著者
桑原 雅夫 井料 美帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_493-I_505, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
17

本研究は,古の都である平安京について,人々の移動パターンと貴族の動きを定量的に解析し,考察を加えたものである.平安京については,道路ネットワークの構造や道幅など幾何構造に関することは,よく知られているものの,その中で人々がどこに立地し,どのように移動していたのかについては,ほとんど調査分析が行われていない.本研究では,まず平安京やその前の律令時代の文献に基づいて,平安京の土地利用,身分別の住居の分布を推定した.次に,土地利用や住居分布に基づいてOD交通量を推定して交通量配分を行い,平安京街路の交通量について考察を行った.また,特権階級であった少数の貴族については,一般の庶民や役人の動きとは異なることから,別途に藤原実資の小右記に基づいて再現した.
著者
稲垣 希望 池島 徳大 田窪 博樹
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.73-81, 2017-03-31

本研究では、東(1997)が考案した問題の外在化技法としての虫退治技法の考え方を取り入れた心理教育プログラムを開発し、B小学校第6学年C学級に全7回導入し、その効果等について検討を試みた。プログラムの効果測定には、栗原・井上(2010)の「学校環境適応感尺度(ASSESS)」、庄司(1993)の「児童のself-control尺度」を用いた。その結果、「生活満足感」「友人サポート」両因子に統計的に有意な差が見られた。また、統計的に有意な差は見られなかったものの、児童らのセルフ・コントロールが若干向上した。これらの結果に加え、児童らが取り組んだワークシートや振り返りなどから、本プログラムの実施により、児童らは「問題を外在化する」スキルを身に付け、お互いに困っていることを「虫」として開示し、さらに、日常生活において学んだスキルを般化できるようになった。
著者
西村 勝治
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌内科 (ISSN:00221961)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.91-95, 2013-07-01

ステロイドは精神症状の発症リスクがもっとも高い薬剤の一つであり,自殺のリスクは7倍に上昇する.気分障害(躁病,うつ病,混合性の各エピソード),精神病性障害,せん妄,軽度認知障害など多彩な臨床症状を呈する.急速・高用量投与時には躁病エピソードが,長期投与ではうつ病エピソードが生じることが多い.ステロイド誘発性精神障害(CIPD)の発症は用量依存的であるため,治療の原則はステロイドの減量・中止である.対症療法として,躁病エピソードには抗精神病薬や気分安定薬が適応となる.うつ病エピソードには慎重に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用い,三環系抗うつ薬を使用しない.せん妄,精神病性障害には抗精神病薬を用いる.精神科医との連携が欠かせない.
出版者
内務省地理局
巻号頁・発行日
vol.巻之107 多磨郡之19,巻之108 多磨郡之20,巻之109 多磨郡之21,巻之110上 多磨郡之22上,巻之110下 多磨郡, 1884
著者
木本 正英 更屋 勉 新井 諒也 津島 寿幸 山西 行造
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.158-161, 2019-09-20 (Released:2019-09-25)
参考文献数
11

日常診療において,非ステロイド性消炎鎮痛薬(以下NSAIDs)経皮製剤(湿布)による消化管粘膜障害などの有害事象に十分留意はされていない.しかしながら,本来1~2枚の局所投与目的で使用すべきNSAIDs経皮製剤が,患者判断で複数枚連日長期使用されていることが少なくない.4枚を超える多数枚を常用すると,使用枚数に比例してNSAIDsの血中濃度が増加して経口剤同様に有害事象を発生させる可能性がある.今回,2年にわたり治癒が遷延した胃潰瘍が,経皮製剤の使用中止によりただちに治癒したという症例を経験した.①Helicobacter pylori(以下H.p.)未感染,②NSAIDs内服歴なし,③経皮製剤の処方が他院によるため未把握のまま常用されていた,という偶然が重なったことにより,経皮製剤が上部消化管の粘膜障害の原因となることを特定し得た.そこでこれを報告し,NSAIDs経皮製剤の危険性や適正使用について若干の文献的考察を行う.
著者
市川 玲子 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-90, 2014-12-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
44
被引用文献数
4 1

