著者
山口 二郎 中村 研一 宮脇 淳 宮本 太郎 遠藤 乾 新川 敏光
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

この研究では、1990年代後半から21世紀にかけて急速に進んだグローバル化による福祉国家の解体現象と、これに対する平等概念を基調とした対抗策について、考察した。まず、21世紀初頭に起こった日本的福祉国家の崩壊現象について、「リスクの社会化、個人化」と「普遍的政策、裁量的政策」という2つの軸を組み合わせることで、体系的な説明のモデルを作った。戦後日本では、補助金、護送船団方式など、裁量的政策によりリスクの社会化が図られており、そのことが結果的に疑似福祉国家的効果をもたらした。しかし、市場原理の浸透や透明性を求める市民社会の要求の中で裁量的政策と不可分に結びついていたリスクの社会化の政策まで否定され、新自由主義的構造改革が優勢となったと説明される。また、西欧において福祉国家のモデルが、90年代から21世紀にかけていかに変容、再生したかを比較の観点から考察し、日本に対する教訓を明らかにした。特に、イギリス、スウェーデンなどにおける社会的包摂(social inclusion)の概念を分析し、グローバル化時代における社会的排除(social exclusion)の弊害を明らかにすると共に、社会的包摂を実現するための政策の枠組みやこれを実施する主体について考察した。さらに、格差社会の到来という現状において、市民が政治や政策に何を期待するかについて、東京と北海道において大規模な意識調査を行なった。その結果、平等や公共サービスに関して、多少の地域差はあるものの、市民は格差の小さい社会を望み、充実した公共サービスを望んでいることが明らかとなった。この知見は、これからの福祉国家再生策の重要な基盤となる。
著者
山口 二郎 杉田 敦 遠藤 乾 空井 護 吉田 徹 渡辺 将人 木宮 正史 川島 真 遠藤 誠治 高安 健将 村上 信一郎 宮本 太郎 小川 有美 中北 浩爾 水野 和夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20世紀後半に民主主義国で確立された二大政党制、二極的政党システムにおける政権交代というモデルは、1980年代の新保守主義的政治、1990年代後半の中道左派の復活までは、順調に作動し、民意の吸収と政策転換という効果をもたらした。しかし、2000年代に入って、経済のグローバル化の一層の進展と、雇用の不安定化や格差の拡大は政治的安定の基盤をなした経済的安定を侵食した。その結果、政権交代に対する国民の期待が低下し、ポピュリズムが現れた。こうした危機を打開するためには、従来の左右を超えた政党再編が必要とされている。
著者
牟田 和恵 古久保 さくら 伊田 久美子 熱田 敬子 荒木 菜穂 北村 文 岡野 八代 元橋 利恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジェンダー平等実現のための新たな形・次元でのジェンダー・フェミニズム研究の構築を目的とし、調査研究・文献研究・実践活動の三つの方法論によって研究を行った。貧困やケアの偏在等の問題に関する新たなフェミニズム理論の重要性と、一見女性に焦点化していないように見える幅広い社会問題への関心や運動にとってのフェミニズムの有効性を確認した。また海外国内ともに「慰安婦」問題やセクハラ・性暴力と闘う運動を柱としてジェンダー平等に近づく研究と実践がエンパワメントされており、研究と運動の連携がジェンダー平等の実現には不可欠であることを再確認した。女性情報発信に資するため制作したwebサイトは今後も運営を行っていく。
著者
向田 昌志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

人工ピン材料を超電導膜に入れ、磁場中超電導特性を向上させた膜のTcを人工ピンのない膜と同等のTcまで戻すため、さらに物質本来の「強い超電導特性」が発現し、対破壊電流密度の25%以上という高いJcを実現するため、人工ピンの成長機構解明として、微傾斜基板を用い、1次元人工ピンの曲がりを調べた。その結果、ある角度以上で、人工ピンは超電導膜のステップフロー方向に成長し、超電導膜の一番弱いc-軸方向の磁場中臨界電流密度を高める効果が無くなることが分かった。また、テープ線材に不可欠なプロセスの低温化、高速化も行った。さらに、鉄系超電導膜の上部臨界磁場を詳しく調べる研究も行った。
著者
山下 英愛
