著者
寺田 竜太 ニシハラ グレゴリー・ナオキ 嶌田 智
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

九州南部は温帯と亜熱帯性海産植物の分布推移帯(エコトーン)に位置し,温帯域に見られる種類の多くは当地が分布南限となっている。本研究では,温帯域で藻場を構成する16種の分布南限群落の個体群動態を明らかにすると共に,培養試験や光合成活性の結果を基に,温度や光の耐性やストレスの影響を解明した。光合成活性の測定は,藻場構成種16種と共に食用紅藻9種も用い,様々な水温,光条件における純光合成速度や光量子収率(Fv/Fm),電子伝達速度活性(rETR)を測定した。その結果,分布南限の個体群では寿命の短命化や繁茂期間の短縮などが顕著に見られ,高水温の環境が各種の繁茂に影響を与えていると推察された。多くの種において,純光合成速度やFv/Fm,rETRは28℃以上で低下し,最高30℃に達する生育地の夏季水温がこれ以上増加すると,群落の生残に著しい影響が出る可能性が示唆された。
著者
渡邊 克巳 MOUGUNOT Celine
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は本研究課題「プロダクトデザインにおける顕在的・潜在的要因の認知科学的研究」というテーマの中で、前年度に見いだした知見「聴覚刺激を与えられた群の方が、対応する視覚刺激を与えられた群よりも、有意にオリジナルなスケッチ及びデザインを作成する傾向」に関して、追加の調査を行い、外部発表を行った。また、その結果集まったスケッチやデザインのアイデアを表現する際に、日本では「オノマトペ」が多用されることを発見し、平成22年度は、日本特有の言語表現である「オノマトペ」がデザインにどのように生かされているのかを調べる研究をスタートした。前年度と同様のパラダイムを用いて、例えば「楽しいメガネ」をデザインする場合と「うきうきする眼鏡」をデザインする場合などを比較し、作成されたスケッチを第三者に評価させた。その結果、オノマトペを使って表現したデザインとそれ以外のデザインでは、特定の差が見られることが明らかになった。この差が具体的に何に起因するのかは、今後の分析によるところが大きく、最終年度である平成23年度では、さらなる考察を加えて外部への発表を重点的に進めた。本研究の成果は、外部のデザイン専門学校と協力して行ったものであり、これからの研究を展開する上での基盤作りともなった。これらの結果は、複数の国際学会で発表され、その内2つは招待講演となっている。また、研究内容をまとめたものは、英文書籍およびフランス語での出版につながっている。
著者
武尾 実 市原 美恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,比較的単純な噴火形態を繰り返す火道システムの確立した火山を対象に振動現象の観測データから,火道浅部の内部状態を推定する方法を確立し,一連の噴火活動中での噴火様式変化の推定に結びつけることを目的とした.本研究期間中に,2011年霧島新燃岳の噴火が発生し,準プリニー式噴火,マグマ湧出,ブルカの式噴火という異なる噴火に対する火口近傍で地震,地殻変動,空振という多項目の観測データを得ることに成功した.これらのデータを解析することで,ブルカノ式噴火に先行する傾斜変動の時間的変化と傾斜変動継続時間の関係から,火道内部でブルカノ式噴火の直前に進行するプロセスを解明した.また,微動と空振が同じ励起源から発生するメカニズムを,粘性の異なるアナログ物質を用いた実験により再現した.さらに,微弱な火口活動のシグナルを検出する手段を確立し,火山活動のモニターリングのレベル向上を図った.
著者
川本 正知 春田 晴郎
出版者
奈良産業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

