出版者
巻号頁・発行日
vol.(極札なし),
著者
伊藤 操子
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.3-11, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

除草剤の存在は世界の食糧生産を支える上で不可欠だが,生活圏の雑草問題である衛生被害の回避,環境保全,インフラ保護にとっても重要である.しかし,未だに除草剤への拒否反応がはびこる日本の現状に鑑み,今日あるような除草剤がなぜ生まれ,科学・技術としてどう発達し,現在どういう段階にあるのか,世界の流れを振り返る.化学物質で雑草を撲滅するという発想は19世紀中頃から始まり,手取りや機械で防除できない多年草に大量の無機物質の投与が試みられた.一方,本格的な除草剤の発展は,1940年代初頭の選択的有機除草剤2,4-Dから始まった.これは世界の雑草防除自体のありようを一変させた画期的出来事である.その後1080年代にかけて,作物―雑草間の選択性の追求,新規作用点の開発,低処理薬量・低残留性,新規剤型の開発等が世界的に進展し,効果,作物や環境に対する安全性において優れた多くの除草剤が生まれた.しかし,その後徐々に縮小されて今日に至っている.理由は,除草剤のマーケットが成熟し,既剤を上回るものを開発しにくい,安全性試験へのコストの増大,グルホサート抵抗性遺伝子組換え作物の普及で,対抗できるインセンテイブが低下したなどである.化学的防除の著しい発展は,他方で,雑草防除実施者が創意工夫の意思の喪失,簡単に成果が期待できるという思い込みを生んだ.その最も顕著なしっぺ返しは,未だに止むことのない世界的な除草剤抵抗性雑草の増加である.
著者
小林 朋子 鳥居 春己 川渕 貴子 辻 正義 谷山 弘行 遠藤 大二 板垣 匡 浅川 満彦
出版者
奈良教育大学自然環境教育センター
雑誌
奈良教育大学自然環境教育センター紀要 (ISSN:21887187)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2011-03-01

2005年と2006年に奈良公園およびその周辺地域に生息する天然記念物ニホンジカ(Cervus nippn,以後,シカとする)における,人獣共通寄生虫の感染状況,感染個体の栄養状態に関する調査を実施した.奈良公園内のシカ15頭の第四胃から結腸までの消化管内寄生蠕虫検査では,日本の他地域に生息するシカから得られた寄生虫と同属種が検出された.また,奈良公園内において40頭のシカの排泄直後に採取した糞における吸虫卵調査では,87.5%の個体から肝蛭卵が検出された.また,14頭のシカの剖検において肝蛭の虫体が見つかった8頭の病理学的検査と寄生状況の調査では,肝臓表面に赤紫の小斑点あるいは蛇行状の病巣などが観察され,割面では胆管の拡張,壁の肥厚がみられた.得られた肝蛭のNADH脱水素酵素サブユニット遺伝子(ND1)およびチトクロームcオキシダーゼサブユニットI遺伝子(COⅠ)の配列はFasciola hepaticaと97%(ND1)と99%(COⅠ)一致し,F.giganticaと95%(ND1)と100%(COⅠ)一致した.1976年の調査でも奈良公園の肝蛭による汚染が指摘されていたが,シカ個体数が約300頭増加した今日も大幅な寄生率の変化はなく高度な汚染が維持されていることが明らかとなった.シカから排泄された肝蛭虫卵はメタセルカリアとなり,ヒトや家畜への感染源になり得ることをふまえて,早急に充分な対策を講じる必要があろう.
著者
藤野 京子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.403-411, 2002-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

少年鑑別所に入所中の221名の男子少年を対象に, 最近一緒にいる友人一人を思い浮かべさせ, その交友関係について調査した。まず, 大半の少年が, その交友について, 親をはじめとする周囲が認めており, 今後もその関係を断つつもりがないことが示された。その友人と一緒にいる理由については,「信頼・親和」,「被受容・被理解」,「不快回避」の3因子が抽出され, その友人との実際の付き合い方については, 「内面共有」,「防衛」,「享楽」,「独立」の4因子が抽出された。これらの回答結果からは, その交友関係が, うわべを取り繕ったその時その場限りのものではないことが示された。また, これらの因子間の関係を分析したところ, 「内面共有」には「被受容・被理解」及び「信頼・親和」が,「独立」には「信頼・親和」及び「不快回避」が影響を及ぼしていることが明らかにされた。加えて, それぞれの因子に, 非行少年自身の年齢, 非行歴, 加えて, 友人の非行歴がいかに影響を及ぼしているかについても検討した。
著者
中川 洋吉 清家 彰敏
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.319-344, 2000-11

