著者
小杉 智 上原 宏 神成 淳司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J103-B, no.1, pp.1-10, 2020-01-01

本論文では,土壌,農地,気象など農業関連のデータをクラウドデータベースに集約した農業データプラットホーム'農業データ連携基盤(WAGRI)'のサービス,及びアーキテクチャを述べる.耕作放棄地の増大,担い手不足に直面する日本の農業では,農家の経験を代替するデータ農業への期待が高まっているが,始まって間もないこれらの取組みにおいて,サービス要件は極めて流動的である.こうした背景から農業データ連携基盤では,今後発生する様々なデータサービス要件に対して,ソフトウェアの追加開発を極力抑えてサービス実装できるアーキテクチャ'Dynamic API'を考案した.Dynamic APIによれば,ユーザ自身が新たなサービスを実装することも可能である.本論文では,Dynamic APIアーキテクチャによって実現した各種のデータサービスを述べるとともに,このアーキテクチャが新たに発生するサービス要件に対してプログラム開発を伴わずにサービスを提供する仕組みについて,事例を交えて述べる.
著者
栗田 多喜夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J73-D2, no.11, pp.1872-1878, 1990-11-25

本論文では,情報量基準を評価基準として,3層のフィードフォーワード型のニューラルネットの隠れ層のユニット数を自動的に決定する試みについて報告する.情報量基準としては,赤池のAIC(A Information Theoretical Criterion)とRissanenのMDLP(Minimum Description Length Principle)を用いた.Fisherのアヤメのデータの識別のためのネットワークーとフーリエスペクトルに基づく話者識別のためのネットワークに対する実験結果を示す.
著者
池崎 秀和 林 健司 山中 章己 立川 理江子 都甲 潔 山藤 馨
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.J74-C2, no.5, pp.434-442, 1991-05-25

筆者らは,既に人工脂質膜を用いたマルチチャネルの味覚センサの特性が,人間の味覚特性と非常に類似していることを示した.本論文では,計測方法の改良を行うことで,センサの再現性をより高め,微妙な味の差の識別を可能とし,工業的な味の計測の実用化を計ることを目的とする.改良点は,以下のとおりである,第1は,絶対値測定から,センサにあらかじめ味のバイアスをかけた相対値測定にした点である.これにより,センサのトランスデューサ部は被検液に侵されにくくなり,繰返し使用が可能となった.第2は,センサに一定周期で外乱を与え,これに同期させて計測を行う点である.これにより,センサ出力が安定するまでの待ち時間が大幅に短縮でき,また,外乱による影響を受けなくなった.これらの結果,測定の再現性を飛躍的に向上させることに成功し,人間以上の詳細な味の識別が可能となった.そして,相対値測定の際のバイアスの変動や,測定時間の長さに測定結果が依存しないことを実験的に示し,これらの改良の妥当性を示す.更に実際の食品への適用例を挙げ,その有効性を示す.
著者
石島 巖 国吉 孝 鈴木 潔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J70-B, no.3, pp.346-354, 1987-03-25

本写真電送方式は昭和59年ロスアンゼルスで行われたオリンピックの際に,試験的に用いられた電子スチールカメラと電子式ファクシミリ送信機によるもので,電送されたカラー写真は新聞に掲載され,報道写真としての即時性と実用性が証明された.電子スチールカメラは,スチールビデオフロッピーディスクを記録媒体とする走査方式のカメラであり,撮影した情景を即時にCRT上に映像化できる,銀塩フィルムを用いないカメラとして話題となった.供試の装置はフロッピーディスクの記録データをディジタル処理して電送する,ハードコピーの要らない送画システムであり,撮影から新聞掲載までの時間の短縮を目的として開発されたものである.
著者
Eiji KONAKA
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E102-D, no.6, pp.1145-1153, 2019-06-01
被引用文献数
1

