著者
植田 由香 若林 茂 松岡 瑛
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.715-723, 1993-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
2

難消化性デキストリン (PF-C) の耐糖能改善効果を健常人において評価した.(1) PF-C (3, 6, 30g) 添加・非添加条件下, ショ糖30gを含む炭酸水100mlを成人男性6名に投与し, 耐糖能および負荷後2時間尿のC-ペプチド (U-CPR) 値を測定した. 負荷後30分の血糖値の平均変化率は前値を100%とすると, ショ糖単独154%に対してPF-C3および6g摂取時はいずれも141%と有意に低値であった (30g摂取時146%). U-CPR値はPF-C 6g摂取時に最も低下し, ショ糖単独 (4.62±0.72μg/2hr) の86%であった. 以上から, PF-Cの最有効添加量はショ糖30gに対し6gと推定した (2) ショ糖30gを含む水羊羮 (100g) を成人35名に投与したところ, PF-C6g摂取時のU-CPR値は非摂取時 (5.71±0.78μg/2hr) の78%に低下した. さらに, 試験前臨床検査において上半身肥満男性6例のBG, T-Cho, TG, γ-GTPは正常体型男性 (25例) に比べ有意に高値であり, PF-C 6g摂取によるU-CPRの低下効果はより顕著に認められた (非摂取時の61%).
著者
野村 誠 中島 泰子 阿部 裕
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.21-25, 1992-02-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
4 17

難消化性デキストリンを実験動物ならびに高脂血症を伴った非インスリン依存型糖尿病患者にて長期間にわたり投与し, 血中脂質ならびに糖代謝に及ぼす影響について検討した。SD系ラットにおいては9週間にわたり5%の濃度で飼料中に混合し, 一方, 高脂血症症例においては各食事ごとに20gを内服し (1日量60g), それぞれ9週ならびに12週にわたり血中脂質ならびに空腹時血糖値の変動を追跡した。その結果, SD系ラットにおいては食物繊維投与後, 空腹時血糖値, 血中コレステロールならびに中性脂肪レベルの有意な低下を認めた。同時に非インスリン依存型糖尿病症例においても血中コレステロール値と空腹時血糖値の著明な低下を認めた。
著者
山崎 祥史 福田 真一 白石 浩荘 泉 康雄
出版者
(社)大阪生活衛生協会
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.84-88, 2006 (Released:2006-04-07)
参考文献数
21

Eighty kcal of rice crackers containing indigestible dextrin (4.6g/21g) were administered as test samples to 27 healthy adults (18 males and 9 females) and the postprandial rise of blood glucose levels were compared with placebo samples (80kcal, 17.8g) not containing indigestible dextrin. As a result, test samples showed lower blood glucose levels (p <0.05) at 15 and 30 minutes after intake compared to placebo samples.This result suggests that rice crackers containing indigestible dextrin are useful for primary prevention of diabetes.
著者
藤原 啓子 松岡 瑛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.361-368, 1995 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 10

馬鈴薯でんぷん由来の低粘性水溶性食物繊維である難消化性デキストリン (PF-L: 食物繊維含有率55%, PF-C: 同92%) の耐糖能改善効果をラット, 健常成人並びにインスリン非依存型糖尿病 (NIDDM) 患者において評価した。1) Sprague-Dawley 系雄ラットのショ糖1.5g/kg体重経口投与後の血糖値上昇は, PF-L (340μl/kg体重) 並びにPF-C (0.15g/kg体重) 存在下では非存在下に比べ有意に低下した。2) 健常成人8例を対象とした経口糖負荷試験において, PF-L 40ml (食物繊維量16g) はトレーランG75負荷により血糖値上昇並びにインスリン分泌を有意に低下させた。3) 30kcal/kg体重の食事制限を3か月以上施行し, 状態の安定しているNIDDM患者5例を対象にPF-Cを3か月間投与 (30g/日) し, 試験食 (459kcal) 負荷試験により耐糖能の変化を観察した。その結果, 3か月目では5例中4例で開始前に比べ耐糖能の改善が認められた。残り1例についても2か月目までは改善がみられた。
著者
安中 誠司 山本 徳司
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.881-885,a1, 2003-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

