著者
原田 晋 森山 達哉 上塚 弘
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1257-1262, 2019-07-01

25歳,女性。過去に数回,ウズラの卵摂取後に発熱・咽喉異和感・全身のしびれ感・呼吸困難などのアナフィラキシー症状を発症した。プリックテストで,ウズラの卵の卵白・卵黄ともに(4+)陽性であったため,自験例をウズラの卵によるアレルギーと診断した。ただし,鶏卵の摂取は日常的に可能であり,また鶏卵の卵白・卵黄の特異的IgEおよびプリックテストはともに陰性かつImmuno Solid-phase Allergen Chipで鶏卵の主要アレルゲンコンポーネントもすべて陰性であったことより,鶏卵に対する感作は有していないと考えた。鶏卵との交叉反応性を示さないウズラの卵による即時型アレルギーの報告は過去に数例しか認めておらず,極めてまれである。
著者
加藤 康彦 山村 淳一
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.662-666, 2019-07-15

はじめに コグトレ(Neuro-Cognitive Enhancement Training:N-COGET)は,認知機能の強化を目的としたトレーニングである1).コグトレが日常生活で不適応を生じている子どもに有効ではないかと考え,2017年(平成29年)4月より,児童思春期精神科病棟の入院患児に対しコグトレの導入を試みた.医療機関からのコグトレの実践報告は少ない.当病棟におけるコグトレの取り組みと課題,導入における注意点について紹介したい.
著者
内田 茂博
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.653, 2018-07-15

身体重心(center of gravity:COG)とは身体の質量分布の中心であり,姿勢の変化によって重心の位置は変化する.静的立位姿勢における身体重心の位置は第2仙椎の高さで骨盤の中央と解釈されているが,これはおおよその位置であり姿勢の変化によりその位置は異なってくる.生体力学では合成重心の考え方により身体重心を求めている.合成重心とは,図1に示すように身体の皮膚上に貼付したマーカーより,頭部,体幹部,上腕部,前腕部,大腿部,下腿部,足部などの各体節(セグメント)の位置情報が求められ,各体節の重心位置と質量が計算される.各体節の重心位置,質量より上半身の合成重心,下半身の合成重心が求められ,最後に身体全体の重心の位置が求められる.このように身体重心は各体節の位置によって求められた合成重心であるため,体節の位置関係が変化すれば身体重心の位置も異なってくることを理解する必要がある. 足圧中心(center of pressure:COP)とは,床反力作用点,圧力中心とも表現され,床と身体との接触面に働く力の分布の中心点である.図2に示すように足底が床面に接触した場合,矢印に示すような多くのさまざまな大きさや方向に向かった反力が足底に生じる.多数の足底に生じる床反力を合成し,1つの矢印にしたものを床反力ベクトルとよび,矢印の根本部分が床反力作用点となり足圧中心点を示している.両足で床に接している場合では,右足の床反力作用点が1点,左足の床反力作用点が1点と各々の足圧中心点を示すことができるが,左右の床反力作用点のつりあう点を合成床反力作用点として考え,足圧中心点として求めることがある.
著者
林 圭 西 薫 堀 仁子 山本 明美
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.671-674, 2016-08-01