当研究課題は、中東地域に存在するシリア語文献の調査とシリア語が使用されてきた環境としての東方キリスト教会の調査研究を行うことであるが、最終年度平成22年度は、当初の「研究実施計画」に従って研究代表者川本は主にイタリアとイギリスのシリア語写本コレクション調査を行い、研究分担者春田は昨年やり残していたイランにおけるアラム語の調査を行った。川本は、2010年9月5日~26日イタリアを訪れ、ヨーロッパで最も古いシリア語コレクションをもつヴァチカン図書館とフィレンツェのメディティ家図書館(Biblioteca Medicea Laurenziana)においてシリア語写本調査を行った。残念ながらヴァチカン図書館は修理中休館であったが、メディティ家図書館において、有名なアッセマニ作成のカタログによってバルヘブラエウスの著作を中心に多くの写本を実見し、15世紀に写されたいくつかの写本の存在を確認した。また、この間、ナポリ東洋大学(L' Universita degli studi di Napoli "L' Orientale")を訪問し、ローマ大のVita Silvio教授に紹介された東方キリスト教およびシリア語の専門家たちと研究交流することができた。また、2011年2月20日~26日(7日間)、大英図書館(British Library)とバーミンガム大学において当研究に関する文献調査を行った。バーミンガム大学のMinganaコレクションでは、2日をかけて多くのシリア語写本を実見した。一方、研究分担者春田は、前年度配算繰越分全額を使用して、イラン国立博物館所蔵アラム系文字史料調査と研究交流を目的として、2010年12月25日~2011年1月5日(12日間)イラン・イスラーム共和国テヘラン市イラン国立博物館を訪れ、同館碑文部門にて調査を行なうかたわら、同部門責任者アクバルザーデ博士他の研究者と研究交流した。同じく春田は、今年度配算分全額を使用して、2011年1月28日~30日滋賀県甲賀市のMIHO MUSEUMと京都市の総合地球環境学研究所を訪れ、MIHO MUSEUM所蔵アラム文字資料調査および総合地球環境学研究所にて文字資料分析法の調査研究を行った。
著者
緒方 茂樹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究ではまず、沖縄県教育委員会と連携してえいぶるノートの試作を行った。さらに、宮古圏域における「縦断型ネットワークシステム」への拡充を目指して、定期的な教育相談会と巡回による学校支援・保育所支援を進めた。一方で宮古島における地元の専門家育成を行った。2010年には宮古島市の予算で発達障害児(者)支援室「ゆい」が設置され、先の心理士が専門相談員として採用されたことで、外部からの支援に頼ることなく現地リソースによる支援体制が構築できた。いわゆる「入口」の充実を目的として、児童家庭課と連携した保育所支援を行ったことで支援対象児の早期発見・早期対応が可能となった。
著者
輿水 肇 菊池 佐智子
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

国営武蔵丘陵森林公園の都市緑化植物園「街路樹見本園」の87種の標本木の樹高、幹周、枝張の30年間にわたる計測を完了させ、これらの樹木データをもとに、無剪定を想定した成長曲線を作成した。樹高、幹周、枝張りの成長曲線から、樹種の違いによる成長量の特性を総合的に解析した。街路樹に多く用いられる緑化樹木の成長量を都市の暑熱環境を改善する効果とどのような関連性があるかを分析した。
著者
熊谷 日登美
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

レンチオニンによる血小板内情報伝達阻害の検討シイタケ中の環状硫黄化合物の中で最も含有量が多く、シイタケ独特のフレーバー成分であるレンチオニンを用いて、血小板凝集抑制作用の有無を検討した。レンチオニンはアラキドン酸凝集、およびU-46619凝集に対して濃度依存的に血小板凝集を抑制した。また、シイタケ精油中のレンチオニン濃度を算出したものと、レンチオニンの血小板凝集抑制作用を比較したところ、その効果はほぼ同じであった。このことから、シイタケ精油の持つ血小板凝集抑制効果は、ほぼレンチオニンによるものであることが明らかとなった。次に、レンチオニンの血小板凝集抑制作用機序の解明を行うため、種々の血小板凝集惹起物質(A23187,PMA,PAF,ADP)を用いて検討を行った。レンチオニンは全ての血小板凝集惹起物質に対して、濃度依存的に血小板凝集を抑制した。このことよりレンチオニンの作用は、血小板内の情報伝達物質による血小板凝集カスケードには関与せず、血小板の接着や形態変化、活性化に関係する血小板膜や各種受容体、もしくはそれらに伴うタンパク質のリン酸化反応を阻害していることが示唆された。レンチオニンのex vivoにおける血小板凝集抑制作用の検討レンチオニンを経口摂取した場合でも血小板羅集抑制作用を示すか否かを明らかとするため、ラットにレンチオニンを経口胃内投与し、一定時間後に採血した血液の血小板凝集抑制作用を測定した。その結果、レンチオニンは経口胃内投与後、8〜20時間後において、コントロールに対し有意に血小板凝集を抑制した。さらに、レンチオニンを食事として摂取する場合、どの程度摂取すれば血小板凝集抑制作用を示すのかを明らかとするため、レンチオニンの投与量を変化させ、レンチオニンが血小板凝集抑制作用を示す最低投与量を検討した。その結果、レンチオニンは1mg/kg以上の投与量でコントロールに対し有意に血小板凝集を抑制した。
著者
大塚 英典 星 和人
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