20世紀は映像の世紀といわれた。また映像は政府によってマスコミュニケーションの道具として管理創造されてきた。さて,21世紀はこの映像がインターネットの場において個人,大衆に開放される世紀と考えられる。この開放される映像が創りあげる映像ビジネスは巨大な産業を形成する可能性がある。本研究は,この21世紀に創造される映像ビジネスの中核となる人材とその教育システムを問題とする。特に先進的モデルとしてフランスの映像教育をとりあげ,分析を行う。フランスには,映画学校として,我が国でも良く知られたイデック(IDHEC)があり,世界各国の映画学校の中でも,多くの著名監督を輩出したことで,その知名度は高い。第1期の卒業生に,アラン・レネ,他に,クロード・ソテ(4期),ロベール・アンリコ(7期)がおり,そして,ルイ・マルもイデック出身である。イデック同様にフランスには,国立の演劇,音楽,美術の高等専門学校が存在する。音楽,演劇はコンセルヴァトワール,美術はボ・ザールであり,映画は,映像一般専修校としてフェミス,撮影専門学校としてルイ・ルミエールがある。我が国で,国立の美術,音楽専門校として東京芸大がある。しかし,国立の映画学校は存在しない。更に,国立大学の中で,映画学部を有しているところは皆無である。フランスのフェミスは,1986年に創設された。フェミス「FEMIS」は,"Formation et Enseignement aux Metiers de I'Image et le Son "の略である。正式名称は,「視聴覚教育と人材育成」の意である。このフェミスに,1995, 99, 2000年と三回に渉り訪れ,聞き取り調査を行なった。その調査結果をベースに,フランスの映画学校(本質的には映画・映像学校)と,映像人材育成のモデルについて,考察する。
著者
久光 正
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-6, 2008-02-10 (Released:2010-11-25)
被引用文献数
2
著者
増子 直樹 田中 哲朗
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2013-GI-30, no.3, pp.1-8, 2013-06-21

コンピュータゲームにおけるゲームプレイにおいて,定跡データベースを持つことは,対戦の多様性の確保,序盤の貧弱な評価関数の補完,思考時間の節約に役立つことが分かっているが,対戦実験によって強さを評価する以外の評価法がこれまで提案されていなかった.本稿では,データ構造が公開されている定跡データベースを擬似的に対戦させ,出現する局面の確率分布を求めることにより,多様性,強さなどの評価を行う手法を提案する.提案する手法をオープンソースの将棋プログラムに適用することにより,興味深い結果を得た.
著者
鼓 みどり
出版者
富山大学
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.261-271, 2006-12-14

