著者
山田 宏
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

景気の行方を予測することは,広く国民全体の共通の関心事である。このニーズに応えるためには,より精度の高い景気先行指標の開発を目指した不断の努力が欠かせない。この研究では,よりよい景気先行指標の開発を助けるための幾つかの基礎的な研究を行った。具体的には,(i)景気循環成分を取り出すためのトレンド推定に関する研究,(ii)景気先行指数構成系列評価のための統計的手法の開発に関する研究,などを行った。
著者
乕尾 達哉
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、ケンブリッジ大学図書館に所蔵されているW.G.アストン旧蔵の和書のうち、国学著作(霊能真柱、古史徴、たまたすき、入学問答、すずのたまぐし、俗神道大意、くずばな、鬼神新論、古今妖魅考、末賀能比連、祝詞考、祝詞正訓、大祓詞後釈、出雲国造神寿後釈、玉くしけ別本)に記されたアストンおよびサトウの鉛筆書き入れを資料として収集し、分析を加えた。その結果、アストンもサトウも本居宣長、賀茂真淵、平田篤胤らの国学著作の内容を精力的に理解・研究したこと、とりわけ篤胤の国学研究を高く評価していたことが明らかになった。
著者
小沢 聖 桑形 恒男 藤巻 晴行 一柳 錦平 登尾 浩助 後藤 慎吉 徐 健青
出版者
独立行政法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この原因を解明するとともに、この地下水を有効に利用する栽培システムを開発することである。東北タイの落水水田の土壌水の同位体比(δ18O/δ16O)は、深さ50cmで0時と12時に低下し、深さ70cmでは逆に0時と12時に増加する日変化を示した。この結果は、水蒸気態で深さ30-50cmの土壌水分が0時と12時ころ増えることを示唆する。作物根を深く伸ばすことで12時ころ上昇する土壌水を有効に利用でき、この方法として、溝栽培、穴栽培が有効なことを、石垣、東北タイの圃場実験で証明した。落水水田に存在する地下水は周辺の地下水とは独立しており、雨期に凹地に蓄積されたローカルな資源であった。したがって、その場の落水水田で有効に利用することが望ましい。深さ50cm を対象に、水フラックスを計算したが、水蒸気態による移動は極めてわずかと推察され、水移動の原因、フラックスの解析法等を再検討する必要がある。
著者
高島 英幸 村上 美保子 今井 典子 杉浦 理恵 桐生 直幸
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

英語学習者のコミュニケーション能力の発達の状況を調査した研究である。英語の文構造(語順)の把握力を測る文法テストとスピーキングテストを開発し,2学校,約250~330人の学習者に中学2年生から高校1年生の3年間,1年に1~2回テストを実施し分析した。調査した9つの文法構造のうち,名詞を後ろから修飾する英語の文構造の定着が不十分であることがわかった。特にスピーキングテストでは,発話に時間がかかったり,何も言えない学習者も多く見られた。
著者
川上 浩司 須藤 秀紹 半田 久志 塩瀬 隆之 小北 麻記子 谷口 忠大 片井 修 平岡 敏洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究課題は、便利の追求で見過ごされて来たが実は人を含む系においては重要であった事項を整理し、効率化や自動化に代わるシステムデザインの指針を探るものである。国内外の動向を整理すると共に、各種のデザイン領域における事例を収集・整理した結果は、学術雑誌や学会で報告するだけにとどまらず、平成23年に一般啓蒙書(不便から生まれるデザイン:DOJIN選書42)にまとめ、web でも逐次発信をしている。また、場のメカニズムデザインへの応用事例は、2013年に閣議決定された計画に盛り込まれた。日用品デザインへの応用事例は、各種メディアで採り上げられた。
著者
川上 浩司 片井 修 塩瀬 隆之 須藤 秀紹 半田 久志 谷口 忠大
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

