著者
砂岡 和子
出版者
駒沢女子大学
雑誌
駒沢女子大学研究紀要 (ISSN:13408631)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.113-120, 1997-12-24

本稿は日本の平安朝古記録に現れる疑問文のうち、漢語の口語要素を反映すると思われる文型と語彙を電算機のデータベース機能を用いて抽出し、古記録文中に中国近代漢語の一痕跡を探索せんと試みるものである。日本国語学の漢文訓読・訓点学の学術成果と伝統を未消化の内に、拙稿をしたためることの非難は覚悟ながら、中国語史の視点で日本漢文資料を調査した結果を提示したい。古記録文は西暦9世紀後半から10世紀にかけ、男性平安貴族によって記された勤務日記、儀典心得の類を指す。時は唐風文化の最盛期で、貴族たちはこぞって漢文体による文筆活動を行った。彼らの基礎教養は純漢文であるが、古記録は私家文書の性格を有し、中国漢文を模しつつ日本語文法と訓読漢語語彙が融合した文体で綴られた。日本国語学では、この種の文体を純漢文に対して変体漢文と称すこともある。国内の研究は当然ながら、日本語史からみた研究が主で、漢語口語層に焦点をあてた先行論著は管見する限り見あたらない。従来国語学では、漢語の口語の範囲を、俗語や方言などに狭く限定して捕えがちであるが、口語は日常の漢語にも常見するのであり、事実平安古記録文にも口語漢語の影響を発見できる。さてふりかえって、中国語学界をみると近年中国語史の研究が盛んになり、魏晋南北朝より唐、五代を頂点とする近代漢語の研究が活況を呈している。これは唐代原資料である膨大な敦煌文献の発見と、その整理解読作業の進展が大きな推進力となっている。日本でも、この唐代口語解明につき動かされるように、日本漢字資料中の漢語口語語彙研究が進み、『万葉集』『古事記』『日本書紀』中の中国語口語語彙が検証されつつある。拙稿は日本平安期における漢語口語資料を '口語疑問文' という角度から個別検証したものである。古記録文中の口語疑問句に焦点をあてた理由は次の2点にある。第一に近代漢語史において、唐代は新出の疑問文型ならびに語彙が際立った時期であること。第二に疑問句表現形式は、中国語と日本語で大いに異なるため、古記録文の漢語の影響を観察するのに有効な指標となりえるはずである。論題を唐代口語としたが、六朝期や晩唐後の五代を排除するものではない。六朝に芽生え、五代に至って成熟期を迎える中国近代漢語研究の確実な原資料は、質量とも敦煌資料の右にでるものは、現在まで見あたらない。従って口語研究は唐代をもって近代を代表させるのが一般的である。しかし結果からいうと、平安古記録文中の口語語彙および文型は、むしろ古代漢語から脱皮しつつある比較的保守的な近代口語層に属し、中唐から晩唐期の敦煌文学作品に顕著な新出口語は稀であった。よって正確には「平安古記録文中の近代前期漢語口語疑問句」とでも命題すべきところであるが、近代漢語という定義や時代区分を現段階で厳密にすることは難しい。そこで便宜的に近代漢語のピークを唐代で代表させ、題名とする。幸いにして平安古記録文の検索は、東京大学史料編纂所が古文書データーベースのサービスを開始し、電算機による迅速大量の検索作業が可能となった。遠隔からもアクセスでき、語彙そのものの検索と統計は驚くほど簡便になった。しかし最も基本的な作業である、原資料の校勘作業に今回は手をつける余裕がなかった。加えて本稿で選んだ検索キーワードが正鵠を射ているか、統計結果の意味分析、古記録文献資料間の言語の質差をどう観るかなど、今後検討補正しなければならない課題は多い。本稿は1997年9月10日より15日まで、中華人民共和国浙江省杭州市敦煌飯店で開かれた、中国敦煌吐魯番学会、杭州大学敦煌学センター共催の97年敦煌学討論会において口頭発表した論文に、加筆修正したものである。中国側の本討論会論文集は出版未定で、本学紀要に先に発表をお許しいただくことにした。中国発表時の論題は「日本平安古記録文中的口語疑問句」であるが、本紀要掲載に際し上記のように改めている。なお、中国での討論会参加にあたって、駒沢女子大学国際交流委員会の97年度国際交流費助成を得たことを感謝する。拙稿の執筆にあたり、古記録文の諸先行研究の所在と、東京大学資料編纂所検索サービスの情報を御教示賜った、本学日本文化学科倉本一宏助教授、ならびに杭州での上記討論会で発表の際、貴重な提言を頂戴した鄭阿財台湾中正大学教授、顔廷亮甘粛省社会科学院研究所教授、黄征杭州大学敦煌研究中心教授、張金泉同古籍研究所教授、ならびに討論会に同席された諸先生に紙面を拝借し深謝する次第である。
著者
細井 聖 田畑 尚弘 秋間 正道 川出 雅人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解
巻号頁・発行日
vol.97, no.387, pp.25-32, 1997-11-21