これまでに,幅広い類型のパーソナリティ障害(PD)が自尊感情の低さと関連することが示されている。本研究では,PDと3つの様態の自尊感情(特性自尊感情,状態自尊感情によって測定される自尊感情の変動性,および自尊感情の随伴性)との関連を検討した。大学生・大学院生66名に対し,質問紙への回答と携帯電話を用いた継続調査への回答を求めた。対象者は,質問紙ではPD特性,特性自尊感情,随伴性自尊感情に関する項目に回答し,継続調査では状態自尊感情の項目に7日間回答した。結果から,特性自尊感情と境界性・依存性・回避性PD特性との負の関連,演技性PD特性との正の関連が示された。また,境界性PD特性は自尊感情の変動性との正の関連を示した。本研究の結果から,特性自尊感情は幅広い類型のPD特性と関連する一方で,自尊感情の変動性は境界性PD特性と特に関連するものであることが示唆された。
著者
張 成年 柳本 卓 小西光一 折田 亮 駒井智幸 小松浩典
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.AA2019, pp.AA2019-1, 2019 (Released:2019-09-30)

Two individuals of “monster larvae” belonging to the genus Cerataspis (Decapoda: Penaeoidea: Aristeidae) were collected in the western North Pacific in 2016. The smaller one (carapace length 7.3 mm) was collected by daytime plankton net operation towed at a shallow layer (25 m to the surface), and the larger one (carapace length 11.5 mm) was collected by a nighttime plankton net operation towed from 208 m to the surface. These larvae have a pair of large spines on the lateral surface of the carapace, and in this regard they agree with C. petiti Guérin-Méneville, 1844 reported from the Atlantic. However, the mitochondrial 16S rDNA sequences of these two individuals matched with those of C. monstrosus Gray, 1828, the senior synonym of the widely used name Plesiopenaeus armatus (Spence Bate, 1881), suggesting that the presence and absence of the spine might be intra-specific morphological plasticity or variations among different developmental stages.
著者
長谷 隆司 中山 武典 尾関 寿美男 坂西 敏之
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.93-97, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
11

超電導マグネットによる7.0 Tの磁束密度の磁場を印加することによって,通常の磁場を印加しない場合(NMT)に比べて,流動水中の普通鋼板のさびをより抑制できることが判明した.X線回折の定量分析結果は,さびの抑制に役立つと見られるアモルファスやナノサイズのさびの結晶の量の増加に,水の磁気処理(MT)が有効であることを支持している.NMTとMTの両方の場合で流動水が流れる配管の内部をモニタする実験を行って,MTの場合に配管内の鉄さびの付着をより抑制することがわかった.
著者
立石 浩史
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
pp.1-35, 2016-03-25

首都大学東京, 2016-03-25, 修士(社会学)

18 0 0 0 IR 性的モノ化再訪

著者
江口 聡
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.101-114, 2019-01

「性的モノ化」は1970年代以降の第二派フェミニズムの中心的な概念の一つで、性犯罪、セクハラ、売買春、ポルノ1、美人コンテスト、性の商品化など、フェミニズムがとりあげた数多くの「女性」問題において、男性中心的な社会慣行(家父長制)における女性の隷属的地位を説明する概念としていまだに頻繁に用いられており、また哲学的な討議も続けられている(Papadaki, 2015)。この性的モノ化の問題は12年前の拙論「性的モノ化とセックスの倫理学」であつかった(江口, 2006, 本誌第9号)。前回この問題をとりあげたのは、「セックスの哲学」という、当時国内では関心の低かった応用哲学・倫理学の一分野の問題領域と興味深さを示すためであった。しかしその後この「モノ化」の問題はますます哲学者たちの関心をひくと同時に、性の商品化が盛んになっている現代社会で一般の興味をひくようになっているために、再度考察してみたい。Various forms of "sexual objectification" have long been criticized by feminist authors. This essay reconsiders the feminist conceptions of "sexual objectification" and argue that, (1) "objectification" is not always immoral, (2) not only men but also women may sometimes (and often) be objectifying members of the opposite sex, and (3) some forms of objectification, especially self-objectification, sometimes may be beneficial and even empowering. Feminist conceptions of "objectification" have to be reconsidered and reconstructed through empirical studies.
著者
松下 幸生
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.3-9, 2018 (Released:2019-02-23)
参考文献数
28