This study tries to construct an accurate ranking method for five team ball games at the Olympic Games. First, the study uses a statistical rating method for team ball games. A single parameter, called a rating, shows the strength and skill of each team. We assume that the difference between the rating values explains the scoring ratio in a match based on a logistic regression model. The rating values are estimated from the scores of major international competitions that are held before the Rio Olympic Games. The predictions at the Rio Olympic Games demonstrate that the proposed method can more accurately predict the match results than the official world rankings or world ranking points. The proposed method enabled 262 correct predictions out of 370 matches, whereas using the official world rankings resulted in only 238 correct predictions. This result shows a significant difference between the two criteria.
著者
蔵内 雄貴 内山 俊郎 内山 匡
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.6, pp.1503-1512, 2013-06-01

Twitterは,毎日3億を超える投稿がある.この投稿の収集や解析が可能なことから,Twitterはマーケティングのための情報源として注目されている.年齢,性別,居住地域といったユーザ属性が得られれば,各属性をもつユーザにターゲットを絞って投稿内容を解析できる.しかし,属性を公開していないユーザも多く,投稿内容からの属性推定が研究されているが,精度は十分でない.そこで,ソーシャルグラフにおける近隣ユーザ同士の属性が近いという性質を利用し,これらを組み合わせることによって精度向上を目指す.本論文では,マルコフ確率場を用いてソーシャルグラフ上のユーザ属性をモデル化し,最適化問題として真の属性を推定する手法を提案する.実験では,サイコグラフィック属性とデモグラフィック属性の推定実験を行った.サイコグラフィック属性の推定では,人工的に付加したノイズを54%除去でき,デモグラフィック属性の推定では,地域属性の推定精度が9.1%ポイント改善するなど,提案法の有効性を確認した.
著者
糟谷 望 北原 格 亀田 能成 大田 友一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.9, pp.1385-1393, 2014-09-01

本論文では,自由視点映像技術を用いた一人称視点映像生成処理において,一人称視点映像らしくかつ快適に視聴できる映像を獲得する仮想カメラの運動モデルを提案する.モーションキャプチャシステムによって計測した歩行・走行時の人間の視点の移動軌跡を解析し,動作を構成する運動をモデル化する.これらの運動モデルに基づいて仮想カメラの位置を決定することにより,提示映像に一人称視点らしさを与えられることが期待される.一方で,仮想カメラを大きく運動させることは見づらさの原因となることが知られている.そこで,上述した運動を選択的に反映させた選手視点映像を生成し,映像の一人称視点らしさを高めつつ見づらさを引き起こしにくい撮影視点の運動モデルを主観評価実験により求める.評価実験の結果,視点の上下動を再現した場合,映像が一人称視点映像らしく,他の運動に比べて見やすい映像が生成されることが分かった.
著者
Takamasa OCHIAI Kohei MATSUEDA Takao KONDO Hiroaki TAKANO Ryota KIMURA Ryo SAWAI Fumio TERAOKA
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Communications (ISSN:09168516)
巻号頁・発行日
vol.E102-B, no.8, pp.1649-1659, 2019-08-01

In LTE (Long Term Evolution) / LTE-Advanced (LTE-A) system, the user-plane for a user equipment (UE) is provided by tunneling, which increases header overhead, processing overhead, and management overhead. In addition, the LTE-A system does not support moving cells which are composed of a mobile Relay Node (RN) and UEs attached to the mobile RN. Although there are several proposals for moving cells in the LTE-A system and the 5G system, all of them rely on tunneling for the user-plane, which means that none of them avoid the tunneling overheads. This paper proposes MocLis, a moving cell support protocol based on a Locator/ID split approach. MocLis does not use tunneling. Nested moving cells are supported. Signaling cost for handover of a moving cell is independent of the number of UEs and nested RNs in the moving cell. A MocLis prototype, implemented in Linux, includes user space daemons and modified kernel. Measurements show that the attachment time and handover time are short enough for practical use. MocLis has higher TCP throughput than the tunneling based approaches.
著者
鈴木 雅之 黒岩 龍 印南 圭祐 小林 俊平 清水 信哉 峯松 信明 広瀬 啓吉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.3, pp.644-654, 2013-03-01