手間いらずで効率的に要求が満たせる「便利な道具や方式」よりも、むしろ不便な道具や方式に、能動的工夫の余地・対象系の物理的理解促進・自己肯定感の醸成、などの効果がある。我々はこれらを積極的に評価する「不便益」という考え方を提唱し、この視点からの新たなシステム設計方法論の構築を試みた。最終年度にあたる2008年度に得られた成果を以下にまとめる。[不便益の総論:]初年度から継続する各種講演やOSを年に数回開催し、そこで得られた多くの知見の整理を通して不便益の輪郭を明らかにして、HI学会論文誌に総説論文としてまとめた。[不便益の各論:]システムデザインにおける「便利」を基礎づけるものとして、因果に基づく明瞭な説明・分類/分割による高いモジュラリティ・あいまいさの無い推論・中央集権的システム構成に注目し、それらが援用できない「不便」、すなわち均衡(バランス)に基づく説明・明瞭な分割ができないこと・解釈(推察)の多様性・分権的制御などから得られる益を積極的に活用する考え方を提出するとともに、それらのいくつかには具体的な活用方法や数理的基盤を与えた。[不便益の応用:]不便益に関する知見をシステムデザインに応用することによって、その有効性を検証した。適用対象としては、情報伝達に関して「見るのではなく触れることしかできない絵画」や音と画像による情報伝達におけるテロップの効用分析、解釈の多様性に関して比喩表現やピクトグラムによる非言語コミュニケーションの有効性検証と、エージェントシミュレーション、デザインの実践として月に一度のインクルーシブデザインワークショップ(塩瀬)、などを実施した。
著者
萩田 浩子
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

Sp6は歯胚特異的に発現する転写因子であり、Sp6欠損は過剰歯やエナメル質形成機転の異常をもたらすと報告されている。Sp6分子の構造と機能の解析は歯胚形成機序の解明、さらに将来の再生の臨床応用に重要な知見となると考えられ、Sp6の翻訳後修飾の有無を確認した本研究の成果はその一助となると考えられる。
著者
神野 雄二
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本における篆刻や篆刻家の基礎的研究を、調査研究・文献研究・科学的研究の3種の方法により詳細に進めた。篆刻や印学の史的考察、篆刻家の事跡の調査・研究と作品研究を遂行し、論考として発表した。また、篆刻に関わる傍系の文人・芸術家の事跡の調査・研究と作品研究を行なった。日本における篆刻・印学や篆刻家の研究、それらの広い視野に立った体系的な研究はまだ十分なされていなかった。本研究において、日本の篆刻や篆刻家の歴史的・芸術的・文化史的な面の一端を明らかにすることができ、日本の印学の体系化に向けての研究の深化をはかることができた。
著者
遊佐 真一 川瀬 毅 山子 茂 駒田 富佐夫
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

感温性ブロックおよび C_60 と親和性の高いブロックからなる二重親水性ブロック共重合体を制御ラジカル重合法で合成した。このポリマーは水に不溶な C_60 を水に可溶化できた。この C_60 とポリマーのコンプレックスは体温より少し高い温度でサイズが増加するので体内に導入した場合、温めることでその周辺に C_60 を集積化できる。さらに光照射すると C_60から DNAを破壊可能な活性酸素を発生した。 したがってこのポリマーは光線力学的療法に利用できると期待される。
著者
岩本 和久 梅村 博昭
出版者
稚内北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では1960年代以降のロシア文学に見られるスターリニズム表象の系譜について、リアリズムとポストモダニズムの間で揺れる現代ロシア文学の変化を参照しながら検討した。また、それら文学作品が21世紀のロシアにおいてテレビ・ドラマ化され、新たに神話化されていく様を検討した。それらを通し、現代ロシア文化におけるスターリニズム表象の志向として、悲劇の告発とユートピアの賛美という対立する要素を明らかにした。
著者
木下 尚子 黒住 耐二 新里 貴之 高宮 広土 中村 直子 安座間 充 石丸 恵利子 鐘ヶ江 賢二 神谷 厚昭 川口 陽子 岸本 義彦 新里 亮人 樋泉 岳二 中村 友昭 松田 順一郎 宮城 弘樹 盛本 勲 山崎 純男 山野 ケン陽次郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は伊江島ナガラ原東貝塚の8回の発掘調査をもとに、沖縄貝塚時代中頃の変化を伊江島において明らかにした。すなわち、遺跡の時期が5世紀から7世紀であること、この時期の沖縄諸島の土器は伝統的な形状を大きく変化させるがその変化は内在的なものであると同時に南九州や奄美地域の影響によって生じたこと、遺跡が南九州や種子島と貝殻を交易するために断続的に使われたキャンプ地であった可能性の高いことを明らかにした。
著者
中村 宗一郎 寺嶋 正治 藤井 博
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全身性アミロイドーシスや認知症を引き起こすとされているL68Qヒト型シスタチンやアミロイドβ蛋白質を用いて,種々の天然フェノール化合物及びそれらのリポフィル化あるいはグリコシル化誘導体のアミロイド線維形成抑制能を調べた。その結果,グリコシル化に比べリポフィル化の方がより効果的であることが明らかにされた。本研究で示された構造と機能に関する成果は,今後の抗コンフォメーション病食品素材の分子設計に活用されるものと期待される。
著者
清水 高正 永友 寛司
出版者
宮崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

