著者
平山 東子
出版者
独立行政法人国立美術館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、紀元前6世紀前半の初期アッティカ黒像式陶器の展開を様式、図像、技法、器形、出土分布などから多角的に跡づけ、その形成過程と古代地中海世界における社会的機能をさぐることを目的としている。そのケーススタディーとして、初期アッティカ黒像式陶器を代表的する陶画家の一人である逸名の画家「KXの画家(KX Painter)」を採り上げ、関連資料の収集と調査を実施、「KXの画家」とその周辺作品の図像と技法、装飾方法、器種、出土状況などに関する多くの知見を得ることができた。採取したデータを分析し、当該作家の個々の作品の比較や、同時代および後代のアッティカ陶器および周辺地域の陶器との比較、影響関係の考察などを行った。これらの作業と考察を通じて、「KXの画家」とその工房の作品を明確化し、「KXの画家」の特徴とその背景、周辺作家との影響関係、アッティカ陶器の形成期における当該作家の意義が明らかとなる。
著者
早川 芳宏 塚本 眞幸 太田 美智男 山田 景子
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

環状ジグアニル酸(c-di-GMP)および人工修修飾体の(1)生理活性探索と(2)生理活性発現機構の解明研究を行い、(1)については、c-di-GMP類は、肺炎双球菌、Ehrlichia chaffeensis菌、Anaplasma phagocytophilum菌、Borrelia brugdoferi菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの感染力を、主に免疫活性化作用によって低下させることを発見、(2)については、c-di-GMP類が示すいくつかの生理活性の中でも最も重要な免疫活性化の機能発現機構解明の鍵となる、「免疫は、c-di-GMPが哺乳動物に存在する免疫タンパク"stimulator of interferon genes(STING)"と結合する事によって発現される」という証拠を発見した。
著者
八木 哲也 小山内 実 下ノ村 和弘
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

冷却CCDチップをFPGA(Field Programmable Gate Array)回路と組み合わせた知能バイオイメージングデバイス(IID)を開発した.IIDは,生体画像計測において,画像を取得するのみでなく、画像中の蛍光の部位やパターンなどの特徴を実時間で抽出する.IIDおよび多点電気刺激装置を顕微鏡に組み込むことによって、神経・筋組織の活動を計測かつフィードバック電気刺激し、それら組織の生理学的特性を自動計測することが可能な、新しい自動バイオアッセイシステムのプロトタイプを構築した.
著者
金保 安則 長谷川 潤 船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

脂質性シグナル分子産生酵素のPIP5KとPLDの各アイソザイムの生理機能解析を行った。PIP5Kγ661は、海馬神経細胞において、クラスリンアダプター複合体AP-2と相互作用してAMPA受容体のエンドサイトーシスを促進し、長期抑制を誘起すことを明らかにした。さらに、PIP5KαとPIP5Kβは、精子形成に重要であることを明らかにした。また、PLDは、好中球機能に重要であることが報告されているが、それらの研究結果はアーチファクトである可能性を示唆した。
著者
神藤 正士 木下 治久 畑中 義式
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

表面波プラズマの励起機構に関係する現象が観測された。以下にその要点を列挙する。1.圧力が低下するとともに、軸方向密度分布は平坦になっていく。2.圧力が50mTorr以下になると、石英板から1-2cmの位置のイオン飽和電流の軸方向分布上に明確な凹みが観測された。圧力が低くなるとこの凹みは顕著になるが、100mTorr以上では目立たなくなる。プローブのバイアス電圧をプラズマ電位に対して負に深くして-80V以上にすると、この凹みは解消する。このことから、これはプラズマ密度の凹みではなく、電子が加熱されてエネルギーが増大したことから現れる現象であると考えられ、電子の加熱がこの付近で顕著に生じていることを示唆する。なお、凹みのある位置でのプラズマの密度は丁度遮断密度に近い10^<11>cm^<-3>程度であり、プラズマ共鳴の条件が満たされているものと思われる。3.石英板方向のみまたはその反対方向からのみプラズマ粒子を捕集できる構造をもったプローブを製作し、プローブ特性を測定した結果、石英板から離れる方向に流れる高エネルギーの電子流が見出された。4.石英板から数mm以内の位置に設置されたダイポールアンテナからの信号を周波数分析したところ、マイクロ波の周波数であるf_0=2.45GHzの他に、f_1=10MHzとf_2=f+f_1の2つのスペクトルが観測された。f_1はプラズマ密度とともに上昇すること、ならびに丁度イオンプラズマ振動数に一致することから、観測された現象は、電磁波、ラングミュア波およびイオン波からなるパラメトリック不安定性の特徴と一致していることが判った。
著者
下ノ村 和弘
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生体の視覚系は,長年の進化の過程で獲得された独自のアーキテクチャを用いて,複雑な視覚情報を極めて効率的に処理している.本研究課題では,脳視覚野の神経細胞がどのようなメカニズムで奥行きを計算するかを説明するモデルに着目して,これをアナログおよびディジタル集積回路を用いて効率よく実装する方法を提案し,ロボットが環境認識を行うために不可欠な奥行き情報を実時間で計算する集積視覚システムを構築した.
