著者
松場 拓海 石橋 澄子 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.450-455, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
21

高密な都市ほど自動車CO2排出量が少ないという関係性に基づき、脱炭素型まちづくりが推進されている。しかし、自動車CO2排出量を削減するためには、その経年変化を追跡する必要がある。そこで本研究では、COVID-19流行による交通行動変化を踏まえた自動車CO2排出量の長期的変遷を明らかにすることで、市街化区域人口密度が自動車CO2排出量の変化に与える影響を検証する。本研究では、全国都市交通特性調査を用いることで、1987年から2021年の34年間にわたる自動車CO2排出量の長期的変遷を追跡した。その結果、2015年までの全体的な増加傾向から転じて、2015年から2021年にかけては、COVID-19などの影響により自動車CO2排出量は全体的に転じたことが明らかとなった。さらに、自動車CO2排出量の変化要因としては、都市構造などの他の要因の存在が示唆された。
著者
狩川 大輔
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.442-447, 2023-12-15 (Released:2023-12-25)
参考文献数
14

航空管制業務は,「二度と同じ状況はない」と言われるぐらい多様で変化に飛んだ航空交通流を扱う業務であり,多数の航空機の安全かつ効率的な運航を支えている.本稿では,航空管制業務の一つである航空路管制業務の概要について述べると共に,航空路管制業務を対象とした人間工学的研究の一例を紹介することを通じて,変化する条件下で高い安全性を実現する上での航空管制官の持つ適応能力と状況に応じた動的な調整が果たす役割について概観する.それに基づき,人間の弱点の補完や失敗を防ぐための従来型の方法論に加えて,人間の適応能力を支援し,積極的に活用することにより,想定内外の変化に対するシステムの安定性・安全性を高めるという方向での安全アプローチの必要性について議論する.
著者
松田 賢 益岡 了 川合 康央
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会第70回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.414, 2023 (Released:2023-12-13)

旅客機が実用化されて以来、機内サービスはすべての航空旅客事業で必要不可欠なものとなっています。しかし航空機の旅行では、他の交通手段と比較して旅客空間内での移動や展望に制限があるなど特殊な環境に置かれます。私たちは旅客空間のデザインやサービスなどを調査し、その課題について検討した。そのために航空会社はさまざまなサービスを提供することで、乗客の利便を図ってきました。そこで私たちは、バーチャルリアリティを活用したサービスを提供することで、機内での乗客体験を向上させるためのさまざまな選択肢を検討しました。バーチャルリアリティを利用することで、より没入感のあるプライベートな体験を提供するサービスを提案した。
著者
武谷 龍 川合 康央
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会第70回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.452, 2023 (Released:2023-12-13)

本研究は,都市部における交通事故防止のためのデータ収集が可能なドライブシミュレーションシステムを開発したものである.都市モデルとして,手続き型モデリングが可能なHoudiniを用い,数式や処理を組み合わせ道路モデルや交差点などの道路環境モデルを生成し,このモデルをUnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンに組み込んで開発することとした.これまでのシミュレーションシステムは,高価で拡張性が低く,専用システムであることが多いものであった.本システムでは,ゲームなどのインターフェースを参考に,ユーザーが直感的に操作できるものとし,交通実験時に様々な設定を追加できるシミュレーションシステムとして開発を行った.
著者
森 勇樹 井上 隆 前 真之 佐藤 誠 八塚 春子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.79, no.697, pp.261-270, 2014-03-30 (Released:2014-07-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This report shows the actual situation of the spread and the use of mixing faucet and shower head in housing and the use of hot water, based on the result of web questionnaire. It was indicated that the single-lever mixing faucet recently became widespread about 90%, and that the ratio of using hot water in kitchen differed considerably between about 80% in winter and 20% in summer. It was also suggested that though they did not need hot water in summer and middle season, about a single-lever mixing faucet, there was high ratio of using the lever at the position where hot water was mixed.
著者
Masato Nitta Takanori Ishikawa
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.23-30, 2024-01-11 (Released:2024-01-11)
参考文献数
60

Henneguya postexilis Minchew, 1977 (Cnidaria: Myxobolidae) is described as a novel record for Japan. It was found in the gills of non-native Ictalurus punctatus (Rafinesque, 1818) (Siluriformes: Ictaluridae), which were collected from the Omoi River, a tributary of the Tone River system in Tochigi Prefecture, central Honshu. This myxozoan species is native to North America and its discovery from Japan in this study is the second case reported from a non-native region. Until now, H. postexilis has only been observed in I. punctatus, suggesting that it is an introduced alien species in Japan, likely accompanying its host.
著者
川崎 有亮 寺嶋 宏明 上田 修吾 福永 明子 八木田 正人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.1547-1551, 2013 (Released:2013-12-25)
参考文献数
24

