著者
向田 昌志
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-08-05)

人工ピン材料を超電導膜に入れ、磁場中超電導特性を向上させた膜のTcを人工ピンのない膜と同等のTcまで戻すため、さらに物質本来の「強い超電導特性」が発現し、対破壊電流密度の25%以上という高いJcを実現するため、人工ピンの成長機構解明として、微傾斜基板を用い、1次元人工ピンの曲がりを調べた。その結果、ある角度以上で、人工ピンは超電導膜のステップフロー方向に成長し、超電導膜の一番弱いc-軸方向の磁場中臨界電流密度を高める効果が無くなることが分かった。また、テープ線材に不可欠なプロセスの低温化、高速化も行った。さらに、鉄系超電導膜の上部臨界磁場を詳しく調べる研究も行った。
著者
沢井 芳男 外間 安次 鳥羽 通久 川村 善治
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985 (Released:1987-03-31)

本研究はヤマカガシ咬症の重症患者の治療血清の試作を行うためにヤマカガドウベルノイ腺から毒液を抽出し, ウサギ及びヤギを免役し, その血清を採集し, 硫酸ナトリウム, 硫酸アンモニウムによる分画及びペプシン消化法によってγ-グロブリンを分画精製し高力価の抗毒素を得た. その結果ウサギ抗毒素0.2mlは120μg(48mld)の毒量を中和した. またヤギ抗毒素0.1mlは220μg(73.3mld)の毒の致死を中和し, 216μg(47mhd)の毒の出血を抑えた. また抗凝固性は抗毒素0.05mlは119.3μg(108.5u)の毒による凝固を阻止した. また抗毒素の精製度については電気泳動の結果γ-グリブロンの単一のピークが得られた. しかし免疫電気泳動では抗ウサギγ-グロブリン(IgG)ヤギ血清に対し, ウサギ抗毒素は特異時的な反応帯が認められたが, 抗ウサギ血清に対してはγ-グロブリン以外の混入が認められた.なお本抗毒素にはさらに治療用毒素に必要な所定の検査を行い, 長期保存にたえるように凍結乾燥を行った. その間に発生したヤマカガシ咬症患者の重症例の治療に応用し, その治療効果を確かめることができた. すなわち本抗毒素は患者の出血性素因及び血液の凝固異常を速やかに回復し, 患者を治癒に導いた.
著者
野村 大成 加藤 秀樹 渡辺 敦光 佐々木 正夫 馬淵 清彦 藤堂 剛
巻号頁・発行日
1992 (Released:1992-04-01)

「放射線被曝による継世代発がん」に関して、ヒトにおいては、馬淵班員が広島・長崎の被爆者のF_1集団72,000人の調査を行った。1946-89年の死亡者中で白血病63症例、リンパ腫22症例を発見したので、詳しい診断を確認の上、授精前被曝との相関が調査できるようになった。基礎研究では、渡辺班員がC3H雄マウスに^<252>Cf中性子放射線照射することにより、ヘパトーマが非照射F_1(3%)の14倍の頻度で発生していることを発見し、野村実験を異なった系統マウスと原爆類似放射能で確認した。野村は、LTマウスにX線(3.6Gy)を照射することによりF_1に10倍の頻度で白血病が誘発されることを発見した。ICRマウスでは見られなかったことである。加藤班員は、これらF_1での発がんに関与した遺伝子のマッピングのため、TemplateDNAの多量、短時間処理法を確立した。佐々木班員はヒトにおける父親由来の突然変異としてRb遺伝子を調べ、Rb腫瘍細胞では80%の症例に+1g異常が観察されるが、9例中8例までが母親由来の1gが過剰になっていることが分かった。新しい発見であり、今後大きな問題になるだろう。藤堂班員は、紫外線によるDNA損傷のうち、がんや突然変異と深く関与してると思われる6-4産物を特異的に修復する酸素を初めて発見した。国内外で大きな反響を呼び、新聞誌上でも大きく報道された。英国核施設従業員(父親)の授精前被曝によりF_1にリンパ性白血病が相対リスク9.0(P=0.047)の高さで発生しているとの報告が1993年3月6日にあった(BMJ)。この報告は、Gardner論文と同じく野村のマウス実験と一致しており、より一層、ヒト疫学、マウスを用いた基礎研究が必要となる。また、内部被曝や低線量率長期被曝の精原細胞および卵細胞におよぼす影響がクローズアップされるようなった。
著者
藤堂 剛 加藤 秀樹 渡辺 敦光 佐々木 正夫 馬淵 清彦 野村 大成
巻号頁・発行日
1994 (Released:1994-04-01)