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、北朝鮮で制作・放映されたドラマの分析を通して、北朝鮮社会のジェンダーを考察することである。日本における北朝鮮研究は、政治外交などの分野において蓄積されてきたが、人々の暮らし、家族や社会におけるジェンダー役割、さらにそれらが政治体制とどのように結びついてきたのか、などの社会文化的側面についてはあまり関心を持たれてこなかった。本研究は、このような研究の空隙を埋め、北朝鮮社会に対する理解を深めようとするものである。本研究を行うためには、北朝鮮社会に関する基礎的な知識を補充し、海外の研究動向を把握する必要がある。そこで、初年度である29年度は、1)資料及び情報の収集、2)海外における北朝鮮研究の動向把握、3)関連研究者とのコネクションづくりに注力した。1)資料収集は着実に進めている。海外で活動する北朝鮮関連の研究者たちとつながりができたことで、韓国及び米国における資料収集の方法やその場所に関する情報を得ることができた。2)海外(ソウル、ニューヨーク、ワシントンDC)及び国内で開かれた学会や研究会に参加し、北朝鮮研究の動向や内容に関する知見を深めた。海外では相当多様な北朝鮮研究が行われていることがわかった。3)関連研究者との人脈づくりを積極的に行い、研究上の問題意識や研究内容についての意見交換もすることができた。さらに、北朝鮮社会の現状に対する理解を深めるために、ワシントンDCにある北朝鮮関連の研究機関や人権団体なども訪問して情報収集を行った。
著者
沢井 芳男 外間 安次 鳥羽 通久 川村 善治
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はヤマカガシ咬症の重症患者の治療血清の試作を行うためにヤマカガドウベルノイ腺から毒液を抽出し, ウサギ及びヤギを免役し, その血清を採集し, 硫酸ナトリウム, 硫酸アンモニウムによる分画及びペプシン消化法によってγ-グロブリンを分画精製し高力価の抗毒素を得た. その結果ウサギ抗毒素0.2mlは120μg(48mld)の毒量を中和した. またヤギ抗毒素0.1mlは220μg(73.3mld)の毒の致死を中和し, 216μg(47mhd)の毒の出血を抑えた. また抗凝固性は抗毒素0.05mlは119.3μg(108.5u)の毒による凝固を阻止した. また抗毒素の精製度については電気泳動の結果γ-グリブロンの単一のピークが得られた. しかし免疫電気泳動では抗ウサギγ-グロブリン(IgG)ヤギ血清に対し, ウサギ抗毒素は特異時的な反応帯が認められたが, 抗ウサギ血清に対してはγ-グロブリン以外の混入が認められた.なお本抗毒素にはさらに治療用毒素に必要な所定の検査を行い, 長期保存にたえるように凍結乾燥を行った. その間に発生したヤマカガシ咬症患者の重症例の治療に応用し, その治療効果を確かめることができた. すなわち本抗毒素は患者の出血性素因及び血液の凝固異常を速やかに回復し, 患者を治癒に導いた.
著者
松島 泰勝
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、 1972年に沖縄県が日本に「復帰」して以降、実施された振興開発に関する分析と、沖縄県における内発的発展に関する検討という2つに大きく分けることができる。前者に関する本研究の成果は、振興開発が初期の目標を実現できなかった要因を明らかにしたことである。特に、振興開発を米軍基地の押し付け策と連動させる「アメとムチ」の政策が振興開発失敗の最大の要因であることが本研究によって明らかにされた。後者に関する本研究の成果は、名護市の「逆格差論」に基づく内発的発展がなぜ近年再評価されたのかの理由を分析したことである。また沖縄全体の内発的発展を実現するため政策提案も行った。
著者
内山田 康 O'DAY ROBIN O'DAY Robin
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

From April 2016 to August 2016, Dr. O'Day did 4 months of ethnographic fieldwork and continued working with NG0s, Fukushima evacuees and activists working on the related issues. He worked with a group mothers who have evacuated from Fukushima to Tokyo with their children, a group of mothers who remained in Fukushima after the nuclear accident, a group of volunteers that identify themselves as “supporters” of those evacuees, a peace movement of women called “Mothers Against War”, and another student peace and pro-democracy movement called Student Emergency Action for Liberal Democracy (SEALDs). In addition, Dr. O'Day also engaged in participant observation research at political demonstrations, community events, and by volunteering in some disaster reconstruction projects.