スフェロイド間隔を系統的に制御したスフェロイドパターニング技術を開発した結果、軟骨大型化のために最適なスフェロイド設計指針を確定できた。さらに分化誘導のための添加因子を用いることにより細胞外マトリクスの産生能を長期間維持させることに成功した。これらの検討から最適化されたスフェロイド状態において、再生エレメントとして、スフェロイドの体積にして約10倍という大型化を達成した。次にこの技術と合わせ、スフェロイドをより実際的な移植可能な材形へと展開するためのマトリックス材料の設計と合成を行った。このような一連の実験を統合し、運動器系組織の再生技術として開発を進めた結果、関節軟骨における動物実験において移植する構造体として十分機能する再生エレメントであることを示した
著者
山下 直子 レイ トーマス
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

里山林構成種を対象として、光環境の変動に対する個々の樹種の生理的可塑性を明らかにし、 種の共存に関わる林冠ギャップの役割を検証することを目的とて、異なる光環境で生育させた 里山構成種の葉の形態的・構造的可塑性と成長との関係について解析した。その結果、陽葉と 陰葉の比率(可塑性)が高いほど、成長量が高く、落葉広葉樹は常緑樹よりも、相対的に葉の 形態的・構造的可塑性が高い傾向であった。異なる光条件に応じて、どれくらい構造的に性質 の違う葉を作れるかどうかが、各樹種の適応能力を規制する要因となっていることが示唆され た。
著者
篠田 知和基
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

日本とフランスを中心として、昔話、および伝説の異類婚説話の比較を行なった。広くインド・ヨーロッパ文化圏の説話と日本の説話が民衆文化のレヴェルで相同性を示すことはすでに、吉田敦彦氏らによって証明されているが、とくに神話レヴェルに近い昔話としての異類婚説話を検討すると、それが、獣祖と天人との結合を物語る始祖説話から発生することが了解され、そのひとつとして、たとえば、フランスのメリュジーヌ説話と日本のトヨタマヒメ説話の相同性なども出てくるが、それは、決して直接的な一方の他方への伝播でなはく、双方の中間地帯からの同時両方向的伝播の結果だが、それも単に単一説話の移動ではなく、自然と人間とのかかわり方を説明する説話体系の複合的移動が、文化的に変容を蒙っていった果ての一致であることがわかる。すなわち、昔話では、フランスの代表的な昔話、「悪魔の娘」が、日本の「天人女房」と構造的一致を示し、「青髭」は「猿婿」の文化的変容である。また、動物相の変化の法則により、中央アジアの狼は日本では蛇(神)になり、メソポタミアを経由したヨーロッパでは竜になるが、それが、さらに、攻撃者と犠牲の相互可逆性の法則により、昔話では蛙になり、また、文化英雄の遺棄の説話は超自然的保育神話に接続するときに、授乳者としての雌鹿のイメージをうんでもゆく。それらを総合して、日本とフランスは同一文化の両端に属し、同種の文化変容を遂げつつ、それぞれ、特有の風土性を示し、かつ、早くから、近代化を蒙りながらも、その両者を対照させることで、いくつかの説話の古層の原態を再現することができる文化であることが証明された。
著者
斉藤 和雄 瀬古 弘 川畑 拓矢 青梨 和正 小司 禎教 村山 泰啓 古本 淳一 岩崎 俊樹 大塚 道子 折口 征二 国井 勝 横田 祥 石元 裕史 鈴木 修 原 昌弘 荒木 健太郎 岩井 宏徳 佐藤 晋介 三好 建正 幾田 泰酵 小野 耕介
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

局地豪雨による被害軽減につながる基盤技術開発のための研究として以下を行った。・観測データを高解像度の数値モデルの初期値に取り込む手法(データ同化手法)の開発と豪雨事例への適用を行なった。衛星で観測するマイクロ波データ、GPSデータ、ライダー観測による風のデータを用いた同化実験などを行うとともに、静止衛星の高頻度観測データの利用に向けた取り組みにも着手した。・局地豪雨の発生確率を半日以上前から定量的に予測することを目標に、メソアンサンブル予報のための初期値や境界値の摂動手法の開発と雲を解像する高分解能モデルへの応用と検証を行い、局地豪雨の確率的予測の可能性を示した。
著者
鳥羽 耕史 菅本 康之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

