著者
堀 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1998-2008, 1994-10-15
被引用文献数
26

本諭文は、発想支援システムの効果を議論するための一仮説を与える。これまでに、創造的な概念形成を支援するための発想支援システムが作成されてきた。しかし、それらのシステムがどのような原理でどのような側面の支援を行うことができるかを説明する理論は存在しなかった。本論文は、そのような理諭を作成するための出発点としてひとつの仮説を与える。この仮説は、発想支援の原理の一部を説明しようとするものであるが、この仮説により、将来の発想支援システム構築のための示唆が得られる。
著者
安田 尚道
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1-14, 2003-04-01

万葉仮名の二類の書き分け(上代特殊仮名遣)の存在と,それが音韻の区別に基づくことは,本居宣長・石塚龍麿などがすでに述べていることで,"橋本進吉がのちに宣長・龍麿とは無関係に独立して発見した"との説は認めがたい。橋本がはじめ,"ヌに二類あり,『古事記』ではチにも二類あり"としたのは,龍麿の『仮字遣奥山路』に基づくものである。宣長・龍麿が認めた『古事記』のモの二類の区別を橋本がのちに否定したためこの区別の再確認を行なった池上禎造・有坂秀世は,その過程で『韻鏡』の利用や「音節結合の法則」などから,上代特殊仮名遣が音韻の区別に基づくことを明確にしたのであった。
著者
高 榮珍
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.213-242, 2006-12

本稿の目標は、独立直後の北朝鮮における「漢字制限論」と「漢字廃止論」を検討することにより、なぜ北朝鮮では漢字を廃止したのかを明らかにすることにある。一般的に文字に関する問題は、国を問わず激しい論争を伴うのが普通であるが、それは北朝鮮でも例外ではなかった。特に北朝鮮においてのそれは「反帝反封建革命」と直接かかわる論争でもあったという点で注目すべきである。北朝鮮の「漢字制限論」の背景には学術用語の問題があった。即ち漢字を無くし、ハングルのみで文字生活を営むようになった結果、漢字を見ずには意味の分からない単語が非常に多かったのである。それに加えて朝鮮語教育の観点からも200字ほどの漢字は教えた方がより効果的というのがその根拠だった。しかし新しい社会の建設や「民主改革」に全てをかけていた当時の北朝鮮において、「漢字制限論」の立つ瀬はどこにもなかった。なぜならば、いくら制限的とはいえ、再び漢字を使うことは、「民主改革」の後退を意味していたからである。即ち、230万に達していた非識字者にハングルの読み書きを教えることにより、人民たちを説得し、新しい社会の建設に参加させようとして始まった「識字運動」がその背景にあったのである。それと共に、当時の北朝鮮の言語政策を主導していた機関および人々が狙っていたのは「文字改革」であったため、「漢字制限論」はさらに弱い立場に陥ざるを得なかった。その結果、北朝鮮では漢字を復活させる代わりに「言語浄化」の道に進んだが、それはまた「文字改革」の前段階でもあった。
著者
入谷 寛
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Chemical Software (ISSN:09180761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.65-80, 1999-06-15 (Released:2000-03-28)
参考文献数
4

アルカン分子の中心を定義し,それに結合するアルキル基の組合せの仕方を数え上げることにより,アルカンの構造異性体数の数についての漸化式を求めた。炭素原子数が40までの結果は,グラフ理論によって得られている数値と一致することを確認した。この方法は初等的な組合せ論の積み重ねによるものなので,その演算速度はグラフ理論的方法よりは格段に遅いことがわかった。
著者
西田 和浩 山本 慎一 今岡 照喜 加納 隆 大和田 正明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-34, 2002-01-25

オリオン290A型デジタルイオンメータを用いた珪酸塩岩石のフッ素定量を,蒸留操作なしに行った.岩石試料の溶融は,試料と酸化亜鉛および炭酸ナトリウムを混合して,電気炉を900℃の一定温度に保ち,30分間試料の溶融を行った.白金るつぼに直接蒸留水を加えてホットプレート上で2時間加熱することによって,内容物は,白金るつぼから容易に剥離でき,岩石試料中のフッ素を完全に回収することができた.イオン強度調整剤として,0.2Mクエン酸ナトリウムー0.2M硝酸カリウム溶液を使用した.この方法を用いて,いくつかの岩石標準試料のフッ素定量を試みた.それらの分析値は,推奨値および既報値と良い一致を示し,好結果を得た.また,インドのアラバリベルト,イースタンガーツベルト,ケララコンダライトベルトおよび東南極のセルロンダーネ山地メフェール花崗岩コンプレックスのフッ素定量を行った.ケララコンダライトベルト中のインシピエントチャーノッカイトのF含有量およびGa/A1比は,同一露頭中の片麻岩の値よりも高い.
著者
小沼 元輝 朱碧 蘭 山田 奨治 柴山 守 中川 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.606, pp.91-96, 2007-03-09
被引用文献数
2