合意形成をめぐる近年の状況の変化を踏まえ, ワークショップ形式による住民参加型の合意形成支援の手法的な側面に焦点をあて, 意義や問題点, 今後の課題を提示した。濃密な人間関係と優れたリーダーの存在を前提とする個別説得型の伝統的合意形成を代替するものとして注目を集めているワークショップは, 集落点検やTN法等の様々な参加型手法を活用する。それらは住民参加支援という点で大きな意義を持つ反面, 意見収集の手法として形式的に適用される危険性も内在させているとともに, 合意の促進という面でも発展途上にある。実効性を高めるためには, 手法論的な観点から様々な点に留意し, 将来に向けてさらなる進化を図る必要がある。
著者
出村 公成 浅野 泰樹 服部 陽一
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.587-592, 2004-07-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
松村 靖
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.39-43, 2014 (Released:2016-02-01)
参考文献数
21

フッ素は他の元素には見られない独特の物理化学的性質を有するため,生体内での吸収や代謝に与える効果に加えて,薬理作用の発現や増強に及ぼす影響が注目されている.医薬や農薬の分野において開発される含フッ素化合物の増加には,目を見張るものがある.今やフッ素による構造修飾は,ドラッグデザインの重要な手段の1つと言えるかもしれない.しかし一方で,構造修飾の手法は芳香環部位へのフッ素原子やCF3基の導入がほとんどであり,化合物の主鎖となる骨格や脂肪族置換基にフッ素を導入した例は限られている.また,薬物が受容体に結合するときのフッ素と受容体アミノ酸残基との直接的な相互作用やフッ素の立体電子的効果については,いまだによく分かっていない.さて,読者の皆様は,研究対象の化合物の構造を眺めていて,ふと「ここにフッ素を入れたら,面白い活性や物性が出るかもしれないなあ…」などと思われたことはないだろうか.我々は1980年頃より,プロスタグランジン(PG)などの生理活性物質にフッ素を導入した誘導体を合成し,フッ素が生理活性や物性に及ぼす効果について研究を行ってきた.何かフッ素の特徴を生かしたユニークなドラッグデザインができないだろうかと考えるとき,どのようにして目指す位置に選択的にフッ素を導入するかが常に問題となり,新たな合成法の開発が鍵となることを痛感してきた.本稿では,主鎖にジフルオロメチレン(-CF2-)骨格を持つPG誘導体について,フッ素の効果に焦点を絞って,ドラッグデザインとフッ素導入法を中心に概説し,緑内障治療薬タフルプロスト(tafluprost)の誕生に至る経緯を交えて紹介したい.
著者
井関 正久
出版者
財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.157, pp.157_70-84, 2009-09-30 (Released:2011-11-30)
参考文献数
41

The year 1968 was not only a time of student movements and Cultural Revolution in many Western countries, but also the year of the “Prague Spring” and the Soviet invasion of Czechoslovakia. The people of Eastern Germany were influenced by those political and cultural events in Western and Eastern Europe.In spite of suppression by the state there were protest activities in the 1960s in Eastern Germany. Under the influence of subculture and student movements in Western Germany the postwar generation opposed the cultural policies of the Socialist Unity Party (Sozialistische Einheitspartei Deutschlands or SED). During the “Prague Spring” in 1968, hopes of “socialism with a human face” (democratization of socialism) rose in Eastern Germany.The Soviet invasion of Czechoslovakia in August 1968 brought about different protest activities everywhere in Eastern Germany. According to Stasi files, more than thousand people in Eastern Germany were investigated for painting graffiti, distributing pamphlets or even just public criticism of the invasion. Such protest activities took place spontaneously without political leaders, and were put down by the police immediately.The “Sixty-Eighters” in Eastern Germany organized political alternative movements under the protection of the Evangelical Church through the 1970s and 1980s. Western subculture played a big part in such dissident movements. The Eastern “Sixty-Eighters” also formed civic groups in autumn 1989, demanded democratization of socialism once again and played a main role in “peaceful revolution”. However, the younger generations contributed to “peaceful revolution” by participating in demonstrations or by leaving their country. In fact the generation of “Eight-Nine” includes different age groups.Thus, a legacy of 1968 and 1989 could be the combination of political movements and subculture, which made it possible for dissidents to form a counter public sphere and network in a society of authoritarianism or totalitarianism.
著者
八尾 建史 長浜 孝 松井 敏幸 岩下 明徳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1063-1075, 2011 (Released:2011-06-14)
参考文献数
25

