著者
片桐 保昭
出版者
形の文化会
雑誌
形の文化研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-14, 2009

Landscapes have ambiguous beauty. Most of all sciences, studying perspectives are from technological functionalism or social or cultural meaning to designing this. Present designers are using such ‘modern’ know ledges. However the designers want to express some more original and aesthetical design, they could not be refer such scientific or cultural knowledge. These knowledge are constructed from past issues so not to help to make ambiguous unnamable beauty by each designer’s objective senses. This paper aims to explain the processes of making such beauty in designed landscapes and to present the perspective how to study such 'original' 'aesthetical’ expression in landscape designing. To clear the point not explained by ‘technological’ or ‘cultural’ issues, the study uses participant observation in designing workshop in present Japan and depicts these processes as anthropological concept of practice. Soundscape designing workshop is choose therefore the genre of this, designers are very sensitive and subjective to make their own ‘original’ and ambiguous beauties in the landscapes. The observation has done for five months in one of the redevelopment building project in Tokyo with some designers, composers and dweller of the city of project was held. Data are arranged from the point never resolved by technological functionalism and social or cultural meaning in designing sounds as landscape elements. Designed sounds are not aimed from function of urban planning, social needs from dwellers, or purposed to appreciation by public. Nevertheless Designers have wanted to feel ambiguity and to express such ambiguous feeling as some ‘good’ sounds. The distinctive features of designed sounds are hardly to listen and without cadence with repetitive phrases. These sounds are made some ambiguous but 'good’ feelings in landscapes of redevelopment area by dwellers. These designed sounds are aimed and practiced to been felt to public with some ambiguous awareness without distinct purposes. Designers and publics never objectify these senses of awareness therefore without attention. These intentionally designed subtle noisy sounds are considered playing to make potentials to each person's ‘imageability’ not explained by ‘social’ or ‘functional’ issues in the landscape. Many sciences are neglected such issues in landscapes as 'noises’ or negative elements in landscapes. These practices are important to raise each persons' own sensitivity to own landscapes.
著者
室橋 春光
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.124, pp.13-31, 2016-03-25

「学習障害」は,生物学的基盤をもち社会的要因を強く反映する,学習に関する包括的用語とみることができる。学習とは,適応の齟齬を修正し,自らの活動の仕組みを変容するあり方(狩野,1967)である。生物学的基盤として,様相の異なる知覚処理を縮約し統合することに関する,出現頻度のより低い脳内ネットワークの存在があると想定し得る。恐らく大細胞系機能の関わる背側系経路の機能的脆弱性があり,文脈促進のありかたには非平均的処理が具わる。「障害」の基準は,社会的「平均」からの逸脱の度合により規定されるが,時代と文化の影響を強く受けて「障害」的表現型をもつ。「学習障害」に関連する中間表現型が,「強み」の表現型となるような教育が求められる。
著者
加藤(鈴木) 美羅 岡松 優子
出版者
低温科学第81巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.99-108, 2023-03-20

哺乳類には,白色と褐色の2種類の脂肪組織が存在する.白色脂肪組織はエネルギーを中性脂肪として貯蔵する役割を担うのに対し,褐色脂肪組織はミトコンドリアの脱共役タンパク質1(UCP1)により熱を産生する非震え熱産生の部位である.哺乳類は寒冷刺激を受けると交感神経を介して褐色脂肪組織の熱産生を活性化し,体温の低下を防ぐ.寒冷刺激が長期に渡ると褐色脂肪組織が増生するとともに,白色脂肪組織中にUCP1を発現するベージュ脂肪細胞が誘導され(白色脂肪の褐色化),個体レベルの熱産生能が増大して寒冷環境に適応する.本稿では,寒冷適応における脂肪組織の変化とその分子機序を概説するとともに,動物種による褐色脂肪組織の発達や機能の違いについて紹介する.
著者
栁内 景太 関 あゆみ
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-31, 2023-03-24