著者
丹羽 隆介
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

多細胞生物が適切に発生して大人になるためには、未成熟なステージから成熟に向けて決まったタイムスケジュールに沿って段階的に成長する必要がある。本研究代表者はモデル動物である線虫Caenorhabditis elegansを用いて、幼虫から成虫へのスイッチングを正に制御するlet-7マイクロRNAに着目し、let-7経路に関わる新規遺伝子を探索した。その結果、進化的に保存された核内受容体遺伝子nhr-25が、幼虫から成虫への発生運命のスイッチングに重要な役割を果たすことを証明した。
著者
船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

リン脂質キナーゼPIP5Kは、PIP2の産生を介して多様な生理機能を発揮する。PIP5K にはα、β、γの三つのアイソザイムが存在する。先に研究代表者の属する研究室ではPIP5Kの活性化因子として低分子量Gタンパク質Arf6を同定しているが、本研究では各アイソザイム特異的なArf6による活性化を検討し、PIP5Kγに固有のN 末領域が分子内マスキングによりArf6による活性化を調節するというユニークな制御機構を明らかにした。
著者
伊藤 貴啓
出版者
愛知教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は経済の国際化・グローバル化における農業地理学分野からの貢献を念頭に,フードシステムにおける農業生産部門に焦点を当て,その国際的なネットワークの形成と構造について花卉産業を事例に究明しようとした。まず,農業に関連した国際化の推移を考察した。農業の国際化は,「農業生産の国際化」と「食の国際化」の両者が相互に作用して農業に影響している。後者では,食の外部化のなかで,加工・小売といった川下部門が影響力を強めて,農産物や加工原料の輸入を拡大させて国内産地に多大な影響を与えてきた。そこで,そのような状況と今後の日本農業の発展戦略を検討した(愛教大研究報告第50輯)。また,前者では,農業生産に海外からの技術や海外産の原材料が利用されているだけでなく,より積極的に国際的ネットワークを形成しながら経営を発展させ,地域的な農業の活性化・発展をもたらしている事例が存在していることが判明した。このような事例のなかから,本研究では,愛知県と沖縄県のキク栽培地域,およびネットワーク提携先のオランダを対象として研究を進めた。愛知県では渥美半島の農家群がオランダのファン・ザンデン社から種苗を輸入していた。これはリーダーが自ら同社とのネットワークを開拓して,試行錯誤しながら品種の導入をはかり,隣接農家をグループ化して形成したものであった。このネットワーク形成は近接効果によるといえよう。その形成目的は生産コストの低減と経営の大規模化であった。これに対して,沖縄県では花卉専門農協がインドネシアに地元出資者と合弁で種苗生産を行い,組合員に種苗を供給していた。これは農協が台風被害を最小限に食い止め,夏季の暑さで難しい県内での育苗をインドネシアで行ったものであった(『21世紀の地域問題』第V章)。次に,ネットワークの提携先としてのオランダで,日本の花卉生産者の国際的ネットワークの形成の特色を知るため,ネットワーク提携先のある花卉生産地域を対象に土地利用調査や資料等の収集を行った。その結果,花き生産を含む,施設園芸の立地移動が大規模に伝統的温室園芸地域で生じていることが明らかになった(経済地理学会中部支部例会発表,2002年2月)。以上から,(1)国勢的なアグロネットワークは,地域リーダーによる個別の情報収集からの形成と組織的な対応という2類型がみらること,(2)後者は合弁という形態で現地化をはかり,中国等への進出とネットワーク形成の類型となりえること,(3)国際的なアグロネットワークは,地域産業や個別経営の上方的発展をドライビングフォースとして内発的に形成されてきたことが明らかになった。しかしながら,ネットワークの形成と構造に関するフードシステムにおける川下部門からの研究が今後の課題として残されている。
著者
澤登 千恵 村田 直樹
出版者
