著者
有田 隆也
出版者
名古屋大学オープンコースウェア委員会
巻号頁・発行日
2016-06-29

この講義は、主にドイツ製のボードゲームやカードゲームを題材として、受講生同士がゲームを紹介しあい遊びながら、考えることの楽しさを味わってもらうことを目的としています。ルールを読み、理解し、他の受講生に説明し、プレイし (勝ったり負けたりし)、戦略を考え、討論する、というように、盛りだくさんです。他大学のごく一部でも囲碁、あるいは将棋を題材にした授業を行っているところがありますが、本講義の場合、海外の未知なゲームを扱う場合が多いので、受講生がまったく知識のないところから平等にスタートすることができますし、外国の文化を楽しめます。ボードゲーム先進国のドイツでは毎年数百の新作が発表されています。ゲームが扱うテーマは、思いつく限りの範囲をカバーしているといっても過言ではなく、ゲームのメカニズム自体も継続的に洗練がなされ、工夫されてきています。この講義では、そのように多様な世界の一端を20種類程度のゲームで味わいます。根本的な問題意識をここでほんの少しだけ述べましょう。私は (特に日本の) 現代社会が直面する問題群の根底には、人と人のインタラクション (相互作用) における想像力の不足、欠如があるのではないかと考えています (ちなみに、私の専門は人間関係に限らずに様々なインタラクションから創発する現象を計算機の中の世界で起こして理解することです)。ドイツのボードゲームは人と人との様々な状況における様々な種類のインタラクションについて考え、悩み、楽しむものです。ワクワクするようなプレイを通じて、他人の立場に立って、他人の気持ちを想像する力をトレーニングすることができるのです。そうしないと勝てませんので。このような意味からも、受講生はもちろん、それ以外の人たちにも、いろいろな場面で、ドイツなどの質の高いボードゲームをプレイする楽しさを知ってほしいと心から願っています。幸いなことに、このような私の問題意識やボードゲーム利用による教育効果は徐々に社会でも共有されるようになってきたようで、この授業やその実践に基づく知見は国内外のメディアで紹介されるようになってきました (北欧の大学が発行する雑誌への寄稿、テレビ番組での模擬授業の実施、テレビ番組へのコメンテーター出演など)。この授業の受講生達には、この先いろいろな場面で受講体験を活かしてほしいと願っています。
著者
汪 立珍 Wang Lizhen
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 : for Asian folklore studies (ISSN:09157468)
巻号頁・発行日
no.17, pp.166-170, 2000-03-30

エヴァンキ族は、主として中国の内モンゴル自治区呼倫貝爾盟に分布している。1992年に行われた中国の人口調査によると、全国のエヴァンキ族の”エヴァンキ”という言葉は、この民族の自称であり、”山から降りた人”、或いは”山から降りてきた人達”という意味である。・・・
著者
山本 芳明
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.276-257, 2009-03-28

嘉村礒多は、昭和三年から八年にかけての短期間に、自らの身辺を題材とした、三十ほどの短編小説を書いただけのマイナー作家であるにも拘らず、彼の文学史的な地位は大変高い。嘉村が正典に登録されているといっても誤りではない。こうした事態をもたらしたものは、発表された作品に対する、同時代の評者の熱烈な支持と考えられる。それは同時代評を検討することによって確認することができる。デビュー以来、モダニズム文学・プロレタリア文学の両陣営から一定の肯定的評価を得ていた嘉村であったが、転換点となったのは、昭和五年一月号の「新潮」に発表された「曇り日」であった。この作品によって、嘉村は私小説という限定を突破して、時代を超えた人間性を描いた作家として認知されるに至った。作品は主人公の「私」の卑小さを徹底して描いており、その一貫した筆致が同時代の評者に強烈な印象を与えていた。ただし、「曇り日」は嘉村の文壇的地位を決定的に高めたわけではなく、昭和七年が嘉村を文壇の頂点に押し上げた年となる。
著者
伊藤 登茂子 浅沼 義博 白川 秀子 久米 真 ITO Tomoko ASANUMA Yoshihiro SHIRAKAWA Hideko KUME Makoto
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.29-36, 2009-10-01

膵癌の治療成績は不良であり, 現在においても, 膵頭部癌切除例の生存期間の中央値は12.3ヶ月, 5年生存率は13.0%と低値である. 浸潤性膵管癌は膵癌の大多数を占めるものであるが, 同診断により手術を受けたのち, 19年が経過したサバイバーに, 病気との向き合い方についてインタビューする機会を得た.1) 疾病の理解, 2) 病気に対する自分自身の構え, 3) 病気への対処行動と予防行動について, その語りを健康生成論的視点で分析したところ, 首尾一貫して健康のベクトルを健康軸に向けるよう, 自分はこれでは死なないと信じて, 病名告知がない状況で自ら文献を調べて疾患を理解し, 回復手段を考え, 便秘やガス貯留が無いように代替療法を取り入れるなど, 主体的かつ積極的に過ごしてきたことが分かった. また, 入院中の生活で感じたさまざまな不合理や, 職業的背景や価値観を尊重した対応がされなかった際に感じた疎外感については, 今後のケアで留意すべき示唆となった.\nThe prognosis of invasive ductal pancreatic cancer is not satisfactory even at present. The median survival is reportedly 12.3 months, and 5 year survival rate is as low as 13.0% in patients who underwent pancreatoduodenectomy.We interviewed a pancreatic cancer patient who survived for more than 19 years following pancreatoduodenectomy, with regard to the way he coped with the disease. We have analyzed the interviewfrom a salutogenic standpoint such as 1) understanding of the disease, 2) his own preparedness, 3) manageability and preventive approach to the disease.As the result, we realized that he maintained a proactive and positive attitude : he had a strong sense of coherence to maintain his health, he believed that he would not die from the disease, he examined the literature to comprehend the disease (since informed consent had not been achieved sufficiently in those days), and he managed constipation and abdominal distension well by resistance training, special supplements and devised abdominal massage. Furthermore, he sometimes felt irrational and alienated during his hospitalization, because his value judgment fostered through his long career of journalist was not respected during his treatment. This should be given consideration in future.
著者
南波 紀昭 向峯 遼 芳賀 拓真 佐伯 いく代 Ikuyo SAEKI
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん = The Chiribotan (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.221-240, 2020-07-15

本研究は筑波大学自然保護寄附講座より研究助成を受けて行われた。