著者
小杉 大輔
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.129-132, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は,大学生がインターネット上で現実の自己に近い自己を表出するのか,あるいは,より理想に近い自己を表出するのかについて,自己呈示の観点から明らかにすることを目的とした.大学1年生に対し,Big Five 尺度を用いて,現実の自己・理想の自己・インターネット上の自己のパーソナリティ特性についての評価を求め,Big Five の5因子の特性が,これら3つの自己においてどのように変わるのかについて分析を行った.その結果,調査対象は,インターネット上において,開放性については現実の自己に近い自己を,その他の4因子では現実の自己よりも理想に近い自己を表出する可能性が示唆された.
著者
井鷺 裕司
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.89-95, 2010-03-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
26
被引用文献数
5

タケ類の生活史は、長期間にわたる栄養繁殖と、その後の一斉開花枯死で特徴づけられる。タケ類に関しては、地下茎の形態と稈の発生様式、開花周期と同調性、開花後の株の振舞いなどにいくつかのパターンが知られており、それぞれの特徴をもたらした究極要因や至近要因が解析・考察されてきた。しかしながら、タケ群落で観察される繁殖生態上の特性は、種が本来的に持つ特徴というよりは、たまたまその地域に人為的に導入された系統の性質であったり、あるいは群落を構成するクローン数が極端に少ないという事に起因する可能性がある。また、タケ類は開花周期が長いため、世代交代時に働く選択のフィルターが機能する頻度も低く、人為による移植の影響や移植個体群の遺伝的性質が長期間にわたって維持される可能性も高い。本論では、単軸分枝する地下茎を持つマダケ属(Phyllostachys)とササ属(Sasa)、仮軸分枝する地下茎を持つBambusa arnhemicaの事例をとりあげ、群落の遺伝的多様性の多寡と開花同調性の有無に基づいて、開花現象を4つのタイプにわけ、タケ類の繁殖生態研究で留意すべき点を考察した。
著者
菅井 道子 堀田 龍也 和田 裕一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.125-128, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
12

高校生による教育用SNS を活用した協調的議論に対する生徒の自己評価に影響を及ぼす要因の検討を目的として,教育用SNS を活用した議論演習を2回行った.対照群として対面での議論演習を行う群を用意した.事前と事後の質問紙調査,および議論演習後の議論への自己評価に関する質問の回答を分析した.その結果,教育用SNS を活用した議論においては,グループの人数が増えるほど,生徒は根拠などの理由を伴い主張する論証のスキルが向上したと実感する傾向が示唆された.加えて,情報の判断力や表現力などの議論に関連した意識や態度の変容と,論証の出来不出来に対する生徒の自己評価が関連することが示唆された.
著者
神谷 克巳
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.139-141, 2015-05-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
11

The diamondback moth (Plutella xylostella) is a serious pest to many cruciferous vegetables. Several entomopathogenic fungi were collected from the larvae of P. xylostella from fields in Gifu prefecture, Japan. We obtained four isolates of the entomophthoralean fungus, Erynia blunckii, which was considered a major natural enemy to P. xylostella in Japanese radish fields in Takasu, Gifu. The character of the fungus as a biocontrol agent was investigated. These isolates showed over 20 times higher conidia production than Zoophthora radicans isolates obtained from Takasu. A dose mortality assay on the E. blunckii isolate T10A showed that the LC50 value for 4th instar larva was 3.73 conidia/mm2.
著者
河野 貴範 松原 行宏 岡本 勝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.077-080, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
4

我々の研究グループでは力覚提示デバイスを用いた学習支援システムの研究を行っている.また,視覚情報から力覚を錯覚させる擬似力覚という手法があり,擬似力覚提示を学習支援システムに用いた研究も行われている.しかしそれら2つの提示方法の学習における差異についての研究は行われていない.そこで本研究では各提示方法による学習効果や各提示方法の特性の比較を目的とし,力覚提示と擬似力覚提示,比較用に音声提示を組み込んだ漢字学習支援システムを開発した.システムを用いた実験により擬似力覚提示は力覚提示よりも感じられる度合いに個人差が見られたが,感じられた人は力覚提示と同様の教示的効果を得られることが確認できた.
著者
西片 裕
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.069-072, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
9