高松大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,現代の財務報告制度の起源を19世紀イギリス鉄道会計に求め,当時の主要な鉄道会社が株主総会後に作成していた報告書と関連資料をテキストマイニングで分析した。特に,自身がこれまでの研究で想定していた会計変化に対する資金調達不確実性(資金不足)の影響を再検討した。いくつかの鉄道会社で資金調達不確実性を示すキーワードを確認でき,さらにこれらの会社は,複会計システム,減価償却実務,そしてコストマネジメントを積極的に採用する傾向にあったことがわかった。
著者
永島 達也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

先行研究で用いられている、比較的簡便で使用する数値モデルに適した手法を選定し、炭素性エアロゾルの内部混合過程が考慮できるように気候モデルを改変した。この改変により、炭素性エアロゾルによる放射の吸収・散乱過程が変更されるとともに、これまでの使用していたモデルに比べて、煤粒子の雲粒への取り込みや雨滴としての消失が強化されるようになった。このモデルを用いて、幾つかのテスト実験を行って実験用パラメータの妥当性を評価した後に、産業革命前(1850年付近)を想定した外部境界条件の下で1000年の長期実験を行い、気候ドリフトの無い安定した基本状態を得た。その後、上記1000年実験のデータから100年間隔で4つ取り出された初期値を用いた、4メンバーの20世紀再現アンサンブル実験、及び同初期値を用いたやはり4メンバーの感度実験を行った。感度実験は、エアロゾル(或いはエアロゾル前駆物質)の地表放出量を、(1)全てのエアロゾル種に関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、(2)炭素性のエアロゾルに関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、の2ケースについて行った。また、エアロゾルによる放射強制力を評価するための実験も当初の計画に追加して行った。初期的な解析によれば、20世紀全体で評価した場合、全球平均した地表面気温の長期的なトレンドの再現性は、炭素性エアロゾルの内部混合を慮しいな場合と遜色ないが、20世紀中盤の気温寒冷化傾向はより過大に評価された。これは、内部混合を考慮することによって日傘効果が増す一方で、大気を暖める事によって二次的に地表面を温める効果はあまり大きくない事を示唆するが、準直接効果による雲場への影響などは今後の解析課題となった。
著者
秋元 孝之
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

執務空間温熱環境評価のため、床吹出空調方式が採用されている環境配慮オフィスと既存のオフィスの比較検討のために、執務空間の温熱環境、空気質環境、光環境や、音環境の室内環境の調査を行った。滞在する執務者に対して温熱環境調査や行動調査を実施し、この環境配慮オフィスの各環境が、建築基準法等で定められた基準値を満たしているか、また、滞在する執務者の快適性や生産性への影響があるかを執務者にアンケート調査を行った。温熱環境評価として行ったSET^*の算出では、既存オフィスで最大で26.5℃まで上昇し快適域を0.9℃上回っていたが、新オフィスでは、24.1℃〜25.6℃であった。光環壌評価として行った照度分布測定では、既存オフィスでは、JISZ9110の基準値を下回り期間中の変動範囲は259lx〜1225lxと約1000lxもの差があり、室中央は基準の下限値である750lxを満たすことはなかった。新オフィスでは、期間中を通して基準値の範囲内に収まっていた。音環境評価として行った等価騒音測定では、室内騒音の設計推奨値は43dB_A〜55dB_A程度とされており、既存オフィスは53.3dB_A〜65.2dB_Aと10:30の測定では推奨値を満たしていたが、その後の測定では13dB_A以上増加し推奨値を大幅に超えていた。空気質環境評価として行ったCO_2濃度測定では、既存オフィスで基準値である1000ppmを下回っていたものの最大で733ppmとなり、新オフィスは勤務時間中に平均で483ppm程度であった。知的生産性に関しては、自覚症状しらべで訴え率は新オフィスで若干増えたもののその絶対数は少なく、眼精疲労しらべにおいては既存オフィスでは出勤後から退勤前にかけて訴え率は増加し、新オフィスでは減少傾向にあることから、新オフィス環境において作業性が向上したものと推察される。
