著者
金 龍郎
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A17-A33, 2004-07-30

プロレスは、格闘劇や格闘ショーとしての性質を持った興業であり、演劇的要素によって観客や視聴者を熱狂させる。近年、プロレスが不振に喘いでいるのは、この演劇的要素がマンネリ化しているためだ。「闘いのテーマ」をどう設定していくか、また、どんなストーリーラインの中で誰と誰がどんなギミックを身にまとって闘うかといった筋書き (=アングル) が満足に書けないでいる。一方、K-1やPRIDEは、勝負にこだわるという意味でプロレスよりもスポーツライクな興業であるため、本来的には演劇的要素がなくても成立するのだが、これを中継する番組の側がノンフィクションのアングルを付加することにより、一般視聴者の興味や関心を巧みに喚起してきた。2003年大晦日の日テレ「猪木祭り」特番の惨敗とフジ「男祭り」特番の大健闘は、そうしたアングル提示の善し悪しがそのまま視聴率の差となって表れたものだと考えられる。
著者
稲垣 耕作 嶋 正利
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.3-10, 2000-11-18

アトムからビットへの革命という視点から, 情報パラダイムに幾つか検討すべき側面を付け加える。本論文の立場は, アトムとビットは単に対立概念でも無関係概念でもなく, その間の密接な関係を見出すことが情報パラダイムに大きな重要性を付け加えるとのものである。われわれの理論研究は, 物質保存則と計算万能性が自己増殖性によって橋渡しされるとのもので, 物質パラダイムと情報パラダイムにおける根本概念が生命科学でつながれるとの物質・情報・生命の三角形を構成する。このような理論は自然科学パラダイムの情報・生命シフトを予感させるとともに, 従来の物質の物理学で体系化しきれない自然の学を示唆する。ただ情報パラダイムは物質パラダイムの測度でとらえきれない問題を含み, そのような数理が経済や著作権問題を含めた今後の広範な社会の諸問題に影響していくものと思われる。
著者
小林 康江
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.117-124, 2006-04
被引用文献数
2

本研究の目的は,母親が自ら「できる」と思える子育ての体験を記述することである。それにより,産後の母親のケアの示唆を得ようとするものである。研究方法は,退院後1ヵ月健診まで実家に里帰りをした初産婦5名を対象に,家庭訪問と半構成的面接法を実施した。分析は,母親が育児について語っている文脈を事例ごとに抽出し記述した。その結果,産後1ヵ月の母親は,母親自身で「できる」と思える子育ての体験がある母親と,「できる」と思える体験のない母親がいることが明らかとなった。「できる」と思える子育ての体験のある母親の状況は「自分の努力と導きから実母と同じように世話ができること」「消去法から体感覚を用いて子どもの泣きの理由がわかること」「余裕をもてること」「試行錯誤と,家族・看護者の支援によって効果を実感すること」であった。また「成長している子ども。成長していないながらも母親になっている私」「応援したくなるかわいい子ども。子育てに自信がもてた私」「私を必要としている子ども。子どものことをわかってあげられる,余裕がある私」と母親自身と子どもとの関係をとらえていた。一方,「できる」と思える体験がない母親は「こだわりをもち続けること」「子育てと生活をコントロールしたい」というように育児をしていた。そして子どもと母親自身の関係を「私を嫌う子ども。がんばりが足りない,取り残される私」「思うようにならない子ども。子どもから嫌われている私」ととらえていた。
著者
飯島 久美子 小西 史子 綾部 園子 村上 知子 冨永 典子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-162, 2006-04-20
被引用文献数
2

A questionnaire survey was conducted to identify the regional variety of Japanese New Year's dishes and how they are prepared. Questionnaires were sent out to students of universities and colleges throughout Japan in December 2001 and 2608 questionnaires were collected in January 2002. Japanese soba was eaten by 74.8% of Japanese on New Year's eve, while Okinawa soba was eaten by 58.8% in Okinawa. Osechi dishes were eaten by 79.6% during the New Year period, most being homemade although some were bought from shops. Kuromame was most commonly eaten, followed by boiled fish paste, cooked herring roe, cooked sweet-potato paste, cooked vegetables, cooked sardines, fried eggs, rolled kombu and vinegared dishes. The cooked vegetables and vinegared dishes were mostly homemade, while fried eggs and boiled fish paste were mostly purchased from shops. The popularity of Japanese New Year's dishes varied according to the region although it has decreased compared to that of 23 years ago.
著者
角 康之 伊藤禎宣 松口 哲也 シドニーフェルス 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2628-2637, 2003-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
50