Gambling in Japan is considered to be unique because of pachinko, a legal mechanical gambling device. In 2016, the estimated size of the pachinko market was 197 billion US dollars, far exceeding other types of legal gambling in Japan. The most recent epidemiological study in Japan revealed that prevalence of gambling disorder (GD) was 3.6% for lifetime and 0.8% in the previous 12 months. That study also revealed that only 10% of the participants with a lifetime GD and 17% with a present GD had ever asked for help with gambling, and hardly any of the participants had sought treatment. These results clearly showed a serious treatment gap for participants with GD, as has frequently been reported in other countries. Cognitive behavioral therapy is a standard treatment for GD and a six-session treatment program is conducted at the Kurihama Medical and Addiction Center.Impulsivity is one of the major risk factors for the development of GD. Genetic and environmental factors and their interactions have also been shown to be involved in the development of GD. Stressful life-events are also risk factors for GD. A positive correlation between violence and gambling has only been observed in men and a previous study reported that women tended to gamble to cope with anxiety and negative feelings. Therefore, the relationship between stress and GD might differ by gender.
著者
松坂 俊光
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.725-732, 2013 (Released:2013-10-24)
参考文献数
31
被引用文献数
2 6

74 0 0 0 OA 古紙処理と薬品

著者
平岡 誠
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.297-304, 1989-03-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
11
著者
赤堀 幸男 村上 篤司 星 昭二
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 4