著者
廣田 照幸 森 直人 寺脇 研 二宮 祐 丸山 和昭 冨士原 雅弘 小野 方資 末冨 芳 佐久間 亜紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 布村 育子 植上 一希 筒井 美紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1、関連文献・史資料の収集・吟味:日教組の運動の範囲が多岐にわたるため、大学院生や学部生にアルバイトとして利用しながら、7つの作業グループのそれぞれの主題に沿った関連文献・史資料の収集・吟味を体系的に行った。2、日教組所蔵史料の検討と整理:研究の基礎史料を利用可能な状態にしていくため、平成29年度は過去のプロジェクトにおいてデジタル化した資料を再整理しつつ、新たに当面の研究に必要な史料を選定してデジタル化作業を行った。教育制度検討委員会(第一次・第二次)関係及び1950年代後半期の中央執行委員会プリントなどを対象にした。単組史料も部分的に行った。3、1954年の中央執行委員会の議事録に綴じ込まれた中根式速記の史料を発掘してデジタル化を行うとともに、速記解読者に依頼して、解読可能性について検討をしてもらった。4、聞き取り調査:日教組OB及び文部省OBに対し手の聞き取り調査をおこなった。記録はテープ起こしと編集作業を行い、ご本人の確認を経て、聞き取り資料として確定させた。5、全体会合:全員が集まる研究会を定期的に開催し、本研究課題に関連する分野の専門家をゲスト・スピーカーとして招聘してレクチャーを受けながら、7つの作業グループから、順次、研究報告をしてもらった。また、全体会では、研究全体の進め方について協議を行った。6、チーム会合・グループ会合:2つのチーム、7つのグループごとに、定期的な会合をもち、具体的な課題に向けた研究を進めた。7、学会発表:日本教育学会、教育史学会などにおいて研究成果の報告を行った。学会発表をふまえて、論文化に向けた打ち合わせも行っている。また、学会誌等に載りにくい主題の論考等を集めて、第一次報告書を編集・印刷した。
著者
野元 野元 広瀬 健一郎 前田 耕司 廣瀬 隆人 若園 雄志郎 清水 裕二 上野 昌之 慎 基成 套 図格 紅 桂蘭 ゲーマン ジェフ JENNIFER Hixson DAVID Adcock PAUL Hixson 洪 〓柔 SANDRA L Morrison
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アイヌ民族教育の原理・制度、アイヌ民族教育に関する実践、海外の先住民族・少数民族の教育3つの研究課題の柱に沿って研究・調査行い、アイヌ民族の当事者が設立を求めているアイヌ民族学校、アイヌ民族大学などのアイヌ民族教育機関の具体的なイメージを持つとともに、管理・運営のためのアイヌ民族教育委員会制度や教育内容・方法について検討することができた
著者
小路田 泰直 住友 陽文 小関 素明 岡田 知弘 小林 啓治 白木沢 旭児 澤 佳成 荒木田 岳 立石 雅昭 原田 政美 川瀬 光義 布川 弘 竹永 三男 張 貞旭 鬼嶋 淳 八木 正 西谷地 晴美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年3月11日の東日本大震災につづいて生じた原子力発電所の深刻な事故は、戦後、日本政治が長く取り組んできた原子力政策を頓挫させる、歴史的にきわめて重大な事件だった。この事件につながった原子力政策の歴史を解明することが、われわれの研究課題であった。原子力政策が保守派および革新派の合同プロジェクトとして、暗黙の合意を得てはじまったこと、またそれにもとづいて55年体制が形成されたことが、明らかにされた。すなわち、日本の戦後政治において、原子力政策は、たんなる電源開発にとどまらない、きわめて重大な政治的意義をもっていたことが解明されたのである。
著者
金 富子 中野 敏男 倉田 明子 橋本 雄一 吉田 ゆり子 澤田 ゆかり 野本 京子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

