現行の諸制度と調和した上での交渉を要求された.特に豪州は,はやぶさ打上げ後にカプセル帰還に関する国内法を整備した一方,サンプルリターンプロジェクトを初めて体験する我が国は,(当然であるが)現行の法令や諸制度がこのようなプロジェクトを想定していないため,調整に時間を要した.本稿では,はやぶさでの経験をまとめて解説するものである.
著者
杉森 健 三武 裕玄 佐藤 裕仁 小栗 賢章 長谷川 晶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1697-1707, 2020-11-15

VRメタバースやVTuberなどのように,モーションキャプチャデバイスを用いてリアルタイムにアバターを操作する機会が増えるにつれて,アバター同士接触することでコミュニケーションをとったり,アバターと物体が衝突する機会が増えている.しかし,現状ではアバター同士やアバターと物体が接触しても貫通してしまうか,不自然な動作になってしまう.そこで本研究では物理シミュレーションを用いて自然な接触動作を自動生成する.その際に問題となる追従遅れをフィードフォワード制御により解決する.提案手法により,これまでできなかったアバター同士やアバターと物体の自然な接触が可能であることを示す.さらに,提案手法ではこれまで一般的であった接触している振りの演技が不要になることで,演者の負担が軽減されることを示す.
著者
外川 拓 磯田 友里子 鈴木 凌 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.27-38, 2023-01-10 (Released:2023-01-10)
参考文献数
33

人は,自身の名前に含まれた文字を,含まれていない文字に比べて好ましく評価する。この傾向はネームレター効果と呼ばれ,ブランド選択をはじめとする様々な意思決定にも影響を及ぼす。例えば,先行研究によると,Lで始まる名前の消費者(例えば,Lundy)は,他の文字で始まる名前の消費者(例えば,Thomas)に比べ,名前の頭文字が一致するLexusを購入する傾向がある。本研究では,ブランド・ネームが漢字で表記されている場合,ネームレター効果がどのように生じるのかについて検討した。先行研究によると,漢字は聴覚情報ではなく,視覚情報として処理される。この言語的性質を踏まえ,漢字のネームレター効果は,ブランド・ネームと顧客の姓における表記(vs. 読み)の一致によって生じると予測した。総合胃腸薬の購買データを分析した結果,表記と読みが太田胃散と一致する太田姓の消費者は,読みのみが一致する姓(例えば,大田姓や多田姓)の消費者や,読みも表記も一致しない姓の消費者に比べて,太田胃散を購入する確率が高かった。本研究の結果は,ブランド・ネームに関する重要な理論的,および実務的示唆を提供している。
著者
中山 千尋 岩佐 一 森山 信彰 高橋 秀人 安村 誠司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.753-764, 2021-11-15 (Released:2021-12-04)
参考文献数
18

目的 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年経った現在でも,「放射線の影響が子どもや孫など次の世代に遺伝するのではないか」という「次世代影響不安」が根強く残っている。マスメディア報道やインターネットによる情報等が,この不安に影響していると考え,その関連を明らかにして,今後の施策に繋げることを目的とした。方法 2016年8月に,20~79歳の福島県民2,000人を対象に,無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。福島県の会津地方,中通り地方,浜通り地方,避難地域から500人ずつ無作為抽出し,原発に近い沿岸部の浜通りと避難地域のデータを分析対象とした。目的変数は「次世代影響不安」で,その程度を4件法で尋ねた。説明変数は,放射線について信用する情報源と,利用するメディアを尋ねた。この他に属性,健康状態,放射線の知識等を尋ねた。2つの地域を合わせた全体データで,「次世代影響不安」と質問項目との間で単変量解析を行った。次に「次世代影響不安」を目的変数,単変量解析で有意差があった項目を説明変数として重回帰分析を行った。さらに,このモデルに項目「避難地域」と,「避難地域」と全説明変数との交互作用項を加えて,重回帰分析を行った。結果 有効回答は浜通り201人(40.2%),避難地域192人(38.4%)であった。重回帰分析の結果,次世代影響について,2つの地域全体では,政府省庁を信用する人,健康状態がよい人,遺伝的影響の質問に正答した人の不安が有意に低かった。また,がんの死亡確率の問題に正答した人は,不安が有意に高かった。さらに浜通りを基準にして交互作用項を投入したモデルでは,浜通り地方で,全国民放テレビを利用する人の不安が有意に高く,遺伝的影響の質問に正答した人の不安は有意に低かった。避難地域を基準にしてこのモデルを分析すると,避難地域は全体と同じ結果であった。結論 二つの地域で,情報源とメディアが次世代影響に有意に関連していた。報道者が自らセンセーショナリズムに走らないような意識が必要である。受け手は正しい情報を発信している情報源やメディアの選択が必要であり,メディアリテラシー教育の必要性が示唆された。また,健康状態の向上は,不安を下げる方策であることが示唆された。一方がんの死亡確率の知識は,伝え方に誤解を招かないような工夫を要することが示唆された。さらに,遺伝的影響の知識の普及は不安を下げる方策であることが示唆された。
著者
Ryugo S. HAYANO Masaharu TSUBOKURA Makoto MIYAZAKI Hideo SATOU Katsumi SATO Shin MASAKI Yu SAKUMA
出版者
The Japan Academy
雑誌
Proceedings of the Japan Academy, Series B (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.157-163, 2013-04-11 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
85 101