本稿では,電子くずし字辞典に用いるロバストな文字認識の開発について述べる.古文書の翻刻作業を特定の専門家以外でも可能にし,その効率を高めるために,古文書で標準的に用いられるくずし字の辞典を電子化し,翻刻の利便性を向上させることが有効である.我々は,67,739種のくずし字に対する認識システムを開発した.くずし字までいかない通常の字体に対しても現有の認識システムを利用できるようにした.採用手法は,現在の文字パターンに対して一定の認識率を保証しているので,実用に耐えることを期待しているが,現実課題のサンプルパターンが少ないために,定量的な評価は今後の課題とする.
著者
五野井 隆史
出版者
聖トマス大学
雑誌
サピエンチア : 英知大学論叢 (ISSN:02862204)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A1-A19, 2006-02-28

これは、日本イエズス会副管区長ジェロニモ・ロドリゲスが一六一八年一月一〇日付をもってマカオにおいて作成した、日本のキリスト教界の組ないしコンフラリア(信心会)に関するポルトガル語文文書からの日本語翻訳文である。同文書は、縦二二・四糎、横一七・〇糎の和紙一〇丁からなる。同文書の作成日は、表題の書かれた上書には上記の一六一八年一月一〇日となっているが、本文の末尾に一六一七年一二月二〇日とあるように、すでにこの時点で本文が完成していたことが知れる。本文書の作成者ジェロニモ・ロドリゲスは、江戸幕府が発令したキリスト教禁教令の施行によって、日本管区長ヴァレンチン・カルヴァリョが一六一四年一一月に日本からマカオに去ったのち、同管区副管区長として日本に残留潜伏した。彼は、大坂の陣で敗れて徳川方から追求されていた豊臣方の武将明石掃部全登の子内記パウロを匿うことを同会宣教師達に指図したが、これが発覚し、一六一六年宣教師の捜索が行なわれた。このため、同年一二月、突如長崎で捜索が行なわれ、イルマンの木村レオナルドが捕らえられ、ロドリゲスは翌年マカオに退去せざるをえなかった。従って、この文書は、禁制下におけるキリスト教界の活動に密接に関わっていたロドリゲス神父が、キリスト教徒達の最新の信仰活動について言及したものとして貴重な情報を提供してくれる。本文書は、三部から構成される。一部では、被昇天の聖母の組ないしコンフラリアの規則の要項であって、組の目的、組の構成と組織、組維持の方法、組の会員(組衆)達が守るべき義務(掟)と、それによってもたらされる霊的利益、役務者(役人)の名称と役務、組において許されない過失(科)などが、六章五六箇条にわたって言及されている。二部は、被昇天の聖母の組(コンフラリア)に関する戒めについて述べたもので、キリスト教徒達が日常行なっている信心に関する所作(業(ぎょう))、すなわち、慈悲の所作や、教皇に請願する贖宥(免償)に関する覚書、及び宥が許可されることによって可能となる有効な所作など一八箇条からなる。ここでは特に、ドミニコ会設立のロザリオのコンフラリアがすでに贖宥を獲得していたことに対し、イエズス会が設立した被昇天の聖母のコンフラリアの由緒とその自立性について言及して、同会指導によるコンフラリアの正当性と固有性が主張されている。三部では、教皇に請願される贖宥獲得のための条件である諸々の所作が二四項にわたって述べられている。本文書のコンフラリアに関する規則は、シュッテ師Joseph Schutte S.J.が指摘されているように、包括的なものであり、これを通じてイエズス会が設立し指導していた組(コンフラリア)の組織とその活動の全体像を容易に把握できる点で、極めて貴重な情報である。なお、ロドリゲスの同文書(一〜三部)の日本語訳文については、シュッテ稿、柳谷武夫訳「二つの古文書に現はれたる日本初期キリシタン時代に於ける「さんたまりやの御組」の組織に就いて」(『キリシタン研究』第二輯、九一〜一四八頁、東京堂、一九四四年)がある。訳文はドイツ語からの重訳と思われ、しかも日本語訳文はキリシタン時代に合わせて擬古文の体裁をとっているため、ポルトガル語原文と対照する時、意訳にかたよりがちで文意を損ねている箇所が少なくないことである。同文書の第一部については、ポルトガル語原文からの翻訳が、川村信三『キリシタン信徒組織の誕生と変容』(『キリシタン研究』第四〇輯、教文館、二〇〇三年)の第七章(「被昇天の聖母のこんふらりや」の規則抜粋、三五八〜三八三頁)において、丁寧な解説付きで紹介されている。著者は「抄訳を基本とし、必要なかぎり解説を加え」たとされる。しかし、その労は多とするものの、同翻訳が厳密性を要求される歴史史料としてその利用に供し得るものかと問えば、遺憾ながらと言わざるをえない。原文翻字の若干の誤りは利用者が少数であり原文と対照すれば解決できることであるが、翻訳文の場合には利用者が多く、その多数は訳文のみしか利用できないところから、翻訳史料の提供者はできる限り最善を尽した翻訳文を提供することが求められる。同訳文は必ずしも原文に忠実であると言い難く、また誤訳が多いように私には思われる。翻訳が困難と思われるならば、その箇所を空白にしておくほうが、利用者にとってはよほど良心的である。そのような次第で、私はここに敢えて拙訳を試みた次第である。(二〇〇五年二月八日)