Dot-immunobind(DIB)法による鳥系マイコプラズマの簡易同定法及び鶏のマイコプラズマ感染抗体の検出法を検討し、次の成績を得た。1)DIB法には、先人が使用したニトロセルロース膜や最近開発されたニトロプラス2000膜よりも、Durapore膜が染色性,弾力性の点で優れていた。2)マイコプラズマの液体培養を抗原とする家兎抗血清を用いたDIBでは交差反応が著明で、同定は不能であったが、培養液を遠心洗滌して得た菌体を抗原とした場合;ホモ抗血清はヘテロ血清より遙かに高いDIB力価を示した。従って、この方法もしくはモノクローナル抗体を用いたDIB法は、マイコプラズマの簡易迅速同定法になることが示唆された。3)SPF鶏の血清の多くは1:20以下、稀に1:40の弱いDIB力価を有することが判明した。一方、実験感染鶏では1週後から1:160以上の高いDIB力価が産生され、11週まで高い抗体価が保持された。4)実験感染鶏及び自然感染鶏の血清では、HI陽性(【greater than or equal】10)とDIB陽性(Greater Than or Equal80)及びHI陰性(<10)とDIB陰性(【less than or equal】40)がよく一致し、自然感染鶏175羽のうち両反応陽性の鶏78例では、両抗体価の相関性は、r=0.81(P<0.01)であった。5)M.gallisepticum(MG)とM.synoviae(MS)の両抗原を用いたDIB抗体価の測定成績と、これらの両抗原を同一の膜片に固定させ、血清の定点希釈法で実施したDIB反応の成績は、い一致率を示し、後者の方法は野外で感染抗体の有無を調べる際の簡便法になるものと考えられる。以上の成績から、マイコプラズマ以外の病原体についても本法の応用が検討され、それらの抗原が同一膜片上に固定されたキットが市販されるなら、DIB法は各種鶏病の簡易・迅速診断〓〓〓
著者
北 徹 中谷 矩章 松沢 佑次 KOREAKI NAKAYA
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

我国においても食生活の欧米化に伴い、狭心症、心筋梗塞等の虚血性心疾患の発生頻度が年々上昇している、我々の研究成果を基に上記症の根底をなす動脈硬化発症につき、ことに血清コレステロール代謝に注目し、まず食餌因子の血清コレステロールに与える影響について検討を試みることにした。従来より食餌性の諸因子が血清コレステロール、ことにLDLコレステロールに影響を与えることが知られている。我々は動物性食物の摂取がほとんど無い禅宗修行僧に注目し、彼等の血清脂質と食餌成分とを比較検討し、合わせて外国人および日本人修行僧の比較を試みた。<結果>京都市内の禅寺修行僧を対象に検討とたところ(平均年令29.7才)血清総コレステロール値135,1mg/dlでLDL値は73mg/dlであった。一方コントロールの成人男子は血清コレステロール値が188.9mg/dlでLDLが108.6mg/dlであり、明らかに修行僧の血清コレステロール値ことにLDLコレステロール値は低値を示した。次に外国人、日本人の同居する禅寺において検討したところ、外国人の総コレステロール値は149mg/dl、LDL値は77mg/dl、日本人のそれは150mg/dl、82mg/dlであった。一方コントロールのそれは187mg/dl、112mg/dlであり、人種差が影響していないことが判明した。また禅寺に入山前後で食餌成分の影響を検討したところ、入山前総コレステロール、LDL値は166mg/dl、92mg/dlで6ケ月後に136、77mg/dlに低下している事が判明した。食餌分析の結果、総摂取カロリーには変化が少ないが、禅僧はコレステロールの摂取がほとんど無くしかも動物性食物の摂取が無いためと思われるが、不飽和脂肪酸の摂取が多く、それに比して飽和脂肪酸の摂取が少ない事が明らかとなった。現在動物を用いて飽和脂肪酸を多く含んだ食事、逆に不飽和脂肪酸を多く含んだ食事により、血清コレステロール値の変動を検討する予備実験を進めている。
著者
北 徹 濱口 洋 若月 芳雄 久米 典昭 横出 正之 土井 俊夫 吉岡 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