著者
冨田 美香
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、芸術・メディア・産業としての性格を持つ映画文化が20世紀の日本社会の形成にいかに作用したかという問題を明らかにすることを目的とし、その具体的な様相を日本のハリウッドと称される京都洛西地域社会の形成と日本映画史との関係に絞り、検証したものである。平成14年度は、京都洛西地域社会形成の過程と、そこから産み出された独自の映画文化との関係性を、京都を舞台に京都で作られた映画作品の中で現存する最古の作品『祇園小唄 絵日傘第一話 舞ひの袖』の分析から考察し、映画産業と京都社会との相互関係とともに、「京都」都市イメージが映画内的/外的作用によっていかに形成されていったかを実証的に研究した。そこで明らかになった点は、パノラマなどシネマトグラフ前史に遡る映画の始原的な視覚性が利用され、擬似観光体験から真の観光体験へと観客の経験の変容を促す都市への集客効果とともに、近代化された東京が失った鑑賞都市としての江戸の姿を、古都・京都の表象するメディアとして、映画が積極的に用いられていた、という点である。なお、これらの調査結果を資料画像も含めてデジタル化し,インターネット上で研究成果として公開する点についても、以下のURLで試行中である。URL:http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/index.html
著者
本木 昌秀 沈 学順 安部 彩子 高田 久美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

大気海洋結合モデルの長期積分結果をもとに、その気候値、季節サイクル、年々変動、十年スケールの変動の再現特性を調べた。モデルの年平均気候は、赤道域で海面水温が若干低めになるものの、太平洋赤道域の東西および南北に非対称な降水分布が非常によく表現されている。東太平洋では、大気モデルの分解能が粗いためと思われる南米沿岸の風、海水温の誤差を除くと、季節サイクルの表現もよい。赤道付近では、日射は半年周期が卓越するにもかかわらず、大気海洋相互作用のため、年周成分が卓越するが、モデルでもこれがよく表現されている。しかし、モデル気侯値には欠点も多々あり、これらの多くは他の多くの結合モデルにも見られるものである。赤道上の風が弱く、湧昇の最大となる領域が観測に比べて西へ寄る、西太平洋暖水域の南北幅が狭い、東南太平洋の海面水温が暖かすぎ、赤道を挟んでダブルピークの傾向が強い、ペル-沖の南風が弱い、など。これらの中にはモデルの低解像度に起因すると思われる要素もあり、本研究の期間内にすべての原因を明らかにすることはできなかった。しかし、雲の放射効果の結合気候に及ぼす影響や、大気・海洋それぞれの境界層過程の役割等について知見を得ることができた。赤道太平洋の年々変動は、観測されたエルニーニョ南方振動とよく似ており、また、他の多くの結合大循環モデルに似ず、振幅も現実的である。また、中緯度北太平洋、北大西洋に、観測されたと同様の十年規模振動がシミュレートされていることがわかった。とくに、前者は、他のいくつかのモデルと異なり、赤道域まで含むモードになっており、観測とよく一致する。
著者
村上 征勝 古瀬 順一
出版者
同志社大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、精神的活動の変化を文体の変化として数量的に把握し、それによって精神的疾患や痴呆症の早期発見など、精神医学に役立てることが目的である。そのため、精神的疾患が原因で自殺したと考えられる作家、川端康成(S46.4.16,ガス自殺)、芥川龍之介(S2,7.24,睡眠薬服用)、三島由紀夫(S45.6.4,割腹)の3人の文章のデータベース化を試みた。特に、データベース化がある程度進んでいた川端康成に関し、彼の執筆活動の全時期にわたる文章の経年変化を調べることが必要と考え、「ちよ」(1919)、「篝火」(1924)、「浅草紅団」(1929),「名人」(1942),「古都」(1959)「隅田川」(1965)の6作品を新たに入力し、計量分析に必要となる単語認定、品詞認定等の作業を行った。