日本語テキスト音声合成において,任意の入力テキストに対し正しいアクセントを推定することは,自然な合成音声を得るために不可欠である.日本語は,単語が文中で発声されると,アクセントが前後の文脈に応じて変化する,アクセント結合と呼ばれる現象が発生する.本研究では,この日本語のアクセント結合を統計的に自動推定する課題に取り組む.まず本研究の遂行に必要な,文発声時のアクセント情報がラベル付けされた文章データベースを作成した.ここでは6334文の日本語文セットを対象に,日本語東京方言話者の作業者一名が,アクセント句境界,文中の単語アクセント型のラベリングを行った.そしてこのデータベースを利用し,条件付き確率場を用いた日本語東京方言のアクセント句境界及び文中の単語アクセント型推定手法を提案する.アクセント句単位でアクセント結合自動推定の正答率を調べたところ,規則処理(87.48%)と比較して,提案手法(94.66%)はより高精度にアクセント結合を推定できることが示された.更に規則処理によるアクセント結合処理を用いた合成音声と,提案によるアクセント結合処理を用いた合成音声とを,聴取実験により比較したところ,提案手法は合成音声の自然性を有意に向上させられることが分かった.
著者
庄子 習一 江刺 正喜 松尾 正之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J68-C, no.6, pp.475-481, 1985-06-25

生体計測を目的としたpNa,pK用ISFETの性能を向上させるため,そのイオン感応膜であるM2O-Al2O3-SiO2(MAS,M:アルカリ金属)膜のイオン選択性について研究を行った.MAS膜はpNa,pK用のガラス電極の材料として用いられているものであり,そのイオン選択性はMAS膜の組成に依存することが知られている.そこで,pNa,pK用ISFETのイオン選択性を最大にするため,MAS膜ゲートISFETのMAS膜組成を変化させイオン選択性を測定し,両者の関係を調べた.その結果,MAS膜ゲートISFETのNa+-K+イオン間の選択性はMAS膜のアルカリ金属の種類とアルカリ金属,アルミニウムの含有比の両方に依存することが確められ,pNa,pK用ISFETのイオン感応膜として最適な組成を決定することができた.pNa用のISFETとしてはアルカリ金属としてLiを含むLAS膜をイオン感応膜として用いK+イオンに対するNa+イオン選択性が約200倍で低ドリフト長寿命のものが実現できた.また,pK用ISFETとしてもKを含むKAS膜を用いることにより,Na+イオンに対するK+イオン選択性が約40倍のものが得られた.
著者
白崎 博公 石原 藤夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J69-B, no.7, pp.715-721, 1986-07-25

二つの直線テーパ導波管およびカットオフ導波管からなるカットオフフィルタについて理論的に解析し,反射透過係数を数値計算により求めている.解法はテーパ導波管内の基本モードに対して成立する微分方程式を,導波管接続部での各境界条件を満足させるように,基本モード関数をclosed formで求めることなく,ルンゲクッタ法を用いて解くという方法で求めている.そして,Xバンドを用いた実験結果と良く一致することが示されている.
著者
白崎 博公 石原 藤夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J70-B, no.4, pp.470-475, 1987-04-25

二つのn乗コサインテーパ導波管およびカットオフ導波管からなるカットオフフィルタについて理論的に解析し,反射透過係数を具体的数値として求めている.解析はテーパ導波管内の基本モードに対して成立する微分方程式を,導波管接続部での各境界条件を満足させるように,ルンゲクッタ法を用いて解くという方法で求めている.この解析法は,モード関数をclosed formで求める必要がないため,応用範囲が非常に広い.更に,Xバンドを用いた実験を行い,理論値と実験値がよく一致することを確かめ,本方法の実用性を確認している.
著者
園田 潤 丹治 紀彦 海野 啓明 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J102-C, no.5, pp.146-152, 2019-05-01