まず、本研究の目的である血管内皮細胞への接着及びその阻害効果を判定する方法として、ヒト臍帯静脈から採取した内皮細胞を培養し、あらかじめ常法にて採取した単球の接着を行う。24時間培養を行い、dishを洗浄した後、ギムザ染色にて、その後着量を判定する。この際、あらかじめマロチラート(Diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)、あるいは抗単球接着分子抗体を添加した群との間で比較検討を行う。マロチラート(diisoprophyl-1、3-dithiol-2-ylidenemalonate)の単球接着阻害効果については繰り返し実験を行ったが、際立った効果をあげるに至らなかった。単球接着分子については、invivoの判定を考慮に入れると、ウサギの系が最も扱いやすく、その場合にはVCAM-1が最もよい接着分子と考えられた。。VCAM-1と単球接着の関係を観察する目的で、まず、遺伝的に動脈硬化を引き起こすWHHLウサギを用いて、それぞれに動態を検討したところ、1ヶ月令ですでに動脈硬化の起こりやすい場合にVCAM-1の発現を抗VCAM-1抗体を用いて確認することができた。この際、第1肋間動脈では、その入口のみに接着分子の発現が観察されたが、2ヶ月令では、その付近の動脈では全周にわたって観察されることが明らかにされた。1ヶ月令ではすでに単球-マイクロファージの存在も確認された。約3ヶ月令ではTリンパ球の存在も同部位に確認された。この事実は始めての結果であり、学会発表予定であり、論文も準備中である。この間、接着分子のノックアウトマウスの研究が米国において行われ、単独の単球の接着が単球接着分子のみにて起こる現象ではないことが判明し、今回の研究テーマも方向転換せざるをえなくなった。
著者
若月 芳雄 HO Bow FOCK KWong M 千葉 勉 FOCK Kwong M BLASER Marti STROBER Warr
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

H.pylori感染患者は全世界で約20億人、日本では約7000万人にのぼり、単一感染症としてはその感染患者数は史上最大であり、上部消化管の様々な良悪性疾患の原因となり関連疾患に要する医療費は莫大である。感染患者の病型を決定する因子については、欧米と日本の報告に解離がありその大略は未だに不明である。 国立シンガポール大学のHo Bow,Chang Gi病院のFock Kwong Ming等との共同研究によりシンガポールでは、中国系・インド系の人種グループには80〜90%の高いH.pylori感染者が存在するのに対して、マレー系のグループには40%の低い感染率であることが判明した。一方H.pylori感染症によりおこる慢性萎縮性胃炎と胃癌との関係は確立しているが、中国系、マレー系にはH.pyloriの感染罹患度に応じた胃癌累積発生を観るのに対して、インド系ではその高度な感染率に比較して胃癌発生頻度が極めて低いことが判明した。そこで今年度はマレーシアのKebangsaan Malaysia大学医学部細菌・免疫学教室のRamelha Mohamed助教授と協力して、同国の中国系・インド系・マレー系マレーシア人の感染患者より、H.pyloriの臨床分離株を収集しその遺伝子型と、臨床病型の解析に着手した。一方日本人患者からの臨床分離株のゲノム遺伝子ライブラリーより患者血清と家兎抗体を用いて、幾つかの抗原遺伝子をクローニングしそのうち、約19Kdの二量体型の膜蛋白(HP-MP1)はH.pyloriに特異的な新規抗原遺伝子であること、その組み替え体は単球を活性化するものであることを発見した。これらの所見は、この感染症の病態解明のみならず宿主の免疫応答を利用した新しい治療法の開発につながるものと考えられる。
著者
坂本 育生 樋口 晶彦 日高 正康
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010年、坂本は国連機関、国際海事機構(International Maritime Office)」を訪問し、海事英語の貴重な資料を収集した。その後エジンバラ大学での夏季研修を受講し、ESPの最新英語教育教授法研修を受けた。2013年3月までに3本の学術論文を発表し現在4本目の論文を作成中である。大学生へのmotivation促進効果は、海事英語授業と国際英検(G-TELP)によりその効果が実証された。現在坂本は、新英語教材をほぼ完成させ、英語教材大手出版社「南雲堂」と出版契約を結び最終原稿推敲過程にある。
著者
肥塚 隆 淺湫 毅 橋本 康子 深見 純生 小野 邦彦 上野 邦一 榎本 文雄 渡辺 佳成 丸井 雅子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