人と人のインタラクションにおける社会的プロトコルを分析・モデル化するために,開放的な空間における複数人のインタラクションを様々なセンサ群で記録し,蓄積された大量のデータに緩い構造を与えてインタラクションのコーパスを構築する手法を提案する.提案手法の特徴は,環境に遍在するカメラ/マイクなどのセンサ群に加えて,インタラクションの主体となるユーザが身につけるカメラ/マイク/生体センサを利用することで,同一イベントを複数のセンサ群が多角的に記録することである.また,赤外線IDタグシステムを利用して,各カメラの視野に入った人や物体のIDを自動認識することで,蓄積されるビデオデータに実時間でインデクスをつけることができる.本稿では,デモ展示会場における展示者と見学者のインタラクションを記録し,各人のビデオサマリを自動生成するシステムを紹介する.個人のビデオサマリを生成する際,本人のセンサデータだけでなく,インタラクションの相手のセンサデータも協調的に利用される.We are exploring a new medium in which our daily experiences arerecorded using various sensors and easily shared by the users, inorder to understand the verbal/non-verbal mechanism of humaninteractions. Our approach is to employ wearable sensors (camera,microphone, physiological sensors) as well as ubiquitous sensors(camera, microphone, etc.); and to capture events from multipleviewpoints simultaneously.This paper presents a prototype to capture and summarize interactionsamong exhibitors and visitors at an exhibition site.
著者
山田 雅子 齋藤 美穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.73-85, 2004-06-01
参考文献数
9
被引用文献数
8

顔から性別を判断する際、最も有用な手がかりとなるのは形態的情報である(Bruce et al.,1993)。本研究は肌色や唇色といった色彩にも同様にその判断を左右する効果があるということを明らかにした。第一実験においては性別が曖昧な2種の線画(男性平均顔・男女平均顔)を用い、各々2タイプの肌色(色白・色黒)、2タイプの唇色(唇色なし・薄紅)を設けた。139名の被験者には各刺激に対する性別判断と丸みの判断を課した。その結束、男女平均顔においては色白肌が女性判断を促し、更に、肌色が明るい場合には有意に丸みの判断が高まることが分かった。更に第二実験ではコンピュータで合成された顔3種を素材とし、男性-女性、色黒-色白の2軸について0から100の数字による評定を課した。各パタンにっき5段階の明度レベル、2段階の唇色パタンを設け刺激として準備した。肌の色が明るく感知された場合には、同じ造作であってもより女性的に捉えられる傾向が得られた。また女性的形態が伴う場合には肌色の評価が明るい方向に有意に偏る傾向が得られた。つまり、主観的に判断される性別と明度とは不可分の関係にあり、物理的に等価であっても付帯する色情報及び形態情報によって両者は強く支配されていると言い得る。
著者
片桐 新自
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.43-60, 2007-03

2005年に公開された映画『ALWAYS三丁目の夕日』は老若男女に支持され、その年の日本アカデミー賞をほとんど独占した。昭和33年を舞台にしたこの映画がヒットしたことで、「昭和ブーム」とも言えるほどの注目が、昭和30年代を中心とした時代に集まっている。しかし、実はこの昭和への注目はここ1〜2年前から生まれたものではなく、昭和が終わり、平成に入った頃に生まれ、着実に浸透してきたものだ。本稿では、この「昭和ブーム」の実態を紹介し、その原因、そしてその行方まで探求する。原因としては、(1)昭和が終わったこと、(2)昭和が長かったこと、(3)バブル経済が崩壊したこと、(4)ベビーブーマーが過去を振り返る年代に入ったこと、が主たるものであるということを明らかにする。
著者
樋口 寿 藤田 朋子 久保 美帆
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.17-25, 2008-03
被引用文献数
2