単著『1950年代「記録」の時代』を中心として、戦後期のサークル運動、記録の運動が連関しつつ、これまでにあまり顧みられなかったような文学や映画などの作品に結実していったことを明らかにできた。戦後文学、サークル運動、記録の運動のそれぞれについて、当時の関係者の証言をとり、中心的な雑誌の総目次などを整備しつつ、その果たした役割についての検証をすることができた。
著者
杉村 光隆 丹羽 均
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

女性ホルモンであるエストロゲンの神経障害性疼痛に対する修飾作用を卵巣摘出(OVX)ラットを用いて検討した。行動学的手法により、エストロゲンは神経障害性疼痛の急性炎症期には増悪因子として、慢性期には減弱因子として作用することを明らかにした。本研究では、特に急性炎症期におけるエストロゲンの作用に着目し、研究を行った。具体的には、炎症性疼痛に重要な役割を担うカプサイシン受容体であるTRPV1とANO1の発現量に及ぼすエストロゲンの影響を検討した。その結果、エストロゲンがTRPV1やANO1の発現量を亢進させることで、炎症性疼痛を増悪させることが示唆された。
著者
杉村 直美
出版者
愛知県立日進西高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

<本研究の具体的内容>本研究申請時には、発達障害児をとりまく保護者と学校の齟齬を解明するため、まずは保護者の「傷つき」の「物語」を明確にし、その上で養護教諭を中心とする学校関係者に聞き取り調査をする予定であった。しかし、発達障害「親の会」を通し現実に調査依頼をしたところ、「相談にのってくれるのならうれしいと思ったが、調査に使用されたくはない」「もう一回自分の傷をえぐることになりそうで、話したくはない」などの理由で、個人的な聞き取りを拒否する保護者が大半であった。結局「親の会」役員が「会としてうけた相談」のいくつかをエピソードとして提供してくれることになった。一方で、「障害学会」などに参加している当事者から「聞き取り許可」を得る機会に恵まれた。これらの話からは、学校における「傷つき」体験は、「なんらかの支援が欠けていた」/「支援が不適切であった」というような「特別支援」や「ケア」的行動の不足・不適切さよりも、むしろ学校教員のとる日常的な言動や思考形態-「教員文化」とよびうるもの-に起因することがうかがわれた。そこで、学校関係者へのききとりは、保護者と当事者の傷つき体験の中から代表的だと思われるものを選択し、そのときにその教員がとりうるであろう行動とその背景を聞き取ることとした。<本研究の意義とその重要性>保護者側・当事者側から提供される「語り」は「第三者」にとって、学校教員の言動の「心なさ」「発達障害に対する不勉強の証」として一般的に認知される可能性が高いものであった。しかしこの同じ言動が、教員側からも「心なさ」「不勉強」とみなされるケースは少なく、大多数の教員にとってその言動は「学校秩序」を維持するためにも「正統な言動」と評価されるものであることが明確になった。本研究の意義は、こうした保護者・当事者と教員との「すれちがい」/「異相」を明確にできたことにある。さらに両者の「語り」から、その「異相」をうめる現実的な方法論と今後の課題を明確にできた点が、重要である。
著者
梶川 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1922年初頭からはじまるロシア正教会への弾圧はまず、飢餓民に必要な食糧を外国で購入するための貴金属没収の口実ではじまった。このキャンペーンの開始時には、中央委員の多くは必ずしも反教会の強攻策を支持しなかったが、3月半ばのシュヤ事件に対する党中央委員への秘密書簡は党指導部内のこれまでの待機的気分を一掃し、軍事力を動員しての教会と聖職者への容赦のない弾圧と迫害がはじまった。このようにして、宗教弾圧の実施過程でゲー・ペー・ウーにより民衆の抵抗を圧殺するシステムが動き出したのである。
著者
児玉 直美
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は有用木本植物であるユーカリを対象として、その蒸散効率の制限要因の環境応答を調べることであった。具体的には、蒸散効率の重要な要因である膜のCO_2と水の拡散を制限しているアクアポリンという膜たんぱく質に注目して、アクアポリンの蓄積量を遺伝的に改良した植物を用いて実験を行った。本年度は、1)蒸散効率の制限要因である気孔コンダクタンス(gs)と葉肉コンダクタンス(gm)を、秒~分単位の高時間分解能で連続的に同時測定できるように実験システムのセットアップを行った。これによってgsやgmの短期的な環境応答の測定が可能になった。2)アクアポリンの蓄積量の変化によって、短期的な光環境の変化に対する、蒸散効率の制限要因であるgsとgmの応答速度の違いを調べた。1)の実験セットアップは中赤外分光レーザーCO_2同位体計というシステムを導入し、他機関の研究者と協力して行った。これによって、葉肉コンダクタンスと気孔コンダクタンスの同時測定を、秒単位で行えるシステムを確立した。このシステムによって環境の変化に素早く反応して変化するタンパク質や酵素の影響をとらえることが可能になった。また、2)の実験によってアクアポリンの蓄積量の違いによって、光変化に対する応答時間が異なることを示すことに成功した。これらの結果は植物の生産性を高めることや生態系内の水や炭素の循環に関しても重要な知見を与えると考えられる。
著者
高桑 いづみ 勝木 言一郎 加藤 寛 樋口 昭 竹内 奈美子
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