1.マウスを用いた継世代発がん:野村はLTマウスを用い精子および精子細胞期へのX線(5.04Gy)照射により、F_1マウス非照射群の約10倍の頻度でリンパ性白血病が誘発されたが、精原細胞期照射ではICRマウスと同様に白血病は誘発されなかった。本年度は、N5マウスを用いたところ、精原細胞期照射でも約6倍の頻度でリンパ性白血病が発生し、ICR,LTと異なる結果となった。白血病発生に系統差がある。また、渡辺は原爆放射能に近い線室の^<252>Cf(中性子66%)をC3H雄マウスの精子期あるいは精原細胞期に1回全身照射(O.5,1.0Gy)し、C57BL雌マウスと交配し、F_1を14.5ケ月後に屠殺したところ、いずれの群でも、肝腫瘍が約10倍も増加した。2.原爆被爆者の子供の死亡率調査:両親の被爆線量に伴う、全死因及び癌死亡の有意な増加は認められない。発癌率調査でも殆ど認められないであろう(馬淵)。3.継世代発がん機序:マウスにおける継世代発がんの遺伝様式はヒトでのRB遺伝子やp53遺伝子の変異によるがん発生と似ている。1)網膜芽細胞腫患者の突然変異の起源を調べると情報の得られた16例のうち15例までが父親由来であり、微視突然変異(RB1)では67%に欠失・挿入・塩基置換なとどの突然変異が認められた(佐々木)。2)継世代高発がんN5マウス家系においてもp53の変異が検出された(野村)。3)マウス肺腫瘍の発生には、その70%を決定する単一の優性遺伝子が存在し、マイクロサテライトマーカーを用い調べると、第六染色体上のK-rasより10cM遠位にありK-ras intron内に欠失が存在することも明らかにした(野村、加藤)。4)藤堂は、紫外線による損傷を持つDNAに特異的に結合する蛋白を2種見い出した。1つは(6-4)光産物に対する光回復酵素で、酵素蛋白の精製に成功し、この酵素が損傷DNAを元に形に修復する活性を持つ事を明らかにした。
著者
金 明秀 稲月 正 豊島 慎一郎 太郎丸 博 田中 重人 堤 要
巻号頁・発行日
2001 (Released:2001-04-01)

本研究の中で実施された調査と、1995年に実施された「在日韓国人の社会成層と社会意識全国調査」および「社会階層と社会移動に関する全国調査」との比較分析に基づき、以下の諸点が明らかになった。(1)[文化資本に関する分析]日本人男性に比べて在日韓国人男性の文化資本は低いこと。父、母の学歴が高いほど出身家庭の文化資本は高まる傾向があること。出身家庭の文化資本が高いほど本人の学歴は高くなる傾向があること。(2)[在日韓国人女性の職業に関する分析]初職の企業規模は、9人以下の小規模の企業がほぼ半分を占めており、周辺セクターの労働市場に追いやられている。現職についても、9人以下の小規模な企業に従事する者が7割近く、さらに小規模企業への集中が強まっている。(3)[社会保障に関する分析]医療保険については、医療保険未加入者は加入者と比較して健康状態がよくない傾向が見られた。年金保険については、在日韓国人高齢者に分析を限定したところ、年金保険未加入者は、加入者より所得が低い傾向も見られた。(4)[母国とのネットワークに関する分析]民族への愛着や伝統への嗜好は、母国に親戚のいる人のほうが強い傾向にあることがわかった。また、母国語の使用や民族団体への参加においても、彼らはより積極的であることがわかった。しかし、母国に親戚をもつ人は日本人との付き合いが弱くなるのかと思われたが、むしろ彼らの間のほうが日本人との付き合いをもつ人が多くみられた。(5)[民族認識に関する分析]在日韓国人は民族を構成する要件として、(1)自分自身を韓国(朝鮮)人だと思う、意識的側面を強く重視しているが、(2)韓国生まれであることや人生の大部分を韓国で暮らしているという、場的側面はあまり重要視しておらず、(3)それら以外の要件は中程度に重要視している。どの要件を重要視するかは、世代のみである。
著者
安藤 香織
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