まず、2年目の研究実績として、最大の成果といえるのは、初年度の成果をふまえて、2017年8月に本格的に中国東北へのフィールドワーク調査(長春、延辺、ハルピン、8泊9日)を実施したことだった。とくに延辺では、現地の研究者2名の全面的な協力によって、3日間にわたって日本人入植地と朝鮮人入植地をフィールドワーク調査することによって、両者の違いを現地で直接に経験しただけでなく、現地で当時を知る複数の経験者にインタビューすることができた。また、現地研究者との研究交流と写真論文集出版に向けた協力体制を深めることができた。なお、フィールドワーク調査の事前準備として、同年7月に中国東北への朝鮮人移民に関する専門研究者を招いて開いた公開研究会をもって認識を深め、さらに同年8月にはハルピンと万宝山事件の歴史と現在に関する研究分担者による内部研究会を開き、問題意識を共有した。また、フィールドワーク調査後の同年10月には、成果を共有するための記録集の作成と公開フォーラムを開催した。次に、2018年1月には、第3課題「『満洲』の社会と文化」を主題に関連して、中国から「満洲」文学の専門研究者を招き国際カンファレンスを開催するとともに、非公式の集まりを含めて、「満洲」に関する文学・文化の視点、現在のデジタル資料の利用方法などの研究交流を行った。さらに、この主題に関連して、同年3月に「満洲」のキリスト教史の専門研究者を招いて公開研究会を行い、「満洲」の宗教と欧米人という側面からテーマを深めた。以上のように、所定の計画通りに目標を達成することができた。
著者
外村 大 宮本 正明 猪股 祐介 坂田 美奈子 伊地知 紀子 菅野 敦志 岡田 泰平 松田 ヒロ子 加藤 恵美 中山 大将
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は、それぞれ分担研究者が担当する、過去の紛争、戦争、植民地支配等に起因する対立、葛藤の「和解」に関わる市民の活動についての、資料収集と整理、関係者からの聞取りを進めた。それぞれの研究内容については、適宜、報告を行い、その内容を相互に把握し、比較検討して各自の研究のうえでも参照している。整理に着手した資料のうちには、1970年代以降現在まで、戦後補償運動の各種市民運動、訴訟等に関わってきた市民活動家兼研究者が所蔵する大量の資料があり、これについては、2017年度中に、予備調査を行うとともにデータベース作成の準備を進めた。また、いくつかの重要な市民活動の担い手については、研究分担者全員ないし一般市民にも公開でヒアリングを行った(市民の活動についての関係者からの聞取りとしては、戦時動員の対象となり、死亡した朝鮮人の遺骨返還の活動を行う僧侶や「満蒙開拓」の史実を語り継ぐ活動に取り組むNPO法人理事などからの聞取りなど)。このほか、2018年4月に、脱植民地化と冷戦激化を背景に起きた大規模な住民に対する過剰弾圧、虐殺事件である、済州4・3事件が70周年を迎えるということもあり、それをどのように遺族らが記念し、「和解」を導き出そうとしているか等についても実情把握を進めた。その一環として、3月28~30日には分担研究者ら7名が済州島を訪れて、地元研究者との交流、遺族からの証言の聴取などを進めた。さらに「和解学」の創成をかかげて行なわれている、シンポジウム等にも、分担研究者は積極的に参加し、企画されている「和解学」の研究叢書の執筆の準備を進めている。
著者
渡辺 浩 江頭 憲治郎 碓井 光明 塩川 伸明 西川 洋一 城山 英明 大村 敦志 中谷 和弘 長谷部 恭男
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

今年度は、国家と社会、国際化と法、科学技術の発展と法の観点から第2期のまとめを行った。国家と社会に関しては、1.規範定立・執行における社会集団の役割(経済団体による法形成と執行、ドイツ医療保険法におけるFestbetragsfestsetzung制度、トランスナショナル社会運動)、2.市場と国家(政府業務の民間開放と法制度、株式会社・証券市場・市民社会、会社支配市場規制、ボーダレス化時代における租税制度)、3.ボーダレス時代における社会保障・安全確保・司法制度(社会保障法と憲法、警察行政における計画、関係性における暴力とその対応、司法の独立性)、4.国家財産法における公法と私法(政府業務の民間開放、韓国の国家財産法と法政策的課題)をまとめた。国際化と法に関しては、1.境界とは何か(生権力と国家、国境はなぜそしていかに引かれるべきか)、2.境界の変動および意味変容(国際法における境界の位相、国家の統合分裂とシティズンシップ)、3.変容する国際社会と法・政治の対応(パレスチナ問題と国際法、開発・エイズ・人権、経済連携協定、法整備支援)、4.人の国際移動と法・政治の対応(国際移住の法と法政策、民法における外国人問題、国際化と地方自治)をまとめた。科学技術の発展と法に関しては、1.科学技術と生命観(歴史的視座、動物観と法制度設計)、2.科学技術と制度(学問と法システム、リスク評価と法システム、予防原則)、3.科学技術と刑事法(現代型刑罰法規と罪刑法定主義、科学技術の進歩と刑法-過失責任)、4.科学技術と民事法(証券取引の電子化、無体化・電子化と占有概念、5.科学技術と国際法(非国家主体に対する軍備管理、国際環境法における科学技術と対話プロセス)を取りまとめた。なお、とりまとめの過程で2006年1月に国際シンポジウムを開催した。また、第1期の成果5巻も無事出版した。