多剤耐性菌による院内感染が医療現場で重要な問題になっている。易感染患者を多く抱えるICU,CCU,NICUなどでは特に大きな問題である。院内感染防止対策としては,手指洗浄による交差感染経路の遮断が基本的かつ最も有効とされている。しかし,すべての菌に有効な殺菌剤はなく,院内感染を根絶できないのが現状である。オゾンを水に溶解したオゾン水は,強力な殺菌作用を有し,一般細菌はもちろんmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), vancomycin-resistant enterococci (VRE)などの多剤耐性菌に対しても,他の殺菌剤より極低濃度,5秒程度の極短時間で完全な殺菌作用を示す。一方,オゾン水中のオゾンは自然分解するため貯蔵できず,用時調製用のオゾン水供給装置が必要であり,作用機序,殺菌効果の特徴からくる独特の注意点もある。これらの問題点を考慮しても,オゾン水は手指洗浄用として最適であり,排水に悪影響しないなど,環境にも配慮した有効な院内感染対策方法を提供するものと考える。
著者
荒 瑞穂 横山 ゆりか
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>Ⅰ はじめに</p><p>近年,アニメやマンガの聖地巡礼という現象が話題になっている.新聞記事やテレビ番組などでも特集されるなど,アニメやマンガに興味がない者もこれらのコンテンツに触れる機会は多い.アニメ聖地巡礼に関する先行研究は数多く存在するが,『らき☆すた』を扱った谷村(2011)や『ガールズ&パンツァー』を扱った石坂ほか(2016)など,以前から対象となる作品が多く存在し研究対象として注目されてきた,作品中に現実に存在する背景が描かれている作品の研究が主である.しかし,ファンの間ではそれらの形態以外の作品での聖地巡礼も行われている.例えば,『刀剣乱舞』や『薄桜鬼』などの作品中に背景が描かれていない作品でも聖地巡礼が行われている.</p><p>そこで本研究では,アニメ聖地巡礼を作品中の描写などとの関連から4種類に分類し,そのなかで特に,先行研究で着目されてこなかった形態の聖地に焦点を当てて分析を試みる.</p><p></p><p>Ⅱ 聖地の分類の仮説</p><p>本研究では,作品に関連しファンの間で行われている聖地巡礼を,作品の描写の中で一つの実在する町が細かに再現され舞台の探訪を可能としている「狭義聖地」と,描写の中で実在する町の再現がない「広義聖地」の2種類に大きく分類する.さらに,町を再現した描写がない「広義聖地」を「モデル地」「ゆかりの地」「依り代」の3種類に分類する.「モデル地」とは作品中の町の雰囲気が現実のいくつかの町に似ているために聖地となったもの,「ゆかりの地」とは歴史上の人物などをモデルにしたキャラクターが登場する作品で,キャラクターのモデルとなった人物などに関連する場所が聖地となったもの,「依り代」とはモノをモチーフとしたキャラクターが登場する作品で,キャラクターのモチーフとなったモノがある場所が聖地となるものと定義する.なお,ここでは「依り代」という言葉をキャラクターの魂の宿るものとして使用している.</p><p></p><p>Ⅲ 調査の目的と方法</p><p>本研究では,前述の4種類の聖地の分類方法の妥当性を確かめ,その特徴を調査するために,アニメやマンガに関連するサークルに所属する者とそれ以外とに向けてそれぞれgoogleフォームによるwebアンケートを行った.前者をサークル向けアンケート,後者を一般向けアンケートと呼ぶ.</p><p></p><p>Ⅳ 結果と考察</p><p>サークル向けアンケートは75件,一般向けアンケートは126件の回答が得られた.以下ではサークル向けアンケートの結果を述べる.回答では,「作者ゆかりの地」「制作会社所在地」や名前が共通する地などの可能性が指摘されたが,今回調査の対象とした作品中の描写やキャラクターのルーツに関連する聖地の分類については概ね意見の一致が得られた.また,各聖地についての特徴なども得られたが,ここでは特に今後の分析の対象とする「依り代」型の聖地について,従来型の聖地である「狭義聖地」と対比しつつ分析を行うこととする.</p><p>回答によると「狭義聖地」の巡礼では,巡礼中の行動として,作品に関連する写真を撮ることや作品関連施設の利用,巡礼後の行動として,SNS,または身近な人との共有があがった.これは「依り代」型でも共通で,巡礼者は同様の行動を起こしている.一方で聖地巡礼先での観光の広がりについては,「狭義聖地」では1つの町に対していくつかの場所の描写があり,それらを巡る行動がみられるのに対し,「依り代」型聖地の特徴は,依り代であるモノのみに巡礼者が集中し,広がりがみられなかった.</p><p>今後の調査では,「依り代」型の聖地巡礼を誘発したゲーム『刀剣乱舞』についてのキャラクター「山姥切国広」とコラボし刀剣「山姥切国広」の展示を行った足利市の事例を取り上げ,イベント運営側,巡礼者側両者へのヒアリング調査を行う.それにより,「依り代」型聖地での巡礼者の巡礼行動と「依り代」型聖地の活用方法についての具体的な検討を行いたい.</p><p></p><p>謝辞</p><p>調査に参加いただきましたサークル関係者の皆様,大学生の皆様,また,ご協力くださいました東京都市大学都市生活学部の諫川輝之先生に心より感謝申し上げます.</p><p></p><p>参考文献</p><p>石坂愛,卯田卓矢,益田理広,甲斐宗一郎,周宇放,関拓也,菅野緑,根本拓真,松井圭介 2016.茨城県大洗町における「ガールズ&パンツァー」がもたらす社会的・経済的変化:曲がり松商店街と大貫商店街を事例に.地域研究年報 38 : 61-89.</p><p>谷村要 2011.アニメ聖地巡礼者の研究(1)―2つの欲望ベクトルに着目して.大手前大学論集 12 : 187-199.</p>