フェニル酢酸誘導体の酢酸パラジウム触媒を用いるオルト位C-H活性化とオレフィン化反応の反応機構を調べるために、分子軌道計算を行った。計算のモデルとしてフェニル酢酸アニオン(1)、メチルアクリレート(2)およびPd(OAc)2を用いてB3LYP/6-31G*,Pd:SDDレベルで解析した。Pd(OAc)2と1から錯体生成後、フェニル基とのπ-complex生成は容易に起こり、C-H活性化による酸化的付加によりAr-Pd-H(OAc)(OCOAr)が生成する(Int3)。この過程の活性化エネルギーは24.6 kcal/molであった。還元的脱離による酢酸の脱離は容易に起こり(6.2 kcal/mol) Int4を生成、酢酸のプロトンがカルボキシル酸素に移ってフェニル酢酸のカルボキシル基がPdから離れ、かわりにメチルアクリレートが配位にしてInt5となる。アルケン二重結合のPd-Ar結合への挿入反応は10.4 kcal/molのエネルギー障壁で起こり、C-C結合の回転の後、β水素が脱離してArCH=CHCO2Meが生成する。生成したオレフィンがパラジウムから離れてから、酸素酸化により触媒が再生されて反応のサイクルが回ると考えられる。反応の律速段階はC-H活性化段階であった。触媒サイクルは通常0価と2価で説明されることが多いが、本反応では2価と4価での触媒サイクルを計算した。反応は85℃で48時間行われており、律速段階の活性化エネルギー24.6 kcal/molとよく一致しており、2価と4価での触媒サイクルは実験をよく説明していると言える。
著者
福島 昭治 森村 圭一朗 鰐渕 英機 ALINA M Romanenko
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

ウクライナのチェルノブイリ原発事故後、周辺汚染地域では過去15年間で膀胱癌の発生頻度が約1.6倍に上昇したと報告されている。その原因として現在も土壌中に残存する低レベルCs137の長期間暴露が考えられる。我々は臨床的に膀胱がん症状のない汚染地域住民の膀胱粘膜に、上皮異形成や上皮内がんを含む膀胱がんの発生率が、汚染地域住民の24時間尿におけるCs137レベルにほぼ比例して上昇していることを見いだした。我々はまた、汚染地域住民の膀胱に上皮異形成や粘膜内癌を高頻度に伴う特異的な慢性増殖性膀胱炎を見いだしチェルノブイリ膀胱炎と命名した。その膀胱病変においてはp53,p21,サイクリンD1等、様々な癌関連遺伝子が異常発現していると共にiNOS, COX2なども異常発現しており、この地域の膀胱病変発生には酸化的ストレス傷害が深く関与することを証明した。さらに、原発事故後に認められた膀胱癌が事故前に同地域で得られた膀胱癌と比べp53遺伝子変異頻度が有意に低く、この地域の膀胱癌発生のメカニズムが一般的な膀胱発癌と異なった経路で発症する可能性が示唆されたため、近年その異常発現がヒト膀胱発癌に深く関与すると考えられているgrowth factor receptorの発現を免疫組織学的に検索した。その結果、抗FGF-R3、抗EGF-R1、抗EGF-R2抗体について汚染地域の症例は非汚染地域症例に比べ有意に高い染色性を示し、汚染地域住民の膀胱粘膜病変の発生にはこれらgrowth factor receptorの発現も関与していることが判明した。以上、これまでの研究によりチェルノブイリ原発事故後の周辺汚染地域住民には膀胱癌が多発する傾向にあり、またその発生原因に関しては現在一般的に考えられている膀胱発癌経路と異なった経路で発生する可能性があることが示された。
著者
金森 修
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