Where can we find …Where can we find exoticism in this age of globalization? Can you stand for a wired ethnic stereotype of yourself? Actually there are plenty of ethnic stereotypes in films,video clips,TV programs,CM and so on. This paper discusses on different cultural images in recent films and video clips. Firstly we look on exotic images in video clips from 80's(Duran Duran,Clash,Men at Work,Petshop Boys) to 90's (Madonna,U2) and recent (Beck). Secondly we analyze absurdity,daydream and nightmare in video clips (Massive Attack,Tricky,Sonic Youth,Chemical Brothers,Petshop Boys,Square Pusher,Bjork and Madonna). Thirdly we observe Japanese images in Sofia Coppola's film <<Lost in Translation>> (2003) and Peter Greenaway's film <<8 1/2 Women>> (1999). We find a kind of Japonisme images in these clips and films. However they can convey a new view on ourselves.20世紀は「映像の世紀」と呼ばれ、映画やテレビ、ビデオそして最近ではインターネット上で世界のさまざまな地域の風土や、そこで生活する人々の姿を見ることが出来ると信じられている。モニタは珍しい風景、耳慣れない音声、或いは人々の胸中をも再生する。異文化の中に身を置かずに異文化を体験することは、娯楽として消費されている。しかしながら私たちはステレオタイプに依存しながら、異文化を受容している。日々眺めるイメージがその地域を想起させる細部を示すと、またかと思いつつも落ち着いた気分になる。機会があれば現地を訪れ、ステレオタイプを実体験して満足する。また自身の文化をとらえるときも、その姿に伝統的な型をあてはめがちである。伝統的類型はしばしば実生活とはかけ離れているが、私たちはそのことをあまり問題とは思わないだろう。しかし私たちはどのような類型として表象されているのであろうか。メディアに登場する類型は、たとえ諷刺を意図していなくても共感しがたいものであることが多い。時代錯誤であったり、アジア諸国の文化を適当に混ぜていたり、その理由はさまざまであろう。ただし報道ネットワークが発達した現在、たとえば海外テレビCMにごく普通の日本人家族が登場するなど、奇をてらったイメージばかりが作られているわけではない。また視点を変えれば、私たちが何も疑問に思わずに受け入れている外国のイメージも、同じように当該地域の人々にとって違和感があるかもしれない。異文化をあらわす類型は、報道やドキュメンタリーよりも、娯楽性の強い映像、すなわち映画やビデオクリップ、CMに登場する頻度が高い。本稿ではビデオクリップを中心に、異文化表象が担っている役割を検討する。
著者
松尾 葦江
出版者
中世文学会
雑誌
中世文学 (ISSN:05782376)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.50-61, 2015 (Released:2018-02-09)
著者
Hiroto MAEDA Kaori HAYASHI Takayuki ISHIGE Tomohiro SUNAGAWA Shigeko TANIGAWA Mika MISHINA Toshifumi WATANABE Kazuyuki SOGAWA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.18-0145, (Released:2018-08-09)
被引用文献数
4

With the increasing number of cats kept as pets, opportunities to treat cats with lower urinary tract disease (LUTD) have recently increased in the clinical veterinary field. Urine samples collected from 50 cats with bacterial cystitis brought to Maeda Veterinary Hospital between August 10, 2015 and March 31, 2017 were used in the study. Sample preparation of the urine was performed using a MALDI Sepsityper kit and rapid BACpro. To identify the isolates, MALDI-TOF MS was performed on an AutoFlex TOF/TOF mass spectrometer. MALDI-TOF MS using rapid BACpro for pretreatment was found to be a quick and reliable method for identification of bacteria from infected urine, with a shortened analysis time enabling earlier and more accurate selection of antibiotics for treatment of feline LUTD.
著者
Junichi MINAMI Noriyuki IWABUCHI Miyuki TANAKA Koji YAMAUCHI Jin-zhong XIAO Fumiaki ABE Naoki SAKANE
出版者
BMFH Press
雑誌
Bioscience of Microbiota, Food and Health (ISSN:21863342)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.67-75, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
43
被引用文献数
74

Accumulating evidence suggests a relationship between the gut microbiota and the development of obesity, indicating the potential of probiotics as a therapeutic approach. Bifidobacterium breve B-3 has been shown to exert anti-obesity effects in high-fat diet-induced obese mice. In the present study, the anti-obesity effects of the consumption of B. breve B-3 by healthy pre-obese (25 ≤ BMI < 30) adults were investigated in a randomized, double-blind, placebo-controlled trial (trial registration: UMIN-CTR No. 000023919; preregistered on September 2, 2016). Eighty participants were randomized to receive placebo or B. breve B-3 capsules (2 × 1010 CFU/day) daily for 12 weeks. The visceral fat area significantly increased at weeks 4 and 8 in the placebo group only; no significant change was observed in the B-3 group. Body fat mass and percent body fat were significantly lower in the B-3 group than in the placebo group at weeks 8 and 12 (p<0.05, ANCOVA adjusted with baseline values). Although no significant differences were observed in blood parameters between the groups, the intake of B. breve B-3 slightly decreased triglyceride levels and improved HDL cholesterol from the baseline. No serious adverse effects were noted in either group. These results suggest that the probiotic strain B. breve B-3 has potential as a functional food ingredient to reduce body fat in healthy pre-obese individuals.