著者
松本 信愛
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-43, 1997-09-08 (Released:2017-04-27)
参考文献数
1

アメリカやオーストラリア等の病院関係者のターミナル・ケアの話には、必ず「パストラル・ケア」という言葉が登場するが、日本ではまだほとんど理解されていない。現在、アメリカを中心に広がっている「病院でのパストラル・ケア」というのは、病人やその家族の「心」を専門的にケアすることである。元来、パストラル・ケアは、死に直面した人々だけを対象にしているわけではないが、特にその真価が発揮されるのは、やはり、そのような場合が多い。本稿では、筆者がアメリカの病院においてパストラル・ケアの訓練を受けたときに経験したいくつかの例を通して、パストラル・ケアというものがどのようなものであるかということを紹介し、日本の病院におけるパストラル・ケアの必要性と可能性を探ってみたい。
著者
名城 邦夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.97-130, 2018-10-31

西アジアにおいて最初の都市文明が成立し,社会的規律化が要請され,人格神・王権・法治・計算貨幣・官僚制による財政国家が成立した。神官・王族・貴族・平民・奴隷の身分ごとにその義務と役割が定められ,計算貨幣による分配が行われた。特に重要な軍役について最初にリディア王国において打造貨幣で支払われるようになった。このような打造技術による貨幣製造は,計算貨幣による社会的規律化と国家形成とともにギリシャからローマへと伝播した。ローマでは至上権・官職官僚制・ローマ法・金銀銅三貨制度・造幣役による貨幣システムが成立し,6000万人の帝国に発展した。帝政末期には帝国の属州に地域貨幣システムが形成され,それがゲルマン部族王国に継承された。最終的に西ゴート王国とフランク王国のみが独自の貨幣システムを確立することとなった。特にフランク王国はカロリング王朝によってローマ末期の金貨システムから独自の銀貨システムを確立することとなった。
著者
野口 康彦
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.8-13, 2013

本稿では、子どもの心理発達のプロセスを踏まえたうえで、親の離婚を経験した子どもの心理について、特に喪失体験とレジリアンスについて言及した。また、親の離婚を経験した大学生を対象として、ベック抑うつ尺度(Beck Depression Inventory)の日本語版を用いた調査を行った。調査の結果から、親の離婚時と子どもの年齢は子どもの精神発達と密接に関連しており、思春期以降に親の離婚を経験した子どもは、親の離婚の影響を受けやすい傾向が示された。親の離婚に起因する子どもの心理的な問題の多くは、親が離婚する前の家庭環境が大きく関与している。親の離婚を経験した子どもが思春期において、親に対する葛藤をどのように体験するのかという点が重要である。
著者
石井延久 渡辺 博幸 入沢 千晶 菊地 悦啓 川村 俊三 鈴木 騏一 千葉 隆一 常盤 峻士 白井 将文
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.954-962, 1986
被引用文献数
5

