著者
天谷 真奈美 岩崎 弥生 Amagai Manami Iwasaki Yayoi アマガイ マナミ イワサキ ヤヨイ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.79-85, 2006-06-30

本研究の目的は社会的ひきこもり青年を抱える親のパワーレスと,そのエンパワメントの拡大に働く看護援助を明らかにすることである。対象は社会的ひきこもり青年の親で3事例である。ひきこもり青年は20歳半ばから30歳前半の全て男性で,3年から7.5年ひきこもっていた。看護援助指針に基づいて親に援助を実施し,質的分析を行った。また看護援助の効果を測定する質問紙調査を行った。結果,社会的ひきこもり青年を抱える親のパワーレスは7カテゴリーが抽出された。親のエンパワメントの拡大に働く看護援助カテゴリーは,【パートナーシップを確立し孤立感を和らげる援助】,【子育ての振り返りを見守る援助】【否定的自己感と向き合いつつ自尊感情を取り戻す援助】,【適切な対人距離がとれるよう認識を促す援助】,【親が見逃している他者の力量・可能性・思いに対する感受性を高める援助】,【多様な見方・意味づけの提示で,柔軟な物事の理解・とらえ方を拡大する援助】,【問題解決能力を養う援助】の7つが抽出された。これらの看護援助によって,家庭内のコミュニケーション,協働関係の再構築,ひきこもり青年の社会参加行動にも変化が得られた。特に子育ての振り返りを見守る援助は,過去の子育てに関する親の負担感と子供に対する罪悪感の表出を促し,葛藤の整理を行う上で効果的であった。家族の課題に現実的に対処する力を生み出す意味でも重要であることが示唆された。The purpose of this study was two-fold: a) to elucidate factors associated with parents' powerlessness in caring for the children who were socially withdrawn; b) to help those parents empower themselves in their struggles with their socially withdrawn children. Participants in the study were 3 mothers whose children have been socially withdrawn for long time. The socially withdrawn children were in their mid-twenties through mid-thirties. They had confined themselves in their homes from 3 to 7.5 years. Nursing care was given to those mothers after delineating intervention guide-lines on their enhancing empowerment. Data, which were collected for the study period of six months, were analyzed qualitatively and inductively. A questionnaire was used to measure the effects of nursing care. There were 7 categories of the mothers' powerlessness with regard to their children's socially withdrawnness. As well, there were 7 categories of the nursing care provided to those mothers.: 1) partnership established between the mothers and the nursing researcher, 2) looking back their parenting, 3) regaining self-esteem despite regrets, 4) setting a distance appropriately between their children and themselves, 5) enhancing the levels of sensitivity in identifying their family strengths, 6) being able to interpret different meanings form multiple perspective, and 7) enhancing problem-solving skills. As a result of nursing care provided for their mothers, higher levels of empowerment were observed on the mothers as well as on the rest of the family members. In particular, the following behavioral changes were noted: a) improved communication patterns among the family members; b) re-established mutual support between parents; c) no longer socially withdrawn, but getting out of their houses, getting employed, or going to vocational school. Especially nursing intervention supporting mothers to reflect their own parenting have been contributed providing the opportunities to express parenting burden and feeling of guilty, and regulate th
著者
荻野 達史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.311-329, 2006-09-30

「社会運動の今日的可能性」を探るために, 後期近代における「個人化」の趨勢に注意を向けた場合, 2つの問いが導かれる. (1) 個人化の状況は, 理論的にみて, いかなる社会的運動を要請しているのか (2) 経験的には, その要請に見合う運動が展開されているのか本稿はこれらの問いに答える試みである.<BR>第1の問いに対しては, 個人化に関する議論に, Honneth (1992=2003) の承認論を合わせて検討することで, Cornell (1998=2001) のいう「イマシナリーな領域」への取り組みが求められることを導き出す.すなわち, 自己アイデンティティの構築に重い負荷をかける個人化状況は, ときに著しく損壊した自己信頼の再構築と, 志向性としての「自己」を「再想像」するための時空間を創出する取り組みを要請するこの課題は, Giddens (1991=2005) のライフ・ポリティクスの議論でも十分に意識化されていないため, 本稿では "メタライフポリティクス" として定位した.<BR>第2の問いに対しては, 1980~90 年代以降に注目を集めるようになった「不登校」「ひきこもり」「ニート」といった「新たな社会問題群」に取り組んできた民間活動に照準した.とくにそれらの活動が構築してきた「居場所」の果たしている機能とそのための方法論を検討し, 理論的課題との整合性を確認した.また, 同時に運動研究史上の位置づけを明確にした
著者
中村 光 岩永 可奈子 境 泉洋 下津 咲絵 井上 敦子 植田 健太 嶋田 洋徳 坂野 雄二 金沢 吉展
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
雑誌
こころの健康 : 日本精神衛生学会誌 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.26-34, 2006-12-30

本研究の目的は, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることであった。ひきこもり親の会 (セルフヘルプグループ) に参加している家族153名から自記式質問紙による回答を得た。その結果, 以下のことが明らかにされた。(1) 家族の85.6%がひきこもり状態を改善するために相談機関を必要としている。(2) 精神疾患に対する偏見が家族の受療行動を阻害する可能性がある。(3) 相談機関の存在や所在地を知っていることが, 家族の受療行動を促進する可能性がある。(4) 家族にとって保健所や精神保健福祉センター, 電子メールによる相談は利用しにくく, 反対に電話相談は利用しやすい可能性がある。(5) ひきこもり状態にある本人が相談機関来所を拒否すると, 家族の受療行動を阻害する可能性がある。調査結果の検討を通して, ひきこもり状態にある人を持つ家族の受療行動を促進する方法が議論された。