著者
TIEDEMANN Mark
出版者
長崎外国語大学
雑誌
長崎外大論叢 = The Journal of Nagasaki University of Foreign Studies (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.22, pp.161-167, 2018

Kazuo Ishiguro's latest novel The Buried Giant contains unfamiliar and familiar elements for the Ishiguro reader. The landscape is 6th century Britain where the shadow of King Arthur remains as do mythical creatures, prompting some to classify this book as fantasy. What is familiar is Ishiguro's focus on memory. Yet, the approach toward memory here is different. In previous books, the memories explored were those that belonged to an individual who was recalling them, sorting through them, and trying to make sense of the past. In this story, the memories have been forcefully removed from the characters, so their struggle becomes one of attempting to recall any basic fact of their past, rather than interpret them. This loss of the psychological dimension to memory makes the discussion of it less interesting than previous attempts. In addition, memories have been removed from the general population in an attempt to avert violent conflict. Again, because this has been done magically, it removes any interesting parallels to efforts in conflict resolution to address collective memory in the process of reconciliation. In the end, the story is compelling and memorable, but lacks depth. カズオ・イシグロの最新長編『忘れられた巨人』には、彼の愛好家にとっては、なじみのある要素と、そうでない要素が含まれている。舞台は6世紀のイギリスで、アーサー王の影が神話の生き物のように描かれており、そのせいで、この本をファンタジーとして分類することも出来る。なじみのある点とは、記憶に焦点を当てていることだ。しかし、この作品での記憶へのアプローチの仕方はこれまでの作品とは異なる。これまでは、記憶というものは、個人に属しており、人は昔を思い出し、並べ替えて、過去を理解しようとするものであった。一方この作品では、記憶は強制的に登場人物から取り除かれているので、彼らは記憶を解釈するというよりも、過去の基本的な事実を思いだそうとするように描かれている。この記憶に対する心理的な面がないということは、この作品が、これまでの作品で試みられたことよりも劣っている評価につながるのではないだろうか。民族間の争いを回避するために、集団からも記憶が削除されている。これは魔法のように行われている。民族間の和解の過程で集団の記憶を取り除くことは、紛争解決の際に起こることである。 この作品は説得力があり、印象的な作品ではあるものの、知的な面を深める点ではこれまでの作品に劣る印象である。
著者
広田 収
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.54-63, 1982

The recitation of waka by the mononoke(possessing spirits)in the Genji Monogatari is a highly unusual phenomenon to judge from other records of the day. The poems recited by Lady Rokujo in "Aoi" and "Wakana, Part Two" are not simply compositions by the author. The first is based on magical chants or magical poems, thought to have been orally recited, and the latter resembles a poem transmitted as Komachi's Composition. In these waka it is possible to distinguish between a surface, prose-like, expository aspect and an underlying oral dimension.
著者
山内 裕
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2016

本基金を利用して滞在したコペンハーゲンビジネススクールの研究者との共同研究が進んでいる。まず、代表者のこれまでの鮨屋の研究を発展させ、教授の一人と工芸についての研究を始め、日本とヨーロッパの国際比較を行うと同時に、初期的な結果を本の1章として発表することが決まっている。またもう一人の教授とは料理のデザインに関する研究で協業しており、5月の国際会議で発表すると共に、ジャーナルに投稿すべく準備を行っている。また、これらの研究者との連携がより強化され、2017年度には2度日本に滞在し、今後も交流が計画されている。さらに共同で申請したデンマークの研究費を利用して、コペンハーゲンビジネススクールと京都大学の共同ワークショップを、6月に京都で9月にコペンハーゲンで実施した。またこの連携により、代表者の指導する博士課程の学生がコペンハーゲンビジネススクールに長期滞在し研究指導をうけるなど、その成果は着実に広がりつつある。南洋理工大学の研究者との連携も進み、2月に来日しワークショップを実施した。フランスの研究者との連携も拡大し、11月には新しい研究費を利用して、リヨン郊外のレストランでデータを収集することに成功した。このように、本基金での活動が国際共同研究のネットワークの拡大に大きく寄与している。米国滞在で進めたネットワーキングを利用し、これまで日本語で発表してきた独自の理論を、英語で発表する準備をすることができた。サービス科学の中心的なHandbookの一つのチャプターとして収録されることが決まっており、すでに最終稿を提出している。また、この研究の成果を組込む形で、従来から配信していたMOOC(大規模オープンオンライン授業)を大幅に改訂し配信している。
著者
清水功基
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.149-156, 1996
被引用文献数
3