従来より,我々は器質的インポテンスの治療に陰茎プロステーシスの挿入手術を行っていた.しかし,我国では陰茎プロステーシスの挿入手術を希望する患者は実際には余り多くないことから,非観血的な方法が望まれていた.そこで我々は強力な血管平滑筋の弛緩作用を有するProstaglandin E_1(PGE_1)の陰茎海綿体注射が器質的インポテンスの治療に応用できるか否かを検討した.方法は22〜27Gの細い翼状針を用いて,2〜20mlの生理的食塩水に溶解したPGE_1 20μgを注入し,その前後の変化を陰茎温度とErectiometerで観察した.動注は血管カテーテルを用いて生理的食塩水20mlに溶解したPGE_1 20μgを注入した.結果はPGE_1を陰茎海綿体に注射した71例のうち,51例(72%)に完全勃起がみられた.のこる9例(13%)は不完全な勃起,6例(8%)は陰茎の増大のみ,5例(7%)は全く変化がみられなかった.完全勃起はPGE_1注射後2〜3分で陰茎の増大がおこり,約2〜3時間持続した.PGE_1により殆ど勃起のおこらない症例は高齢者や陰茎海綿体の萎縮,血管障害の疑われた症例に多くみられた.しかし,骨盤内手術など末梢神経障害や脳・脊髄など中枢神経に器質的障害のある症例でも,PGE_1の陰茎海綿体注射により,性交可能な勃起がみられたことから,今後はPGE_1の器質的インポテンスヘの治療に応用できることがわかった.一方,PGE_1の陰茎海綿体注射により完全勃起のおこらない骨盤骨折1例と糖尿症の2例の内陰部動脈造影を行ったところ,骨盤骨折症例では内陰部動脈の損傷があり,陰茎動脈は造影されなかった.この症例は血管性のインポテンスの合併があり,PGE_1の内陰部動脈へ注入によっても陰茎の温度は余り上昇せず,勃起も回復しなかった.しかし,糖尿病の2例はいずれも陰茎動脈まで造影され,PGE_1の動注により陰茎の温度の上昇がみられ,一過性ではあるが勃起の回復がみられた.このことから,PGE_1の動注が静注など投与方法を工夫することにより,将来血管性インポテンスの治療に応用できるようになるのではないかと期待される.
著者
三村 昌義
出版者
神戸山手大学
雑誌
神戸山手大学紀要 (ISSN:13453556)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-34, 2004-12-20
著者
石本 啓一郎 石黒 広昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.333-345, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
30

文字獲得はこれまで主に文字形態に焦点をあててきたが, 本研究では思考の媒介手段としての文字の機能に焦点をあてる。子どもが産出する物理的な線を総称して「インスクリプション」と呼び, それが想起の媒介手段として機能する発達過程を明らかにすることが本研究の目的である。ヴィゴツキーの「二重刺激の機能的方法」に基づき, 呈示文を後で思い出せるようにインスクリプションの産出を促すメモかき課題を3歳から7歳の80人に実施した。子どもが産出したインスクリプションの形態と, それによる想起成績の関係を検討したところ, インスクリプションは年齢と共に図像, 文字へと順次移行し, 想起手段として役立つようになっていった。さらに, 想起手段として文字を産出した者とそれ以外の者の課題遂行過程を比較検討したところ, 図像利用者は呈示文の意味を記すのに対して, 文字利用者は呈示文の音韻を記そうとしていた。インスクリプションはその形態変化を伴いながら, 媒介手段にほとんどならない多様な線画の状態から, 図像, そして文字に媒介された行為を形成する段階へと順次移行していく。
著者
登尾 和矢 安藤 昌也
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.87-96, 2017-02-25 (Released:2018-12-10)
参考文献数
15

In UX designing, we sometimes propose a new concept product or service, focusing on user experience value. In this case, it is desirable to conduct concept evaluation at an early stage to confirm the direction of development. However, the method to reasonably conduct a concept test at a stage when the product or service is not concrete enough remains unclear. In this study, we analyzed the effect of results from the differences in the expressions of the following 3 concept sentences: (A) expression showing only the experience value; (B) expression with usage scene in addition to the experience value; and (C) expression with function in addition to the experience value. As a result, we found that A could reasonably evaluate “the degree of matching the needs” and “novelty”, and that C could reasonably evaluate “sympathy”. In this study, therefore, we suggest a two-stage concept test method in which we first present only the experience value to evaluate the degree of matching the needs and then present the usage scene to evaluate sympathy.
著者
奥中 康人 オクナカ ヤスト
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-90, 2018-03-31