一九六〇年代を中心に我が国のSFの発展を跡づける作業をしている内に、SF史だけに限定するのではない、より広範な視点が必要だということが分かってきた。SFは、同時代の他分野の文学・芸術活動と陰に陽に繋がっているからである。そして、その過程で、いわゆるSF作家と呼ばれる人々よりも広いカテゴリーにある作家たちの調査を始めた。そしてその中で、単なるSF作家とはいえず、戦後文学の重要な一画をなし、まだ充分な研究が進んでいない安部公房の存在の大きさを改めて認識するようになった。そのため、安部公房の全作品を集め、現在入手可能な安部公房論、また海外の安部公房並びにその周辺に関する文献群をすべて集めた。こうして、資料体的には完璧な準備が進んだので、現在改めてゆっくりと評論と作品自体を通読しているところである。もうかなりの量は読破したので、年度末、つまりこの研究の完成する頃には或る程度の目安がついているはずだ。というわけで現在は、安部公房を中心とした文学評論の執筆を目指して努力しているところである。
著者
早川 由紀夫 野村 正弘
巻号頁・発行日
2011-04-28 (Released:2011-08-05)

福島第一原発の2011年3月事故によって大気中に放出された放射性物質は、短軸5km程度の楕円形をした霧のひとかたまりとして、地表から数十mまでの高さを速さ2~6m/sでゆっくり移動した。放射性物質の大量放出は大きく分けて3回あった(3月12日、15日、20-21日)。放射性物質はグローバルに広がったが、その6割が日本列島上に降り注いだ。大気中に放出されたセシウム総量は1京1000兆ベクレル。チェルノブイリ原発事故の1/12だった。原発事故に際して、以上の地学的知見をインターネットを利用してツイッターやブログですみやかに発信し、広く情報共有した。
著者
有賀 早苗 有賀 寛芳
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
今井 博久 濱砂 良一 山口 昌俊 篠原 久枝 藤井 良宜 廣岡 憲造
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

わが国において初めて高校生の無症候性クラミジア感染率を明らかにした。女子高校生は13.1%、男子高校生は6.7%であった。ティーンエイジャーにおける蔓延は間違いないことが示された。国際的に比較すると、わが国の感染率は欧米の国々より高く、おそらく先進諸国の中で最も感染が拡大していることが示唆された。今回の対象者の多くが高校2年生と3年生であった。東京都で実施された2002年の性経験率は男子高校生の3年生で37.3%、女子高校生の3年生で45.6%を報告されており、主に2年生と3年生を対象にした本調査の性経験率と東京都のそれとの間に大きな差はなかった。年齢別では、女子は16歳が高い感染率で17.3%であった。高校生における性感染症の予防介入教育を高校2年生3年生で実施しても時間的に遅く予防の効果が期待できず、おそらく、高校1年生あるいは中学3年生で実施することがより一層効果的であることを示唆している。男女ともに性的パートナー数が増えれば増えるほど感染率が高くなり、重要な危険因子と考えられた。女子では約300人弱の対象者が「5人以上のパートナー数」と回答し100人程度が感染していた。対象者数が小さくないので、感染率は概ね正確と判断してよいだろう。初性交年齢と感染率の関係を見ると、女子では年齢が低いほど感染率が高くなる傾向であった。14歳以下すなわち中学生のときに初性交を経験した女子高校生は、6人にひとりは感染していたことになる。性感染症の蔓延防止対策の実施に向けて(1)初めて具体的なデータが伴って若年者、特にティーンエイジャーの無症状の感染者が多いことが明らかになった、(2)対策の焦点を当てるべき対象者をティーンエイジャーとすべきである、(3)性別、年齢、危険因子が明らかになったので、こうしたデータに基づいた蔓延予防対策の施策を実施することが期待される、(4)今後は地元医師会、関係学会、学校教育関係者等が協力し合って緊急に対策を講じる、といったことが必要となろう。
著者
有賀 寛芳 有賀 早苗
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番月のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
飛田 あゆみ
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

