著者
幸田 芳紀 伊藤 康一 青木 孝文
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.312-320, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)
参考文献数
11

2015年に国連は,「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(Transforming our world:the 2030 Agenda for Sustainable Development)を採択し,その中でSustainable Development Goals(SDGs)を発表した.このSDGsは17個のゴールと169個のターゲットで構成されており,その目標16ターゲット16.9では,「2030年までに,出生登録を含むすべての人に合法的な身元を提供する」ことを宣言している.これは,出生直後から全ての人が出生国の国民として登録されることで,国民として享受すべき社会保障サービスを受けられる環境を確立することにほかならない.国民の登録・管理に利用できる個人認証技術の一つとして指紋認証がある.現在までに数多くの国々が指紋認証に基づいた国民IDシステムを導入している.しかしながら,新生児に利用可能な指紋認証システムが開発されておらず,そもそも現状の国民IDシステムでは,新生児を含む5歳以下の子供を登録対象としていない.本稿では,SDGsターゲット16.9の実現に向け,指紋認証技術の適用範囲を出生直後の新生児にまで拡大する取組みについて述べる.
著者
山田 晃司 橋本 竜作 立岡 愛弓 幅寺 慎也
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.43-51, 2019-03-31 (Released:2020-04-03)
参考文献数
17

左中前頭回から下前頭回, 島前方の損傷後に漢字と仮名の書字障害を呈した軽度失語症例において, 仮名やローマ字の書字とタイピングについて検討した。症例は 73 歳, 右利き男性。発症前からタッチタピングが可能であった。本例に仮名とローマ字の書き取り・タイピング課題を実施した結果, 書き取り課題の成績のみ低下を認め, その誤反応は直音に比べ, 特殊音に多かった。このことから本例は「音節-仮名文字書記素」および「音節-ローマ字書記素」への変換障害が示唆された。本例は発症前からタイピングに習熟していたことから, 「音節-ローマ字書記素」の変換処理を介さずに, 「モーラ-タイピング運動」へと変換する独立した機能単位が構築されていた可能性がある。それゆえ, ローマ字の書字障害とタイピング能力の保存といった状態を呈したと考えられた。
著者
鈴木 晃志郎 伊藤 修一 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.31, 2020 (Released:2020-03-30)

研究目的 異なる2種の点分布間の空間的関係を分析する方法である最近隣空間的随伴尺度(以下NSM)は,地理学では商業集積の分析などに用いられ,多くの成果を挙げてきた(Lee 1979, 石﨑1998).NSMは異なる2つの点分布傾向の随伴性を示す指標であり,ランダム分布である1を挟んで値が大きいほど2者は互いに避け合うように分布し,0に近いほど異なる2種の点同士が近接していることを示す.従って,2種の点分布でさえあれば,使用データが小売店舗などの位置情報である必要はないはずである. 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,何処かで何者かに認知されなければならない.ゆえに,共有された心霊スポットの布置は,社会が超常現象の舞台に与えた価値づけや役割期待の反映と目しうる.本発表はNSMを用いて,心霊スポットの空間分布特性をその他施設の分布傾向から検討することを試み,そこから怪異に投影された社会的役割を捉えることを企図している.主たる関心は,見えない怪異を地理学的・定量的に可視化することに注がれ,超常現象や心霊スポットそのものへのオカルティズム的関心は有しない.研究方法・分析対象 インターネット最大の心霊スポット紹介サイト「全国心霊マップ」から2019年11月入手した心霊スポットの全国住所データ1690件をサンプルとし,国土数値情報の公共施設データを別途用意してQGISで座標値を取得, NSMにより二者の随伴性を検討した.結果 結果を以下の表に示す.紙幅の都合から詳細は述べないが,仮説と反し公共施設のほぼ何れとも異なる独自の分布傾向を示すことが分かった.更に分析を進め,口頭発表では追加データやGIS による解析結果を示す予定である.文献:石﨑研二 1998. 店舗特性・立地特性からみた世田谷区におけるコンビニエンス・ストアの立地分析. 総合都市研究65: 45-67.Lee, Y. 1979. A nearest neighbor spatial-association measure for the analysis of firm interdependence. Environment and Planning A 11: 169-176.
著者
栗栖 悠貴 後藤 雅彦 田口 綾子 研川 英征
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2020 (Released:2020-03-30)