この作業は16年度末までに終了できる見通しが立たなかったため、・読点の直前の文字の出現率・平均文長・会話文平均文長・全文に対する会話文の比率・ひらがな、カタカナの出現率の情報を用い、昨年までに入力済みの「伊豆の踊り子」(1926)などの7作品とあわせ、計13作品で分析を試みた。その結果、読点の直前の文字の出現率には、比較的早い時期の「篝火」,「浅草紅団」,「伊豆の踊り子」の3作品と、その後の作品にある程度違いが見られたものの、文章の変化を確認するには品詞情報などのほかの情報の分析が必要であることが判明した。そのため、本研究の研究期間内には行えなかったが、川端康成の13作品の品詞認定等の作業が終了次第、再分析を試みる。また、芥川龍之介、三島由紀夫の作品についてもデータベース化の作業を続け、川端康成と同様に計量分析する予定。
著者
那須 保友 公文 裕巳 雑賀 隆史 賀来 春紀 小武家 誠 江原 伸
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は前立腺癌、中皮腫を対象にin vivoにおける実験とくに、われわれが独自に突き止めた、癌抑制遺伝子REICを用いた治療実験を実施した。ヒト前立腺癌細胞PC-3を用いて皮下腫瘍を作成しREIC発現プラスミッド封入ポリマーを腫瘍内に直接投与(計4回)し対照群との腫瘍体積の変化を比較した。腫瘍の消失を伴った治療効果を認め、REIC遺伝子発現アデノウイルスベクターを使用した治療効果とほぼ同等の効果が得られた。中皮腫については、同所移植モデルを用いて 胸腔内投与をおこなったが、腫瘍の消失は認めないものの一定の治療効果を認めた。またREIC遺伝子に関してはそのアポトーシス誘導機能ドメインはわれわれの研究において突き止められており、その結果を応用し機能ドメインを発現したポリマーによるアポトーシス誘導作用も前立腺癌、中皮腫細胞を対象として確認を行った。すなわち機能ドメインのみのフラグメント(フラグメント2)を作成し同じくポリマーに封入した試料を作成し同様の実験系を用いて治療実験をin vitro, in vivoにおいて実施した。その結果、全長のものを用いた場合とほぼ同等の効果を認めた。体重減少を指標とした安全性については特に異常をみとめなっかた。以上の研究より、ポリマーを用いた治療はアデノウイルスベクターを用いた治療とほぼ同等の安全性と治療効果を認めた。アデノウイルスベクターという生物製剤に替わる、新たなドラッグデリバリーを見出すことができた。このことは将来の実用化における汎用性すなわち取り扱いの容易さ、定量性の容易さという点においてきわめて有利な点といえる。今後さらに研究を発展させるに値する研究成果であると考えられる。
著者
今村 文彦 片田 敏孝 牛山 素行 越村 俊一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

人間は知覚機能などを通じて外的な脅威に関する情報と自分の現在の状況を収集し,その相互関係で危険を認識する.さらに,避難行動の際にも経路の状況を判断して,より安全に避難場所へ移動しようとする.このような知覚機能を重点に置き情報と人間行動の関係を検討することを目的とした.研究の中で,過去の災害データ,ハザードマップ,体験型学習,避難訓練を通じて,住民や行政担当者にどのようにして認知されそれが知識化し,どの位の期間まで記憶化されるのかを調査研究を行った.その中で,2003年5月の宮城県沖の地震では,三陸沿岸各地で震度4〜6弱が観測され津波襲来が直ちに懸念されたが,津波を意識して避難した住民は,全体のわずか1.7%であった.この要因を把握するため,住民の避難行動とその意識的背景を分析した結果,避難の意思決定を避難情報や津波警報に過度に依存する姿勢や,正常化の偏見による危険性の楽観視,過去の津波経験による津波イメージの固定化といった住民意識の問題点が明らかとなった.このような現状を踏まえ災害情報の受取側の課題を解決するために,津波災害を対象に地域および学校での2種類の取り組みを実施した.1つは,住民参加型の津波防災サイン検討会における住民参加型防災対策の実施であり,地域住民のみならず観光客も対象とした津波避難サインの設置を目指した.もう1つは,体験・参加型の学校での学習である.いずれも,課題を解決する内容を含んでいるものの,既存の活動や教育プログラムに取り込む方法や継続的な内容にする工夫が必要であることが分かった.