著者
渡辺 真澄
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、7月~12月の間、研究協力者であるマンチェスター大学のLambon-Ralph教授の研究室に滞在し、英語と日本語の動詞活用の研究を行っているケンブリッジ大学のPatterson博士も交え、議論を重ねた。日本語の動詞活用に関しては15年ほど前に故伏見貴夫博士、Patterson博士、および研究協力者の辰巳ほかがJ Mem Langに投稿し、修正途中で終った研究が唯一のものである。そこでまずその研究の刺激語と実験データを関係者に発掘してもらい、再分析することから始めた。15年前、動詞活用に関しては、規則動詞の処理を行う「文法」(grammar: look→looked)と例外動詞の活用形(give→gave)を保持する「レキシコン」の二重機構を仮定するPinkerらと、規則動詞、例外動詞が同じ機構により処理されるとするコネクショニストとの間で激しい論争が行われていた。伏見らの研究も日本語の動詞を規則/例外動詞(五段/一段動詞)に分けて活用成績を比較したが、成績差が安定せず、また規則活用されるはずの非語動詞の正答率が著しく低い場合(例、もさかぶ)があることが判明した。もし日本語の非語動詞が規則に基づき活用されるなら、英語の場合と同様に、実在動詞の正答率と同等になってよい。英語は屈折語だが動詞活用は非常に単純であるのに対し、日本語は膠着語で動詞活用は規則的だが種類が著しく多い。そこでこの15年間に発表された多数の論文を調べたところ、我々の再分析結果と同様に、フィンランド語(膠着語)の動詞活用や、セルビア語(屈折語)の複雑な名詞の屈折は、英語のように単純に規則/例外に区分け、比較することには無理があることが判明した。日本語の動詞活用には、意味の有無が大きな影響を与えるようであり、少なくとも意味の関与を考慮する必要がある。このため新たな枠組の中で実験を行うことになった。
著者
梅田 道生
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度は昨年度の後半に引き続いて東京大学において研究を行い, 選挙制度改革が有権者の政権評価や投票行動に与えた影響を検証するために, 近年発達したベイジアン動的線型モデルについての研究を行った。またこの手法の基礎となるベイズ統計学とコンピュータを利用したその応用法についても学んだ。さらにこのモデルを昨年度までに作成した1960年代より今日に至るまでの日本の有権者世論調査に関するデータセットに対して用い, 分析を進めた。分析の結果は近日中に論文としてまとめ, 学会において報告する予定である。また本研究課題の一部として, 昨年よりミシガン大学のマッケルウェイン教授と朝日新聞社が衆議院総選挙前にそれぞれの選挙区において行っている有権者調査の1979年以降のデータを用いた共同研究を行ったが, この研究の成果の一部である選挙区レベルでの政党支持及び無党派層の割合の推移と政党得票の関係について, 5月に京都大学で行われた2013年度日本選挙学会総会・研究会において報告することができた。そのほかの研究実績としては, 選挙区ごとの有権者と議員/候補者の政策選好の類似性, および現職優位性について論じた単独研究の成果をそれぞれ学会で報告したこと, 谷口将紀研究室のメンバーでの共同研究の成果を岩波書店『世界』にて発表したこと, さらにダートマス大学の堀内勇作教授との共同研究の成果を, 日本政治学会や米国政治学会などの学会で報告し, さらにその成果の一部に基づく論文を査読付研究誌に投稿したこと, 昨年度執筆した書評が出版されたことなどが挙げられる。
著者
廣田 照幸 佐久間 亜紀 筒井 美紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 植上 一希 末冨 芳 布村 育子 森 直人 小野 方資 宇内 一文 丸山 和昭 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 古賀 徹 岩田 考 太田 拓紀 清水 唯一朗 二宮 祐 冨士原 雅弘 佐藤 晋平 田中 真秀 金子 良事 長嶺 宏作 香川 七海 中嶋 亮太 高木 加奈絵
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果として、a)初期教育研究大会の成立と講師団選出過程、b)日教組結成から1950年までの法的な位置づけと政治的な立ち位置の変容、c)「教え子を戦場に送るな」のスローガンの成立過程、d)人材確保法の成立過程、e)日教組におけるストライキ批准体制の確立、f)1973年春闘におけるストライキ戦術と交渉の解明、g)連合加入をめぐる400日抗争の解明、h)1995年の文部省と日教組の和解のプロセス、i)国際労働運動における日教組の位置を明らかにした。以上の点から、労働運動体と教育運動体としての日教組との二重性をふまえ、日教組の多面的な運動、それぞれに与えた影響を実証的に明らかにした。