近年激甚化・頻発化する自然災害に備えるためには,地域の災害に対する危険性を我が事として理解しておくことが重要である.国土地理院では,従来から土地の成り立ちに関する情報(地形特性情報等)を通して地域の危険性について発信してきた.しかし,これらは地形分類など専門性が高く,危険性を実感しにくいため,十分に伝わりにくいという課題があった.そこで,国土地理院は,防災意識を高め,地域全体の防災力を底上げするためには防災教育・地理教育が重要であるとの認識にたち,教育現場で活用可能なわかりやすいコンテンツの整備に取り組んでいる.その中で,令和元年6月19日より国土地理院のウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に自然災害伝承碑の掲載を開始した.自然災害伝承碑には災害の様相や被害の状況などが記載されているため,地域に暮らす住民が災害の危険性を身近に感じやすい有力なツールになる.しかし,現在の教育現場では,教材の研究,作成をする時間が少ないことが原因で,有用な情報であってもすぐ使える形になっていないと活用されない傾向がある.そのため,自然災害伝承碑も授業ですぐに使えるコンテンツとして提供する必要がある.本報告では,「地理教育の道具箱」(https://www.gsi.go.jp/CHIRIRIKYOUIKU/index.html)に掲載しているコンテンツを例に自然災害伝承碑を活用した防災・地理教育支援について紹介する.
著者
研川 英征 後藤 雅彦 大角 光司 栗栖 悠貴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.132, 2020 (Released:2020-03-30)

1.はじめに自然災害伝承碑は,過去に発生した自然災害の教訓を後世に伝えようと先人たちが残した恒久的な石碑やモニュメントで,「過去に発生した自然災害に関する発生年月日,災害の種類や範囲,被害の内容や規模」が記載されたものである.国土地理院では,「自然災害伝承碑」の情報を,ウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に令和元年6月19日から掲載を開始した.令和2年1月15日現在で,自然災害伝承碑の公開数は, 45都道府県139市区町村の416基である.公開した自然災害伝承碑の情報は,防災教育をはじめとする地域の防災力を高めるための様々な用途に活用可能である.そこで,自然災害伝承碑の公開に関するこれまでの経緯のほか,地形特性情報との重ね合わせにより本取組の意義について報告する.2.経緯近年激甚化・頻発化する自然災害に備えるためには,土地の成り立ちを知り,地域の災害に対する危険性を理解することが重要となる.たとえば低地の微地形は,河川の氾濫等の積み重ねで形成されていることを知れば,その土地では浸水のリスクがあることが理解できる.国土地理院では,このような地形特性情報の整備と提供をおこなってきたが,地形等の情報だけでは,十分に伝わりにくいという課題があった.そのため,国土地理院では,地形特性情報だけでなく,その地域で実際に起こった災害そのものの情報を伝える自然災害伝承碑を災害履歴情報として分かりやすく提供し始めた.自然災害伝承碑の情報を伝えることで,身近な災害への理解を深め,土地の成り立ちの理解促進による地域防災力向上への貢献を目指している.3.地形特性情報との重ね合わせ地理院地図上で,自然災害伝承碑を治水地形分類図や標高情報と重ねると,実際にどのような場所で,どのような災害が起こっていたのかを知ることが出来る.たとえば堤防の決壊が発生したことを伝承している場所について,治水地形分類図と自然災害伝承碑を重ね合わせることで,自然災害伝承碑が旧河道に隣接する微高地上に建立されていることや,自分で作る色別標高図及び陰影起伏図を重ね合わせることで,自然災害伝承碑が建立されている土地は,周囲よりも低い土地であることが読み取れた.自然災害伝承碑の情報を通して,当該箇所の災害履歴が分かるとともに,地形特性情報の意味を実感することが可能となる.4.まとめ地形特性情報に,地域の方々によって伝承されている災害履歴情報である自然災害伝承碑を組みあわせることで,具体的にそこで起こった災害の背景を知ることができ,災害をより身近に感じられるきっかけとなる可能性がある.
著者
横川 直人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.10, pp.2960-2965, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2

ヒドロキシクロロキンは,半世紀以上前に初めて承認されて以降,日本を除く全世界70カ国以上で皮膚エリテマトーデス,全身性エリテマトーデス,関節リウマチの治療薬として承認され,世界的な標準的治療薬として,教科書や欧米のガイドラインには必ず記載されている.日本では過去に抗マラリア薬は存在したが,適切な使用方法が周知されなかったことによるクロロキン網膜症の懸念より昭和49年より一剤もなくなり,ヒドロキシクロロキンは開発されることはなかった.日本にSLEの標準的治療薬がないことに危惧した著者らは,2009年に日本ヒドロキシクロロキン研究会を結成し,未承認薬の開発要望書を提出した.その結果,2010年11月の未承認薬・適応外薬検討会議において,本剤の医療上の必要性が正式に認められ,製薬企業に対して開発要請が出された.2012年より,産官学の協力により全身性エリテマトーデスおよび皮膚エリテマトーデスの患者を対象に製薬企業による本薬の開発治験が行われる.稀だが重篤な副作用である網膜症を生じさせないためにも,本治験後の国内承認を待ち,本剤の個人輸入は控えることが肝要である.
著者
岡田 全司
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.356-368, 2008 (Released:2008-10-31)
参考文献数
22
被引用文献数
2