近年,フラクタル構造中の電磁波伝搬散乱解析が行われており,フラクタル構造は周期構造に比べ透過・共振特性がマルチバンドになり,Q値も大きくなることが理論的に明らかにされている.しかしながら,3次元構造は製作や測定が困難になる問題があった.そこで我々は,製作が比較的容易な一次元のフラクタルであるカントール構造に着目し,分割幅を変えることによる最小透過係数・最大共振係数やQ値の制御方法を提案している.本論文では,分割幅可変カントール構造を石膏ボードを用いた多層板構造により実現し,GHz帯マイクロ波実験で透過特性を測定しFDTD法による理論計算と比較することで,カントール構造の分割幅を可変することにより最小透過係数や最大共振係数及びQ値を制御できることを明らかにする.
著者
佐々木 勇人 濱上 知樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.2, pp.68-78, 2019-02-01

本論文は検出問題におけるcost-sensitive learningに関して,検出率と偽陽性率のトレードオフを陽に扱うための学習アルゴリズムを提案する.一般的にcost-sensitive learningでは偽陽性及び偽陰性の検出に対して罰則値をあらかじめ定める必要があるが,検出対象の性質や正例データ・負例データ間の偏りに応じて適切な罰則値は変化する.そこで本論文ではBoostingの各ステップにおいて適応的にしきい値を調整することにより罰則値を間接的に決定する.この手法により偽陽性率を固定しながら検出率を最適化することが可能となり,検出率と偽陽性率のトレードオフを陽に扱うことが可能となる.更に,このトレードオフを扱う必要のある実問題として精子検出に関する評価を行い,提案手法の有効性を明らかにした.
著者
伊藤 崇之 福島 邦彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J70-D, no.2, pp.451-462, 1987-02-25

非線形な抑制機構を持つ神経細胞を構成要素として聴覚神経系の特徴抽出モデルを構成し,計算機シミュレーションでその動作を確認した.モデルは,基底膜に相当するバンドパスフィルタ群,ヘアセルに相当する半波整流回路,および特徴抽出部からなる.特徴抽出部は,同一の特性を持つ細胞を一次元的に並べた細胞層を,複数段,縦続接続して構成した多層回路である.個々の細胞は,入力側の層との空間結合と一次遅れ要素により,興奮性入力,抑制性入力それぞれに時空間的な加算を行った後,非線形な抑制機構(シャント型抑制)とアナログしきい特性を経て出力を出す.生理学的な知見および音声の特徴を考慮して,周波数一定部分を抽出するCF型細胞層,周波数の変化する部分を抽出するFM型細胞層,摩擦性雑音を検出する摩擦性雑音型細胞層の3種の特徴抽出細胞層を構成した.これらは,それぞれ,母音のホルマント,子音から母音へのわたりや拗音,多くの子音に対応する特徴である.実際の音声を入力して計算機シミュレーションを行い,モデルが,上に述べた音声に含まれる種々の特徴を正しく抽出することを確認した.
著者
吉武 大地 佐村 敏治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.3, pp.239-243, 2019-03-01

教育工学への新しいメディアとしてスマートミラーを用いた教育システムを提案する.我々は,英単語学習システムの四つの特徴を有するスマートミラーの設計・実装を行った.アンケートと単語テストの評価により本システムの有効性を示した.
著者
小川 晃一 小柳 芳雄 伊藤 公一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J84-B, no.5, pp.902-911, 2001-05-01