自然なヒューマン・マシン・インタフェースを目指して, われわれは視覚による顔の意味理解技術, および顔の表現技術の研究開発を進めている. この技術の応用例として, 似顔絵クリエーション技術を開発した. 開発したシステムではコンピュータビジョン技術を用いて様々な人種や顔・髪の種類に対してロバストに特徴抽出ができる. さらに, ファジィ推論による部品選択・部品配置・部品変形ルールから, 複数のイラストレータや漫画家などのタッチ(画風)で似顔絵を自動的に描画することができる. 本稿では似顔絵クリエーション技術の中で重要となる髪型認識の手法とイラストレータタッチの髪型を合成する手法について述べる. 具体的には, 髪領域抽出法, 髪型の特徴によるクラスタリングとテンプレートマッチングを併用した髪型部品の選択方法について述べる.
著者
関口 裕一郎 佐藤 吉秀 川島 晴美 奥田 英範 奥 雅博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.117, pp.27-32, 2005-11-21
被引用文献数
2 or 0

blog記事は省略を多く含む口語的な記述がなされている為,文中の情報のみによる話題語句の判別は難しい.本論文では,発信者相互の興味の関連性を抽出し,ある語句を使用している発信者集合の持つ関連度の分布を見ることにより,高い関連度を持つ発信者間で使われる語句に高い話題度を算出する.blog記事の集合を用いて実験を行った結果,記事中の話題を表す語句に対して,高い話題度を算出することができた.In this paper, we describe the method to detect the topic words from blog documents. The 'topic words' is defined as a word that gains the attention of people sharing same interest. While blog documents are written by ordinal people, their texts are written in abbreviated informal expression. We use the information of blogger to adjust this characteristic of blog documents. The proposed method extracts the relevancies of each blogger; compares the deviation of these relevancies; and calculates the topic scores for each word of a blog document. The experiment shown that the method can extract appropriate topic words from blog documents.

7 0 0 0 OA 怪男児快挙録

著者
河岡潮風 (英男) 著
出版者
東京堂
巻号頁・発行日
1912
著者
山本 篤 山口 和紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1756-1765, 2003-07-15

正規表現は,パターンマッチングを行うためのツールとして広く利用されている.しかし,さまざまな応用で拡張されてきたのにともない,次のような問題が出てきている.1)標準的に使われている正則集合による意味づけでは,後方参照がうまく定義できていない,2)オートマトンを用いたパターンマッチングの実装において,状態数やバックトラックの回数が爆発することがある,3)正規表現の積や差を直接的に利用できない.本研究では,このような問題を解決するために,正規表現関数と呼ぶ関数を導入する.正規表現関数は,記号列集合を入出力とする関数であり,マッチする記号列を消費して出力するものである.たとえば,正規表現 a* が a の繰返しにマッチすることは,その正規表現関数が,a*({ab aa b}) = {ab b aa a ε} という入出力関係を持つことで表される.これを拡張し,変数を扱えるようにすることで,後方参照も含めた正規表現を定義することができる.また,正規表現関数を用いたパターンマッチングの実装が可能であり,後方参照のない場合には計算量の爆発を避けることができ,比較実験でも優位なケースを確認した.さらに,正規表現の積と差を導入し,これらが正規表現関数によって簡単に実装できることを示す.最後に,正規表現の積や差を用いる応用例としてHTMLなどへのパターンマッチングをあげる.Regular expressions have been used widely for pattern matching.However the following problems are getting serious in some applications.1) The definition of regular expressions cannot be extended to back reference,which is a popular extension of regular expressions.2) The implementations of pattern matching in automata suffer from the explosion of time or space complexity for some regular expression patterns.3) In the conventional regular expressions,we cannot use intersection and difference operators, which are useful in some applications.In this paper, we introduce a ``regular expression function'' from a set of strings to a set of strings.This function eliminates matching prefixes with given regular expressions from the input strings and outputs the remaining postfixes.For example, a({ab,aa,b})={ab,b,aa,a,ε}.This function can be extended to give a semantics to regular expressions with back references.Then,we show that we can perform pattern matching by interpreting the regular expression function directly without the explosion of time and/or space complexity,which is confirmed by our preliminary implementation.We also introduce intersection and difference operators and show that the regular expression function can be extended to handle these operators easily.Finally, we briefly show some possible applications of the operators.