著者
山本 博章
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究は五感と色素細胞機能の連携を探索することを目的としている。今年度は、聴覚や視覚への影響に加え、臭覚と味覚に関しても解析しようと計画していたが、飼育室の空調のせいか、ケージを置くラックの位置によって、給水瓶の残存水量が大きく異なることに気づいた。室内の微気候を整えようと、加湿器の調整また扇風機による送風を試みたが改善されなかった。そこで空調のダクト工事により、風量を下げ、より均一な温湿度を保とうとしたが、それでも十分改善されなかったため(ケージの場所によって、給水瓶残存水量が数倍異る場合があった)、今回も聴覚に関する解析を優先することにした。このような飼育室の微気候改善に試行錯誤しているうちに、聴覚において興味ある現象に気づいた。脊椎動物特異的な神経冠より発生する色素細胞を欠損すると、白毛色となり、内耳に移動する色素細胞も無くなるため聴覚を失うことが知られている。我々が維持するblack-eyed whiteと呼ばれる変異体で、Mitf (Microphthalmia-associated transcription factor)遺伝子座にアリルMitf^<mi-bw>をホモに持つと、やはり全身白毛色で遺伝的な難聴を示すが、これらの集団中に、高い音に反応する個体がある割合で検出できることに気づいた。当該の系統は一時期絶滅の危機に直面し、それまでの遺伝的背景であるC57BL/6J(コンジェニック系統)から、元々の系統であるC3Hに変更してレスキューした経緯がある。前者の遺伝的背景では詳細な解析結果が残されているが、全て難聴を示すことが報告されている。現在飼育中の変異体は4〜5世代C3Hに掛け合わせ、それからクローズドコロニーとして維持を続けてきた。従って、現時点では、C3Hに由来するある遺伝子(群)が、内耳色素細胞が保障する聴覚に何らかの影響を与えていることを発見したのではないかと期待している。
著者
左巻 健男
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校理科における「ものづくり」のテーマを25選ぶことができた。それらの「ものづくり」は理科の観察・実験とともに、技術的な要素を含んでいる。それらを実際にやって検討する「ものづくりワークショップ」を2回開催し、その成果を『RikaTan理科の探検』誌に2回にわたって掲載した。
著者
菊池 結花
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モダフィニルに効果の性差とCOMTの遺伝子多型による差異に関する報告(Dauvillriers2001,2002)の追試を日本人に行っている。加えて治療のアルゴリズム上では第二選択薬であるリタインについても、同様の検討を行っている。約50例の症例について、遺伝子多型に関しては、COMT(158 Va1/Met)に加えて、orexin2 receptor(1246G>A), clock gene(3111 T>C),BDNF (66 val/met)を検討した。またナルコレプシーは特異的なHLA型を持つことが報告されているために、HLA遺伝子型のDRB1*1501、DQB1*0602の有無についても検討した。orexin2 receptor 1246G>Aについては、32例のうちでG/G,28/32,G/A,4/32であった。Clock 3111 T>Cについては、T/C,10/32,T/T,22/32であった。COMT 158については、Val/Met, 22/32, Va1/Va1, 9/32, Met/Met, 1/32であった。BDNF va166metについては、Val/Met, 23/32, Va1/Va1, 5/32, Met/Met, 4/32であった。HLA typingに関しては、脱力発作のあるナルコレプシーでは、95%の症例でHLA-DRB1*1501、HLA-DQB1*0602が陽性であったが、少数ではそれ以外の症例もみられた。また治療薬の違いについて、HLA typingとモダフィニルvsメチルフェニデートで比較したところ、HLA-DRB1*0901:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0301:モダフィニル処方患者が有意に多い(p〈0.05)、HLA-DQB1*0303:メチルフェニデート処方患者が有意に多い(p<0.05)の結果が得られたので、今後は症例数を増やして検討を継続したい。今までのところ、COMT多型に関しては、診断名や処方薬に対する有意な影響は認められてない。