The Fukushima Dai-ichi NPP accident contaminated the soil of densely-populated regions in Fukushima Prefecture with radioactive cesium, which poses significant risks of internal and external exposure to the residents. If we apply the knowledge of post-Chernobyl accident studies, internal exposures in excess of a few mSv/y would be expected to be frequent in Fukushima.Extensive whole-body-counter surveys (n = 32,811) carried out at the Hirata Central Hospital between October, 2011 and November, 2012, however show that the internal exposure levels of residents are much lower than estimated. In particular, the first sampling-bias-free assessment of the internal exposure of children in the town of Miharu, Fukushima, shows that the 137Cs body burdens of all children (n = 1,383, ages 6–15, covering 95% of children enrolled in town-operated schools) were below the detection limit of 300 Bq/body in the fall of 2012. These results are not conclusive for the prefecture as a whole, but are consistent with results obtained from other municipalities in the prefecture, and with prefectural data.(Communicated by Toshimitsu YAMAZAKI, M.J.A.)
著者
伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.106, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 食肉を軟化させるためには、熱帯植物であるパイナップルやパパイヤ、キウイフルーツなどを利用することが知られている。これらの植物の持つプロテアーゼは比較的熱安定性が高く、調理中に食肉のタンパク質に作用するため、食肉が軟らかくなる。しかし、これらの食材は独特の香りがあり、メニューが限定される。一方、プロテアーゼ活性が高いものの中にはキノコがある。キノコは食肉とも相性の良い食材であり、食物繊維などが豊富で旨味成分も多く含まれ、健康志向の高い食品である。そこで、まず我々は、様々なキノコを用いてプロテアーゼの検索を行い、さらに高いプロテアーゼ活性を有するキノコのプロテアーゼの特徴について基礎的な検討を行った。 【方法】 キノコは市販のエノキタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、ブナシメジ、マイタケを用いた。キノコの重量の2倍量の水を加え、ホモジェネート後、ろ過して得られた抽出液を試料とした。この抽出液のカゼイン分解活性及び牛肉抽出液分解活性を調べた。これらの中より分解活性の高かったものを選び、最適温度、最適pH、熱安定性などを検討した。さらにプロテアーゼの性質を調べるため、部分精製を試みた。 【結果および考察】 35℃でプロテアーゼ活性を測定すると、最も活性が高かったのは、ヒラタケであった。しかしながら、50-60℃ではマイタケのほうが活性が高くなった。さらに、熱安定性をみると、最も安定であったものはマイタケであり、ヒラタケのプロテアーゼ活性が70℃1時間の保温で失活するのに対し、マイタケは70℃8時間でも活性が残存していた。また、最適pHは6-7であった。このことより、マイタケは肉軟化のために有効な食材であると推察された。
著者
山下 英愛
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、北朝鮮で制作・放映されたドラマの分析を通して、北朝鮮社会のジェンダーを考察することである。日本における北朝鮮研究は、政治外交などの分野において蓄積されてきたが、人々の暮らし、家族や社会におけるジェンダー役割、さらにそれらが政治体制とどのように結びついてきたのか、などの社会文化的側面についてはあまり関心を持たれてこなかった。本研究は、このような研究の空隙を埋め、北朝鮮社会に対する理解を深めようとするものである。本研究を行うためには、北朝鮮社会に関する基礎的な知識を補充し、海外の研究動向を把握する必要がある。そこで、初年度である29年度は、1)資料及び情報の収集、2)海外における北朝鮮研究の動向把握、3)関連研究者とのコネクションづくりに注力した。1)資料収集は着実に進めている。海外で活動する北朝鮮関連の研究者たちとつながりができたことで、韓国及び米国における資料収集の方法やその場所に関する情報を得ることができた。2)海外(ソウル、ニューヨーク、ワシントンDC)及び国内で開かれた学会や研究会に参加し、北朝鮮研究の動向や内容に関する知見を深めた。海外では相当多様な北朝鮮研究が行われていることがわかった。3)関連研究者との人脈づくりを積極的に行い、研究上の問題意識や研究内容についての意見交換もすることができた。さらに、北朝鮮社会の現状に対する理解を深めるために、ワシントンDCにある北朝鮮関連の研究機関や人権団体なども訪問して情報収集を行った。