症例はtrisomy8陽性骨髄異形成症候群とSjögren症候群で当院加療中の32歳の女性.右下腹部痛と発熱を主訴に緊急入院し,絶食と抗生剤加療で症状は改善したが,入院9日目に腹痛が再燃,腹部CT検査で消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断された.緊急開腹術で上行結腸および終末回腸の穿孔と判明し,結腸右半切除+回腸人工肛門造設術を施行した.回盲部病変は病理学的診断で非特異的潰瘍であり,口腔内アフタ性潰瘍・顔面の痤瘡様皮疹・手指関節炎の特徴的な臨床症状もふまえて,不全型Behçet病の回腸潰瘍穿孔の確定診断に至った.近年,本邦におけるtrisomy8陽性骨髄異形成症候群に腸管Behçet病を併発する報告が増えており,このような場合は穿孔のリスクを有する回盲部領域の潰瘍合併の可能性を念頭に置き,できるだけ早期の下部消化管検査を施行するべきである.
著者
後藤 晶
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Special_issue, pp.S35-S38, 2018 (Released:2019-04-19)
参考文献数
15

人間は常にいつ生じるかわからない「変動」に直面しながら生きている.本研究においては突然起こる外生的な変動を「カタストロフ」と定義する.本研究においてはそれらの変動が利他行動に与える影響を検討する.そのために,パートナーマッチング繰り返し公共財ゲームと独裁者ゲームを組み合わせた新たなゲームである「公共財カタストロフ独裁者ゲーム」を考案し,クラウドソーシングを用いた大規模オンライン実験による実験的な検証を行った.その結果,①分配率は損失者が分配者,もしくは受益者であると大きくなること,②損失者による分配額に比べて,非損失者による分配額の方が大きいこと,③損失者に対する分配の頻度が多い,また非損失者による分配の頻度が多いことなどが明らかとなった.これらの結果は災害等の事象が生じた際の協力行動は利他的動機に支えられている可能性を示唆している.今後の課題として,外集団に対する行動傾向の解明,およびクラウドソーシングを用いた実験の妥当性の検討があげられる.
著者
遠藤 崇浩
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.227-239, 2021-11-01 (Released:2022-05-17)
参考文献数
39
被引用文献数
3

日本では地震被害が頻発するが,その度に飲用水あるいは生活用水の確保が大きな社会問題となっている。その方策は多岐にわたるが近ごろ非常時における地下水利用,いわゆる災害用井戸(防災井戸)が注目を集めている。主に河川水に依存する水道システムは水の長距離輸送を前提としていることが多い。しかしその関連施設は必ずしも耐震化されていないため地震被害に脆弱である。これに対して地下水は面として流動しているため需要地に近い資源であり,緊急時の代替水源として有望視されている。災害用井戸は過去の震災で活用された例があるが,日本全体でどれくらい普及しているのか調査されてこなかった。そこで本稿では国内1741市区町村の地域防災計画を基に,日本の災害用井戸の地域分布を明らかにした。
著者
平田 統一 喜多 一美
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

牛の定時人工授精プロトコールの卵胞成熟期にアルギニン5あるいは60g静脈投与することは受胎率を改善させる。このアルギニンの作用は、1)タンパク質同化の促進や血中アンモニアの解毒促進、血流量増加などを介して母体の妊孕性を改善すること、および2)卵胞や卵子成熟に直接影響することを介して発揮される可能性がある。アルギニン投与による牛の受胎率改善は、安価で、消費者に許容される安全な新しい繁殖技術となり得る。
著者
長谷部 政治
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.88-96, 2023-08-09 (Released:2023-08-30)
参考文献数
38

温帯地域では季節の移り変わりによって外部環境が劇的に変化する。このような四季が存在する地域の生物の多くは1日の日長変化から季節を読み取り,生理状態や行動を適切に調節している。体内で約24時間周期のリズムを刻む体内時計である概日時計が,この日長測定に重要な役割を果たしていると考えられている。一方で,情報処理の中枢である脳神経回路内で,概日時計に基づいた日長情報がどのような神経シグナルを介して伝達され,細胞レベルでどのような日長応答を起こしているのかは長年不明であった。著者らの研究グループは,明瞭な日長応答を示すカメムシなどの野外採集昆虫を用いて,細胞レベルでの生理学的解析とRNA干渉法による遺伝子発現操作解析を組み合わせることで,この概日時計に基づいた日長情報の神経処理機構の解明に取り組んできた。本稿ではまず,概日時計に基づいた日長測定機構のこれまでの研究の歴史について紹介する。続いて,近年著者らが生殖機能に明瞭な日長応答を示すホソヘリカメムシを用いて明らかにした,日長情報を伝達する神経シグナルとそれを受け取った生殖制御細胞での日長応答について紹介したい。