4 0 0 0 OA 日本新字

著者
小島一騰 著
出版者
新字会
巻号頁・発行日
1886
著者
森川 大補 本庄 勝 小塚 宣秀 山口 明 大橋 正良
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.692, pp.143-148, 2004-02-27
被引用文献数
2 or 0

我々は,ユーザ自身に関わるプロファイル情報,ユーザ周辺の環境に関するプロファイル情報などをユーザ状況に応じて集約し,個人環境プロファイルとして体系化するユーザプロファイル管理基盤を検討している.本橋では,まず,我々が想定する個人環境プロファイル構築モデルを述べる.次に,個人環境プロファイルのデータモデルとその更新手法について,我々が設計した個人環境プロファイルの実例を交えて述べる.さらに,個人環境プロファイルを活用したサービスのために必要となるイベント検出機能とクエリ処理機能を説明する.
著者
緑川 信之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.238-243, 2007-05-01

フォークソノミーという用語はフォーク(folkまたはfolks)とタクソノミー(taxonomy)の合成語である。Wikipediaによれば,フォークソノミーは,インターネット上での情報検索の方法論であり,協同的かつ自由に付与されるタブで構成されている。このダグによって,ウェブページやオンライン上の写真,ウェブリンクなどのコンテンツがカテゴリ分けされる。本稿では,フォークソノミーに関するいくつかの論文・記事を分析し,フォークソノミーの新奇性がどこにあるのかを明らかにした。
著者
小菅 充子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.43-55, 1998-03

紅茶の浸出液を冷却した際に見られるクリームダウンが,どの様な条件により出現し易いか実験を行った。また緑茶や烏龍茶においても同様の現象が見られるのか否かについても調べてみた。紅茶においては溶出タンニン量の多い茶葉のものはクリームダウンが起こり易く,また冷却前に砂糖を添加しておくと,クリームダウンは抑制されることが確認出来た。同じ茶葉を用いても硬度の高い浸出水で浸出した時は,浸出液の色調は暗赤化し,クリームダウンも激しかったが,溶出タンニン量はむしろ少なかった。冷却方法については,流水及び冷蔵庫による緩慢冷却も良い方法と思われる。緑茶,烏龍茶においては,紅茶と比較してクリームダウンの生成はかなり低かった。しかし浸出水の硬度が高くなると,紅茶と同様かなりのクリームダウンが出現し,タンニンは溶出しにくくなる傾向が見られた。各浸出水を加熱してみると,硬度の高かった浸出水において白濁が見られ,緑茶,烏龍茶,そして紅茶においてクリームダウンという形で我々の目に写っていたものは,タンニンとカフェインの結合物が冷却されて析出したものだけではなく,この浸出水による白濁も大きな部分を占めていたと推測された。
著者
前田 英作 南 泰浩 堂坂浩二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.624-640, 2006-06-15
被引用文献数
17 or 0

私たちの身近にいつも寄り添い,見守り,そっと支えてくれる存在,かつて私たちはそれを「妖精・妖怪」と呼んでいた.物質的な利便性より精神的な安定と豊かさを追うべきこれからの時代に,情報科学技術が取り組むべき課題はこの妖精・妖怪の復権である.本論文では,それを新しい「環境知能」と呼ぶ.復権すべき妖精・妖怪の世界とは何か,情報科学技術との接点は何か,それにより実現される生活様式は何かについて論じるとともに,環境知能の実現に向けて今後取り組むべき具体的課題を提起する.
著者
前田 英作 南 泰浩 堂坂 浩二 森 啓 近藤 公久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.296, pp.51-56, 2006-10-12

NTTコミュニケーション科学基礎研究所では,2005年より「環境知能」をテーマとした研究プロジェクトを進めている.このプロジェクトの目的は,音声処理,音響処理,言語処理,対話,視覚情報処理,探索,学習,ネットワークなどのコミュニケーションのための情報処理技術を有機的に統合することにあり,それによって実現される新たな生活様式の提案も視野に入れている.本稿では,この取り組みの狙いとこれまでの進展を紹介する.