群馬県では、公設消防組が設立された1894年に、広くラッパが配備され、組織的な練習もおこなわれていた。ほぼ同時期に、消防用のラッパ譜も制定されていたという。本稿は、1890年代~1940年の7種類の消防ラッパ譜(「喇叭ノ符」(1895)、「喇叭符」(1895)、『喇叭符號手帳』(1896~97)、『消防の栞』(1908)、『消防喇叭音譜』(1929)、『消防喇叭教本』(1938)、『警防喇叭教本』(1940))の内容を分析することによって、近代群馬にどのような音楽が鳴り響いたのかを明らかにすることを目的としている。群馬県の消防ラッパ譜に収録された楽曲は、消防のために作られたオリジナル曲と、軍隊のラッパ譜によって構成されている。軍隊ラッパ譜から転用された曲の多くは、1885年に刊行された『陸海軍喇叭譜』とその改訂版を典拠としているが、1890年代のラッパ譜の中には、1885年以前に陸軍が使っていたフランスのラッパ譜も含まれている。1920年代には、群馬のオリジナルのラッパ文化がわずかに芽生えようとしていたが、1938年のラッパ譜では、ほとんどが『陸軍喇叭譜』の曲で占められることとなった。
著者
梶 光一 吉田 剛司 久保 麦野 伊吾田 宏正 永田 純子 上野 真由美 山村 光司 竹下 和貴
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

ニホンジカの島嶼化プロセスとメカニズムを解明するために、島に導入されたニホンジカの生態・形態・遺伝の年代的変化を調べた。餌資源化で体の小型化が生じ初産齢が上昇したが、間引きによって体重の増加と初産年齢の低下が生じた。餌の変化に対応して第一大臼歯の摩耗速度は初回の崩壊後に早まった。一方、臼歯列サイズは、減少から増加に転じた。有効個体群サイズおよび遺伝的多様性も一度減少したが、その後それぞれ安定および増加に転じた。以上は、餌資源制限下で形態・遺伝に対して正の自然選択が働いた可能性を示唆している。
著者
長田 尚夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.30-37, 1980-02-01 (Released:2017-08-01)

Social and psychologic problems were neglected in the treatment of sexual disturbance in the past. In this paper, we reported on our treatment for psychosomatic sexual disturbances which were caused by physical sexual disorders. (1) Disorders on sexual development. Patients with Klinefelter syndrome and male hermaphroditism were suffering from psychological sexual troubles in spite of successful hormonal therapy. When treated psychosomatically, however, good results were obtained. (2) Hypogonadism. Patients with eunuchism and eunuchoidism who had anxiety about marriage in spite of satisfactory hormonal therapy were treated psychosomatically. Consequently, they became able to lead a happy life with their spouse. (3) Impotence. Take honey-moon impotence, for instance. Favorable results were obtained when the couple restored their tender feelings and the wife became co-operative in the treatment. It is important to establish a good working relationship in a couple when we treat a patient with functional impotence. (4) Surgical stress and testosterone. Plasma and urinary testosterone levels tended to decrease under surgical stress. We would emphasize that the treatment of male sexual disturbance should be approached not only from the physical standpoint but also from the psychosocial standpoint.
著者
横尾 能範
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 1979

複数の専攻コースをもつ大学の入学試験実施後には,志望コースと試験成績とを照合しながら,各コースの定員が充足するように公正な選抜作業が行なわれるべく努力されている.しかし,特定コースヘの志願者の偏りや,選抜ルールの共通理解不足などの理由からその作業が必ずしも円滑に進むとは限らない実情がある.本論は,出願時に志望コースを記入する形の入学試験における合格者選抜の一実態を分析し,選抜の基準となる複数のルール同士が互いに矛盾する場合があることを明らかにした.そこで,各ルールの精神を生かし,かつ矛盾のない一つの総合ルールとしてそれらを体系化してフローチャートに描いた.次に,その総合ルールの初期条件を種々に変えてシミュレーションを実施した結果,被選抜者の第一志望での合格者率,各コースの定員充足率,合格者平均点などその内訳に,初期条件の設定値いかんが一定程度の意図的な影響を与えうることや,選抜作業が著しく簡素化できることを明らかにした.
著者
藤沢衛彦 著
出版者
成輝堂
巻号頁・発行日
vol.兄妹の巻, 1926