近年、「キレる」などに代表される精神的な健康問題は、深刻な事件と結びつくものがあり、その社会的関心も高い。その原因の一つとして食生活が注目されている。過食や偏食、欠食等が身体的な健康に影響を与える因子であることから、食生活は精神的な健康にも影響を与える因子であることが推測できる。そこで本研究では、大学生の食生活や生活習慣における実態を調査し、特に精神的健康との関連について検討した。平成18年6月に近畿大学農学部1・2回生268名を対象に食物摂取頻度、生活習慣、自覚症状、食行動に関する項目について自己記入式のアンケート調査を行った。1)朝食は全体の75%が「毎日食べる」と答えたが、朝食の欠食は有意に男子で高かった。間食の頻度は女子が有意に高かった(p<0.01)。2)食物の摂取頻度では、野菜類、菓子類は女子の摂取頻度が多く、嗜好飲料、インスタント麺、ファーストフード、お酒は男子が多く、性差が認められた。女子に便秘傾向の者が多く、男子に運動習慣のある者が多かった。3)自覚症状を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「精神的不安定」・「睡眠障害」・「身体的症状」とした。各項目で性差が認められたのは、「精神的不安定」の「自分がうつだと感じることがある」「イライラすることが多い」「頭がぼんやりする」と、「身体的症状」の「肩がこる」「疲れやすい」「目が疲れる」「目の前が真っ暗になり倒れそうになったことがある」の7項目で、いずれの項目においても女子が有意に高かった。4)食行動を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「外発的刺激摂食」「体質認識」「食べ方」と名付けた。「外発的刺激摂食」と「体質認識」の全項目で、男子より女子が有意に高く、食べ方では男子の「早食いである」が有意に高かった。5)「精神的不安定」と関連する因子をパス解析で検討した。「精神的不安定」に直接影響を与えている因子は、自覚症状から抽出された「睡眠不足」と「身体的症状」の2因子であった。食品摂取頻度から抽出された「加工食品」と「食生活」「生活習慣」は間接的に「精神的不安定」に影響を与えていた。

16 0 0 0 OA 日本鉄道史

著者
鉄道大臣官房文書課 編
出版者
鉄道省
巻号頁・発行日
vol.上編, 1921
著者
瀬川 博義
出版者
日本法政学会
雑誌
日本法政学会法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.187-196, 1999-11

In the aftermath of the Russo-Turkish war of 1877-78, San Stefano Treaty was signed in March 1878 and granted in dependence to Serbia, Montenegro, and Rumania, and autonomy to a large Bulgarian state. No such provision was either sought or executed for the Armenians. Sultan Abdul Hamid II (1876-1909) believed Muslim superiority in the Ottoman Empire. He determined to annihilate the Armenian nation perfectly, and to sweep away that hated Christianity which provoked Europe to interfere. He feared nineteenth-century Armenian Renaissance, and to abort it he preferred to use force, including massacre. Lepsius mentions that the Armenian massacres were caused by the threats for reforms made by the Great Powers. On the night of 23/24 April 1915, numbers of Armenian political, religious, educational, and intellectual leaders in Constantinople were arrested, deported into Anatolia, and put to death. Minister of Internal Affairs Talaat Pasha ordered Armenian deportation from the war zones to relocation centers-actually the deserts of Syria and Mesopotamia. Armenian soldiers of the Ottoman armies were taken out in groups and murdered. The adult and teenage males were swiftly separated from the deportation caravans and killed immediately under the direction of Young Turk officials and agents, the gendarmerie. Women and children who were drive for weeks over mountains and deserts, often dehumanized by being stripped naked and repeatedly preyed upon and abused. About 1,500,000 of the Armenians have been slaughtered by Sultan Abdul Hamid II, The Young Turks and Nationalists in 1894-1923. The survivors of the Ottoman-Armenian were condemned to a life of exile and dispersion and could not help being resigned to inevitable acculturation and assimilation all over the world. The writer's aim in this paper is to raise the following three questions: What happened? Why did it happen? And what might be leaned from the Armenian case?
著者
上野 乃毅
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_30-4_38, 2009-10-27 (Released:2009-12-27)

ソフトウェアへの機能追加のために実装の大規模な刷新が必要になることがある.実装刷新において後方互換性を完全に保つのは難しく,作業の途中で頓挫する例が後を断たない.実装刷新に失敗すると,開発プロジェクトでは巻き戻しの作業が発生するだけでなく,実装刷新を担当した開発者がモチベーションを欠き,長期的な生産性低下に繋がる恐れがある.本論文では,オープンソース開発における実装刷新の失敗事例を調査し,共通の要因とその対処法を明らかにした.調査の有効性を示すために,世界中に膨大な数のユーザを抱えるソフトウェアGNU Emacsの暗号化サブシステム(約4500行)に関して,提案手法に従って刷新を行なったところ,作業を円滑に完遂できた.