要約 25歳,男性.ブリ摂食後に蕁麻疹の出現を数回経験していた.生寿司を摂取後に顔面の瘙痒と息苦しさを自覚し,救急外来を受診した.クロルフェニラミンマレイン酸塩とメチルプレドニゾロンの点滴を行ったところ症状は速やかに改善した.問診の結果,ハマチの寿司を摂食したことが原因であると考えられた.魚介類のIgE-RAST検査はすべて陰性であり,マグロ,カツオ,シメサバ,アジ,ブリ,ハマチでプリックテストでは,ブリとハマチのみに陽性を示した.病歴からヒスタミン中毒やアニサキスアレルギーは否定的であり,ブリ(ハマチ)単独のアレルギーと診断した.ブリ(ハマチ)のアレルギーではパルブアルブミンやコラーゲンなどの抗原蛋白の関与は低いとされている.ブリは比較的有名な出世魚であるが,患者はブリとハマチが同種の魚であることを知らなかった.魚は地域や大きさによりさまざまな呼び名が存在するため,医療者側も注意が必要である.
著者
岩上 裕吉 上堂 文也 松浦 倫子 庄司 絢香 三宅 宗彰 松枝 克典 井上 貴裕 脇 幸太郎 中平 博子 七條 智聖 前川 聡 金坂 卓 竹内 洋司 東野 晃治 石原 立 北村 昌紀
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.584-592, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント・SMT様の隆起性病変の診断では,まず大きさ,表面の弧の形状,隆起の立ち上がりの性状から主座を推測する.さらに,病変の部位,個数,隆起の形状,陥凹の有無と性状に着目し鑑別診断を行う.・EUSでは,病変の局在(非腫瘍胃壁構造との連続性),辺縁性状,内部エコー像を観察する.・NETは発赤や陥凹など上皮に変化を伴うことが多く,大きなものは不整形で陥凹を伴うことが多い.黄色調,表面に血管拡張を伴うことがある.EUSで第2層に連続する低エコー腫瘤として観察される.・GISTは球形で丈が高く,頂部に深い円形の潰瘍を伴うことがある.第4層に連続する低エコー腫瘤として観察される.・転移性胃癌は多発し,丈が低く陥凹を伴うことが多い.・組織診断のため,狙撃生検やボーリング生検,EUS-FNAを試み,診断困難であれば内視鏡的切除も考慮する.
著者
入口 陽介 小田 丈二 冨野 泰弘 依光 展和 園田 隆賀 岸 大輔 橋本 真紀子 中河原 亜希子 霧生 信明 清水 孝悦 水谷 勝 山里 哲郎 並木 伸 長濱 正亞 山村 彰彦 細井 董三
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.779-793, 2020-05-25

要旨●スキルスとは,病理組織学的に癌組織の間質に線維性組織増生が顕著な状態の総称であり,スキルス胃癌は臨床的に「胃癌取扱い規約」の肉眼型の4型を指すことが多い.そこで,本邦における4型胃癌の経時的な発生頻度,形態学的・病理組織学的特徴を検討した.全国集計による進行胃癌の肉眼型別・年次推移をみると,4型胃癌は,1984年度13.8%から2014年度6.5%に減少していた.また,当センターにおいて過去29年間に経験した4型胃癌93例を対象として,原発巣(粘膜内進展部)の部位と背景粘膜から,①胃底腺型,②腺境界型,③幽門腺型の3型に分類し,2007年度を境に前期45例,後期48例に分けて検討した.後期では胃底腺型が特に減少し,腺境界型,幽門腺型の割合が増加していた.胃底腺型は,前後期ともに原発巣の大きさが25cm2以下で陥凹は深く組織型は未分化型腺癌が多かった.一方,腺境界型は,前後期ともに原発巣の大きさが50cm2以上で陥凹は浅かったが,後期では組織混在型の割合が増加していた.幽門腺型は原発巣の大きさに比較して粘膜下層以深の面積は大きくなく,前後期ともに組織混在型が約30%に認められた.H. pylori感染状態の検討では,前期はすべて現感染であったが,後期では現感染42例,未感染2例(胃底腺型2例),除菌後4例(胃底腺型1例,腺境界型2例,幽門腺型1例)であった.以上から,スキルス胃癌,4型進行胃癌の正確な診断のためには,原発巣の部位・背景粘膜の相違による形態学的・病理組織学的特徴を十分に理解して,スクリーニング,精密検査を行うことが重要である.
著者
石川 博康 熊野 高行 鈴木 昌幸 熊谷 裕昭
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.17-21, 2003-01-01

62歳,男性.食用のベニナギナタタケと間違ってカエンタケを誤食したところ,嘔吐,腹痛,水様下痢などの消化器症状に引き続き,翌日には全身の潮紅とともにショック症状が出現した.大量補液と人工透析の併用により,ようやく循環動態の改善をみたが,1週後には骨髄抑制による白血球および血小板の減少を認めた.経過中,顔面の発赤腫脹や難治性口内炎,回復期での掌蹠の膜様落屑と脱毛などきわめて特異的な皮膚粘膜症状を呈した.カエンタケの毒素成分は長年不詳であったが,mycotoxinとして有名なtrichothecene類であることが昨年解明された.カエンタケ中毒は本邦で6件発症し,患者10例中2例が死亡している.救命にはキノコの十分な鑑別と初期医療での大量補液が重要である.