著者
田中 洋 安藤 元博 髙宮 治 江森 正文 石田 実 三浦 ふみ
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.24-42, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
42

本論文はCMO(チーフマーケティングオフィサー)が日本企業において企業業績にどのような貢献をしているかを実証的に分析するとともに,CMOの地位が現在どのように変化しているかを文献調査で明らかにすることを目的としている。CMOが企業業績に正の影響を与えていることが近年米国で報告されているが,日本ではまだ研究がほとんどなされていない。実証分析の結果,日本企業において,CMOを設置している企業の割合は約8–11%であり,設置率は業種によってばらつきがあった。またCMO設置企業と非設置企業とでは,前者がより規模において大きいことがわかった。また,CMO設置あり・なしは,企業の2年間売上伸張率に正の影響があり,CMO設置は4.7%の売上増収効果をもっていた。また,企業規模が小さな企業ほど,CMO設置あり条件が売上変化率により大きな影響を与えている。文献調査では米国消費財企業においてCMOに代わりCGO(チーフグロースオフィサー)が設置される傾向が2010年代に目立つようになった。CMOへの詳細インタビューを通じて,これらの結果を仮説モデルとしてまとめ,CMO/CGOの設置がどのように企業業績に影響を与えるかを考察した。
著者
水田 真由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_91-1_99, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
25

本研究では、新卒看護師のリアリティショックと回復に影響する要因を分析した。病院に勤務する新卒看護師116名に対し,就職後3ヶ月と6ヶ月にアンケート調査を行った。結果,就職後にリアリティショックに陥っていると思われる者は3ヶ月時65.2%,6ヶ月時46.4%であった。また,新卒看護師の予期せぬ苦痛について因子分析を行った結果,6因子を抽出した。これらの苦痛因子はショック反応と正の相関を示し,「職場の人間関係に関する苦痛」が3ヶ月時に最も影響し,「勤務形態に関する苦痛」が6ヶ月時に最も影響していた。さらに,リアリティショックの改善した群は,6ヶ月時に「看護技術に関する苦痛」「患者および家族への対応に関する苦痛」「勤務形態に関する苦痛」が有意に軽減し,ソーシャルサポートの知覚が有意に増加した。これらの結果は,リアリティショックからの回復のための支援の資料となり,効果的な教育への示唆が得られた。
著者
Masayuki Horie
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
Genes & Genetic Systems (ISSN:13417568)
巻号頁・発行日
pp.18-00049, (Released:2019-06-29)
参考文献数
89
被引用文献数
6

Riboviruses are viruses that have RNA genomes and replicate only via RNA intermediates. Although they do not require a DNA phase for replication and do not encode reverse transcriptase, the presence of DNA forms of riboviral sequences in ribovirus-infected cells has been reported since the 1970s. Additionally, heritable ribovirus-derived sequences, called riboviral endogenous viral elements (EVEs), have been found in the genomes of many eukaryotes. These are now thought to be formed by the reverse transcription machineries of retrotransposons within eukaryotic genomes sometimes referred to as selfish elements. Surprisingly, some reverse-transcribed riboviral DNAs (including EVEs) provide physiological functions for their hosts, suggesting the occurrence of novel interactions among eukaryotic genomes, retrotransposons and riboviruses, and opening the door to new avenues of investigation. Here I review current knowledge on these triangular interactions, and discuss future directions in this field.
出版者
同盟通信社
巻号頁・発行日
vol.2602年版, 1943
著者
水野 伸子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.13-24, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
23

本研究は, 生演奏とDVD再生演奏という異なる演奏形態に対する聴取者の集団的手拍子反応の違いを, 主として打拍率, 打拍同期度の観点から検討した。実験曲は《きらきら星変奏曲ハ長調k. 265》 (モーツァルト作曲) のピアノ演奏である。手拍子情報は, 先行研究 (安藤ほか 2014) で開発してきた音楽リズム反応記録装置を用いて時系列的に計測し, 記録した。装置に入力されたすべての情報から4分音符レベルの手拍子を抽出して解析した。その結果, 生演奏群における聴取者集団の打拍同期度はDVD再生演奏群より高く, 生演奏群の方が手拍子のタイミングはよく揃うことがわかった。打拍率の推移をフーリエ級数展開した結果, 第12変奏において生演奏群からのみ3拍周期を示すスペクトルが顕著に認められた。生演奏群は手拍子の拍節構造を階層的に変化させて2拍子から3拍子への拍子の変化を知覚していることが示唆された。
著者
篠田 謙一 神澤 秀明 角田 恒雄 安達 登
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.127, no.1, pp.25-43, 2019 (Released:2019-06-26)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