三年間にわたって、地方の寺社や博物館が所蔵する雅楽・能楽の鼓胴を中心に調査をおこない、多くの収穫を得た。特筆すべきことは、雅楽から能楽へ至る過渡期の鼓胴を発見したことである。先回、科学研究費の交付を得て実施した「雅楽古楽器の総合的調査研究」でも石上神宮を神谷神社で発見したが、それとほぼ同形態のものを京都府日吉町、飛騨古川の荒城神社でも発見した。この四カ所の鼓胴は法相華文のかわりに黒漆を施し、雅楽鼓特有の鬘(乳袋上に突起した環)の代わりに線を彫り込んだ特異な形態で、線刻がなければ能の鼓胴、と言えるほど能の鼓胴に近い。荒城神社蔵の一筒を除くと規格もほぼ一定で、過渡期の段階である程度形態の規格化が進んでいたことがうかがえる。さらに福山市沼名前神社では、能への転用を意図してこの線刻の鼓胴に蒔絵を施したものを発見した。雅楽・中世芸能から能の囃子へ、鼓胴の流れを示す貴重な作例である。次に大きな発見は、平成10年に五島美術館で行われた「益田鈍翁展」に出品された「伎楽鼓胴」である。かつてない大きな法量の鼓胴で、「四ノ鼓」の遺品であろうと考えられる。今まで各称のみで実態が知られていなかっただけに、その発見意義は大きい。今回は能楽鼓胴、その他の雅楽鼓胴や鞨鼓、坐太鼓の調査も行ったが、新たな発見が多かった。
著者
樋口 貞三 森田 明 川島 滋和
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

15名の異なるハーバードMBA取得者のほぼ全員がMBA教育を自らのキャリア開発において一定の有効性を認めているが、その内容・程度は、個々人の生い立ち、経歴、そして人生観によりかなり異なっている。インタビューを通じ、「最も競争の激しい環境に自分を置き、そこで生き抜いてこと意味がある」という視点から、「ハーバードの卒業生だから、こうならなければならないというプライドで、自分自身を縛ってしまうことの方が人生にはネガティブに作用する」といった、今後MBAを目指す若手に対しても極めて有益と思われる多くの示唆を得ることができた。
著者
櫻井 哲也
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

公共データベースGenBank(NCBI)および理研キャッサバ完全長cDNAの配列データを用いて、約22,000の目標遺伝子配列から各々60塩基プローブ配列を選んだキャッサバオリゴマイクロアレイチップを開発した。この開発したマイクロアレイチップを用いて、キャッサバの3品種、2ストレス条件についてのマイクロアレイ実験を行い、各品種、ストレス条件についての異なる遺伝子発現プロファイルを獲得できた。CAGE法についても、同様に各条件の遺伝子発現解析を行い、2つの解析手法による遺伝子概観を獲得した。
著者
藤岡 章子 金森 絵里 太田原 準
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究ではこの保育所の事業システムを分析対象とし、その現状を経営学的視点から明らかにするとともに、システム再構築の可能性を検討してきた。保育所の中でも本研究ではマイナスのイメージでとらえられることの多い民営の認可外保育所に特に焦点をあて、その内実について検討を重ねてきた。これらの調査からは、資金的制約の多い認可外保育所が独自のマネジメント・システムと外部リソースの柔軟な活用によって、良質の保育の実現を可能としていることが明らかとなった。