1998年,米国CDC及びACETは新世代の結核ワクチン開発の必要性を発表した.しかしながら,BCGワクチンに代わる結核ワクチンは欧米でも臨床応用には至っていない.我々はBCGを凌駕する強力な結核予防ワクチン(HVJ-エンベロープ(又はリポソーム)/HSP65+IL-12 DNAワクチン)を開発した.結核免疫を強く誘導するヒト結核菌由来のHSP65蛋白をコードするDNAを用いた.プライム・ブースター法を用い,HSP65 DNA+IL-12 DNA (HVJ-エンベロープベクター)のワクチンはBCGよりも1万倍強力な結核予防ワクチンであり,CD8陽性キラーT細胞の分化,IFN-γ産生T細胞の分化を増強した.肺の結核病理像を改善した.このワクチンは多剤耐性結核菌に対しても治療ワクチン効果を示した.さらに,ヒト結核感染モデルに最も近いカニクイザル(Nature Med. 1996)を用い,このワクチンの強力な有効性を得た.カニクイザルにワクチン接種後ヒト結核菌を経気道投与し,1年以上経過観察した.免疫反応増強及び胸部X線所見・血沈,体重の改善効果が認められた.また,生存率改善・延命効果も認められた.   BCGワクチン・プライム-DNAワクチン・ブースター法を用いた群は100%の生存率を示した.一方,BCGワクチン単独群は33%の生存率であった.このワクチンが強力な成人ワクチンとなることが示唆された.

11 0 0 0 OA Japanische Märchen

出版者
T. Hasegawa
巻号頁・発行日
vol.Der Kampf der Krabbe mit dem Affen.DEUTSCH VON DR.A.GROTH., 1885

16 0 0 0 OA Japanische Märchen

出版者
T. Hasegawa
巻号頁・発行日
vol.Der Sperling mit der geschlitzten Zunge., 1885
著者
川野 芽生
出版者
日本比較文学会
雑誌
比較文学 (ISSN:04408039)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.22-36, 2017-03-31 (Released:2020-04-01)

The Japanese translation of The Lord of the Rings by Seta Teiji is criticized to be too ‘Japanesque' and incoherent as to his choice of word used to translate the place-names in the text. He has translated some place-names by sense, but others phonetically. However, this incoherence and Japanization is deliberate. Tolkien, the author of The Lord of the Rings, has set a strict rule about nomenclature in the text. He has used multiple languages to name places in the Middle-earth, his invented world. This multilingualism shows the variety of peoples living in the world. He has written a guide to the names in this novel for the use of translators of this novel and has said in it that names consisted of present-day English vocabulary should be translated into the language of translation according to their meaning and the others should be left unchanged. The apparent incoherency of Seta's translation has come from his following this rule. In addition, he has distinguished names to be translated word-forword from names to be modified to give them an appearance of actual Japanese names. He has translated nonliterally the tongue of Hobbits, through whose eyes the events are reported, thus making readers feel that they are familiar, while Common Speech has been translated literally. Though Hobbiton in the Middle-earth can be identified with England, Tolkien gives greater importance to the universality of his imaginary world than to the Englishness of it. Seta's Japanization of the world is a response to Tolkien's choice.
著者
清水 勝嘉
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.72-86, 1976

In this papes, administrative orpanization for public health, tuberculosis control and prevention of venereal disease, which had been involved in the problems of public health in the early years of the Showa Era, were discribed. 1. In those days, public health administration had been centrlized to the Health Bureau and Social Bureau of the Ministry of Home Affairs, and they gave their instructions to the Public Health Section of the Prefectural Police Department. Countermeasures for the chronic infectious diseases were the most imoprtant problems at that time. 2. The mortality from tuberculosis in Japan was two or three times higher than that of Western countris, and there were poor and insufficient preventive facilites in all over the country. It was epock making in 1932 that the Health Guidance Clinic were established in every prefectures in order to prevent against tuberculosis by the subsides offered from NHK (Nihon Hoso Kyokai), but not by the national budget. 3. Licenced and unlicened prostitute, geisha, waitress and barmaid had been the major contagion source of venreal disease. Legal inspection system for the syphilis was forcibly applied only to the licenced prostitutes, but the others took the medical check only when they were arrested. Since 1928, when the original Venereal Disease Prevention Law enforced, all prostitures, streetwalkers, geishas, barmaids and waitresses have forcibly taken medical check for the venereal disease.
著者
三村 喬生 松村 杏子 松村 優哉 関家 友子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.181-186, 2020-04-01 (Released:2020-04-01)

テキスト分析とは,文字として符号化された筆者の意図を定量的な手法により逆符号化するプロセスである。特に大量のデータを用い,その内部に潜む構造や背後にあるアルゴリズムを統計的に推定する手法が盛んに研究され,多くのプログラミング言語において実装が進んでいる。その中でもR言語はプログラミング初心者でも見通しよく解析プロセスを進めることができるため入門に適している。そこで本稿ではテキスト分析初心者に向けた,本格的な分析に挑む前に知っておくべき統計的な基礎知識・基本的な分析環境の構築法・小規模データによる解析の具体事例をハンズオン形式でまとめた。