佐世保市下本山岩陰遺跡から出土した2体の弥生人骨の核ゲノム解析を行った。これらの人骨は,遺跡の地理的な位置と形態学的な研究から縄文人の系統を引く西北九州弥生人集団の一員であると判断されている。しかし,次世代シークエンサを用いたDNA解析の結果,共に縄文系と渡来系弥生人の双方のゲノムを併せ持つことが明らかとなった。これらの人骨の帰属年代は弥生時代の末期にあたる。本研究結果から,この時期には九州の沿岸地域でも,在来集団と渡来した人々との間で混血がかなり進んでいたことが明らかとなった。このことは,これまで固定的に捉えられていた渡来系弥生人と西北九州弥生人の関係を捉え直す必要があることを示している。また本研究によって,古人骨の核ゲノムの解析で得られたデータは,このような混血の状況を捉えるのに有効であることも示された。今後,北部九州の弥生人骨のゲノム解析を進めていけば,日本人の成立のシナリオは更に精緻なものになることが期待される。
著者
弓削 朝子 馬場 久衛 加藤 敬子 宮脇 映子
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.59-68, 1974 (Released:2010-10-08)
参考文献数
39
被引用文献数
1

乳歯環状う蝕とその歯垢中のレンサ球菌, 特にStrep. mutansとの関連性を追求するために3歳児の無う蝕児29名と環状う蝕歯牙保有児30名について歯垢中のレンサ球菌並びに歯垢の酸産生力の比較を行ない, また両者の関連性について検討した。その成績は, 歯垢中の全レンサ球菌数の平均値は環状う蝕児群は無う蝕児群より極めて高い値を示した。また, Strep. mutansの検出率並びに全レンサ球菌に対する比率において, 環状う蝕児群は有意に高い値を示し, Strep. sanguisでは逆に無う蝕児群の方が高い値を示した。歯垢を糖加培地に培養した場合に環状う蝕児群の方が強い酸産生力を示した。またう蝕の程度並びに歯垢の酸産生力とStrep. mutansの比率および菌数との間に正の相関々係がみられた。歯垢を培養した糖加培地にはStrep. mutansの増殖とともにpHの低下がみられた。

4 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1887年06月22日, 1887-06-22
著者
梅垣 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.67-75, 2019-06-01 (Released:2019-07-03)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的・方法】健康に有益な影響を与える食品が大きな注目を集めている。それらの食品は様々な用語で呼ばれているが,その中で保健機能食品は健康の保持増進効果が表示できるもので,特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品という3つのカテゴリーに分類される。保健機能食品は消費者が希望する製品を選ぶ際に適切な情報を提供する上で大きな役割を果たしている。しかし,食品表示システムは複雑で,消費者や医療関係者にも十分に理解されていない。本稿では,保健機能食品の安全性と有効性の実態,その適切な使用法に関する概要を述べる。【結果】保健機能食品を安全かつ効果的に使用するためには,4つの基本的なことを理解する必要がある。それらは,薬との違い,有効性と安全性のエビデンス,表示されている有効性の限界,そして安全かつ上手に使用する方法である。保健機能食品の不適切な利用は,健康に害を及ぼすので,オンラインデータベースを介したエビデンスに基づく情報の提供,その情報の消費者や医療関係者の間の共有が必要である。また,保健機能食品との関連が疑われる有害事象を市販後にできるだけ収集して評価することが重要である。【結論】保健機能食品は生活習慣の重要性の認識や改善の「気づき」に利用することが適切である。それが実践できれば保健機能食品は多くの人に役立ち,増大する医療費の削減にも貢献することが可能である。
著者
操南軒 [ソウナンケン]
出版者
龍南會
雑誌
龍南會雜誌
巻号頁・発行日
vol.67, pp.42-48, 1898-06-30
著者
歌川 光一
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
学苑 = Gakuen (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.928, pp.75-86, 2018-02-01