著者
山口 二郎 宮本 太郎 遠藤 乾 空井 護 高橋 伸彰 村上 信一郎 齋藤 純一 杉田 敦 中北 浩爾 小川 有美 小原 隆治 遠藤 誠治 野田 昌吾 宇野 重規 田村 哲樹 宇野 重規 田村 哲樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究はグローバル化した金融資本主義の矛盾が明らかになる一方、民主政治による政策決定が円滑に進まないという困難な状況において、民主政治をどう再生させるかという問いに取り組んだ。基礎的な再分配政策に加えて、雇用、生活支援などのサービスを市民社会の自発性を引き出す形で展開することで、新たな福祉国家モデルを追求するというのが21世紀的な危機に対する処方箋となることを明らかにした。
著者
西原 陽子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、ネットいじめに関わる不適切な表現を自動判定する方法を構築し、ネットいじめを減少させることである。本年度は以下の2点を実施した。1点目は、ネット上のいじめに関わる不適切な表現を収集したことである。2点目は、不適切な表現の言語特徴を明らかにし、不適切な表現を自動判定するための言語モデルを作成したことである。1点目の実施の詳細を述べる。ネット上のいじめに関わる不適切な表現が掲載されることが多いWebサイトから、掲載されている文を自動収集するプログラムを作成し、収集を行なった。その後、人手により不適切な表現が含まれる文と、それ以外に分類した。さらに、不適切な表現が含まれる文については4種類に分類した。2点目の実施の詳細を述べる。全ての文に対してその種類を表すラベルを付与した。具体的には不適切な文の4種類に対してと、不適切な表現が含まれない文に対してラベルを付与した。ラベルの系列をLong Short Term Memoryにて学習し、言語モデルを作成した。これにより、文を構成する単語の情報と、文書を構成する文の並びの情報の両方から、次にくる文が不適切な表現を含む文か否かが評価可能となった。今年度の成果の意義は、不適切な表現を含む言語モデルを作成したことにより、隠語や造語を含む不適切な表現の文も判定できるようになったことである。今年度の成果の重要性は、文脈を考慮したことによりある文脈では不適切表現であっても、別の文脈では不適切表現とならないものを判定できる可能性が生まれたことである。
著者
野村 大成 加藤 秀樹 渡辺 敦光 佐々木 正夫 馬淵 清彦 藤堂 剛
出版者
大阪大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1992

「放射線被曝による継世代発がん」に関して、ヒトにおいては、馬淵班員が広島・長崎の被爆者のF_1集団72,000人の調査を行った。1946-89年の死亡者中で白血病63症例、リンパ腫22症例を発見したので、詳しい診断を確認の上、授精前被曝との相関が調査できるようになった。基礎研究では、渡辺班員がC3H雄マウスに^<252>Cf中性子放射線照射することにより、ヘパトーマが非照射F_1(3%)の14倍の頻度で発生していることを発見し、野村実験を異なった系統マウスと原爆類似放射能で確認した。野村は、LTマウスにX線(3.6Gy)を照射することによりF_1に10倍の頻度で白血病が誘発されることを発見した。ICRマウスでは見られなかったことである。加藤班員は、これらF_1での発がんに関与した遺伝子のマッピングのため、TemplateDNAの多量、短時間処理法を確立した。佐々木班員はヒトにおける父親由来の突然変異としてRb遺伝子を調べ、Rb腫瘍細胞では80%の症例に+1g異常が観察されるが、9例中8例までが母親由来の1gが過剰になっていることが分かった。新しい発見であり、今後大きな問題になるだろう。藤堂班員は、紫外線によるDNA損傷のうち、がんや突然変異と深く関与してると思われる6-4産物を特異的に修復する酸素を初めて発見した。国内外で大きな反響を呼び、新聞誌上でも大きく報道された。英国核施設従業員(父親)の授精前被曝によりF_1にリンパ性白血病が相対リスク9.0(P=0.047)の高さで発生しているとの報告が1993年3月6日にあった(BMJ)。この報告は、Gardner論文と同じく野村のマウス実験と一致しており、より一層、ヒト疫学、マウスを用いた基礎研究が必要となる。また、内部被曝や低線量率長期被曝の精原細胞および卵細胞におよぼす影響がクローズアップされるようなった。