1.全員が原爆被爆者である、長崎Adult Health Study集団を対象としてシェーグレン症候群に関する調査を行った。1)男性432例、女性662例、計1094例から同意を得られた。平均年齢は71.8歳だった。2)眼球乾燥症状は168例(15.4%)で陽性、口腔乾燥症状は283例(25.9%)で陽性、いずれかの症状をもつものは358例(32.7%)だった。3)涙液分泌量検査(シルマーテスト)は992例で実施し、涙液分泌量が低下していたのは369例(37.2%)だった。4)唾液分泌量検査(サクソンテスト)は990例で実施し、唾液分泌量が低下していたのは198例(20.0%)だった。5)涙液または唾液いずれかの分泌量が低下していたのは484例(48.3%)だった。6)血清学的検査は1094例で行い、抗SS-A/Ro抗体は40例(3.7%)で陽性、抗SS-B/La抗体は14例(1.3%)で陽性だった。7)ローズベンガル染色検査は283例で実施し、3点以上は142例だった。8)唾液腺エコー検査は389例で実施し、55例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。9)唾液腺MRI検査は180例で実施し、11例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。また、耳下腺に脂肪沈着を証明できたのは50例だった。2.上記検査の結果を総合してシェーグレン症候群と診断されたのは33例で、調査参加者1094例の3.0%だった。統計学的に放射線被曝線量との有意な関係はなかった。3.唾液分泌量と放射線被曝線量に統計学的に有意な負の相関があった。
著者
高橋 達也 藤盛 啓成 山下 俊一 齋藤 寛
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid DiseaseStudy)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。マーシャル諸島住民では、甲状腺結節性病変の有病率が高かった。甲状腺結節の最も一般的な形態は、腺腫様甲状腺腫(adenomatous goiter)であった。しかしながら、本研究で発見された腺腫様甲状腺腫の患者の多くは、医学的治療を必要としなかった。幾多の他の研究と同じように、女性では、男性と比較して甲状腺結節の有病率が高かった。また、有病率は、年齢とともに高くなり、50歳代の女性で最も高率(約50%)であった。甲状腺結節例の約半数は、触診で診断できたが、残りの半数は、超音波診断によってのみ診断し得た(触診できなかった)。甲状腺機能低下症や甲状腺亢進症(バセドウ病)の様な甲状腺機能の異常は、マーシャル諸島では、比較的まれで、有病率は他国と比較して同程度、もしくは、低かった。太平洋地域(日本を含む)などに多く見られる橋本病(自己免疫性甲状腺炎)は、マーシャル諸島では、まれであった。甲状腺癌の疑いで43人の患者が、現地のマジェロ病院において、マーシャル諸島甲状腺研究の医療チームによってなされた手術を受けた。この43人中、25人については、病理学的に癌が確認された。外科手術で重篤な合併症は、1人も発生しなかった。マーシャル諸島全体での、一般住民の甲状腺結節や甲状腺癌の頻度は、従来報告されているよりもかなり高かった。しかし、我々は、ハミルトン博士(Dr.Hamilton)の仮説、すなわち、「甲状腺結節の頻度は、ブラボー実験の時に住んでいた場所とビキニ環礁からの距離に反比例する(ビキニから遠くなると、結節は減る)」、を確認できなかった。この点に関して、ブラボー実験で被曝した住民における甲状腺癌の頻度に関する予備的な分析では、概算した甲状腺放射線被曝量と甲状腺癌有病率は正の相関(被曝量が増えると甲状腺癌も増える)が有意に示された。
著者
遠藤 哲也 木村 治
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

日本でわれている養殖クロマグロの水銀汚染と有機塩素系化合物汚染を分析し、天然マグロの場合と比較した。養殖クロマグロの水銀濃度は厚生労働省の定めた基準を越えるものが少なく、一般に天然のクロマグロより低かった。一方、脂溶性の高い有機塩素系化合物濃度は天然クロマグロより高く、多食者には健康被害が心配される。地中海で行われている畜養マグロの場合の水銀および有機塩素系化合物濃度は日本国内の養殖マグロに比べて著しく高いものが多く、これは魚体の大きさを反映していると思われる。
著者
高野 陽太郎
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