書字困難児に対して不適切な対応が為されると、書字への抵抗が強まり学習意欲の低下を引き起こすことがある。そこで、本研究では小学生の書字困難児4 名を対象に、書字困難児の認知行動的特徴と経過との関連について検討した。その結果、共通する認知行動面の困難としてワーキングメモリ、巧緻性、目と手の協応、視覚認知の困難と不注意が認められた。また、共通する経過として、学習する漢字がより複雑になり、自己客観視が可能となる小学3 年時頃より、自尊心が低下し、学習意欲が低下することが認められた。加えて、行動面の困難として多動と対人関係にも困難を有すると、不適応の原因を見極めることが難しく、書字への支援が遅れ、学習意欲の改善が著しく困難になることが示唆された。従って、多動と対人関係の困難が目立つ場合でも、書字困難への対応を後回しにしないことが重要と思われる。
著者
濱田 康行
出版者
北海道大学大学院経済学研究院地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:27580695)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.135-156, 2022-03-30

資本主義の弔鐘がなる,という150 年前のマルクスの言葉が聞かれるようになった。左翼思想の側からだけでなく,いわゆる体制派と思しき人々も,この世の終わりをつぶやくのである。こうした言動の背後には,人々の耳目を引きたいという動機もあろうが,それだけではなさそうである。株価を除けば,資本主義のほぼ総ての指標は衰退をしめしている。加えて,物質の豊富さとは裏腹に,多くの人々にとってこの世は住みにくくなっているらしい。幸福論という,やや,怪しげなものだけでなく,社会学の研究が示す様々な統計に,それは示されている。しかし,である。鐘が鳴り止んだ後の,経済・社会の姿が皆目,わからないのである。誰もそれを語らないまま,日暮れの鐘撞場から去っていく。予想が社会科学の任務でないことは,そのとおりだが,人々が不安に思っているときに,来たるべき社会の輪郭を科学的な考察に基づいて示すことは,必要だろう。存在意義という言葉はこういうときのためにある。私の専門は,ここにない,などと言ってはいられない。本稿は,こうした問題意識ではじめた研究会の二番目の成果である。ひとつ目は,社会学者との共同研究であったが,今回は近い将来の合流を意識しつつ,それぞれのテーマを設定した。対象は,株式市場である。最初の考察対象が株式市場なのは,それが資本主義の生みだした最大,最強の装置だからである。これがあってこそ,巨大な投資が可能となり,大きな生産設備,インフラがつくられた。では,鐘がなり終わった後,この巨大装置はどうなるのか?どうすべきか?ドイツの社会経済学者,G・コルネオ,日本の在野の研究者,平川克美,廣田尚久の主張を検討しつつ,マルクスの残した,否定の否定の命題に沿って,株式市場の将来を考えてみたい。
著者
堀田 治
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター ワーキングペーパーシリーズ = Working paper series
巻号頁・発行日
vol.142, pp.1-21, 2013-05-20

本研究ではこれまで、アート消費の中でも極めて高関与なバレエ、オペラの観客を事例に、通常の高関与とは異質の「超高関与」の領域があるという仮定の下に、関与と知識の長期的な相互作用を示す枠組み「アートの消費者 関与-知識モデル」を提示し、検証をしてきた(堀田 2011; 2012)。本研究の目的と意義は次の2点である。第一に、アート分野での現象を足掛かりに認知、感情から関与、知識につながる流れをこの枠組みで捉え、超高関与のメカニズムを解明し関与概念を拡大する。「超高関与」の実体は、製品知識、情動や主観的経験、自己知識、手続き記憶、他分野の知識など様々な内部情報が結合された結果としての、頑健で永続的な「精緻化された関与」であることを捉え、諸概念を統一的に説明する。これにより、消費者の状態を示す媒介変数としての関与ではなく、知識、満足度、ロイヤルティを包含したマーケティング成果目標として関与を位置づけることが可能となり、新たなマーケティング戦略をもたらすものである。第二に、ポピュラリティが低く、構造的に「需要が限られた消費分野」であるアート市場において、潜在顧客のセグメントを行い、顧客層を拡大する要因を探り、新規顧客開拓の戦略を見据える。本稿では、関与概念を掘り下げる「超高関与になるメカニズム~感情・知識の精緻化」、新規顧客拡大を見据えての「アート消費者のセグメント~潜在顧客と拒否領域」の2つの概念モデルの提案を行う。