主治医の余命判断の信頼性について一般的な傾向を把握しておくことは保険医学上重要である。本研究ではリビング・ニーズ特約における診断書提出例の生命予後を分析し,主治医の余命判断の信頼性に影響を与える因子について検討した。対象は平成6年9月より平成7年12月末までに参考意見書「はい」の診断書が提出された158件である。入院,病名告知,本人余命告知,家族余命告知,麻薬投与,疼痛,IVH実施,胸腹水の8項目についてその有無別の累積生存率を調査分析した。対象全例の6カ月生存率は30.3%,1年生存率は13.9%であった。入院無,本人余命告知有,家族余命告知無の場合に主治医の余命判断の信頼性が低くなる傾向があり,支払可否審査をより慎重に行う必要があると考えられた。疼痛有,麻薬投与有,IVH実施有の場合に主治医の余命判断の信頼性が高くなる傾向があった。癌告知の有無と主治医の余命判断の信頼性とは関連がなかった。
著者
浜田 康正 水野 章 大野 友靖 塩入 孝之
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.3683-3685, 1984-09-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
7 11

Condensation of carboxylic acids with tert-butyl hydroperoxide has been smoothly achieved by the use of diethyl phosphorocyanidate and triethylamine under mild reaction conditions, giving tert-butyl peroxycarboxylates in good yields.
出版者
日経BP社
雑誌
日経automotive
巻号頁・発行日
no.95, pp.54-59, 2019-02

人にとって違和感のない自然な走り─。その追求に不可欠だったのが、新世代SKYACTIVの一つとされる新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」である。 新型マツダ3の開発主査を務めた別府耕太氏によれば、同社が考える違和感のない自然な走りとは、運転者…
著者
川上あゆみ 塚田浩二 神原啓介 椎尾一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.243-245, 2011-03-02

本研究では人と植物の関係に着目し,植物を育てることを支援するとともに,植物に対する興味や愛着を深めることを目的とした植木鉢ロボットPotPet を提案する.動物などに比べると,植物は人の世話に対するフィードバックに時間がかかり,植物に影響する様子がわかりにくい.外観から植物が現在どのような状態にあり,どのような世話をすべきなのかわかりにくいことも,植物を育てることの難しさにつながっている.そこで,自律的に動き,即座にフィードバックを返す植木鉢型ロボットに本物の植物を乗せることで,植物をペットのように飼うことを実現し,人と植物の新しい関係を提案する.
著者
杉野 幹人
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.3_85-3_92, 2012

潜在機能とは、人工物を取り巻く場が変化することによって新たに発現する機能であるとされる。これまでに、潜在機能が豊かな人工物の研究などにおいて、発見される潜在機能の評価法の研究が進められてきた。しかし、潜在機能を発見する意義については、潜在機能を発見することが人工物の使用の継続、延いては廃棄抑制に繋がるということ以外は明らかではなかった。<br>本研究では、人工物の潜在機能を発見する意義の一つとして、人工物の潜在機能を発見してその人工物を転用することが、イノベーションの起点となり得ることを明らかにした。<br>潜在機能はこれまでにイノベーションの観点では注目されてこなかった。今後、ユーザーによる潜在機能に対する意図的な着眼や、デザイナーによる潜在機能の分析、そして、研究者による手法やツールの開発によってユーザーやデザイナーに対する支援が進むこと、そしてそれらにより、イノベーションの起点が増えることが期待される。
著者
舘 和彦 小川 宣子 下山田 真 渡邊 乾二 加藤 宏治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.456-462, 2004-09-15
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