本研究では、外国語副作用foreign language side effectが外国語を使用する日常的な場面でも生じるのかどうかを実験的に調べた。外国語副作用とは、母語に比べて習熟度の低い外国語を使用している最中には、一時的に思考力(非言語的情報処理をおこなう能力)が低下するという現象である。この現象は、Takano & Noda (1993,1995)によって初めて実証的に立証され、その生起機序が理論的に説明された。本研究は、外国語を使用する日常的な場面でもこの外国語副作用が生じるかどうかを調べる研究の一環としておこなったものである。外国語を使用する日常的な場面では、思考の材料は言語的に与えられることが多く、その場合には、思考は非言語的情報処理だけでなく、言語処理も含まれる可能性がある。言い換えると、思考に内言が伴う可能性がある。この内言は、処理の容易な母語である可能性が高い。かりに、思考に母語の内言が伴うとすると、外国語副作用は生じなくなる可能性がある。同時に2つ以上の情報処理をおこなう場合、一般に、処理が互いに類似しているほど相互の干渉は大きくなることが知られている。思考に伴う内言が母語の場合、外言として母語を使用しているときの方が外国語を使用しているときよりも干渉が大きくなり、思考成績は低下することになる。これが外国語副作用を打ち消し、外国語副作用が生じなくなるという可能性が考えられるのである。この可能性を検討するため、実験1では、思考課題に定言三段論法の妥当性判断を使用し、実験2では、知能検査の中で言語性知能を測定するために用いられる問題を使用した。被験者(日本人大学生および大学院生)は、これらの思考課題を言語課題と同時に遂行した。いずれの実験においても、思考課題の成績は、言語課題を母語でおこなったときより、外国語(英語)でおこなったときの方が低下していた。すなわち、外国語副作用が生じていた。従って、これらの実験結果から、思考に内言が伴う場合の多い日常的な外国語使用場面においても、外国語副作用は生じ得ることが明らかになった。
著者
西原 克成 森沢 正昭 松田 良一
巻号頁・発行日
1996 (Released:1996-04-01)

Rouxの言うように、重力など力学が進化の原因とすれば、進化のエポックを代表する動物に、進化で生じたphysicochemical stimuliを異種性に異所性に人為的に与えれば、進化で生じた物質が異種性に、異所性に生ずるはずである。局所の細胞の遺伝子の発現で、間葉系の高次機能細胞が誘導され、この細胞レベルの分化誘導の積み重ねで形態が決まるからである。この手法を研究代表者の西原が開発し、実験進化学手法(Experimental Evolutionary Research Method)と呼ぶ。これにより哺乳類において希望する間葉系高次機能細胞をハイブリッドタイプで、当該動物の細胞遺伝子を使って人為的に誘導することができる。脊椎動物の進化は、形態と機能と分子レベルでそれぞれ異なる。形態の進化は、内臓頭蓋の形態研究を行う以外には究明することが困難である。進化を遡ると、頸部・胸部・腹部・手と足との尾のすべては原索動物に至って、内臓頭蓋の原器、鰓孔のある口の嚢に収斂して、顔の原器のみとなってしまうからである。この動物がムカシホヤであり、脊椎動物の源となる本体であり、同時に顔の源とも言える生き物である。生命の営み(機能)の中心となる細胞レベルの消化・吸収・呼吸・代謝の要は造血巣であるが、この機能の進化は重力対応により腸管から脊髄腔へ移動する。このように形態と機能レベルの進化は、まぎれもなく生命体の生体力学的対応で生じており、Neo-darwinismのいうような進化の様式はどこにも観察されない。実験進化学手法を開発し次の3点につき研究した。(1)顔の源の生物マボヤの幼形進化の人為的誘発(2)人工骨脊髄バイオチャンバーによる軟骨魚類、円口類の筋肉内における造血巣の誘導(3)原始脊椎動物の組織免疫と胎児蛋白の関係の究明実験結果から、世界に先駆けてNeo-darwinismが完全否定され、脊椎動物の進化がLamarckの用不要の法則によることが検証された。本研究で、150年間脊椎動物の生物学を支配したNeo-darwinismの進化論が系統発生学の観察事実によって完全に否定され、力学対応進化学が実験的に検証された。脊椎動物の進化様式はハードのホメオボックスの情報系とソフトの環境因子と呼ばれる情報系の二重支配であったことが検証された。