著者
瀧 大知
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.123-139, 2016-03-11

近年、日本では近隣諸国との歴史認識問題や領土問題に端を発した排外主義的な傾向が強まり、路上やインターネット上で、おもに在日コリアンをターゲットにしたヘイト・スピーチが行われ、大きな社会問題となっている。このような事態に対してこれまで様々な言説が生まれてきた。しかし、こうした言説では、ヘイト・スピーチが持つ「暴力性」を問題視することはなく、むしろヘイト・スピーチをする人々が注目されるばかりで、被害者の姿がほとんど見えなくなっているという問題が見られる。こうした言説を批判的に検討することにより、本稿ではこのような被害者不在の言説が結果として、ヘイト・スピーチを黙認してきた圧倒的多数の無関心層と同様の役割を果たしてきてしまったことを明らかにする。
著者
荒川 政彦 和田 浩二 はやぶさ2 SCI/DCAM3 チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.152-158, 2013-09-25 (Released:2017-08-25)

はやぶさ2には小型の衝突装置(SCI)が搭載されており,これは秒速2kmで小惑星表面に衝突してクレーターを形成する.このクレーターは小惑星内部を覗くための小窓であり,リモートセンシング観測やサンプル回収から,小惑星表面の宇宙風化や浅内部構造に関する知見を得る.一方, SCIが衝突する様子は分離カメラ(DCAM3)により撮影され,イジェクタカーテンの拡大する様子や小惑星周囲を飛び交うダストを観察する. SCIによる小惑星への衝突は宇宙衝突実験ともいえる.我々はこの世界で最初の小惑星における宇宙衝突実験の機会を利用して,微小重力下における「本物の小惑星物質」のクレーター形成過程を明らかにする.
著者
川口 大朗 向 哲嗣 宮川 五葉
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.39, pp.69-72, 2016-05-31

小笠原諸島固有のラン科植物シマツレサギソウは、父島列島(父島、兄島、弟島)と母島列島(母島、向島)に分布している。母島列島では近年減少傾向が見られ、列島全体で20~30 個体しか確認できていない。今回の調査により、食害による更新阻害の可能性が示唆され、保全対策が必要な状況が確認された。
著者
伊藤 嘉浩 佐藤 洸志
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_95-2_120, 2014

<p>本稿では、日本の映画料金に関して、映画館関係者へのインタビューおよび、顧客側へのアンケート調査による、価格反応性分析、PSM法による価格受容意識分析、料金に関するイメージ分析の3つの分析を行い、割引制度などの価格戦略の考えや効果、および顧客の考える価格意識などを明らかにした。これらの結果から、映画料金を透明化して、600円程度まで引き下げることを提言し、飲食物の売上げへの貢献により、利益が増加する可能性を提示した。学術的には、ものの商品にはあまり見られない、アート消費である映画特有の価格反応性や価格受容意識が見られ、特に、映画経験が豊富で、非常に高関与なユーザー層が存在することが明らかになった。</p>
著者
沢田 輝 磯﨑 行雄 丸山 茂徳
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.5, pp.705-721, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
116
被引用文献数
1 2

The extensive occurrence of a felsic continental crust is one of the unique features of the Earth. The growth history of the continental crust has been a key issue in understanding the origin and evolution of the Earth. In particular, recent geological studies indicate that subduction of the continental crust into the mantle has been greater than previously imagined. The current understanding of the growth of continents and the differentiation of the crust and the mantle of the Earth is reviewed based on a detrital zircon geochronology. One of the most important achievements arises from the analysis of the age structure of individual continents and secular changes over time. The new detrital zircon geochronology suggests that the sizes of the continents have changed over time, which has been an important factor in the growth of the continents. Large continents, such as the modern examples, can preserve older crusts in their interiors, which are separated from active continental margins. Conversely, in the early Earth, continents were probably formed by the amalgamation of small fragments of crust, such as oceanic island arcs. It is speculated that the smallness of the continents was the most significant cause of the poor preservation of Hadean and Archean crusts, despite putative expected active crustal production. Consequently, the recycling of the continental crust occurred in great magnitudes during the early Earth's history. The large-scale subduction of felsic crust represents one of the most important aspects in studies of the early Earth.
著者
新井 葉子
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.35-48, 2017 (Released:2018-07-11)
参考文献数
50

本稿は、これまであまり整理されていなかった明治期の軍用空中写真撮影状況について明らかにする試みである。まず、日本初の空中写真撮影について整理するにあたり、「日本で初めて軍用空中写真の撮影が試みられたのはいつか」という問いと、「日本で初めて軍用空中写真の撮影が成功したのはいつか」という問いとに分けて考察する。次に、日本における空中写真画像の普及を検討するために、「日本で初めて空中写真を掲載した一般刊行物はどれか」、「日本で撮影された空中写真画像のうち、現存する最古のものはどれか」、「日本で空中写真が一般国民の関心を引くようになった時期はいつか」との問いを立てて、本稿執筆時点での結論を記述する。以上の5つの問いを通して、明治期に気球から撮影された軍用空中写真の来歴を整理するものである。
著者
米田 彬史 板倉 光 荒井 考磨 海部 健三 吉永 龍起 三宅 陽一 白井 厚太朗 木村 伸吾
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.18-00038, (Released:2019-03-15)
参考文献数
69

日本におけるニホンウナギの自然分布域を明らかにするために,文献調査からシラスウナギの来遊記録をまとめ,耳石安定同位体比分析に基づく判別手法から全国の河川・湖沼から収集した個体を天然加入個体と放流個体に判別した。その結果,九州一帯,瀬戸内海沿岸,青森県以南の太平洋沿岸,京都府以南の日本海沿岸は自然分布域の主要部,福井県から青森県までの日本海沿岸は自然分布域の縁辺部と推定された。しかし,主要部であっても天然加入個体の割合が3割程度以下の場合もあり,資源が放流個体に依存している状況がうかがえた。
著者
Shintaro TANABE Eiiti KASUYA Takahisa MIYATAKE
出版者
The Herpetological Society of Japan
雑誌
Current Herpetology (ISSN:13455834)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.14-22, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
29

The traits of many animal species exhibit individual and sexual differences. Individuals repeatedly receiving a stimulus without harm become habituated to it. However, few studies have been conducted on individual and sexual differences in the process of habituation to unfamiliar food stimuli. Therefore, we hypothesized that individual differences or sexual differences would be observed in reaction to an in-lab food-stimuli presentation of potential prey items (after that “food stimuli”). We tested the hypothesis using the Japanese tree frog Hyla japonica, and conducted statistical analyses of these results. A generalized linear model (GLM) showed individual and sexual differences in time to get used to the food stimuli. Females habituated more rapidly to food stimuli than males. The difference between sexes is discussed in view of two ultimate and one proximate reasons.