本論文では,人体腹部に近接した150 MHz帯ノーマルモードヘリカルアンテナについて,有能電力に基づいた放射効率を新たに定義することによって,インピーダンス不整合及びアンテナ自身の抵抗による電力損失を考慮した取扱いをし,アンテナの長さやアンテナと人体の距離によって生じるアンテナの実用状態における実効的な放射効率の変化を解析的に求めた.更に,各部の損失電力を求めることによって放射効率低下をもたらしている要因分析を行い,効率低下のメカニズムを明らかにするとともに,その結果に基づいて人体近接時の放射効率改善の可能性について検討した.その結果,人体近傍における放射効率は-20 dB以下になること,その主要な要因はインピーダンス不整合損失であること,人体近接時に常に共役整合の状態を保つことによって10 dB以上の放射効率の改善が可能であることを示した.更にこれらのことを実験的に確認した.
著者
菅野 正嗣 西田 竹志 宮原 秀夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:03736091)
巻号頁・発行日
vol.J70-A, no.2, pp.278-288, 1987-02-25

地上回線と衛星回線とが結合された,大規模な地上/衛星系通信ネットワークシステムを設計するにあたって,従来様々な手法が提案されてきたが,これらの手法では対象とするネットワークの大きさや,設計時における制約条件が非常に限られていた.そのため,得られた解が現実性に乏しいという欠点を持っていた.そこで本論文では,制約条件としてネットワーク性能基準の他に,実際に構築する際に生ずる様々な制約条件をも考慮して,構築費用が最小となるネットワークシステム形態を発見的手法によって得るためのアルゴリズムを提案した.更に,このアルゴリズムによって実際にネットワークシステムを設計し,アルゴリズムの妥当性を示した.また,得られたネットワークシステムにおいて,トラヒック量が増加したり,地上局や地上回線などのネットワーク構成要素の費用が低下した場合,どのようにネットワーク形態を変更すべきかを示した.
著者
大内 一成 小林 大祐 中洲 俊信 青木 義満
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.12, pp.941-951, 2017-12-01

近年,スポーツ界ではICTを活用したトレーニング,戦術分析の導入が進んでおり,画像認識技術を用いた試みも行われているが,ラグビーでは試合に出場する選手の数が1チーム15人と多く,接触/密集プレーが頻繁に発生するため,画像による分析は技術的にハードルが高く,これまで積極的に取り組まれていない.筆者らは,特徴量設計方式によるボール検出/追跡と,ディープラーニング方式による選手検出/追跡を行うハイブリッド型映像解析により,一つのカメラ映像からボール/選手の移動軌跡を精度良く二次元フィールド上にマッピングする技術を開発した.また,ディープラーニングによる自動的なプレー分類を行い,これまで人手で行われていた主要プレーのタグ付け作業の自動化を検討した.本技術は,ラグビーに限らず様々なスポーツへの活用が可能である.
著者
竹上 健 後藤 敏行 大山 玄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J86-D2, no.2, pp.252-261, 2003-02-01

赤外線眼球運動観測装置などで観測された,頭部とカメラの相対位置が変化しない眼球画像において,瞳孔像を高精度に検出する手法について提案する.眼球の形状を球,瞳孔の輪郭を円とみなすと,瞳孔は眼球の動きに伴って見えの形状が楕円となる.この楕円形状をした瞳孔像の検出精度を高めることで安定した視線方向検出が可能となる.楕円を検出するには様々な手法が提案されており,その一つとしてハフ変換がある.ハフ変換は雑音や隠蔽などの影響を受けにくいという特徴を有しているが,一般の楕円検出では,決定すべきパラメータの自由度は5次元となるために,演算量やメモリ要求量が問題となる.一方,瞳孔は眼球中心を基準として回転するために,観測される瞳孔像は一般の楕円形状とならずに,眼球中心からの位置と方向に依存する.本論文では,この拘束条件を利用して,高精度に瞳孔を検出するための眼球モデルをベースとしたアルゴリズムについて述べる.そのアルゴリズムでは,システム全体の処理効率を考慮して,まず複数の観測画像からエッジに基づく楕円フィットによる瞳孔の初期検出を行い,それらの結果に基づいて眼球モデルのパラメータを推定する.その後,その眼球パラメータに基づいてハフ変換を行うことにより,瞳孔輪郭を高精度に再検出する.実験の結果,瞳孔輪郭検出の精度と安定性が向上しており,提案手法が有効であることが確認できた.