本研究では,学生によるルーブリックの作成と自己評価を行う授業を実践し,学生の自律的動機づけ(RYAN and DECI 2000)に与える影響について検討した.授業実践はリハビリテーション専門学校の臨床技能を学ぶ科目で行った.学生には,技能評価に使用するルーブリックの評価観点と評価基準を考えてもらい,技能の練習をした後,ビデオ録画した自分の技能に対して自己評価をしてもらった.質問紙調査の結果,自律性があまり高くない学生の「外的調整」が授業後に低下しており,学生によるルーブリックの作成や自己評価が学習動機づけの自律化の促進に有用であることが示された.
著者
鶴田 利郎 野嶋 栄一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.065-068, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

本研究では,高校生のインターネット依存を改善することを目的とした単元の開発を試みた.開発した単元は,各学校の情報科教育のカリキュラムに応じて,3時間,5時間,9時間で実施できる3種類の単元を開発したところに特色がある.そして2015年度,2016年度に複数の学校において授業実践を実施した.その後,鶴田ほか(2014)の尺度を用いた生徒の依存傾向の変容についての質問紙調査などを通して,開発した単元による授業実践の成果と課題について検討した.その結果,3時間の単元ではメール不安,長時間利用,ながら利用因子の改善に,5時間の単元ではこれらに加えて精神的依存状態因子の改善に,そして9時間の単元はすべての因子の改善に有効であることが示唆された.
著者
三井 一希
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.057-060, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

本研究では,小学校の授業において学習の見通しを持つために開発した「学習アイコン」について報告し,児童・教師の評価を通してその効果を検証した.「学習アイコン」とは,授業の流れを視覚的・直感的に理解できるように,授業の流れをアイコンにして提示するためのツールである.アンケート調査の結果から,学習アイコンを使うことで,児童や教師は学習の見通しが持ちやすくなる可能性が示唆された.
著者
槇 誠司 佐藤 和紀 板垣 翔大 齋藤 玲 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.045-048, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
7

情報化社会に向かう今日において,統計的リテラシーを身につけることがより重視されている.本研究では,グラフの傾向を読み取り,考察し,それを根拠にして示された事象について批判する能力(以下,グラフ解釈能力と呼ぶ)を短時間で児童に身につけさせるための学習を授業時間内で実施した.この学習は,児童がグラフ解釈を行った結果を100字以内でまとめ,それらの内容を隣同士で互いに話し合い,最後に全体に向けて発表するまでを10分間でおこなう学習活動である.グラフ解釈に関する短時間学習を14回実施した場合,クラス全体のグラフ解釈能力は7回目頃から向上する傾向にあることが示唆された.さらに,グラフ解釈に関する短時間学習を経験した児童は,これを経験しない児童と比較して,グラフ解釈に関するテストの得点が高いことが明らかとなり,本学習の効果が示唆された.

4 0 0 0 OA 訂正康煕字典

著者
渡部温 編
出版者
渡辺温
巻号頁・発行日
vol.5, 1887
著者
上田 修一 武田 節夫 山脇 一郎 山下 純一 安本 三治 橋本 貞夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.125-131, 1982-01-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
5 8

A hydroxylated metabolite of 1-(tetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (FT), 1-(trans-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (trans-3'-OH-FT, VIII) and its isomer, 1-(cis-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (cis-3'-OH-FT, VI), were synthesized and isolated at high purity. As compounds related to FT metabolites, 2, 3'-anhydro-1-(cis-3-hydroxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (2, 3'-anhydro-FT, V), 1-(2, 5-dihydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (3', 4'-dehydro-FT, XII) and 1-(5-acetoxytetrahydro-2-furanyl)-5-fluorouracil (5'-AcO-FT, XI) were also synthesized. The antitumor activities of these compounds against sarcoma 180 and L 1210 were examined. The activities of cis-3'-OH-FT (VI) and 2, 3'-anhydro-FT (V) were found to be lower than that of FT. The activity of 5'-AcO-FT (XI) was the same as that of FT. 3', 4'-Dehydro-FT (XII) showed much greater activity than FT.

