著者
Kawashima Shin
巻号頁・発行日
2005-07-04
著者
日ノ下 文彦
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.123-127, 2003-07-31
参考文献数
10
被引用文献数
1

マイコトキシンの一部は腎臓にも障害を及ぼすことが知られているが,最も有名なものがオクラトキシンである.これは,1950 年代にバルカン諸国からの報告が相次いだ腎・尿路系を侵す風土病で,65 年にWHOが正式に認定した Balkan endemic nephropathy(BEN)の原因物質と考えられている<sup>1,2)</sup>.BEN の病態は主として尿細管の変性・機能障害,間質の繊維化,糸球体の硝子化であり,やがて腎機能障害が進行して腎不全に陥るものである.しかも,BEN に陥った症例では腎盂や尿管に腫瘍が発生しやすいことも知られており,多発地域では無視できない大きな問題となっている.オクラトキシン以外ではチトリニンやルブラトキシン,フモニシン等が腎臓毒性を有するマイコトキシンとして報告されている.ヒトにおけるトリコテセンの腎毒性はまだ報告されてないものの,ニバレノール(nivalenol, 以下 NIV)やデオキシニバレノール(deoxynivalenol, 以下 DON)が腎障害を惹起することが動物実験で確認されているので,これまで得られた知見を中心に報告する.
著者
岩下 恵子 長嶋 等
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2008-07-31
参考文献数
24
被引用文献数
1

肝毒性を示すマイコトキシンのルブラトキシンB は脂肪肝を引き起こす.そこで脂肪蓄積メカニズムを解明するために,ルブラトキシンB で24 時間処理したマウス肝臓において蓄積した脂肪滴のタイプや,脂質合成系酵素であるグルコース- 6 -リン酸脱水素酵素(G6PD)と脂肪酸合成酵素の活性を調べた.オイルレッドO 染色では,ルブラトキシンB 処理したマウスから多数の小滴性の脂肪滴が観察された.脂肪酸合成のためのNADPH を供給するペントースリン酸回路において極めて重要な働きをするG6PD の活性は,ルブラトキシンB 処理によって顕著に上昇した.予想に反して,ルブラトキシンB は脂肪鎖を伸長させる脂肪酸合成酵素の活性を下げた.脂肪酸合成酵素は脂肪酸合成における律速酵素ではないので,ルブラトキシンB で処理されたマウスの活性でも脂肪蓄積には十分なのかもしれない.
著者
呉 珊 豊 碩 小嶋 道之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 = Research bulletin of Obihiro University (ISSN:13485261)
巻号頁・発行日
no.36, pp.29-36, 2015-10

日本の伝統的な保存食品である米味噌と米麦味噌を各々1 種類,及び中国味噌である甜麺醤と2種類の大豆醤について,理化学特性及び機能性成分,抗酸化活性を測定した。米味噌は,明度が最も高かったが,メラノイジン量及びDPPH ラジカル消去活性は最も低かった。米麦味噌のポリフェノール量,メラノイジン量及びDPPH ラジカル消去活性は米味噌のそれらよりも高かった。甜麺醤の明度は最も低かったが,メラノイジン量,ポリフェノール量及びDPPH ラジカル消去活性は5 種類の中で最も高かった。今回使用した5 種類の味噌に含まれるメラノイジン量とDPPHラジカル消去活性との間には正の相関関係(r = 0.853)が認められた。またポリフェノール量とDPPH ラジカル消去活性との間にも正の相関関係(r = 0.668)が認められた。ポリフェノール量がほぼ同程度である場合,メラノイジン量が高い味噌のDPPH ラジカル消去活性が高かった。これらの数値を用いた統計解析の結果は,メラノイジン及びポリフェノール類が日本味噌及び中国味噌共に共通に含まれる抗酸化活性に貢献する主成分であることを示唆している。また,明度とDPPH ラジカル消去活性との間には負の相関が認められた(r = -0.712) ことから,味噌の明度が味噌の抗酸化活性の簡易評価指標にできるかもしれない。
著者
金 鳳燮
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.629-634, 1992

中国に味噌があるか。今回全国味噌技術会の招きで, 来日した著者と話しあったところ, 日本の味噌に相当するものとして醤, 鼓が古くからあったことがわかり, それぞれが豊富なバラエティーを持っている。それに, 味噌とは定義上は異なるが, 豆腐乳という豆腐発酵食品も加えて解説していただいた。
著者
光崎 龍子 坂口 和子 光崎 研一 高木 敬彦 森 真弓 鈴木 啓子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.330-333, 1999