乾熱卵白を生中華麺に添加した時の影響について力学物性値の測定と官能試験の結果より評価した.また走査型電子顕微鏡を用いて中華麺の表面および断面構造を解析することにより,以下の結論を得た.<br>(1) 中華麺に乾熱卵白を添加することで茹で伸びを抑制し,破断応力,瞬間弾性率は上昇し,硬さおよび弾力性に改善が見られた.さらに付着性の低下より舌触りが良くなること,引っ張り時の歪率の上昇から伸長が良く切れにくくなっていることが推測された.<br>(2) 官能試験の結果より,乾熱卵白を添加した中華麺は噛みごたえ,弾力性,つるみ感,伸長度において無添加麺や乾燥卵白を添加した麺よりも良い評価となり,且つ高い嗜好性を示した.<br>(3) 走査型電子顕微鏡による観察結果より,乾熱卵白を添加した麺の表面構造は,無添加麺や乾燥卵白を添加した麺と比較して隙間が狭く,滑らかであった.また乾熱卵白を添加した麺の断面構造も,蛋白質によって構成される網目構造が細かく,密であった.
著者
田舎中 真由美
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.212-215, 2008-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2
著者
西村 敏英 江草 愛
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.102-108, 2016-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5

「こく」は,現在,おいしさと同義語で使用されている場合が多い.しかし,「こく」は,味,香り,食感,色,艶と同様に,それぞれの食べ物が有する特性の一つであり,おいしさを決める要因である.「こく」には強弱が存在し,それぞれの食べ物に適した「こく」の強さでおいしさが付与される.「こく」は,食べ物の持つ味,香り,食感による複数の刺激から形成される複雑さによる特性である.これらの複数の刺激は,その食べ物の特徴を決める味わいのベースとなる部分であり,さらに持続性や広がりが付与されたときに「こく」が感じられる.このベース部分からできる味わいに持続性や広がりを与えることができる重要な成分として,現在,うま味物質と油脂が挙げられる.このうち,うま味物質は,味や香りからなる風味質を強くすると同時に広がりや持続性を与える.また,油脂は香気成分を保持することで,「こく」の特性である持続性を与えることができることがわかってきた.
著者
王 鉄橋
出版者
文教大学
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-48, 1989-06-01

The honorific expression term is not peculiar to Japanese only, but also exists in Chinese. But the forms of this expression are stressed differently in these two languages. The Chinese honorific expression is mainly shown in presonal expression terms and the roundabout expressions which have greatly increased recently. The honorific expression term of Japanese, however, exists in prefixes, suffixes, vocabulary, grammar etc., and personal expression terms tend to be reduced while the roundabout expressions tend to increase. That the difference between the honorific expression term of Chinese and that of Japanese has some influence in Chinese and Japanese lauguage teaching should be paid great attention to.
著者
佐藤 隆一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.279-285, 2013 (Released:2013-12-20)
参考文献数
37

脂質代謝異常に起因すると考えられる生活習慣病の予防, 改善に寄与する食品成分の探索を行った。脂質代謝制御において重要な働きをする生体内機能分子を定め, これら分子の機能, 活性を変動させ得る食品成分を, 分子細胞生物学的手法を駆使して樹立した評価系を用いて評価した。その際に機能分子として, 核内受容体, 転写因子, 受容体を設定し解析を行った。また, 入手可能な市販食品由来化合物を多数集めた食品成分ライブラリーを構築し, これらの活性を追跡した。結果として, 機能性食品化合物の作用点が標的分子を介したことを明確にする特徴を持つ。筆者らが見いだした機能性食品成分を列挙して解説した。

4 0 0 0 OA 平家物語 12巻

巻号頁・発行日
vol.[6], 1000