This paper introduces and analyzes accounts of young women’s skill at playing koto, shamisen, and piano that appeared in the women’s magazine Fujingaho between 1926 to 1940. The analysis suggests that, whereas in the Taisho period, young ladies (reijo [令嬢])were encouraged to develop their taste in a number of kinds of Japanese traditional and Western music rather than focusing on just a few kinds and attaining a deeper understanding of the few they had chosen, in the early Showa period, modern Western culture was increasingly accepted as prestigious, and young Japanese women’s taste in music came to be seen as a part of their training to be good brides, but at the same time Japanese nationalism that emphasized “Japanese-ness” also came to the fore. The author concludes that, though further research is needed to confirm this, by the time people began to think that acquiring skills through hobbies was a useful component of bridal training, a new prototype of what young women should be had emerged.

2 0 0 0 OA 史籍雑纂

著者
国書刊行会 編
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.苐一, 1912
著者
森 裕城
出版者
日本政治学会
雑誌
日本政治學會年報政治學 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_42-2_64, 2012

A succession of books is being published that depicts changes in Japanese society based on the keyword of neoliberalism. This trend is particularly noticeable in fields that address the issues of workers, the elderly, people with disabilities, women, young people, and children. Expressed in more general terms, interest in neoliberalism appears to be growing in fields that study groups that are in weak positions within society. For this reason, this article focuses on the issue of educational reforms in order to identify the spread of neoliberalism in Japan, and it also discusses the development thereof. Viewed from the point of view of the intents of the elite, the development of educational reforms in Japan involves a variety of intermingled factors, and in some aspects these cannot be described as simply neoliberal reforms. However, when viewed at the real - world level of impact on society, school education clearly has been swept in a tide of neoliberalism, and those involved in education see this as problematic. It is the author's belief that this difference in recognition itself generates the current poor prospects on the subject of educational issues. It can be said that there is a pressing need to build an analytical framework for ascertaining comprehensively trends among the elite who institute reforms and trends among the people in weak positions who feel the effects of reforms.
著者
杉本 忠則
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.6, pp.287-293, 2014 (Released:2014-12-10)
参考文献数
16

Wavelet 解析は比較的新しい解析手法であり,時間周波数解析ができる.これまで,時間周波数解析の手法としてはFourier 解析が知られていたが,解析結果に時間情報が含まれないことより研究者にとって満足できる解析結果とはならないことが多かった.一方,wavelet 解析では,解析結果に時間情報が含まれるため,特定の時点での周波数情報を知ることができる.それゆえ,現在wavelet 解析は幅広い分野で利用されている.しかし,薬理学で紹介される機会が少なかったため,詳しくない研究者も多いと思われる.本論文では,wavelet 解析の簡単な理論説明を行い,いくつかの簡単な時間連続データにおけるFourier 解析とwavelet 解析との解析結果の比較を行うことにより,wavelet 解析を理解して頂くことにした.また,実際の薬理データ(ラットの脳波)に対し,Fourier 解析とwavelet 解析とを実施した.Fourier 解析ではデータを分割解析することにより途中で起きるパターン変化が検出できたが,その分割が最適かどうかの疑問が残った.一方,wavelet 解析ではデータ分割することなく解析でき,より細かな変化も検出可能な解析結果が得られた.その中には研究者が求めたい情報が含まれていることより,wavelet 解析が生体の状態を解明する上での強力な手段となりうることが示された.このようにwavelet解析はFourier解析に比べ優れた解析手法である.しかし,Fourier 解析が不要と言うわけではない.解析対象となるデータの性質や着目点によってはwavelet解析よりもFourier解析の方が適切な場合もあるので,解析目的によりwavelet 解析とFourier 解析とを適切に使い分けて欲しい.