The appropriate picking time for dokudami (Huttuynia cordata) tea is generally considered to be at the termination of the flower-like white involucre. Therefore, we classified the growth period of dokudami into the sprouting, seed setting, and true leaf stages, analyzed the contents of inorganic components at these stages, and analyzed contents of inorganic components in the leaves and flowers in the seed setting stage. In addition, the importance of the tea picking time was evaluated by a correlation analysis and principle component analysis.<BR>Among the inorganic components of dokudam i, the content of potassium was the highest, and the contens of calcium, magnesium, iron, manganese and zinc increased with growth. The content of copper was high in the flowers after diplophase parthenogenesis.<BR>Inorganic components increased at a potassium: calciu m ratio of about 6: 1 and at a manganese: magnesium ratio of about 80: 1. The calcium: potassium ratio changed inversely to the copper content that was observed in the flowers and in the true leaf stage.<BR>A principle component analysis revealed calcium, magnesium, potassium, manganese, and copper as the principle components.<BR>These appeared to be the principle inorganic components of dokudami and to increase due to diplophase parthenogenesis. A principle component analysis a ccording to the growth stage showed that the specificity of flowers could be estimated from two-dimensional scatter diagrams. The appropriate picking time for dokudami tea is empirically considered to be at the termination of the involucre, and the analysis according to the growth stage and the analysis of the flowers and leaves confirmed this. To improve the abnormal gustatory that is sensation associated with a modern diet or with insufficient intake of inorganic components by aged persons, dokudami tea brewed from a herbal plant provides a readily drunk remedy.
著者
亀岡 弘 三宅 昭雄 平尾子 之吉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.6, pp.1157-1160, 1972

ドクダミの精油成分とその特有の臭気成分を明らかにするため,奈良県に群生するものを採集し,葉茎を水蒸気蒸留して得た精油を中性部,フェノール性部,カルボン酸部の3部にわけて,GLC,IR,NMRなどの機器分析を用いて検索した。その結果,メチルn-ノニルケトンなどの既知5成分の他に今回新たにメチルラウリルスルフィドの他26成分の存在を明らかにした。このドクダミの特有の臭気成分として,メチルn-ノニルケトン,3-ケトデカナール,メチルラウリルスルフィド,脂肪族アル潔-ルの同族体からなると考えられる。
著者
光崎,龍子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, 1999-11-20

ドクダミ茶加工の採取時期としては,一般に花のような白い総ほうが終わる頃が適していると言われている。そこで,ドクダミの成長期を「萌芽期」,「結実期」,「本葉期」と名付け,この3期と,結実期の「葉部」,「花部」の2種類の無機成分含有量を分析した。さらに,採取時期の意義を,相関分析,主成分分析法により解析を試みた。1.ドクダミの無機成分は,カリウムがもっとも多く,カルシウム,マグネシウム,鉄,マンガン,亜鉛は成長とともに増加し、銅は複相単為生殖後の花部に多い。2.カリウムとカルシウムは6:1,マンガンとマグネシウムは80:1ほどの比率で増加し,カルシウム・カリウムと銅では反比例する関係があり,花部,本葉期に認められる。3.主成分分析では第1主成分に,カルシウム,マグネシウム,カリウム,マンガンと銅が抽出され、ドクダミの無機成分を構成する主な成分と複相単為性生殖により増加する成分と考えられ,第2主成分の鉄,亜鉛は複相単為生殖に深く関与する成分と考えられる。4.成長期別の主成分分析法では,2次元布置図から花部の特異性が推測ができる。5.以上のことから,経験的にいわれているドクダミ採取時期は総ほうの終わる頃がよいとされるが、3成長期と花部、葉部に分けることにより明確にできた。ゆえに,昨今の食生活に派生する味覚異常や高齢者の無機成分摂取不足などの改善には,手軽に日常的な飲用が望ましい薬用植物と考えられる。
著者
菊地 勇次郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.487-492, 1973

塩と米酢の味しかしらなかったわが国の古代人が, 中国大陸から伝えられた豆醤と肉醤を, どのように料理に生かしたか。味つけは, 各人が食繕で行なった平安時代の習慣が, 中世のうちに調理中に味つけしてしまう仕方にかわるとともに, 醤や鼓の姿がどのようにかわって江戸から現代まで伝えられてきたか。これは, われわれの先祖が味わい, 伝えてきた醤油や味噌の物語である。
著者
岡内 辰夫 北村 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.130-133, 2019

<p>2010年,「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリングの開発」に貢献した3人(Heck,根岸,鈴木)に,ノーベル化学賞が与えられた。そのうち2人が日本人であったため,マスコミで大きく取り上げられ,クロスカップリングという言葉が広く知られるようになった。受賞者の1人である北海道大学名誉教授の鈴木 章先生らのグループが開発した反応が,鈴木-宮浦クロスカップリングである。この反応は,有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物に対して,パラジウム触媒を作用させることで炭素-炭素結合が形成するというものである。この反応は,我々の身の回りの医薬品,農薬,液晶材料,EL材料などの開発・量産化に大いに貢献している。</p>