クメール王国の刻文に頻出する devaraja の語は、 「神のような王」を意味し、王の没後にその墓廟として寺院が造営され、神仏と一体化した王像が安置されたと考えられてきた。また東部ジャワでも、同様な信仰があったとされてきた。しかしインドではこの語は「神々の王」の意味で用いられるのが一般的で、王を神格化する信仰が盛行した形跡はない。南インドでは王像が神像と並べて寺院に安置されることは珍しくないが、むしろ王権の神聖さの明示にあったと考えられる。
著者
古澤 明 青木 隆朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、高レベルスクイーズド光の生成とそれによる高レベル量子エンタングルメントの生成、測定およびフィードフォワードを用いたユニバーサルスクイーザー、量子非破壊測定(量子非破壊相互作用)の実現を目的としている。具体的な研究成果は以下のようなものである。(1)周期分極反転KTiOPO_4(PPKTP)疑似位相整合結晶を非線形媒体とした光パラメトリック発振器(OPO)を作製し、高レベルスクイーズド光の生成に成功した。まず、波長946nmにてその可能性を明らかにした。その結果に基づき、高いポンプパワーを期待できる波長860nmで実験を行い、14年ぶりに世界記録を塗り替え7dBのスクイーズを達成した。さらに、測定系の位相揺らぎを抑えることにより、9dBのスクイーズを達成した。これらの成果により、生成できる量子エンタングルメントのレベルは格段に高まった。(2)測定およびフィードフォワードの手法の代表例は、量子テレポーテーションと呼ばれる波動関数の伝送であり、そのフィデリティはこの手法の成功の度合いを示す(フィデリティ1=100%成功)。したがって、本研究で生成に成功した高レベルスクイーズド光を用い、量子テレポーテーションのフィデリティを測定してみた。その結果0.83という高い値が得られ、この高レベルスクイーズド光を用いれば、測定およびフィードフォワードの手法を高い確率で成功させられることが明らかとなった。(3)高レベルスクイーズド光を用いて生成した高レベル量子エンタングルメントと併せて、測定およびフィードフォワードの手法を用いることにより、ユニバーサルスクイーザーを作製することに成功した。(4)ユニバーサルスクイーザー2台を作製し、これらをさらに可変ビームスプリッターを用いて結合することにより、量子非破壊相互作用装置を作製した。これを用いて、2つの共役な変数(直交位相振幅成分)に於いて量子非破壊測定を行った。これらは、いずれの場合に於いても成功した。また、この結果から、この量子非破壊相互作用装置の2つの出力はエンタングルしていることが明らかになり、量子ビットの制御NOTゲートと同様に、エンタングリングゲートとしての働きがあることがわかった。
著者
是澤 博昭 湯川 嘉津美 広田 照幸
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、近代日本の地域社会における幼稚園教育の社会的機能について、茨城県土浦幼稚園を事例として検討を行った。土浦幼稚園は1885(明治18)年に設立され、今日まで120年余り地域の幼稚園として命脈を保ってきた公立幼稚園であり、同園には文書資料はもとより、幼稚園の教材・教具類などの実物資料が数多く残されている。そこで、まず資料(計429点)の整理と目録作成を行い、つぎに入園綴や退園届、保育証授与簿などをもとに「土浦幼稚園園児データベース」作成して、利用層についての数量的分析を行い、明治期から大正期にかけての土浦幼稚園の実態と同園が地域社会において果たした社会的機能を総合的に検証した。研究成果は以下の通りである。1)近代日本における幼稚園導入・普及の社会的文脈について、1892年の幼稚園調査を用いて全国的動向の把握を行った。そして、当時の幼稚園が「教育の質」と「社会的開放性」と「財政上の要因」をめぐって複雑なトリレンマ(三すくみ)の状態にあったこと、そのなかで、土浦幼稚園は公費支出と保育料の低額化によって財政上の要因と社会的開放性の問題を解決して、そのトリレンマを処理していたことを明らかにした。2)土浦幼稚園の設立とその後の展開過程について検討し、土浦幼稚園がおもに商業者の支持を得て設立・維持され、小学校との関係を持ちながら、就学準備教育機関として機能していたことを明らかにした。3)「土浦幼稚園園児データベース」をもとに、利用層の数量的分析を行い、女子の就園率の高さ、通園圏の狭さ、在園期間等から、土浦町では幼稚園が小学校就学前の教育機関として男女によらず必要であるという認識が一定程度広まっていたこと、そして、そこでは学歴獲得や社会的地位達成とは別の文脈で、幼稚園の就園そのものに意味を見出す利用がなされていたことなど、土浦幼稚園の実際を利用者の側から明らかにした。