19 0 0 0 OA 童蒙画引単語篇

著者
松川半山 著
出版者
梅原亀七
巻号頁・発行日
vol.巻2, 1874
著者
山田 奨治 早川 聞多 相田 満
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.112, pp.39-46, 2006-10-27
被引用文献数
2

『古事類苑』は,明治政府の一大プロジェクトとして明治12年(1879)に編纂がはじまり,明治29年(1896)から大正3年(1914)にかけて出版された,本文1 000巻,和装本で350冊,洋装本で51冊の大百科事典である.そこには,前近代の文化概念について,明治以前のあらゆる文献からの引用が掲載されており,人文科学研究を行ううえでたいへん有用な事典として,いまでも利用されている.この『古事類苑』を電子情報資源化して活用すべく,著者らはその全頁の画像入力を行い,さらに全文テキスト入力作業を進めている.この論文では,現在までの作業の方法・進捗・課題点,インデックスからのシソーラス辞書作成,そしてHTML版の一部試験公開とWiki版の試作状況について報告する.Kojiruien (The Dictionary of Historical Terms) is a kind of large-volume Japanese encyclopedia with 1,000 volumes in original form, 350 volumes in Japanese-style binding, and 51 volumes in Western-style binding, which started editing in 1879 as a big project conducted by Government of Japan, and published during 1896 to 1914. It contains numerous words and cultural concepts of pre-modern Japan, citing plenty of books and documents before Meiji restoration (1867), and is frequently used even today among scholars of the Humanities. We are conducting a digital \it Kojiruien \rm project, with scanning every page images and making full-text data to utilize it as an electric information resource. In this report, we discuss on the project status, method, difficulty, thesaurus extraction from the index, making and public opening of the HTML version, and trial of the Wiki-based system.
著者
中嶋 眞澄
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
鹿児島経済論集 (ISSN:13460226)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-5, 2004-06-20

A simple proof of the strong law of large numbers is given without using Kolmogorov's inequality, Borel-Cantelli's theorem, the existence of the fourth moments of the random variables and so on.
著者
矢吹 万寿 鈴木 清太郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
Bulletin of the University of Osaka Prefecture. Ser. B, Agriculture and biology (ISSN:03663353)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.51-193, 1967-03-31

この研究は筆者の一人が,戦時中福岡県耳納山麓に疎開中台風に見舞われたが,山は防風の役目を果すものと考えられているにかかわらず,風下側の山麓の農作物の被害が平地のそれより甚大であったことを観察し,この奇異な現象に興味を持ったことから始められた.其の後の調査によると,このような現象は日本各地に発現しており,また日本のみならず世界各地で問題となっていることを知った.この論文はそれ以来約15年間にわたって行われた研究の集積である.この論文は第1部と第2部とにわかれ,第1部では,この種の局地風として有名な,北陸地方のフェン,清川ダシ,ヤマジ風,広戸風,耳納山オロシ,比良八荒(講),上州空っ風について現地の資料および高層資料によって解析するとともに,特に筆者らによって約3年間直接観測を行った六甲山の両山麓におこるオロシについて解析された結果について述べた.第2部においては,模型実験によって山越気流を解析した結果について述べた.この種の実験は風洞によって自然状態を再現することが困難であるので,水槽を用い,塩水濃度を変えることにより,大気の自然条件を再現させた.実験は斉一密度流,二層流,三層流,安定成層流,寒冷前線および温暖前線通過時の流れについて行った.この実験により,山越気流の全容を知ることが出来るとともに,P.Queneyの理論およびJ.Forchtgottの観測によって得られた山越気流をも再現することが出来た.現地観測,高層資料および模型実験から,このいわゆる山越気流は,滝あるいは堰堤の落下する水と同様に,冷気が山腹を落下するとき重力により加速され,山麓に強風域を生ずるものと考えられる.したがって山の風下測に強力な吹き下し風が発達するためには,1.山項近くに不連続面が在存し,上下両層の密度差が大きいこと.2.一般風が強いことが必要であり,下層が安定であればさらにこれを強める.したがって不連続線の進行方向と山脈の走行方向とから山越気流の性質が決ってくる.寒冷前線の場合は前線の通過直後から山越気流が発生し,同時に雨も伴う.日本では寒冷前線は主に北西風を伴うから,寒冷前線によって発生する山越気流は,広戸風,良比八荒,六甲山南麓オロシ(神戸の北風)などあであり,温暖前線の場合は前線通過前におこり,これによって発生する山越気流は,耳納山オロシ,ヤマジ風,六甲山北麓オロシなどである.また閉塞前線は低気圧の北側にあり,東風を伴うから,主に南北に走る山脈に山越気流は発生し,生駒山オロシ,平野風(奈良県)などで,英国のMt.Crossfellもこれに属すゝものと考えられる.これらの分類は一般的なことで,不連続線の通過方向によっては,ヤマジ風が寒冷前線によって,比良八荒が温暖前線によって発生する場合もある.従来山越気流は発生する場所によって,その前兆なり,現象が全く相反することもあって,問題とされていた点も,これによって統一的に解析できるものと考える.