1 0 0 0 OA 田券と古文書

出版者
巻号頁・発行日
vol.[6],
著者
大谷 いづみ 川端 美季
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本課題の第3年度に当たる2017年度は、研究代表者である大谷が体調不良で3ヶ月病気欠勤することとなった。とはいえ、2016年7月におきた相模原障害者殺傷事件の1周年にあたる7月から9月にかけて、諸方面から、相模原障害者殺傷事件と優生思想、安楽死思想についての招待講演の依頼を受け、「安楽死・尊厳死論の系譜と相模原障害者殺傷事件」をテーマに、一般市民を対象とした学習会、自立生活を営む重度障害者とその支援者を対象とした学習会、福祉行政や実務家を対象とした研修講座等において研究成果を還元するとともに、その成果を一般市民の目から検証することができた。また、日本医学哲学・倫理学会第36回研究大会(於・帝京科学大学)のワークショップ「正常さと異常さの境界」において、「「生きるに値しない生命」殺害の医療化と規範化」と題する研究発表を行った。フロアには50名ほどの参加者があり、活発な討議が行われた。同年度後半には、ナチスドイツ政権下で実行されたT4「安楽死」政策の事実がアメリカや日本に知られるようになった経緯について資料収集の緒に就いた。これは、本研究の主題の中核をなす、J・フレッチャーの安楽死思想の淵源をさぐると同時に、本研究を日本を含む東アジアと欧米キリスト教圏の歴史的経緯において検討するという、さらなる研究への発展を企図している。また、研究分担者の川端は、安楽死・尊厳死論につながる日本の文化的土壌の成立および変容過程について検討し、「近代日本の国民道徳論における「潔白性」の位置づけ」として『人間科学研究』37号において成果を発表した。加えてキリスト教・西欧の医学の日本への影響を視野に入れ、ドイツ・イタリア・イギリスを中心に医学史・身体史に関する調査、日本で医学史と教育史における言説の資料調査を行った。

1 0 0 0 OA [師守記] 64巻

著者
中原師守 [著]
巻号頁・発行日
vol.巻56 貞治六年四月, 1339
著者
秋田 朋子 中祖 直之 松浦 晃宏 松本 浩実 萩野 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】世界有数の長寿国である我が国において,医療技術の進歩,健康志向の高まりにより,今後もさらに平均寿命が延びると予想される。同時に,要介護者の割合も年々増加し,介護予防は大きな課題である。要介護状態となる原因の一つとして,加齢に伴い筋肉量が低下するサルコペニアがあげられる。サルコペニアを引き起こす要因は複数あるが,中でも活動量の不足は中核的な問題であり,特に退職後の高齢期における活動量の減少が懸念される。一方,山間地域では高齢期にも農業に従事する者が多く,その場合の活動量は高く維持されると考えられる。そこで,本研究では,山間地域在住高齢者におけるサルコペニア有症率を調査し,さらに農業への従事がサルコペニアに関連するかを検討した。【方法】鳥取県西部の山間地域で実施された特定健診において,平成26年または27年に受診した65歳以上の高齢者で,研究参加への同意の得られた281名(年齢75.4±6.8歳,男性105名,女性176名)を対象とした。自己記入式アンケートおよび問診にて,運動器疾患の診断歴,現在の職業と農業従事の有無などを聴取した。サルコペニアの判別はEWGSOPの診断アルゴリズムに従った。補正四肢骨格筋量低下はインピーダンス法により測定し,Tanimotoらの基準(男性7.0kg/m<sup>2</sup>未満,女性5.7kg/m<sup>2</sup>未満)を採用した。そのうち,握力低下(男性30kg未満,女性20kg未満)もしくは歩行速度の低下(0.8m/s以下)のある者をサルコペニアと定義した。統計解析は,サルコペニア群と非サルコペニア群間で説明変数の差の検定を行った。次に単変量解析にて有意差の認められた項目を説明変数とし,年齢と性別を調整変数,サルコペニアの有無を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,サルコペニアの有無に関連する要因を検討した。有意水準は5%未満とした。【結果】農業従事者155名中11名(7.1%)がサルコペニアに該当し,非従事者は126名中19名(15.1%)がサルコペニアに該当した。対象者全体の有症率は10.7%であった。サルコペニア群と非サルコペニア群間における単変量解析では,年齢(P<0.001)と農業従事の有無(P<0.05)に有意な差を認めたが,その他には認めなかった。サルコペニアの有無を従属変数とし,農業従事の有無を説明変数,年齢と性別を調整変数として行ったロジスティック回帰分析においては,農業従事の有無は有意な関連を認めず(odds ratio=0.61,95%CI:0.25-1.43,P=0.254),年齢にのみ有意な関連を認めた(odds ratio=1.19,95%CI:1.11-1.27,P<0.001)。【結論】山間地域の高齢者においては,農業従事者はサルコペニアの有症率が有意に低いという結果を得た。これは農業を行うことが身体活動性を高く維持し,サルコペニアの発症頻度を軽減させる可能性を示唆する。また,サルコペニアは農業活動以上に加齢の影響を受けやすいことが考えられた。