光学的拡大機能を有する上部消化管電子内視鏡が早期胃癌診断に応用できるようになった.さらに狭帯域光観察narrow-band imaging(NBI)を胃拡大内視鏡観察に併用すると,さまざまな解剖学的構造が視覚化される.これらの新しい方法について内視鏡医が知っておく必要がある基本的な原理は,拡大倍率と分解能の違い,NBIの原理,胃における観察法・観察条件である.また,NBI併用拡大内視鏡を胃粘膜に応用した場合,何がどのように視覚化されるかを正確に理解しておく必要がある.具体的に視覚化される解剖学的構造は,微小血管構築像(V)については,上皮下の毛細血管・集合細静脈・病的な微小血管であり,表面微細構造(S)については,腺窩辺縁上皮・粘膜白色不透明物質である.筆者らは,NBI併用拡大内視鏡による早期胃癌の診断体系として,VとSの解剖学的構造を指標に用い,それぞれをregular/irregular/absentと分類し,一定の診断規準に当てはめて診断するVS classification systemを開発した.現在,さまざまな臨床応用が報告されているが,白色光拡大に加えNBI併用拡大内視鏡の有用性は充分に検討されているとは言い難く,現在進行中の研究結果を待ち再度評価する必要がある.
著者
山本 恭通 戸矢崎 利也 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.46-51, 2017-01-15 (Released:2017-01-15)
参考文献数
5

症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会総会発表論文集 第58回総会発表論文集 (ISSN:21895538)
巻号頁・発行日
pp.392-479, 2016 (Released:2017-02-01)

2016年10月9日(日) 10:00 〜 12:00ポスター発表 PD02 - PD89 第58回総会HP PD02 - PD64 https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2016/session/PD1/category PD65 - PD89 https://confit.atlas.jp/guide/event/edupsych2016/session/PD2/category
著者
新井 充
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.229-232, 2008-08-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
3

本稿では,物質安全の基礎の最終回として,混合危険の定義,一般的特徴,法規制,評価試験方法,注意点,事故事例等について概説する.薬品類の混触による発火が,火災の原因になるという事実は,地震の際の化学実験室等で観測されているが,このような発火現象に代表される混合危険は,地震時以外にも災害をもたらす可能性があり,注意が必要である.
著者
越後 多嘉志 竹中 哲夫 市村 真
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.223-227, 1974-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

蜂蜜の品質に関する一連研究として,蜂蜜中の酵素の安定性を調べた。(1) 酵素液中にはアミラーゼ,グルコースオキシダーゼ,α-グルコシダーゼが存在し,ゲルろ過法によってそれらの活性区分を明らかにした。(2) 酵素液中の上記各酵素の作用最適条件を第1表に示した。またpH安定性試験から蜂蜜のpH(約3.8)附近ではどの酵素も不安定であった。(3) 酵素液あるいは蜂蜜中でのアミラーゼは,加熱に対して比較的安定であり,グルコースオキシダーゼは最も不安定であった。酵素液を冷温(3℃)貯蔵すると活性低下をほとんど認めないが,室温(20℃)貯蔵では低下を認め,この場合アミラーゼの低下度合が少なく,グルコースオキシダーゼが最も大きかった。(4) 密封したガラス瓶に蜂蜜を7か月間室温(20~28℃)貯蔵した結果,酵素活性の損失度合はアミラーゼが最も少なく,α-グルコシダーゼとグルコースオキシダーゼはともにアミラーゼよりも2倍ぐらい多かつた。
著者
Q. Tang H.Y. Wang H. Chen P. Li X.W. Tang T. Katsumi
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
Japanese Geotechnical Society Special Publication (ISSN:21888027)
巻号頁・発行日
vol.2, no.53, pp.1845-1848, 2016-01-31 (Released:2016-01-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1

This paper studies the effects of bio-clogging on hydraulic conductivity of compacted soils used as landfill liners. Landfill leachate contains a large amount of microorganism and bacterial biomass, which was likely to cause bio-clogging in landfill liners. To interpret the effect of bio-clogging on hydraulic property of compacted clays, in this study, a series of laboratory-scale hydraulic conductivity tests were conducted. The long term hydraulic conductivity of compacted clays was measured with distilled water, landfill leachate and one type of nutrient solution. The laboratory test results show that the hydraulic conductivity of compacted clays permeated with distilled water stabilized at approximately 3.77 × 10-8 cm/s, and the hydraulic conductivity of compacted clays permeated with landfill leachate or nutrient solution ranged between 1.1 × 10-8 cm/s and 5.22 × 10-9 cm/s. Such a significant difference was attributed to the effect of bio-clogging. The microorganism and bacterial biomass reduced the hydraulic conductivity up to one order of magnitude. This study indicated that the bio-clogging is approximately a feasible method to create low-cost and low-hydraulic conductivity barriers by using locally available clayed soils.